ジュディシアル-影の守護者達   作:Eitoku Inobe

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38BBY、銀河共和国は静かに誰も気づく事なく自らの変革へと向かっていた。

この僅か6年後にはあの銀河史に名を残すナブー侵攻が始まり、これより16年後にはジオノーシスの戦いが勃発しクローン戦争が始まる。

それより僅か3年、つまり19年後にはクローン戦争の終焉と共に銀河共和国の名も消えてなくなる。

ある銀河の歴史では銀河の中央政府は第一銀河帝国と名を改め、銀河は新たな時代を歩んでいくことになるのだ。

またある“IFの歴史”で仮に銀河共和国と言う存在が存続したとしてもそれは今までとは大きく違ったまた別の存在である。

つまりこれから目撃する銀河のほんの僅かな場所での歴史はまだ銀河共和国が消えるなど殆どの人が考えてもいない時代の話だ。

ジュディシアル部門(Judicial department)、ジュディシアル・フォース(Judicial Forces)。

1,000年も昔の戦争以降、正規の国軍を持つことはなくなった共和国がジェダイと並んで唯一保有する共和国の安全保障、秩序を守護する存在。

彼らはジェダイ、各惑星の惑星防衛軍、警察など法執行機関らと共に銀河系の秩序を守ろうとした。

だが彼らはクローン戦争中に再誕生した共和国軍や後の帝国軍のような権限もなければ力も全くなかった。

要するに何も出来なかったのだ。

ありとあらゆる理由に雁字搦めになり思うように行動出来ず、犯人を捕まえるのにも一苦労だった。

銀河系の秩序など全く守れずこの状態を打開する為には後16年、時を待つ必要があった。

中にはこのどうすることも出来ない状況で遂には己の志を諦め、汚職や腐敗の道に進む者も多くいた。

だがこの物語はそんなどうしようもない中でも諦めず、懸命に己の職務にある使命を果たそうとしたジュディシアルの人々の物語である。

銀河系に歴史を残さないものだとしても彼らは確かに存在した。

彼らの存在は歴史に名を残さずとも更に後の時代にまで意志を繋げる役目を果たした。

これはそんな銀河系の小さく重要な物語なのだ。



コルサント襲撃

-銀河共和国領 首都惑星コルサント アンダーワールド 第4521拡張地区-

コルサント・アンダーワールドは常に暗黒街である。

 

理由はもちろん幾つかある。

 

まず一つ、コルサントは上に上にと階層を積み重ね発展していったエキュメノポリス惑星だ。

 

その為下の下の階層、特にアンダーワールドでは地表の構造物が日光を遮っていた為物理的に陽の光が届かなかった。

 

そしてまた一つ、幾つかの階層ではインフラ整備が行き届いておらず唯一の灯りである人工照明も時々切れることがある。

 

こうしてアンダーワールドは銀河系最大の暗黒街となった。

 

アンダーワールドの暗闇は単なる明かりの足らなさだけでなく首都惑星としての歪みも大きく影響していた。

 

ある社会学者は『コルサントとは単なる惑星ではなくこの銀河系の縮図である』という発言をしている。

 

確かにコルサントの上層階は銀河の中心たるコア・ワールド同様発展し豊かな生活を送り続けている。

 

その反面コルサント・アンダーワールドは銀河の外縁であるアウター・リム同様、様々な闇に閉ざされ多くの人が貧困に喘ぎ、犯罪者が治安を乱し、犯罪王が行政とはまた別に地区を牛耳っている。

 

本来彼らを取り締まるはずの法執行機関は全く対処し切れていない。

 

むしろ最も身近なコルサントですらこの有様なのだからアウター・リムなど夢のまた夢だろう。

 

コルサントの歪みは不思議なことに銀河の歪みと重なって見えた。

 

その暗黒街を数名の紺色の制服の上から軽装備だが武装した集団がスピーダーに乗り込んでいた。

 

周りには同様の装備の紺色の者達がおり、他にもコルサントの警察であるコルサント保安部隊もいた。

 

この紺色の者達は銀河共和国直属の法執行機関、ジュディシアル部門(Judicial Department)メンバー(Judicial )である。

 

彼らはジュディシアル部門の中でも犯罪捜査局警備部に所属するジュディシアルであり、今回はコルサント保安部隊と共にある任務についていた。

 

「こちらフォーン、現在ターゲットを尾行中。今の所異常なし、どうぞ」

 

部隊長がコムリンクで通信を取りながらターゲットの様子をしっかり見張っていた。

 

『イスクよりフォーンへ、こちらも同様だ。だがオーレクはターゲットをダウンさせた。こちらも間もなく仕掛ける』

 

「了解、フォースが共にあることを祈る。フォーン、アウト」

 

