「96点。……6科目合計600満点のテストで、……96点?」
「え?あ、あれ?」
今日はT村に来てから1ヶ月経って、今までの勉強がどれだけ出来てるのかをチェックするためのテストをやったんだけど、その結果にみんながびっくりしちゃった。
「あはは、……100点満点ならめっちゃ良い点じゃん」
「そうじゃないでしょトーセンちゃん」
「あ、えーっと、うん。……ごめんなさい」
そうだよね。この1ヶ月診療所のみんなであたしに勉強教えてくれたのに、その結果がこんなんだもんね。
「それにしても、ずいぶんと科目によって差が出ましたね。私が受け持った社会科で8点、一人先生の理科は4点なのに対して、一也くんの英語は44点です」
でも、あたしでも不思議なんだけど、なんでか英語で44点なんてめっちゃ良い点取れちゃったんだよね。まじワケ分かんね。
「……」
まあ、それで一番点が低かった理科のK先生がめっちゃ落ち込んじゃってるんだけど。
「にしても、トーセンちゃん元から英語はちょっと出来てたの?」
ちょっと?44点がちょっと?……あーでもシチーなら90点とか当たり前って言ってたもんなあ。それじゃちょっとだよね。
「ううん、あたし勉強は英語も何もトレセン学園じゃ全部ダメダメ。 44点なんか初めて取ったわ。てかゾロ目じゃんヤバくね?」
「ゾロ目がヤバい?……ああ、いえ。となると一也くんの方で教え方に何か上手いコツでもありましたか?」
「うーん、僕もそれが気になってずっと考えてたんですけど、正直全く分からなくて」
「トーセンちゃんは一也くんとK先生達とでここが違ったとかあった?」
「違いってもなあ。……確かに一也の方が分かり易かったような気もするけど。うーん、わかんね」
ホント、あたしでも何でこんな良い点が取れたのか分かんねーじゃん。
でも診療所のみんなはどうしたらあたしの頭が良くなるのかマジでマジメに考えてくれてて、でもあたしはその真ん中で広げられたテストの結果を前にじっと座って、脚がむずむずしちゃったのを頑張って我慢するくらいしか出来なかったんよ。
それで、これまでは診療所のみんなで1人1科目をずつ分担してあたしに教えてくれてたんだけど、これからは暇があれば他の人の授業を観察して違いを見つけようって事になったんだけど。
今日がその最初の授業の日、まずは富永の数学。ちなみにテストは8点だった。
「じゃあ、まずはテストで解けなかった所の復習からやっていこうか。……と言ってもほぼ全部なんだけどさ」
「うん、ごめんなさい」
「大丈夫、僕も大学の同期で家庭教師のバイトをやってた奴からコツってのを色々聞いてきたんだ。一緒に頑張っていこう」
でもやっぱりサインコサインタンジェントってのは分かんなかった。
サインの綴りってsignじゃんね?なんで数学だとsinになるん?
そんで次の授業がちょうど一也の英語の授業で、だから聞いてみたんよ。
「ねえ一也、なんでサインって英語と数学とで綴りが変わるの?」
「え?……あー、名前のsignと三角関数のsinかな?」
「えっと、たぶんそう。ファンレターの返信とかで名前をぱぱーって書くサインと、さっき富永の数学でやったサインなんだけど」
「じゃあ合ってるね。どっちも同じ発音だけど綴りが違うのは、元になった言葉が違うんだよ」
「言葉が違う?どっちかが元はフランス語だったとか?」
「えっと、どっちも元はラテン語が由来なんだけど、そうじゃなくてね。ほら、どっちも略語なんだよ。名前の方はsignature、三角関数の方はsineを短く縮めた略語だから綴りが違うんだ」
「へー」
なんていうか、たった4文字の単語すら3文字に縮めるなんて、数学を考えた人ってのはめちゃめんどくさがりだったんだね。
「じゃあ今日は英語の同音異義語を勉強しようか」
てな感じで一也の英語の授業を受けてたんだけどさ。
「一也、ちょっと良いか?シラバスはどうしたんだ?今頃の進行具合なら時制の辺りのはずだが……」
いつの間にか途中から授業の様子を見てたっぽいK先生が変な事を言ってきた。
「はい。えっと、トーセンジョーダンさんは中学英語からしてあんまりだったので、まずは英語に好奇心を持ってもらおうと、身近な英単語とかそういう興味を持ってもらえた所から覚えてもらってるんです」
「それでは、教科書の内容は?」
「教科書は殆ど手を付けられてないです。だから前のテスト範囲だった基本5文型もそれとなくしか教えられてなくて」
「それとなく。……で、中学英語からしてあんまりだったのに高校英語の小テストで44点も取らせたのか?」
「そ、そうです。……も、もしかして?」
ぐるりと、2人して首を回して何かあたしの方をジッと見てくるじゃん。
「え、な、何よ?あたし何かしちゃった?」
ところで実馬トーセンジョーダンは非常に賢かったそうですね。というネタで次話に続く。