トーセンジョーダンがN県T村でちょっと過ごす話   作:鶴岡

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作中で言及される某ウマ娘は皆さんのイメージ通りで良いと思います。
トーセンジョーダンに近しい世代でトレセン学園のモットーである「唯一抜きん出て並ぶ者なし」を成し遂げたウマ娘というと彼女かなあと抜擢です。


第15話 インサイダー

「やっぱり、KEIも治療費は受け取れないってよ。もう相続なんて10年も前に済んだ話、それ以上は受け取れないと」

 

「でしょうな」

 

「え、えっ?そんな、じゃあ私の治療費はどうすればあ……」

 

 いやウケるわ。お金を払えなくて困るってのは偶に聞くけど、受け取って貰えなくて困ってるなんて初めて見たわ。

 

「どうする?俺はKを引き継いだ一人が受け取っても良いとは思うが?」

 

「しかし、こちらとしてもトーセンジョーダンとトキノミノルの分で既に20kg、およそ8000万円分を受け取る事になってしまっています。これでさえ多過ぎるのに、それ以上は……」

 

「おまえもおまえでそういう奴だよなあ。村の診療所なんていくら金があっても良いだろうに」

 

「それはここも同じでは?それこそ治療費が帝都大学病院で清算されているのであれば、帝都大学病院基金への寄付というのも」

 

「ああ、そんなのもあったなあ」

 

「じゃあ、じゃあそれで!寄付します!」

 

「ん、んむむむ……。まあ、24歳にもなったおまえがどう金を使おうがおまえの勝手ちゃ勝手か」

 

 とりあえず、たぶん解決っぽい?

 

「それで?ツルマルツヨシ、机の上に積み上げたその金塊の行方は決まったとして、あのスーツケースの中に残ってるのは何なんだ?」

 

「それはですね丹波先生、KAZUYAさんから頼まれてた私たちの世界の医学書と、もしトーセンジョーダンさんがこっちの世界にしばらく残る時の為にと持って来た宿題です!」

 

「「「ほう」」」

「うげっ」

 

 ウソでしょ。

 なんで向こうの世界に帰りたくないのにトレセン学園の宿題があんの?

 

 そんなあたしの気持ちと一緒に金塊を押し退けるようにして目の前に本とテキストの山が高く積み上げられてく。

 

「ね、ねえ先輩?これ全部、私がやんなきゃなんない宿題?」

 

「いえ、半分はKAZUYAさんの為に持って来た医学書だったんですけど……、まさか亡くなられてるとは思っていなくて、どうしましょう」

 

 半分、それでも半分かあ……。

 スーツケースの中身殆ど半分があたしの宿題じゃん……。

 

「だったら一人が貰っちまえば良い。Kを継いでるってのもあるが、今ウマ娘の世界の医学知識が必要なのはトーセンジョーダンの主治医である一人だ」

 

「そうですね。こちらで受け取りましょう」

 

「それにしても、違う世界の医学書だなんて、中身によっては学会が大荒れしちゃうようなのがありそうね。気になるわァ」

 

「ああ。KAZUYAの奴、自分で受け取れるかも定かじゃねえってのにエラいのを頼んでいやがったな。ちなみにどんなのがあるんだ?」

 

「えっとKAZUYAさんの依頼は色々あって、でも私じゃよく分からなかったのでタキオンさんに選ぶのを手伝ってもらったんですけど……」

 

 タキオン先輩って、まさかあの、しょっちゅう騒ぎを起こしてたアグネスタキオン先輩?

