-ヴォレン・ナル共同著書 ジュディシアル・フォースの一千年の歴史より抜粋-
-銀河共和国領 首都惑星コルサント ジュディシアル・プラザ ジュディシアル・アーコロジー特殊作戦集団司令部-
コルサントの上層階、ジュディシアル・プラザという場所にジュディシアル部門の本部であるジュディシアル・アーコロジーの建物が存在していた。
ここだけでジュディシアル部門、ジュディシアル・フォース、犯罪捜査局、共和国保安部隊などジュディシアルに関わる組織が一挙に集められている。
コルサント・アンダーワールドのテロ事件から数日が過ぎウィルトは何故かジュディシアル・アーコロジーの特殊作戦集団の司令室に呼び出された。
普段は犯罪捜査局か保安部隊にしかいたことがない為ここはアーコロジーの中でも初めて来る場所だ。
2人のジュディシアル・フォースの隊員に連れられ特殊作戦司令部案内される。
「ブライトン大佐の執務室はこちらです。どうぞ」
隊員の1人がドアのパスコードキーを差し込み執務室のドアを開錠した。
ウィルトは隊員に頭を下げ執務室の中へ入っていった。
大佐の執務室は大体他のアーコロジーの部屋と作りは一緒で多くの書類や資料が棚に収まっており、室内にはテーブル型のホロプロジェクターが存在していた。
中にはブライトン大佐の他にテロ事件で世話になったオールダム大尉もいた。
ウィルトは2人に敬礼する。
「ウィルト・フォーデン二等保安長です」
「おお、来たか」
オールダム大尉は敬礼を軽く返した。
「よく来た、私がケイズ・ブライトン大佐だ。特殊作戦集団で特殊部隊の司令官をやっている」
「ブライトン大佐は私のように以前は特殊任務分隊など前線での戦闘経験もある司令官だ。そこらの柔な世襲制の連中とは違う」
ジュディシアル・フォースや惑星防衛軍関連の軍事組織に入ろうとする者はかなり限られている。
それは愛国心や誰かを守ろうという気持ちが好きなのか、あるいはその軍が好きなのか、食い扶持に困り稼ぎ場所を求めて来たのか、代々軍人になる家系なのか。
特に一番最後の一族はよく
例えばホルト家、タッグ家、ワーミス家、オッゼル家など。
だがブライトン大佐はそういう系列の人間ではなく本来はデノン生まれの中流家庭出身である。
そんなブライトン大佐がジュディシアル・フォースの特殊作戦集団でここまで昇進出来たのは単に経験と自らの技量によってだ。
数多くの戦いに参加し功績を上げてきた。
オールダム大尉と知り合ったのもその1つの激戦の中でだ。
「まあ他人より修羅場が多かっただけだ。さて、フォーデン二等保安長、まずは昇進おめでとう。伍長から二等保安長へ昇進したそうだが」
「ええ、テロ事件での対応を受けてだそうです。勲章も貰いましたよ、まあどれを合わせても失った仲間の埋め合わせにはならないと思いますが」
「それはそうだ、死者に対する埋め合わせなどこの世には存在しない。死者に対する責任を果たしても、だ」
オールダム大尉も深く頷いている。
彼も初めてブライトン大佐と出会った時同じような状況だったからウィルトの気持ちがよく分かる。
ブライトン大佐だって少なからず仲間や同期を失っている。
同室の友人が遠く離れたミッド・リムの地で戦死した、或いは訓練中同じ部隊だった同期が同じ部隊にいる中で戦死した。
この仕事をやっている以上は切っても切り離せない問題だ。
「それに君の昇進や勲章は死者に対しての評価ではなく生きている君に対しての評価だ。殉職した仲間の死を悼むのはまた別、君は優れた隊員であると評価されたのだ」
「だから特殊作戦集団に?私の所属はあくまで犯罪捜査局の警備部の方ですよ?」
「だが君の才能は圧倒的“
オールダム大尉はウィルトの才能を評価すると共に彼の心を動かすスイッチを見事に押した。
今の一言でウィルトの瞳がガラリと変わった。
そこへブライトン大佐が確定事項である事務的なことをウィルトに伝えた。
「君は本日より我々特殊作戦集団第84特殊部隊、通称“ダガーフォース”の部隊に転属となる。所属はもちろんフォールダム大尉の特殊任務分隊、そして早速最初の仕事だ」
ブライトン大佐は書類式のホログラムを提示しウィルトに見せた。
