「KAZUYAに立て替えてもらってた治療費だあ?そんなもん、ねえぞ」
色々な検査を終わらせて大垣教授の部屋に戻って来て、ツルマルツヨシ先輩が治療費の話を大垣教授に持ち掛けたらコレよ。
「え?だって私ここで1年間もお世話になってて、それなのに治療費が無い?そんなはずは」
「そりゃ考えてみろよ。おまえ戸籍も保険証も無いし、外国人として扱おうにも入国記録なんてあるはずもない密入国者みたいなもんで、
どうも宇宙人みたいなウマ娘を受け入れるのにだいぶ苦労があったっぽい。
「お、お人形。……えっと、でもKAZUYA先生、私のために色々お金を使ったって」
「うーん、確かに金は使ってるぞ。だが、掛かった治療費はとっくのとうに大学の予算で清算されててな。……いや、あいつが立て替えるって言ってたんだな?」
「はい、そうです。あの、リハビリに使ったシューズとか、トレーニング器具とか」
「あっ、あー!アレか!そういや蹄鉄付のシューズはあいつが見繕ってたし、トレーニング器具も手配してウチに寄付した事にしてたのはあいつだ!あーだが、あれに幾ら掛かったかなんて分かんねえぞ。シューズなんか最初は代用でラグビー用のスパイクシューズを使ってて―――」
あー、蹄鉄シューズって向こうでもけっこう高かったもんなー。
「K先生、なんか向こうの話は長くなりそうだし、こっちはこっちでトーセンジョーダンちゃんの治療を済ませちゃいましょ」
「そうですな。トーセンジョーダン、割れた爪にレーザーを当てる治療をする。この椅子に座って靴と靴下を脱いでくれ」
「はーい」
それもそうだなと、言われた通りに靴下まで脱いで寺井さんに爪を見せる。
どうもあたしが検査している間にここでレーザーの治療をする為の準備を色々していたらしい。部屋を出る前には無かった椅子とかよく分かんない機械が準備されてた。
「んー、これがウマ娘の、時速60kmで走るっていう脚。見た目は女の子の綺麗な脚そのものね。触るわよ?」
「うん。お願いします」
「わ、わーあ凄い。K先生、この脚凄いわよ。中身は人間と大違い、筋肉の中身が違うわ」
あ、やべ。寺井さんがなんか沖野トレーナーみたいな顔してきたぞ。
「寺井さん、先に治療の方を」
「あ、ごめんなさい。そうね、トーセンジョーダンちゃん、これからレーザーを当てていくから、熱かったり痛かったりしたら言ってね」
「はーい」
うん、顔の切り替えの早さも沖野トレーナーだこれ。
そういや、あたしもこうして色々な検査とか治療とかしてもらってるけど、そのあたしの治療費ってどうなるんだろ?
「ところで大垣教授、それとツルマルツヨシさん。先ほどから治療費であるとかお金の話をしていますが、向こうとこちらでは通貨が違うので支払いが出来ないのでは?トーセンジョーダンが持って来た向こうの紙幣や硬貨はこちらとは違うものでしたが」
「あ、そういやそうだったな。ツルマルツヨシの時に後から来たトレセン学園の秘書の、たづなさんだったか?あの人もけっこうな札束を持って来てたがこっちのとは違ってどうにもならんかったしな」
そうだよ。ウマ娘ってこっちでお金を稼げないから、あたしもこっちのお金を払うってのが出来ない訳で。
「ええ、なので
だけどツルマルツヨシ先輩がそう言ってスーツケースを開けて中から取り出したのは、ウマホよりちょっと小さいくらいの金ピカの塊。
「これならこっちでも価値はあんまり変わらず、換金性も良いってのは前回来た時にたづなさんから頼まれててちゃんと調べてましたからね!」
そんな事を言いながら積み上げていって、えっと、7個、8個、9個、10個。全部で10個。
「な、なあ丹波。……今の金相場ってどんだけだったか?」
「確か、1g4000円程だったかと」
「じゃ、じゃあ1kgのインゴットが10個で」
「……よ、4000万円」
そっか、金の塊にして持って来れば支払いできるのか。4000万円くらいならあたしでもホープフルの賞金で出せたなあ。
「あとこっちがもしトーセンジョーダンさんを見つけた時の生活費分として持って来た分なんですけど、爪の治療費にも使っちゃって下さい。これは後でトーセンジョーダンの口座から振り替えておくので、この委任状にトーセンジョーダンさんのサインをお願いします」
「あ、はーい!あざまーす。やった、先輩気が利くー」
あたしのが5個。これでちゃんとあたし自身のお金で治療費とか生活費を払えるじゃん。
「……2000万円」
だけどツルマルツヨシ先輩の手はまだ止まらない。
「あとコレは、たづなさんから
それが15個。
「…………ろ、6000万円」
さっきから金額を数えてる寺井さんの顎が外れそうになっててウケるー。
まあツルマルツヨシ先輩は天春を2回勝ってるし、トキノミノルはクラシック2冠だし、あたしも一応ホープフルでG1勝ってるし、そんな数字が通帳にあるのは実際そうなんよね。
「合計、1億2000万円」
「
「ええ、そのはずですが。しかし」
「あいつもあいつでこういうのあんまり受け取る質じゃねえんだよな。……だが、一応話だけでもしておくか。えーっと、あいつの西城医院の番号はっと―――」
大垣教授がそのケイって人に電話をし始めて、なんか、なんか話がどんどん大きくなってるような?
「トーセンジョーダン」
「なに?K先生どうしたん」
「爪の治療費に1年間分の生活費を足しても2000万円は多過ぎるからな。そんなには受け取れない」
「え、そなの?」
「それにトキノミノルの治療費にしたって、どうしたものか……」
わーあ、ここまで困った顔のK先生もこの1週間で初めて見た。ウケるー。
Q.なんで今更ツルマルツヨシの治療費の支払い?
A.双方の共通認識として治療費の支払いよりも、世界を跨いでの感染症リスクを回避する事の方が重要だとされていたため。なので今回トーセンジョーダンの捜索というより重要な目的があって初めて、そのついでに支払いに来れた。