トーセンジョーダンがN県T村でちょっと過ごす話   作:鶴岡

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第7話 ハンバーグサンドイッチ

 あたしがウマとか言う4本脚の生き物がいるらしい世界に来てから1週間が経った。

 爪の内出血はちゃんと止まって後は割れた爪を治すだけになって、あたしは本格的な治療ってのをするためK先生に連れられて帝都大学病院って所にやって来た。

 

「ほえー、トレセン学園より建物がたくさんあって迷いそ。ねえK先生、迷った時用にあの案内板の地図写メっといて良い?」

 

「病院敷地内の写真撮影は本当は駄目なんだが、まあ地図くらいは良いだろう。撮る時は他の人が映らないようにな」

 

「おけまるー」

 

 注意された通りに案内板が画面いっぱいに写るように撮ってと、いや撮っておいてだけど、字が殆ど読めなくて役立つか分かんねーわ。バカかあたし。

 

 まーでも、無いよりはマシかと思う事にしてまたK先生について病院の中を進んでく。

 

「着いたぞ。この店で待ち合わせだ」

 

 辿り着いたのはオシャレなカフェだった。

 

「え、ここ病院だよね?病院の中にこんなイイ感じなカフェがあるんだ?」

 

「他にも幾つかカフェやレストランがあるが、その中でもここはコーヒーも食事も美味く、雰囲気も落ち着いていてお勧めだ。帝都大学病院にはこれからも何度も通う事になるだろうし覚えておくと良い」

 

「へー」

 

 そう言われてカフェの看板をもう一度見て見る。駄目だ、漢字が読めない。

 

「ねえK先生、このカフェの写メも撮って良い?」

 

「……まあ、個人情報でも無いし良いだろう。ちなみに店の名前の読みはカライリヤだ」

 

 カライリヤ、からいりや。よし、たぶん覚えた。

 そのカライリヤの店内に入ると待ち合わせの人はもう来ていたみたいだった。

 

「寺井さん、お久しぶりです。いつもながら突然のお呼び出し申し訳ありません」

 

「あら良いのよォ。K先生の頼みなら私何処へだって飛んで行っちゃうわァ」

 

 なんつーか、すげーやべーのが出て来た。デブでオネエなメガネのおっさん。え、まじ?

 

「トウセン、こちらは寺井美容クリニックで院長をやっている寺井さんだ」

 

「寺井台助よ。あなたが今回の爪を割っちゃったっていう患者さん?よろしくね。フードで顔を隠してるのは、転んだ時に顔も怪我しちゃったのかしら?私、顔を治すのも得意だから全部治しちゃいましょっか」

 

「え、えーっと、そのー」

 

 えーっと、フードを被ってるのはウマ耳を隠すためで、それで今日はウマ尻尾を隠すのにもロングスカートを着ているのだけど、とりあえずK先生は周りに他の人がいる場所ではフードを取るなって言ってたし。

 

「寺井さん、その話は後で教授室に入ってからしましょう。トウセンの個人情報の扱いは慎重を要します」

 

「あら、そうなの。ごめんなさいねトウセンさん」

 

「えっと、こちらこそ、よろしくお願いします?あとあたし、顔は怪我してないんだわ」

 

「顔は怪我してない?……ふーん?」

 

 なんか身体をじろじろ見られてるけど、あんま悪い目つきじゃなくて、むしろK先生や村井さんみたいな医者の真剣な目みたいで、とりあえず悪い人ではなさそう?

 

「ところで大垣教授は、まだ?」

 

「まだ。彼の忙しさはいつも通りよね」

 

「では我々も待つついでに何か頼むか。トウセンはどうする?」

 

 どうすると聞かれて寺井さんがさっきまで座っていたテーブルを見ると、食べてる途中だったらしいハンバーグとオムライスが並んでた。やべーウマそうなんだけど。

 

「うん、じゃあ食べようかな」

 

「メニューはコレだ。決まったら言ってくれ」

 

「ありがと。うーん、流石にこういうオシャレなカフェにハンバーガーなんてジャンクなのは―――」

 

 手渡されたメニューからなんとなくハンバーガーを探して、もちろん当然ながら無かったんだけど。でもそれはあった。

 

「ハンバーグサンドイッチ、決めた。K先生、あたしハンバーグサンドイッチと特濃にんじんジュースで」

 

「わかった。ハンバーガーが好きなのか?村では中々食べれるものでは無いが」

 

「まー、親が健康オタクのマジメちゃんだからさー。子供の頃とか絶対食えんくて……。これ去年全く同じ話をトレーナーとしたっけ」

 

 そういや、あの頃に見てもらったトレーニングがきっかけであたしはトレーナーの担当になったんだっけ。なんかもう懐かしいなあ。

 

「トレーナー?やっぱりトウセンさん、陸上競技の何かを仕事にしてるんじゃないかしら?それで爪を?」

 

「えーっと、まあ、そんな感じっす。走って、無理して走っちゃって割っちゃった」

 

「走って、爪が割れる?……ああ、いいえ。ごめんなさいね、食べるのを邪魔しちゃって。話は食べ終わって大垣教授が来てからにしましょ」

 

 それからは些細な話をしつつも揃って食事を進めていった。

 

 ちなみに寺井さんはハンバーグとオムライスを完食してからデザートにあんみつを平らげ、K先生はコーヒーを1杯だけゆっくり飲んでた。

 そしてあたしの注文したハンバーグサンドイッチはもちろんハンバーガーとは別物だったけどめちゃうまだった。もうリピ確定。

 

 と、ちょうど食べ終わった所でもう1人の待ち人がようやく来たみたい。

 

「よお、待たせたな一人、……と寺井院長」

 

「いえ」

 

「そんな大垣教授、院長なんてカタい呼び方しなくても良いのにィ」

 

 ウソでしょ……。

 え、マ?寺井さん、それ惚れてる顔じゃん?

 

「あ、あー。おう、そうか。とりあえず俺の昼飯もテイクアウトで注文してくるからもうちょっと待っててくれ」

 

 大垣教授の方は嫌がってるっぽいけど、そっかー、寺井さん、ああいうワイルド系のが好きなのか。なんか白衣もその下のシャツもネクタイもヨレヨレなのが良いんか?

 

「顔、だそうだ」

 

 そっかー、顔かー。




東大病院に入ってる漢字店名のカフェのメニューにハンバーグサンドイッチはありますが特濃にんじんジュースはありません。あるのは特濃バナナジュースです。
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