「先日のテロ事件、流石に共和国政府も事態を重く見たのか調査を進めた。2つの情報部が掴んだ情報によるとテロ組織の名前は“銀河救済団”、元々死を崇拝するカルト集団セントラル・アイソプターから派生した組織で幾つかのアウター・リムのはぐれ傭兵団と結託する事でテロ組織として拡大していったらしい」
「それはどの情報部の調べたものですか?」
「当然共和国情報部だ。連中の狙いは一貫して共和国に対する攻撃、無論我々はこの犯罪行為を許す訳にはいかん。既にテロ組織のアジトは幾つか発見した。我々に与えられた任務はこのアジトの撃滅だ。しかも我々の部隊は最も厄介な場所を割り当てられた」
ホログラムは今度星図に変わり、星図はある場所を映し出した。
そのまま星図はとある惑星に変化した。
「我々はケイト・ニモーディアのテロ組織アジトに襲撃をかける。ここのテロ組織アジトを強襲しその戦力を徹底的に叩き潰し可能であれば更なる情報を手に入れる」
ケイト・ニモーディア、コロニーズのケラー宙域に位置するこの惑星は銀河共和国領であるのだが少し特殊な位置付けとなっていた。
この惑星は
その為あくまで管理しているのは通商連合の特にニモーディアン達であり共和国領であっても共和国の意思を通すには何十、何百、何千もの手続きが必要となるのだ。
しかし商売上手で強欲なニモーディアン達相手にこの面倒な手続きがそう易々と上手く通るはずがない。
「明日にでもテロ攻撃が再開するかもしれないこの状況で手続きを待っている暇はない。既にテロ襲撃の警戒という名目でコルベット艦を一隻ケイト・ニモーディアに展開出来る事になっている。君とオールダム大尉の分隊はコルベット艦と共にケイト・ニモーディア向かい、目標を叩き潰せ。なおジュディシアルの装備は使うことが出来ない為代わりはこちらで用意する、その為“手段は選ばんでいい”」
流石にジュディシアル・フォースをケイト・ニモーディアの惑星内に投入する事は出来ない為あくまで特殊任務分隊を“
「しかしそれは共和国法に反しているのでは…?」
ウィルトは恐る恐るブライトン大佐に尋ねた。
ブライトン大佐は慣れた口調で「そうかもな」と答えた。
「だが我々は常に“
「ええ…ですが同じジュディシアルですからやってる事は変わりないと今、自分は思い直しました。我々の職務はどこも変わらず、人々を守り秩序を維持すること」
ブライトン大佐はウィルトの一言でニヒルな笑みを浮かべた。
なんだ、思った以上に芯がしっかりしていて中々折れそうにないじゃないか。
ハルドはいい奴を引き抜いてきた、やはり彼には人を見る才能がある。
この任務、必ず遂行させるだろう。
「そう解釈してくれると我々としても嬉しい。任務の決行は明日、既に用意は完了しているから君はゆっくり休め。以上だ、戻ってくれて構わない」
「はい!」
ウィルトは決意固く敬礼し執務室を後にした。
執務室のドアが完全に閉まるのを確認するとブライトン大佐は椅子に深く寄りかかった。
「ハルド、君はまたいい人材を拾ってきたな。彼がいるなら今回の任務も問題なさそうだ」
「大佐がそう思っているなら上手くいくでしょうな。しかし、私としてはひとつ気になる点が」
ブライトン大佐はオールダム大尉の方に目線を寄せながら「一体なんだ」と彼の言う気になる点を尋ねた。
大佐はオールダム大尉に全幅の信頼を置いている、その為彼が言う気になる点とは間違いなく重要であると思っていた。
「あのテロリスト達が使っているブラスターの中にナブーのCR-2ブラスター・ピストルがありました」
「王室保安軍の標準的な装備だな、テロリストが持っているのは珍しい。基本あの手の連中が手に出来るのはボイラー・ライフルかワスプか払い下げ品のA280程度だ」
「ええ、ですから余計に……あそこのブラスターの保管はかなり厳重になっていたはずですが」
「確かにそうだな……ではこちらでも調べてみよう、君は安心して任務に」
オールダム大尉は微笑みと共に敬礼しウィルトと同じように執務室を去った。
明日、新たな戦いが始まる。
-銀河共和国領 コロニーズ ケラー宙域 ケイト・ニモーディア星系 通商連合資産惑星ケイト・ニモーディア-