コムリンクを切ると隣の部下に目を寄せた。

 

「どうだ、伍長。連中、動きがありそうか?」

 

チーム・フォーンに所属する“ウィルト・フォーデン”伍長は首を振った。

 

生真面目な顔に麦色の瞳、同じような髪の色を持つ彼はジュディシアル部門の青い略帽を深く被っている。

 

耳にはコムリンクがついておりこれでいつでも他と通信出来る。

 

「全く、相変わらず運転を続けています。しかしあれには…」

 

「ああ、大量の爆薬が詰め込まれている。あれを市街地で爆発させる訳にはいかん。だがもう間も無く先行したオニスが足止めしてくれる。そこで奴らを引っ捕える」

 

「了解」

 

ウィルトはスピーダーの横からブラスター・ライフルを取り出そうとした。

 

しかしすぐに部隊長から「ダメだ」と止められた。

 

「何故です?ターゲットは既に…」

 

「上層部から使用許可が降りていない。市街地で無制限に使用出来るのはブラスター・ピストルまでだ」

 

部隊長の理由を聞きウィルトはもう何度目か分からない呆れ顔を浮かべた。

 

乱暴にブラスター・ライフルから手を離し如何にも不満げな感じでため息をついた。

 

「上層部はおかしい、既にターゲットは重火器類を保有している可能性があるのにこちらはライフルすら使えないなんて。我々を殺す気ですか」

 

「そう言うな、むしろコルサントの保安部隊と合同でこれほど大規模にやれるだけマシさ。それだけでも感謝しなくっちゃあな」

 

部隊長はタバコに火をつけ吸いながらウィルトを宥めた。

 

本来勤務中にタバコを吸うのは違反なのだがもう誰も止めないし止めたところで罰なんてものは降りない。

 

なんなら勤務中のタバコなどまだマシな部類だ。

 

こないだまでのウィルトや部隊長の直属の上官は隠れて横領までやっていた。

 

すぐにバレて捕まったが割によくあることらしい。

 

なんならまだジュディシアル部門はまだマシでコルサント保安部隊などはもっと酷いそうだ。

 

「まずそれがおかしいんですよ。本来ならもっと早くに対策を打てたはず、それなのに危機が始まる直前で出動なんて……しかも合同と言っても指揮系統はほぼ別だ」

 

「勤務中のお上への愚痴は俺のタバコより悪いぞ。我々は今出来ることをやるしかない」

 

「はあ……せめてジェダイの1人でもいればまだマシだったのに」

 

結局最後は神頼みならぬジェダイ頼みである。

 

今回彼らが出動している理由は共和国情報部と元老院情報部が掴んだあるコルサントに対する大規模テロに関する情報だった。

 

アンダーワールドに潜むテロ組織が他の場所から支援物資を受け取ってコルサント・アンダーワールドで爆弾テロを行おうとしているらしい。

 

敵組織の名前や規模はまだ判明していないが少なくともアンダーワールドに根を入っている辺り決して小さくはないはずだ。

 

流石に共和国政府としても見逃す事は出来ず、ジュディシアルとコルサント保安部隊に出動を命じた。

 

現在は2つの情報部が手に入れた情報を頼りに摘発を行なっていた。

 

『オニスよりフォーンへ、ターゲットに対するアプローチを開始する』

 

部隊長のコムリンクから通信が届いた。

 

部隊長も「了解、こちらもアプローチを開始する」と応答した。

 

「上等保安士、間も無くターゲットが停止する。それと同時に我々も出るぞ」

 

ジュディシアル部門ではジュディシアル・フォースと同じく一般的な一等兵、上等兵、軍曹、曹長らを一等保安士、上等保安士、二等保安長、一等保安長と呼ぶ。

 

無論ジュディシアル内でも階級に多少の差異はある。

 

ジュディシアル・フォースではこのまま階級が上がり士官となってくると他の軍隊同様少尉、中尉、大尉など通常の名称となる。

 

しかし犯罪捜査局ではこのまま警察側の階級に移っていく事となりそこに軍事組織ジュディシアル・フォースと警察組織としてのジュディシアルの差異が見られる。

 

ちなみに伍長だけではジュディシアル部門のどこでも共通であった。

 

「了解…!」

 

部隊のメンバーはそれぞれ武装を確認しブラスター・ピストルをホルスターから抜き出した。

 

ウィルトも自身のブラスター・ピストルを手にしターゲットのコンテナ付きスピーダーを睨む。

 

「待ってろよ、テロリストども…」

 

ウィルトの決意は堅かった。

 

今日この日の為にジュディシアルに入ったような気すらしてきた。

 

奥のターゲットであるテロリストが乗り込んでいるであろうスピーダーが停止し同じようにウィルトらのスピーダーも停止する。

 

