トレセン学園の英語表記も「Japan Uma Musume Training Schools and Colleges」ですし、高等部デビューではシニア2年目以降が高校課程を通り過ぎてしまいますし、それにドリームトロフィーリーグもありますし……。
とりあえず、タグとして独自設定は付けてますのでご了承ください。あと今話は他にも独自設定があります。
ちなみに最初、今話の題材にした帰らないといけない理由の一つに「ウマ娘世界のウマ娘には症状が出ないはずの花粉症がK2世界だと発症してあれこれ」ってのを考えてたんですけど、まさかウマ娘ネオユニヴァースに花粉症設定が与えられるとは……。
しばらくして部屋に入って来たのは、鳥の白い羽根が飾られた紫色のボリュームキャスケットにトレセン学園のをそのまま丈だけ伸ばしたような紺色のロングコートを着て、大きなスーツケースを曳いた女の人。
その恰好のせいでウマ耳とウマ尻尾は見えないけど、前髪に白いメッシュが入った栗毛はウマ娘でしかあんまり見ない特徴で、つまりこの人がツルマルツヨシ先輩らしい。
らしいってのも、そりゃああたしの記憶が正しければ10歳くらい年上のはず。
いくら同じトレセン学園生と言っても、チケゾーと同じくドリームトロフィーの為に籍を置いてるほとんどOG。だからそこまで面識がある訳でもないし。
「お久しぶりです。大垣先生、KAZUYA先生、丹波先生、と……あれ?トーセンジョーダンさん、ですよね?」
「うん、あたしがトーセンジョーダンだけど。もしかして、あたしを探しに?」
というか、向こうはあたしが失踪した事になってるだろうし、こっちにも伝手がある人が探しにもくるか。
「はい。そうだったんですけど、何かアテが無いか知己を頼ろうと
「その、……ごめんなさい」
とりあえず、そういう気分だったとはいえ色んな人達に迷惑も掛けちゃっただろうし謝らないとダメだよね。
「あー、大丈夫ですよ。それにここにいるって事は、何か怪我か病気なんですよね。皐月賞の時は不調でしたそうでしたし、元から爪も悪かったと聞いてますし。大丈夫です。すぐに帰らなくてはならない、という訳では無いですから」
「……え?帰らなくても、良いの?」
「え?えーっと、帰らなくても良いって訳じゃないんだけどー、どこから話そうかなあ」
やっぱり、帰らないとダメなのかな……。
「ツルマルツヨシ、その話、長くなるなら先にこれを食べてからにしないか?君もこっちに来たばかりであまり落ち着けてないだろう?」
「丹波先生、もしかしてそれは、丹波先生の特製にんじんジェラート!?」
「
「わあー!ありがとうございます、いっただきまーす!」
とりあえずにんじんジェラートでも食べながらまずは世話話からという事でみんな揃って椅子に座り、ツルマルツヨシ先輩も帽子とコートを脱いでいたのだが、それに大垣教授達が変な顔をした。
「それにしてもツルマルツヨシ、おまえもう24歳だろ?それでそのトレセン学園だったかの制服を着てるのはどうなんだ?」
「いえそれは、それは前にも説明しましたけど、トレセン学園はシニアも走り切った後のドリームトロフィーリーグに所属するウマ娘の為にも開かれていて、トレセン学園に引き続き所属する学園生として活動する際には制服や運動服の着用が義務付けられているんです。なので今の私もこうしているんです」
「ドリームトロフィーリーグねえ。確か、類稀な記録を残したウマ娘だけが参戦できるんだっけか?おまえさんもそれを走ってるってのはこっちのトーセンジョーダンからさっき聞いたが、なんでも京都の絶対なんて呼ばれてるそうじゃねえか」
「ええ、お陰様で。最後の有馬記念こそ危なかったですけど、これまで怪我無く走り続ける事が出来ました。その節は本当にありがとうございました」
「にしても、走れても走れなくても引退レースは同じ2000年の有馬記念ってのは因果かねえ」
ぼやいたのはにんじんジェラートの代わりに凍らせたレモンの半分だけ切ったのを齧る大垣教授。それだけで美味しいのかなあ。
「走れなくても、というのはこちらの私ですか?走れなくてもという割には有馬記念には出走出来たんですね?」
「ああ、1999年に重賞を2つ勝ってたからな。G3の朝日チャレンジカップ、それとG2の京都大賞典だ。その年の有馬記念にも出走して4着だぞおまえ。そんで2000年には敵無しかと期待されてたんだが、そこで体調崩して2000年の有馬記念で怪我して引退。後は京都で誘導馬やって今は宮崎県の乗馬クラブにいるぞ」
「こっちの私も有馬を2回、それで怪我して引退かあ」
その時、何でかツルマルツヨシ先輩が左の手の平を揉み解していたのが目に着いた。にんじんジェラートのカップを持ってて冷えちゃったのかな?