ジュディシアル・フォースの艦船は赤を基調とした船体色で必ずそこには白いラインが引かれている。
このCR70コルベット“リライアンスⅢ”も同様で外部に対し『ジュディシアル・フォースの軍艦である』ということを知らしめていた。
CR70コルベットはCR90コルベットよりも旧型ではあるが“リライアンスⅢ”は新しい世代の軍艦にも負けず任務を遂行していた。
このコルベット艦はCR90と同様に幾つかのドッキング装置がついておりそのうちの一つにサブライト・プロダクト社が開発したWTK-85A恒星間輸送船がドッキングしていた。
輸送船の方はあえてジュディシアル・フォースの船体カラーを施されておらず無機質な灰色の装甲が目立っていた。
だがこの輸送船が今回の任務でウィルトやオールダム大尉らの移動手段となる。
『CR70“リライアンスⅢ”よりアンノウン・トランスポートへ、まもなくドッキングを解除します。ご武運をお祈りいたします』
「“リライアンスⅢ”、了解した。すぐに戻るからいつでも離脱出来るよう準備を頼むぞ」
『お待ちしております。それでは、ドッキング解除』
“リライアンスⅢ”とWTK-85輸送船のドッキングが解除され輸送船は2基のイオン・エンジンでケイト・ニモーディアに向かって航行を始めた。
この時速を維持すればケイト・ニモーディアまで15分も掛からないだろう。
ケイト・ニモーディアは通商連合の本部がある為当然通商連合の自衛艦隊も存在し地上には通商連合の自衛バトル・ドロイド部隊と法執行機関のパースワールド・セキュリティも存在する。
パースワールド・セキュリティには事前に話は通しているが問題は通商連合だ。
時間がなくこちら側の任務を理解しているのは自衛艦隊の一部の密入国警備部隊だけだ。
それ以外、特に地上のバトル・ドロイド部隊に見つかれば厄介な事になる。
「取り敢えず、後15分あればケイト・二モーディアに着くぞ。それまでに用意しておけ」
「はい」
「了解、なあ新入り、頼むからお前は怪我してくれんなよ?お前までいなくなったら俺と隊長の間が気まずくなる」
このデュロスの男、ブラス・ヴェルクァ・フラウト准尉は冗談混じりにウィルトにそう呟いた。
彼は元々セクター・レンジャーと呼ばれる特殊警察部隊に所属しておりオールダム大尉と出会ったのはある犯罪組織への潜入調査中のことだと本人は言っていた。
それからジュディシアル・フォースにスカウトされ長い間オールダム大尉の特殊任務分隊で共に戦っていた。
本来ならもう1人、アルツェル・フィポット一等保安長というトワイレックの男性隊員がいたはずなのだがある任務で重傷を負い今は入院中だそうだ。
その為ウィルトはフィポット一等保安長の代わりという事になる。
「おいおいそれはどういう意味だ?まるで私がパワハラ魔神みたいじゃないか」
「ハッハッハ、いやある面ではそうかもしれませんよ?」
フラウト准尉は笑い声を浮かべながらそう話した。
フラウト准尉はいつもスナイパー・ライフルを使用するのだが今回は潜入作戦ということでより近距離のKA74ブラスター・ライフルを持っていた。
一方ウィルトとオールダム大尉は彼らにとっては使い慣れたA280ブラスター・ライフルを装備しており近接武器としてDX-13ブラスター・ピストルをホルスターに入れている。
「全く…じゃあ作戦を説明する」
その一言でフラウト准尉の瞳はガラッと変わった。
戦う兵士の瞳、そんな感じだ。
「連中のアジトは橋上都市の“
「つまりテロリストは皆殺しにしつつアジトは破壊するが司令部の情報だけは無傷で確保しろ、そういうとですね?」
「その通りだ、尤も我々の第一目標はテロリストの掃討にある為一番は連中に大打撃を与える事だと認識してくれて構わない。連中は我々に手段を選ばなかった、ならば我々も連中に手段を選ぶ必要はない」
「当然です」
目には眼を、という言葉通り彼らにはそれ相応の罰を受けてもらう必要がある。
無論共和国法の範囲内でだが。
「それとこれは他のアジトにあったものらしいが内部に簡易的なバトル・ドロイドの製造工場があったらしい。連中、ドロイドを買うだけじゃなくてコピー品まで作っている可能性がある」