「行くぞ」

 

タバコを消してブラスター・ピストルに持ち替えた部隊長の命令でスピーダーに乗り込んでいた全員が降りてブラスター・ピストルを構えた。

 

駆け足でターゲットに近づき降りてきたスピーダーの運転手やターゲットに銃口を向ける。

 

「動くな!ジュディシアルだ!コンテナの中身を見せろ」

 

部隊長が勇気を持って真っ先にターゲットに接近した。

 

奥の方では既にチーム・オニスの隊員が同じくブラスター・ピストルを構えていた。

 

既にターゲットは包囲されている。

 

辺りは建物が多く今から切り抜けるのは無理だ。

 

連中が自棄になってコンテナの積荷を吹っ飛ばすよりも先にこちらがターゲットの脳天にブラスター弾を撃ち込むことの方が早いという自信もある。

 

何事もなくこの場の任務は終わりだ。

 

しかし彼らは目の前の状況に囚われ過ぎていた。

 

背後から迫る危険の探知がほんの僅かだが遅れてしまった。

 

ウィルトや隊員達の耳元に嫌な音が聞こえる。

 

それはスピーダーを全速力で飛ばす時の音だ。

 

しかも徐々に近づいて来ている。

 

ウィルトが振り向くとその瞬間1台のスピーダーが全速力でこちらに接近していることに気づいた。

 

相手は止まる気がまるでない。

 

「伏せろ!!」

 

ウィルトは急いで大声を上げた。

 

その瞬間だ、スピーダーは近くのまた別のスピーダーと衝突し大きく軌道がズレて思いっきり住宅街に突っ込んだ。

 

建物の1階の階層にスピーダーのほぼ半分が入りそれから数秒立たずに突っ込んだスピーダーは爆発した。

 

とてもエンジンや燃料タンクがやられただけの爆発ではない。

 

爆発は轟音を立て、周囲の人を吹っ飛ばし熱気を振り撒いた。

 

ガラスが割れて一気に人々の悲鳴が湧き上がる。

 

伏せたはずのウィルトも衝撃を喰らい暫く立てずにいた。

 

心を砕いてしまうような痛みが前身に巡ってくる。

 

完全にターゲットに一杯食わされた。

 

「隊長!!みんな!!」

 

ウィルトは大声で仲間を呼んだ。

 

爆発の煙で辺りが見え辛く状況が一気に不明瞭になった。

 

少なくとも部隊長は無事なようで「伍長!!」とウィルトの階級を呼ぶ声が響いた。

 

しかし結局のところ最悪は防げない。ターゲットの1人がコンテナから出て来たもう1人の男からブラスター・ライフルを受け取ると近くで倒れ込んでいた部隊長を射殺した。

 

頭と心臓に1発ずつ、どの種族でも即死だ。

 

他の仲間も同様の方法で殺害し遂にウィルトの方へやってきた。

 

ウィルトは痛みに耐えてブラスター・ピストルを構え引き金を引いた。

 

まず1人、青いジュディシアルのブラスター弾が部隊長を撃ったターゲットを撃ち殺しその奥の2人にも弾丸を撃ち当てた。

 

また別の方向からターゲットがブラスター・ライフルを構えてやって来たが今度は他の仲間は撃った弾丸に斃れた。

 

復帰した仲間と共に残ったターゲットを始末しウィルトは自身のコムリンクで上層部に判断を仰いだ。

 

「フォーンより本部へ…!こちらは敵の襲撃を受けて戦闘状態へ移行!既に民間人及び部隊長含めた数名が死傷者が出ている!!なおターゲットは制圧完了した!!」

 

『こちら対策本部、既に10数箇所で戦闘が勃発中。フォーンは残存戦力を再編しつつターゲットの殲滅と民間人の避難を誘導せよ、全装備の無制限使用を許可する』

 

「了解…!動ける者は避難誘導しつつ全員指定されたコムリンクに入ってくる位置に急行しろ!」

 

他に指揮官がいないため代わりにウィルトが命令出した。

 

残った仲間は少ないがそれぞれ動き始めている。

 

本当はスピーダーからブラスター・ライフルを取っておきたいのだがそんな時間はもうない。

 

ウィルトは急いでひとまず提示された第一目標に向かった。

 

近くの地下通路口を降りて現場へ急行する。

 

この間にも多くの民間人があちらこちらにバラバラに逃げ出していた。

 

「上階は既に我々が制圧しています!逃げるならこの地下通路口を使って上に!落ち着いて避難して下さい!」

 

現場に向かいながらも同時に民間人への非難も呼び掛ける。

 

我々に仕事はまず第一に民間人を守ることだ。

 

正直ウィルト自身もういっぱいいっぱいで頭がパンクしそうだがそんなことを嘆いている暇はない。

 