 

「タキオン?タキオンっていうと皐月賞を勝ったアグネスタキオンか?ほおー、家庭向け医学本から医学生向けの教本、症例集に論文集、こっちは医療機器の最新版カタログが選り取り見取り、大した目利きじゃねえか。……ん?この薬学論文集の著者、アグネスタキオンって、まさか?」

 

「はい。それはタキオン先輩本人が書いたそうです」

 

 アグネスタキオン先輩が書いた本?ぜってーやべーじゃんそれ。

 

「こりゃ驚いた……。ん?どうしたトーセンジョーダン、そんな恐ろしいモノを見たような顔して」

 

「だって、そりゃ、さ?先輩、それ爆発なんてするんじゃ?」

 

 出来る事なら座ってる椅子の陰にでも隠れたかったけど、でも今は寺井さんに爪のネオなんとかレーザーっていう治療してもらってる最中だから動けなくて……。

 

「それは大丈夫ですって。さすがにタキオン先輩でも爆発する本は作れませんよ。それに最近は生徒会長の事もあってタキオン先輩も爆発するような実験を止めてるみたいですし」

 

「あー、うん。そうだったね……」

 

 そうだった。最近のトレセン学園の爆発騒ぎって言ったらアグネスタキオン先輩じゃなくて新生徒会長の方だったわ。

 

「おい、おい、トレセン学園ってのは何時からそんな物騒な所になったんだ。しかも生徒会長って言ったらシンボリルドルフなんだろ?いったい何があったんだ?」

 

「ああいえ、シンボリルドルフ先輩は今年の4月で生徒会長を引退してて、代わりにジャスタウェイさんが新しく生徒会長になってるんです。ジャスタウェイさんは入学したばかりの中等部1年生だったんですけど、入学式であのゴールドシップさんを手懐けた事から選ばれて、ただ……」

 

「ゴールドシップっていうと、よく話に出て来たあの破天荒な奴か。新入生でそりゃ凄えな。……ただ?」

 

「ジャスタウェイさん、頻繁に学園のあちこちに爆弾を仕掛けて爆発騒ぎを起こしてて、今日たづなさんがこっちに来れなかったのも今朝の爆発騒ぎが原因で」

 

「おい、それは、他の生徒会の面子は止めねえのか。というか警察はどうした」

 

「それが、副会長になったゴールドシップさんとジェンティルドンナさんも中等部の新入生で、とてもとても抑えられなくて。それにトレセン学園は若干治外法権な所がありまして……」

 

「なんじゃそりゃあ……。おい待て、ゴールドシップは11年前のお前の話にも出て来たあの破天荒なウマ娘なんだろ?それが中等部の新入生ってどういうこっちゃ。そこまで時空歪んじまったのか?」

 

「あーいえ、ゴールドシップさんは元からというか、確かにそれでひと悶着あったんですけど……」

 

 そういやゴルシの()()()も揉めてたなあ。

 あたしが生まれるよりも前からトレセン学園にいたのに、どういうワケか今年の新入生にあの身長で紛れ込んでたのよ。

 

「いや……、てことはだ。つまり、今話したその生徒会長のジャスタウェイ、副会長のゴールドシップとジェンティルドンナは全員まだデビューしてないんだよな?」

 

「え、ええ。そうですけど。……あ、まさか!?」

 

「そりゃそうだろ!なんつったって先代生徒会メンバーのシンボリルドルフとナリタブライアンは三冠馬で、エアグルーヴもオークスと天秋を勝ってるG1馬。だったら新しい生徒会メンバーもそんな凄え活躍するって決まったようなもんだ。この3頭の馬券買ってりゃ大儲けだぞ!」

 

「大垣教授、それは……」

 

「インサイダーって言うんじゃないかしらァ?」

 

 ……???

 確かに新生徒会メンバーの活躍に期待してる人達は多いけど、そのバ券で大儲けってどゆこと?

 

「ねえ、バ券で大儲けって何?あれ転売は禁止されてるでしょ?」

 

「あ、えっと。トーセンジョーダンさん、私たちの知ってるウマ娘レースのバ券は知っての通り着順予想の当たり外れによるウィニングライブの座席抽選のためのですけど、こっちの世界の馬っていう生き物のレースで言う馬券は着順予想の当たり外れで賭博をしてるんです」

 

「つまり……、あ!もし新生徒会メンバーと同じ名前のウマってのがこっちのレースに出て来たら、こっちでも活躍する可能性が高いから!?それズルじゃん!」




横浜のライブ2日目に行ってました。
なお感想、「ツヨシがやらかしましてね」。
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