「だとすると相当の規模ですよ」
「チッ!バクトイドめ、作りやすいドロイドを兵器化するからこうなるんだ」
ウィルトは驚き少し震えたがフラウト准尉は思いっきり苛立ちを口にした。
確かにバトル・ドロイドが純粋な警備に回されていることもあったがそれ以上に犯罪者やギャングの手先になっていることの方が彼らの経験では多かった。
「無論ここも破壊する、だが用心しておいてくれ」
2人は頷きオールダム大尉は「もう軌道上か」と輸送船のブリッジの方へ戻って行った。
輸送船はケイト・二モーディアの軌道上まで辿り着き眼前には密入国警備部隊のパトロール艦とルクレハルク級LH-3210貨物船が広がっていた。
ルクレハルク級のブリッジから輸送船に向けて通信が入る。
『こちら密入国警備隊“ラナサーク”、パスポート及び申請書類を提示して下さい』
「分かりました、今転送します」
コックピットに戻ったオールダム大尉が密入国警備部隊の相手をしている。
その間に2人は輸送船のビューポートからルクレハルク級の様子を眺めていた。
「しかしあの貨物船はいつ見ても船に見えないな、昔は本気で宇宙ステーションだと思っていた」
フラウト准尉はルクレハルク級を眺めながらそう呟いた。
確かにあのコア・シップに接続したリング状の船体はフォンドアの宇宙ステーションなどによく似ている。
全長も3,000メートル以上あるので余計に宇宙ステーションに見えてくるだろう。
「実はうちの地元にも来たことがあるんですよあの船、商業だか輸送だかの為に」
「出身、タナブだっけ?それならあるか。俺はまあ見ての通りデュロだからあんまりないんだわ」
「自分の同期にもデュロ出身のデュロスがいましたよ」
2人の会話はいつの間には自然と弾んでいた。
フラウト准尉は同郷の同族のことが気になったらしい。
「へえ、そいつは俺のように狙撃得意だった?」
「いや全然、むしろ格闘とか近接戦の方が得意そうでした」
フラウト准尉は苦笑を浮かべた。
同じデュロ出身のデュロスでも戦い方は全く正反対だった。
「いやまあデュロスも十人十色ってことなんだろうが…そいつの所属は?」
「共和国保安部隊の機動隊です、まあ一番職としては会ってそうなんですが」
2人が話している間に警備隊との手続きが済んだようで輸送船はケイト・ニモーディアへと突入した。
大気圏を越え雲間を抜けるとそこには岩山に連なる橋上都市がいくつも存在する美しい“
橋上都市の中を見てみるとそこにはどれもコルサントとは多少違うも巨大なビル街が立ち並んでいた。
しかもコルサント以上に洗礼された美しさや機能美を感じさせるビル街だ。
どれもニモーディアンの資本家達が大金を使って生み出したというのがよく伝わる。
上空からでもその豪勢さはよく伝わった。
「美しい街ですね、出来れば観光で来たかった」
フラウト准尉はこれから起こる任務に皮肉を込めてこの橋上都市の感想を述べた。
「そいつは休暇を取ってやってくれ」とコックピットから戻ってきたオールダム大尉はフラウト准尉に付け加えた。
「むしろ我々はこっちに行くんじゃなくてこれがついてる地味な山の方に行くんだ。しかもどうせ穴倉に籠る」
この手のアジトは大抵岩山を掘り進めて作られている為半ば洞窟になっている。
そこへ潜って戦うのだから橋上都市で優雅に寛ぐのとはまるで真逆の任務だ。
輸送船は静かに岩山に停泊しハッチが開いた。
「よし、全員行くぞ」
昇降ランプから3人は戦闘態勢のまま降りて周囲を警戒する。
見たところ敵なし、安全を確認したオールダム大尉は前進を合図し2人を引き連れて輸送船から離れた。
ある程度行った所でオールダム大尉は突然止まれとハンドサインを出した。
3人は近くの岩陰に身を潜める。
ウィルトは岩陰の間から何かが出てくるのを目撃した。
「恐らくテロリストの見張りだろう。持ってる武器は多分E-5の改造型だな、グリップに耐熱装置が付いてる」
早速テロリストに遭遇した。
テロリストは動きやすい作業着のような格好であったが顔に布を巻き気味の悪い2つの赤レンズの付いたゴーグルをかけていた。