1人でも多くの命を救う必要がある。

 

地下通路を曲がるとそこには既に地獄が広がっていた。

 

逃げようとする民間人をブラスター・ライフルで容赦なく銃撃する2人のテロリストがいたのだ。

 

ウィルトはブラスター・ピストルを構えて確実に2人に弾丸を撃った。

 

2人は致命傷を負い地面へ倒れた。

 

「チッ!緊急事態だ!仕方がない…」

 

ウィルトは死んだ2人からブラスター・ライフルをもぎ取りブラスター・ピストルの代わりに使った。

 

『こちらコルサント保安部隊第4班!!今すぐ救援を!我々だけでは人手が足りない!!』

 

「こちら警備部フォーン、了解」

 

背後から仲間達の到着を確認しウィルトは指示を出した。

 

「上階のコルサント保安部隊の援護に向かう。付いて来てくれ」

 

「了解…!」

 

仲間を引き連れウィルトは反対側の地下通路口を使って現場へ向かった。

 

その間にもコムリンクには様々な部隊の通信が入ってくる。

 

どこも襲撃を受け戦闘が勃発しておりコルサント保安部隊もジュディシアルの部隊も大混乱に陥っていた。

 

『こちら対策本部、間も無く増援部隊が到着する。現場の全隊員は現状を維持せよ』

 

「了解…!出来ればもっと早くにしてほしかったが…!」

 

怒りを口に出しつつウィルトは今出来ることをする為に走った。

 

階段を駆け上り再び上階に向かうとやはりそこにも地獄は存在していた。

 

本来交差点であった場所では建物からテロリストがコルサント保安部隊の警官達を狙撃し破壊され炎上するスピーダーを盾にして警官達は戦っていた。

 

ちょうど本来の交差点に沿って十字に銃撃戦が続いている。

 

民間人はこんな状況では逃げることも出来ず姿勢を低くして蹲り状況が変わるのを待った。

 

彼ら彼女らはそうでなかった者達の運命をよく知っている。

 

既に銃撃戦に巻き込まれた民間人の遺体があちらこちらに散らばっていた。

 

「増援に駆けつけたぞ!」

 

「おお!」

 

喜びの声を上げた警官もすぐに狙撃され目の前で撃ち殺された。

 

ウィルトは苦々しい表情を浮かべながら助けることも出来ず「すまない」と言葉を述べるしかなかった。

 

「警官隊は上階から狙撃され身動きが取れなくなっています!」

 

同じ部隊の仲間の1人がウィルトに伝えた。

 

「分かってる!建物をひとつずつ制圧して避難経路を作る!まず一番手前からだ!」

 

この状況では増援を待っている余裕はない。

 

警官隊がこの状況を耐え続けるのにも限界はあるしこのままでは民間人にも死傷者がさらに出てしまう。

 

であれば危険を冒してでも確実に敵を潰すしかない。

 

「行くぞ!」

 

「了解!!」

 

2人の仲間を連れてウィルトは建物の中へ走り出した。

 

すると敵も建物の中から2、3人姿を表した。

 

膠着状態の中、民間人や警官に死傷者を出そうと襲撃に打って出たのだ。

 

「クソッ!」

 

ウィルトは奪ったブラスター・ライフルを構え敵を撃った。

 

テロリストが使うブラスター・ライフルは質が悪く扱い辛かったがウィルトは射撃の腕は一流だ。

 

ジュディシアル・アカデミーでも上位の成績だった。

 

質の悪いブラスター・ライフルでも殺傷能力は高くウィルトだけでテロリスト2、3人を撃ち殺した。

 

3人は一気に建物の中へ入ったが既にテロリストは待ち伏せていた。

 

ブラスター・ライフルを持ったテロリストが建物の中のソファーに隠れており3人が入ってきた瞬間一気に銃撃した。

 

3人のうち1人が銃弾の前に斃れ、ウィルトが反撃してテロリストを射殺したがもう遅かった。

 

2人は更に上階からも銃撃され急いで近くの遮蔽物に隠れた。

 

「そんなサーエグ上等保安士が!!」

 

まだ若い一等保安士は仲間を助けようと身を乗り出そうとするがウィルトは必死に止めた。

 

「よせ!今はダメだ!狙い撃ちされる!」

 

ウィルトだって仲間を助けたい気持ちは山々だが本能と理性が彼を止めた。

 

今身を乗り出せば確実に狙撃され死ぬ。

 

まずは敵を制圧することが先決だと。

 

一等保安士を止めつつ上階の敵にブラスター弾を放った。

 

防御の遅れたテロリストはもろにブラスター弾を喰らいそのまま断末魔を上げて地面へと落下した。

 