「とまあ、私の与太話はこのくらいで良いでしょう。トーセンジョーダンさん、良いですか?」
「え?あっ、はい」
わあ、急に振られてびっくりした。いやまあ元の本題はあたしだったんだけどさ。
「まず、トーセンジョーダンさんがこの世界にずっと居続ける事は出来ません」
「それは、なんでなん?」
「理由はいくつかありますが、……大垣教授、こちらの世界、あるいは日本が公的にウマ娘を受け入れる体制を構築出来ていないのは、私の時から変わってないですよね?」
「ああ、そりゃあおまえ本人が帰っちまったのもあるし、政治は政権交代で滅茶苦茶になったからな。10年経った今でもウマ娘なんていう、まあ言っちゃなんだが宇宙人みたいな生き物を受け入れる体制は出来上がっちゃいないままだ」
宇宙人?いやウマ娘は宇宙人じゃねえし?
「ありがとうございます。つまりトーセンジョーダンさん、この世界で身分を得る手段が無い貴女は生活費の為に働く事すら出来ないのです。お金が無いと生きていけないのは分かりますよね?」
「えーっと、うん。なんとなく分かった。あっちでバイトする時もトレセンの学生証の写メを送ったりしたけど、それがコッチでは出来ないって事でしょ?」
「はい、その通りです。それともう一つ、怪我や病気のリスクです」
え?あたし怪我は爪がしょっちゅうだったけど、病気なんて生まれてから罹った事無いのに。
「まず怪我ですが、大きな怪我をして血をたくさん失くしてしまった時に、自分ではない他の誰かから血を分けてもらう事があるのは知ってますか?」
「うん、輸血っていう奴でしょ。サポート科の子達が話してたの聞いた事あるよ」
「ええ、その輸血です。トレセン学園や東京レース場、あるいはその近くで大きな怪我をしたウマ娘は、トレセン学園のサポート科に所属する彼女達ユニバーサルドナーから血を貰って輸血をしているのです。しかし、この世界に彼女達はもちろんいません」
はえー。あの子達そんな凄い役目だったのか。
「そしてウマ娘はウマ娘以外の、ヒト耳やあるいはそれ以外の他の動物から血を貰って輸血をする事が出来ません。つまりこの世界で大きな怪我をしたウマ娘は、例え元の世界では簡単に治ってしまうような怪我でも輸血が出来ず死んでしまうのです」
「それって、めっちゃやばいじゃん?」
だって、あたしだって爪をしょっちゅう割って血もドバドバ出ちゃってるのに、そんなんでこっちの世界に居たら超やばいじゃん。
「そして病気ですが、この世界に存在する病気は私たちの世界に存在するものとあまり変わらない種類のものもあれば、逆に全くそうではない病気もあります。元よりウマ娘は病気になり難いと言われていますが、この世界に存在する病気に対しても同じとは限りません。そして病気を治すには薬や手術が必要となりますが、この世界のヒト耳用に作られた薬をウマ娘にそのまま使って良いのかも分かりませんし、手術で治すにもさっき話した輸血が必要な手術であった場合は治す事ができません」
「えっと、えっと、とにかく病気に罹っても治せないかもしれない。って事?」
駄目だ、最後しかよく分からなかった。
「ええ、そういう事です」
「うーんと、つまりさあ?あたし、こっちの世界にいたらすぐ死んじゃわね?今すぐにでも帰らないといけなくない?」
なんか、さっきのツルマルツヨシ先輩が言った事と、こっちの世界の危なさが繋がってないように思えるんだけど?
「ええ、本来であれば。しかし、トーセンジョーダンさんはトレセン学園に帰るのが、いえ、走るのが嫌になってこの世界に来たんですよね?」
「うん?いやなんつーか、この世界に来たくて来た訳じゃないんよ。確かにトレセン学園も辞めるつもりで電車に乗ったけど、何でこっちの世界に来ちゃったのかはあたしでも分かんねえのよ」
「なるほど、では尚更です。もしこの世界でトーセンジョーダンさんに逢えたならと秋川理事長からの伝言を頂いてましたので伝えますね。―――待望!トーセンジョーダンさんが帰りたくなるまで、あるいは
なんか、一瞬だけツルマルツヨシ先輩が持ってるスプーンが理事長の扇子に見えた。