「ちょうどいい、奴にアジトを案内して貰おう」
見張り番のテロリストは周囲を見回すとトボトボと来た道を戻り始めた。
3人はテロリストをよく観察しオールダム大尉の合図で見張り番の跡を付け始めた。
いつでも応戦出来るようにブラスター・ライフルを構えゆっくりと近づく。
3人のブラスターの先端にはサイレンサーがついており仮に発砲しても音はかき消される。
時折周囲に散開しつつ見張り番の跡を追う。
見張り番は少し小高い丘のところでカモフラージュ用の緑色の布を潜り中へと入った。
ここがアジトの出入り口だ。
「アジトの出入り口を発見しましたがどうしますか、突入するにしても中には十数人いますよきっと」
フラウト准尉が判断を仰ぐ中オールダム大尉は特殊なマイクロバイノキュラーで中の様子を覗いた。
確かにフラウト准尉の言う通り声明反応が10いくつある。
無鉄砲に突撃しては逆にこちらが蜂の巣だ。
「まず敵を制圧してそこからトドメを刺す。フォーデン、合図したら中にスモークを撃ち込め。それと同時に私もショック・グレネードを内部に投擲する。動けなくなった所を全員で襲撃」
「了解しました」
ウィルトはオールダム大尉からスモーク弾と発射装置を受け取り自身のA280に取り付けた。
その間にフラウト准尉とオールダム大尉はアジトの近くまで接近し始めた。
ブラスター・ライフルを構え2人がアジトに近づくまで待機する。
オールダム大尉とフラウト准尉は静かに素早くアジトの入り口付近に接近し遮蔽物に隠れながら出入り口ギリギリまで近づいた。
ポーチからショック・グレネードを取り出しウィルトに合図する。
その合図と共にウィルトは発射装置のトリガーに指を掛けスモーク弾を放った。
スモーク弾は出入り口を突っ切り、かなり奥の方で爆発し周囲に煙幕を立ち込ませた。
それと同時にオールダム大尉もグレネードを起動してアジトの中へ放り込む。
スモーク弾が視界を奪ったその隙にショック・グレネードは周囲に電撃を放ち中にいた全員を感電させた。
なんの対策もしていない中のテロリスト達は攻撃を喰らい痺れその場に倒れた。
ショック・グレネードの効果が切れるとオールダム大尉は素早くハンドサインを出した。
それを見たウィルトは急いで崖を滑り降り先に突入した2人に続いてテロリストのアジトへ入った。
先に突入した2人はショック・グレネードで倒れたテロリスト達を確実に始末する為に脳天にブラスター弾を撃ち込んでいた。
入りギリ範囲外だった近くの門番2人がオールダム大尉らに襲い掛かったが特殊任務分隊の精鋭2人の素早い射撃を受け即座に抹殺された。
「制圧完了、敵影なし」
「すごい、もう…」
「このまま一気に下まで降りるぞ、目標の司令部の前に一つ確認しておきたいところがある」
ウィルトが驚く間も無くオールダム大尉はブラスター・ライフルを構え動き出した。
一度攻撃を始めたら後は時間との勝負だ。
敵がこの状況に気づく前に出来る限り殲滅する。
3人は階段を降りてアジトの奥へと向かった。
階段にも武装したテロリストがいたがオールダム大尉がすぐにバイブロ=ナイフで始末した。
「待て、奥に敵が。10人、全員武装している」
オールダム大尉は3人を止め状況を報告した。
「ですがこの通路を通らないと噂の目標には…」
「ああ、それに最初から全員始末するつもりだ。だが3人で行っても銃撃戦になる、だから近接戦闘だ」
オールダム大尉は再びバイブロ=ナイフを取り出し手に持った。
その意図を理解しフラウト准尉もバトンを用意しブラスター・ピストルを引き抜いた。
「フォーデン、君はピストルで。確実に1人ずつ倒す」
「了解」
オールダム大尉は先行し反対側の曲がり角に飛び入った。
そのままゆっくりまず1人目のテロリストに近づき口を手で封じると共に喉をナイフで掻っ切った。
ウィルトとフラウト准尉も動き出す。
まず准尉がテロリストの1人を後頭部から思いっきりバトンで殴りつけて倒れた所を首の骨を折って確実に仕留めた。
本人は狙撃が得意とか言っていたが格闘も十分強かった。
オールダム大尉も再び動き出した。