もう1人のテロリストは爆弾を起動し2人の下に投げつけようとしたがウィルトが素早くテロリストを射殺したことにより爆弾は上階で爆発した。

 

味方の放とうとした爆弾で他のテロリストが爆発に巻き込まれ負傷している。

 

一等保安士もブラスター・ピストルでテロリストを撃ち、2人ほど撃ち倒した。

 

「急げ!時間がない、このまま上階に行くぞ!!」

 

「……了解!!」

 

ウィルトの命令で一等保安士は撃たれたサーエグ上等保安士の方を見つめたが彼を助けることは諦めウィルトについて行った。

 

仲間の命よりも民間人の命を優先する必要があると彼も分かっているのだろう。

 

2階に上がると早速テロリストの手厚い歓迎を受けた。

 

曲がり角で待ち伏せし一斉にブラスター弾を放つが既に察知していた2人は冷静に対処する。

 

まずウィルトが奥のブラスター・ライフルを持つ2人のテロリストを撃ち殺し、接近して今度は近くの敵をブラスター・ピストルで確実に殺した。

 

ウィルトを前衛に一等保安士も後に続き反対側テロリストを撃ち殺した。

 

「一等保安士、拾えるようであれば敵のライフルを使え。ピストルより役に立つ」

 

一等保安士は頷き斃れたテロリストから持っていたブラスター・ライフルを取り上げた。

 

更に奥から駆けつけてきたテロリストをウィルトは2つのブラスターで撃った。

 

既に今ので9人仕留めた。

 

敵の規模と攻撃の範囲から見て恐らく2階にこれ以上の戦力はないとウィルトは考えた。

 

「3階へ行くぞ!そこが敵の狙撃地点だ!」

 

「はい!」

 

2人は近くの階段を登り急いで3階に向かった。

 

尤も既に1階前で3人、1階の戦闘で8人、今さっきの戦闘で9人射殺したのだ。

 

3階に残った戦力は少ないはず、ウィルトはそう予想していた。

 

だがその予想は間違っていた。

 

3階に上がった瞬間今回ばかりはいきなり襲撃を受けることはなかった。

 

その代わり生物とは違う敵が隊列を組んで2人に迫った。

 

通路の奥から鋼鉄の足音が聞こえてくる。

 

「伍長!何かきます!」

 

「ああ…!分かっている……ちきしょうまさか…」

 

足音と共にブラスター弾が何発も飛んできた。

 

2人は急いで通路の遮蔽物に隠れ反撃した。

 

奥からは11、12体の人が他の武装したドロイドの集団が現れた。

 

ドロイドは改造されたOOMシリーズ・バトル・ドロイドやIG-RM護衛及び執行ドロイドの混成部隊だ。

 

「伍長!バトル・ドロイドです!!」

 

「応戦しろ!全て殲滅するんだ!」

 

バトル・ドロイドの物量は色覚的な圧力があるがそれに負けてはならない。

 

幸いにもドロイドの弾丸命中率はそれほど高くなく確実に弾丸を当てれば倒せる。

 

まずウィルトは前列のOOMバトル・ドロイドを銃撃し何体か破壊した。

 

しかし全く数が減っているようには見えない。

 

むしろ倒されたバトル・ドロイドのブラスター・ライフルをIG-RMが拾って使ったことで火力の面では全く何も変わっていなかった。

 

2人は諦めずに敵を撃ち続けた。

 

「クソッ!!」

 

苛立ちを吐き捨てた瞬間ウィルトの近くをブラスター弾が掠った。

 

危うく死ぬところだったという恐怖がゆっくりとウィルトの脳裏に過ぎる。

 

「伍長!敵が!」

 

「ああ!!とにかく撃ち続けろ!」

 

重火器を持っていない以上こちらは地道に数を減らすしかない。

 

それでも2人掛かりで7体にまで数を数を減らした。

 

だがバトル・ドロイドと2人までの距離は既に半分以上縮まっておりドロイドは仲間が何体破壊されようと前進を続けた。

 

数の圧力は効力を増しだんだんウィルトの中にも焦りが出てきた。

 

「チッこの!この!!」

 

なんとかは半分以上のドロイドを破壊したがそれでも敵は前進を続けた。

 

しかも最悪なことに奥からプローブ・ドロイドのような黒い物体がバトル・ドロイドを盾にしながら迫ってきたのだ。

 

「なっなんだあれは!」

 

2人はバトル・ドロイドを牽制しつつプローブ・ドロイドも攻撃する。

 

プローブ・ドロイドは2、3体ブラスター弾を喰らって破壊されたがプローブ・ドロイドを攻撃した隙をウィルトは突かれた。

 

IG-RMの銃口が確実にウィルトの方へ向いていたのだ。

 