まず近くのテロリストの首を刎ねると今度はオールダム大尉に背を向けて何か配線の調子を見ているテロリストをブラスター・ピストルで撃ち抜いた。
その様子を見ていた1人のテロリストがオールダム大尉にブラスター・ライフルの銃口を向けたが速やかに近くにいたウィルトに射殺された。
これで5人倒し残りは半分となった。
オールダム大尉は反対側にいるウィルトとフラウト准尉にアイサインを送りブラスター・ライフルを構えるよう指示を出した。
大尉もブラスター・ピストルをホルスターにしまい、A280を構える。
「さて、狙いは…!」
オールダム大尉は自らの持っていたバイブロ=ナイフを一番遠くのテロリストに投げつけた。
バイブロ=ナイフは見事にテロリストの脳天に突き刺さり一撃で相手を即死させた。
しかも周りのテロリスト達はその様子に釘付けになっておりこちらへ向けられる注意は殆どなかった。
「今だ!」
3人は一斉にブラスター・ライフルの引き金を引き残りの3人のテロリストをまとめて射殺した。
声を上げる暇もなくテロリストはブラスター弾の前に斃れ見張はこれで誰もいなくなった。
「フラウト、ドアを開けてくれ。その間に2人で警戒を」
オールダム大尉はテロリストの頭に刺さったナイフを抜きフラウト准尉に命令した。
「了解」
フラウト准尉はドアの端末に特殊なソケットを差し込み無理やりドアを開錠した。
本来こう言う役目はウィルトの前任者がやることなのだが残念ながら現在は入院中だ。
ドアが開錠した瞬間、奥の通路には当然のように奥の通路にも敵テロリストが4、5人いた。
「なんだ!」
「敵だ!!」
テロリスト達は手に持っている武器で応戦しようとしたが既に構えていたウィルトとオールダム大尉のブラスター・ライフルが火を吹いた。
1人、2人と確実に敵兵を殺害し最後はフラウト准尉も加わったことにより通路の敵は始末された。
オールダム大尉は急いで奥の通路に飛び込みドアというドア手当たり次第にブラスター弾を撃ち込んだ。
もしかしたらまだ中に敵テロリストがいて待ち構えているかもしれない。
「なんだこいつら!!」
「クソッ!パースワールド・セキュリティか!?うわっ!!」
曲がり角から偶々テロリストがやってきたがすぐにウィルトとフラウト准尉が返り討ちにした。
「今ので大体31人か」
フラウト准尉は今まで倒してきた敵テロリストの数を口に出した。
このアジト、生活や訓練、武器の修理や製造、独自のハンガーベイを含めているとなるとかなり大規模なものと考えられる。
その為敵は多くて120人以上、少なくても90人は下回らないだろう。
おそらくかなりの仕事をドロイドに任せていると思うがそれでも戦闘員や整備士、パイロット、指導者を合わせればそれくらい行く。
そして恐らく、連中が完全に彼らに気付けば“アレ”が出てくるだろう。
「急がないと、このままじゃあバトル・ドロイドも出てきて手に負えないことに…!」
「ああ…そのことなんだが…どうやら“
オールダム大尉はブラスター・ライフルを放ちながら2人にそう告げた。
2人が大尉に続いて大尉の入っていった部屋の中に入るとそこには驚きの光景が広がっていた。
やはり本当にあったのだ、“
「これが……連中のドロイド工場…!?」
施設を見るなりウィルトは動揺を隠せずにいた。
確かに本場のバクトイド社の工場なんかに比べればちゃちで原始的に見えるだろう。
しかしそれでも、所詮テロリストでしかない連中がバトル・ドロイドの製造工場を持っているのは驚きだった。
「普段使用しないバトル・ドロイドの保管と修理なんかもここでやってるみたいですね……テロリスト風情にしてはよく頑張った方だ」
奥に行ってみると使われていないスリープ状態のOOMバトル・ドロイドが静かに並んでいた。
「ああ、だが所詮テロリストだな。このバトル・ドロイドを見てみろ。作られてるのは確かにOOMシリーズにそっくりだが本家よりも更に作りが荒い。デッドコピーと言ってもいいだろう」
オールダム大尉はバトル・ドロイドを眺めながらそう呟いた。
製造中のバトル・ドロイドは全て若干OOMシリーズ・バトル・ドロイドに似てはいるが節々の形状が違う。
それにジャンク品や安物の機器を使用しているせいか1体1体造りが違っており同じ規格のものをまるで使っていない。
性能も悪そうだし整備性も悪そうだ。
バトル・ドロイドの弱点ばかり強化され逆に強みが全て消し去られている。
テロリストの小さな工場ではそれほど数も多く製造出来ないだろう。
「隊長!こっちの倉庫は武器庫っぽいです!大量の武器類があります!」
オールダム大尉とウィルトは奥の方に行ったフラウト准尉の下に向かった。
彼の言う通り、倉庫には様々なブラスター・ライフルや爆弾類が保管されている。
「凄い量の爆薬ですが、一体こんなの何に使うんですかね」
フラウト准尉は爆弾類を眺めながらそう呟いた。
恐らくこれもテロの為だとは思うがどこで使うものなのか詳細は定かではない。
「さあな、だがこれから使う場所は決まっている。よし、全部吹き飛ばすぞ」
「隊長…まさか…」
フラウト准尉は不安気な表情を浮かべ首を振っていたがオールダム大尉はその逆だった。
ニコニコした顔で「ああ、そのまさかだ」と断言した。
「一体何をやるんですか?」
「それは決まっているさ二等保安長、ここにある爆弾を全てこのアジトに取り付けて爆発させる。連中は連中の爆弾で壊滅してもらう、その方がこっちも弾が無駄にならなくていい」
オールダム大尉は武器庫の爆弾を手に取り早速バトル・ドロイドや壁の端につけ始めた。
「まず手始めにここを吹き飛ばす、2人も手伝ってくれ」
「はあああ…了解…」
ウィルトもフラウト大尉も武器を受け取ると同じように均等に爆弾を取り付け始めた。
「ここから持てるだけの爆薬を持っていくぞ。このアジト全体に爆弾を設置する」
爆弾を付け終わるとオールダム大尉は自らのバックに爆弾を詰め込み始めた。
完全にこのアジトを吹き飛ばすつもりでいる。
「全く、何でもかんでも吹き飛ばそうとするんだから…」
「ですが連中にとって相応しい罰です。アンダーワールドで爆発テロを行おうとしたんだ、自分らがその爆発に巻き込まれて死ぬことぐらい覚悟の上でやっているはず。そうでなければおかしい」
「だがなあ…」
「とにかくやるぞ、私が敵を倒す。その隙に2人は爆弾を設置しろ」
オールダム大尉は2人に命令しドロイド製造所を後にした。
それから2人は通路という通路や制圧した個室という個室に爆弾を取り付けた。
幸いにも敵が保有していた爆弾の数は3人掛でも持ち切れない量であり設置途中に爆弾がなくなったということはなかった。
その間にもオールダム大尉は目に入った敵を片っ端からブラスター・ライフルで射殺していった。
テロリスト達は驚くべきことにまだこちらには全く気づいていなかった。
しかしその割には殆どのテロリストが本来非武装であってもおかしくない奴まで全員が何かしらのブラスターや武器を持って武装しているのだ。
まるで何かに備えていたようだった。
「連中、なんか妙に武装してますね。どっかへ攻撃にでも行くつもりだったんでしょうか」
フラウト准尉はオールダム大尉に疑問を投げかけた。
大尉ほどではないがベテランの特殊部隊員であるフラウト准尉もこの疑問に気づいていたようだ。
「それにしては武器庫が手薄だったしバトル・ドロイドの1体も起動していない。不自然だと思わないか」
「確かに、それに彼らは武装していると言っても軽装備です。殆どの奴がせいぜいブラスター・ピストルしか持っていない」
ウィルトは斃れたテロリストの装備を一瞥しながらそう付け加えた。
元々普段からブラスター・ライフルを持っていそうな戦闘員もせいぜいブラスター・ライフルにコムリンクと本当にこじんまりした装備である。
「理由は分からんがなんとなく不気味だな。早いところ司令室を制圧するぞ」
「了解」
「了解」
爆弾の設置は一旦取り止め、2人はブラスター・ライフルに持ち替えた。
足音を立てずに今度は階段を登り上へと登った。
早速階段を登り切った瞬間テロリストと遭遇した為オールダム大尉が素早く撃ち殺す。
殺されたテロリストの奥にも2人戦闘員ががいたがこちらはウィルトとフラウト准尉が素早く始末し更に奥から来たテロリスト達も3人の早撃ちの前に全滅した。