ウィルトは声が出なかった、されど銃口と自身の目が合い自らの死を悟った。

 

銃口からは赤いブラスター弾の色が薄ら見え始めていた。

 

半ば諦めのような気持ちが心を支配し走馬灯というべき過去の記憶が脳裏を過ぎる。

 

ウィルトが生まれた惑星タナブはコルサントに比べれば田舎の惑星だった。

 

その為何度か犯罪者集団にウィルトの家族が経営する農場が狙われたりもした。

 

そこで助けてくれたのがジュディシアルだった。

 

ジュディシアルに憧れを持ったウィルトは頑張ってジュディシアル部門に入った。

 

憧れと実態は違う。

 

ウィルトにとっての正義のジュディシアルは銀河にとっての役立たずな存在であった。

 

様々なしがらみによって行動を抑制され本来やるべきことすら出来ていない。

 

どこの惑星に行ってもジュディシアルが役に立つことは数少なかった。

 

それはテロが起きた今もそうだ。

 

本当ならこんなこと、未然に防げたかもしれないのに。

 

この青い制服(Bluecoat’s)にもっと権限と力があれば。

 

死ぬ間際までウィルトは真面目であった。

 

故に助かったのかもしれない。

 

()()()()()()()()()()()()()”。

 

「よく耐え抜いた!」

 

その一言と共に青い光弾が放たれ残ったバトル・ドロイドが全て薙ぎ倒された。

 

本来ウィルトを撃ち抜くはずの赤いブラスター弾もドロイドが倒されたことにより狙いが外れ天井に直撃した。

 

残りのプローブ・ドロイドもウィルトが攻撃する前に背後から来た男が全て撃ち倒した。

 

男はドロイドの殲滅を確認するとすぐコムリンクを開いた。

 

「こちらオールダム大尉、突入したジュディシアルの隊員と合流した。そっちも早く片付けろ」

 

『了解』

 

オールダム大尉を名乗るその人物はコムリンクを切りポケットにしまった。

 

彼はジュディシアル・フォースの青い制服を着ているが武装がウィルトらと全く違っていた。

 

しっかりアーマーを着込みブラスター・ライフルも特殊部隊用のものを使っている。

 

「ウィルト・フォーデン伍長です、助かりました」

 

「ジュディシアル・フォースの特殊作戦集団所属のハルド・オールダム大尉だ。無事で何より、だがまだ任務は終わっていない。私についてきてくれ」

 

ウィルトと一等保安士は頷きオールダム大尉に続いた。

 

「急げ、ドロイドは全て殲滅したはずだ。残り2、3人、テロリスト共を制圧する」

 

「射殺するんですか?」

 

「いや対策本部の命令で1人は生捕りにしろと言われた。“()()()()()()”」

 

ウィルトとオールダム大尉が話している間に3人は敵が狙撃していたと思われる地点まで到着していた。

 

オールダム大尉はドアの前で2人を止める。

 

大尉は自身のブラスター・ライフルをスタンモードへ切り替えブラスター・ライフルを構えた。

 

「2人はそのままでいい、生捕りは私がやる。2人は自分が生き残ることだけを考えろ」

 

ウィルトと一等保安士は頷きオールダム大尉はドアに手をかけた。

 

既にドアのロックは破壊されておりオールダム大尉はゆっくりとドアを押し出す。

 

『こっちは制圧しました』

 

再びコムリンクから人の声が聞こえた。

 

オールダム大尉は「了解だ」と言ってコムリンクを切り2人に合図を出す。

 

「突入だ」

 

その一言と共にオールダム大尉は思いっきりドアを押し出した。

 

室内に入るとと共に中にいた3人のテロリストにそれぞれ2発ずつスタンモードのブラスター弾を撃ち出す。

 

反応が遅れたテロリストはどうすることもなくブラスター弾が直撃しその場に倒れた。

 

「制圧完了、奴らを抑えろ!」

 

あまりの素早さにウィルトと一等保安士は少し行動が遅れたが「早く!」とオールダム大尉が急かし慌てて動き始めた。

 

大尉はまずスナイパー・ライフル近くに倒れたテロリストに銃口を突きつけ腕を後ろに組み手錠をかけた。

 

「2人、手錠は持っているか」

 

「もちろんです!」

 

ウィルトはもう1人の倒れたテロリストの腕をオールダム大尉と同じように手錠をかけ拘束した。

 

2人のテロリストは完全に気絶し手錠をかけられ拘束されても何もせずにただぐったりしている。

 

その間にテロリストが狙撃していた位置に1機のジュディシアル・ガンシップが現れた。

 

『こちらジェフ8、戦闘地区に兵員の展開を完了。ブライトン大佐の命令でオールダム大尉の救援に駆け付けました』

 

「ありがとうジェフ8、早速だがアーコロジーに引き渡したい連中がいる。我々は他の戦闘に合流するがジェフ8は真っ直ぐジュディシアル・アーコロジーのSOFG管理のハンガーベイまで迎え」

 

『了解しました、ハッチを開きます』

 

ジュディシアル・ガンシップのハッチが開き中にいるジュディシアル・フォースの隊員達がオールダム大尉に敬礼した。

 

大尉は倒れたテロリストを無理やり立たせるとガンシップの方へ向かった。

 

「こいつをガンシップに乗せて本部にまで連れて行く。“()()”が上手くいけば今回の事件に関する手がかりが掴めるはずだ」

 

「はい」

 

ウィルトも同じようにテロリストを立たせオールダム大尉の後に続いた。

 

大尉は後ろを見てテロリストを起きあがらせるのに苦戦している一等保安士に声をかけた。

 

「おい、急いでくれ。この地区は我々特殊任務分隊(STS)が制圧したがまだ別の地区では戦闘が勃発している。まだ危険がいっぱいだ」

 

「はっはい!」

 

一等保安士は急いでテロリストを起き上がらせたがそこにあった僅かな異変があった。

 

一等保安士やウィルトは全く気づいていなかったがオールダム大尉は見逃さなかった。

 

「おい待て!今そいつ何かを!!」

 

「えっ?」

 

一等保安士は何も気づかぬままきょとんとした表情を浮かべていたがその直後何かが引き抜かれる音がウィルトにも聞こえた。

 

スタンモードのブラスター弾で撃たれたはずのテロリストは呂律の回らぬ様子で最後はこう呟いた。

 

…Asha…Jen'ari……

 

刹那、それは起動した。

 

テロリストが引き抜いたピンが起爆剤となりテロリストの全身についていた爆弾ベストが起爆したのだ。

 

あまりの一瞬のことでオールダム大尉もウィルトも動けなかった。

 

テロリストは一等保安士を巻き込んだまま自爆したのだ。

 

熱と光がばら撒かれた後に爆発の音が遅れてやってくる。

 

爆弾の衝撃波が広がり事前に伏せれなかった2人は立たせたテロリストごとガンシップの近くまで吹き飛ばされた。

 

後数センチズレていたら地面に墜落していた。

 

「うぐっ!」

 

「チッ!!」

 

倒れた2人は起き上がり、恐る恐るゆっくりと目を開ける。

 

そこには爆発する前の光景とは全く別のものが広がっていた。

 

瓦礫や本来あったものが散らばり、爆発箇所には大穴が開き、辺りでは炎がジリジリと燃え上がっていた。

 

そこにテロリストの姿もましてや一等保安士の姿もなかった。

 

ウィルトは手が震え怒りと悲しみで慟哭の音を上げる。

 

「ううぅ…!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

最後の最後にテロリストによってまた1人仲間を奪われた。

 

テロは未然に防げず部隊長は死に、民間人にも死傷者を出し挙句の果てには同じ部隊の仲間を目の前で2人も失った。

 

仲間は殺された上に本来の職務も全く果たせていなかった。

 

オールダム大尉も悔しそうな表情を浮かべ「ジェフ8、1人やられた…」とジュディシアル・ガンシップに報告した。

 

「…行くぞ」

 

オールダム大尉はウィルトの肩を軽く叩きテロリストをガンシップに乗せた。

 

嘆いている暇はまだない。

 

この後、駆けつけたジュディシアル・フォースとコルサント保安部隊の増援によってテロは鎮圧された。

 

しかしコルサント・アンダーワールドに対し仕掛けられたテロは未然に防ぐことが出来ず民間人に多くの死傷者を出した。

 

ジュディシアル並びにコルサント保安部隊の隊員にも多くの殉職者が出た。

 

アンダーワールドの拡張地区では爆発によって燃え盛る建物の煙が辺り一面に溢れ返っている。

 

そんな中、コルサントの暗黒街には虚しくサイレンの音が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…尋問は今すぐ始めろ、きっと大佐もそう言うはずだ。今は1分1秒でも時間が惜しい」

 

「了解」

 

テロ事件がひとまず終わりオールダム大尉は部下に命令を出していた。

 

テロが起こった現場にはジュディシアル・フォースやコルサント保安部隊が駆けつけ状況証拠や戦闘の後片付けをしている。

 

不発弾はないだとか爆発物の有無や遺体の片付け。

 

それだけの人員がいようと当分終わりそうにない有様だ。

 

そんな中オールダム大尉はコンテナの上に俯いて座るウィルトの姿を目撃した。

 

彼は随分落ち込んでいる様子だ。

 

オールダム大尉も数多くの任務で仲間を失っているから気持ちはわかるつもりだ。

 