「クリア」
オールダム大尉を先頭に再び一行は進み続ける。
オールダム大尉とフラウト准尉は2人とも全く足音を立てずに進み、まるで息をするかのように焦り一つない様子でテロリストを始末していった。
音といえばせいぜい、サイレンサーを通したブラスターの音と敵が地面に倒れる音だろう。
既に何人ものテロリストがその僅かな音の前に斃れていた。
ウィルトも出来る限り気にかけているがそれでもまだ2人の域には達していない。
司令室前の通路を護衛していたテロリストはようやく応戦を始めたがここまで侵入を許してしまった時点でもう遅いのだ。
3人の素早く正確な射撃は警備のテロリストの一斉射撃にも動じず、テロリスト達は1人ずつ始末され弾痕の穴を身体のどこかに受けた。
最後の1人を倒すまで2分も掛からなかっただろう。
倒されたテロリスト達の死体の上をジュディシアル・フォースの特殊任務分隊は進んだ。
「ここだ」
オールダム大尉は2人を近くに寄せて司令室のドアの近くに寄った。
大尉は爆弾を一つ受け取り数秒で爆発するようにセットしてドアの取り付けた。
少し離れた瞬間にドアは吹き飛び黒い煙が辺りに立ち込めた。
「なっなんだ!?敵襲か!?」
「パースワールド・セキュリティか!?それとも通商連合の連中か!?」
「警備員は何をしてるんだ!!」
中にいたアジトの幹部達で当然皆、困惑の声と怒声を上げた。
そこへ武装した3人の特殊任務分隊のエリート達が中に入ってきた。
彼ら3人、容赦なく非武装のテロリスト幹部らにブラスター弾をお見舞いした。
中には警備ということでブラスター・ライフルだけ背負っているテロリストもいたしブラスターを手に取って戦おうとするアジトの幹部もいたがそいつらもすぐに射殺した。
銃声と断末魔の叫びが室内に響き、司令室にいた7人の幹部と2人の戦闘員は一瞬のうちに全員が抹殺された。
「司令室を制圧完了、情報を今のうちに抜き取れ。ウィルト、お前は外の警戒を頼む」
「了解!!」
ウィルトは警備に向かい2人はその間に司令室の情報を抜き取り始めた。
「この身なりからしてそこらの雑兵とは全く違う、こいつら間違いなく幹部だ。だとしたらここに集まっていたのは恐らく幹部の会議の可能性がある、情報は必ず抜き取れ」
「了解…音声議事録なんかもきっと役に立ちますからね」
「ああ、その間に私は…」
オールダム大尉はホロテーブルに置いてあったタブレット端末を手に取った。
そこには会議の議題と新たな攻撃目標として“
内容はこのケイト・ニモーディアの橋上都市を爆破して崩落させようという計画だった。
確かにこのアジトの爆弾であればこの岩山を吹き飛ばすのは無理でも橋上都市の一つを断ち切るのは容易い。
「なるほど…そのための爆薬か。ならば余計にここで消費しなくてはな」
「隊長、データの移送完了しました」
フラウト准尉はホロテーブルや近くのコンソールに挿していたメモリーを抜き取りバックの中にしまった。
これでアジトの通信記録や情報は手に入った。
「よくやった、フラウト。フォーデン、私のバックにある残った爆薬を全てこの場所にセットしろ。それが終わったら離脱する、任務は大成功だ」
「了解!」
ウィルトは再び爆弾を手にし司令室の至る所に設置した。
これから30分も経たないうちにこのアジトは木っ端微塵に爆発する。
テロリストの殲滅と情報の奪取は完了し彼らの任務は成功に終わったのだ。
戦闘から6分後、岩山からある1機の輸送船が離陸したという証言がケイト・ニモーディアに住む8歳の少年から持たされた。
その僅か25分後、突然ケイト・ニモーディアの橋上都市を繋ぐ巨大な岩山の方から突如何かが破裂する音が聞こえ、通商連合の調査隊とパースワールド・セキュリティが向かった。
岩山自体になんの問題もなかったがある丘の上が切り取られており、内部は崩落していたが一種の洞窟のように掘り進められていた。
何かしらの密入国者が密かに岩山を生活拠点としておりその事故ではないかと判断されたが真相は闇の中へと消えた。
本当のことを知っているのは事件の当事者であるウィルトとオールダム大尉、フラウト准尉の3人だけである。
つづく