せめてもとオールダム大尉はウィルトに声をかけた。

 

「よう、フォーデン伍長…だっけ?よくやってくれた。私も1人だったら厳しかった」

 

「オールダム大尉…大尉殿のお陰で自分の命は救われました。そのことについては感謝しています」

 

「…そうか」

 

確かにあの状況下ではあの若い一等保安士よりも先にウィルトがドロイドのブラスター・ライフルで撃たれていただろう。

 

オールダム大尉がいなければ確実に致命傷を負っていた。

 

「…しかし自分以外は……」

 

「あの一等保安士については私の注意が至らなかった。悪いのは私だ」

 

「いえ、それに関しては自分も同罪です。むしろ自分は同じ部隊の仲間を3人も目の前で助けられなかった。自分の隊はどうやら自分を除いて今回の事件で“()()”してしまったようです」

 

先ほどの状況報告ではチーム・フォーンの隊員はウィルトを残して全員が殉職した。

 

その中には当然部隊長やサーエグ上等保安士やあの一等保安士も含まれている。

 

他の仲間もあの場で殺されるか他の場所に救援に向かって殉職したらしい。

 

「悔んでているのか?」

 

「はい…それと同時に怒っています。自分への至らなさと……」

 

「もう半分あるのか?」

 

ウィルトは小さく頷いた。

 

話そうかどうか迷っていたがもうこの感情は抑えきれない。

 

「今回の事件、本来なら未然に防げたはずなんです。それに最初から武器の無制限使用の許可があったらここまでの犠牲は出ていなかった」

 

「…詳しく聞かせてほしい」

 

オールダム大尉は口髭を触りながら彼に尋ねた。

 

「既に情報部は今回のことを事前に察知していた。もっと早くに我々でも保安部隊の警官でも展開して摘発していれば防げたんです。それがよく分からない隊律や法、組織的な連携とかに阻まれて今日まで遅れた。しかも役人や上層部が我々の出動に難色を示しさらに遅れたんです。しかもジェダイも派遣出来なかった」

 

「せめて全部隊が最初からブラスター・ライフルだけでも使えていたら…」とウィルトは悔んだ。

 

こんな古いテロリストの武器なんて使わずに済んだだろうし部隊長だって救えたはずだ。

 

オールダム大尉はウィルトの話を聞き唸り声を上げた。

 

「…確かにな、共和国は1,000年平和だった。だが平和な故、有事に備えるのではなく有事を遠ざける努力ばかり行なってきた。それが間違いだとは言わない、だが今の共和国は確実にそれが良くない方向に向かっていることだけは確かだ」

 

「大尉に言う訳じゃありませんが今のままでは我々は誰も守れませんし何の役にも立ちませんよ。我々は変革する必要がある」

 

ウィルトは握り拳を作りそう断言した。

 

オールダム大尉もウィルトの気持ちは痛いほど理解出来るが今彼に賛同する気はない。

 

大尉は特殊部隊のスペシャリストとしてあらゆる思想や感情を抑制しコントロールしてきた。

 

国家に忠実な、文句一つ言わない存在として与えられた任務をこなし続けてきた。

 

それ故に蓄積された不満は凝り固まり、爆発することはなくともウィルト以上に溜まっているが。

 

「君の意見は今回の事件で広く聞き入れられるかもしれないな。それでは、私も職務がある」

 

大尉はウィルトに敬礼しウィルトも敬礼を返した。

 

あの青年はまだ若いが捜査局にしては腕がいいし頭も回る。

 

あの激戦地であそこまで敵を倒し生き延びられたのは本人の実力故だろう。

 

もしかすると“()()()()()()()()()()()()()()”。

 

「大尉!」

 

オールダム大尉の目の前に1人の女性が立っていた。

 

彼女は大尉の直属の上官の副官であるフィップス中尉だ。

 

中尉は律儀にオールダム大尉に敬礼していた。

 

「ブライトン大佐が大尉をお呼びです。“ダガーフォース”全部隊長に召集が掛かっています」

 

「分かったすぐ行こう。それと中尉、これは私からも頼むんだが君からもひとつ推薦してほしいことがある」

 

「何でしょうか」

 

「療養中のフィポットの代わりに補充の隊員を私の分隊に1名入れたい。ただ手続きが厄介なんで大佐の権限が必要になる」

 

「一体誰です?大尉が自分からそんなこと言うなんて珍しいと思うんですが…」

 

実際珍しいことだろう。

 

オールダム大尉自身もどこか不思議な感覚を味わっていた。

 

「ジュディシアル部門犯罪捜査局警備部所属…“ウィルト・フォーデン”という隊員だ。今回の事件、きっと彼が必要になってくる」

 

 

つづく

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