-ナードニス・プラージ共同著書 銀河共和国の安全保障“正規軍のいない千年間”より抜粋-
-銀河共和国領 コア・ワールド ハンバリン宙域 ハンバリン星系 惑星ハンバリン軌道上 防衛艦隊司令部-
惑星ハンバリンにはハンバリン宙域防衛軍として地上軍種と宇宙軍種そしてスターファイター隊の軍種が存在していた。
地上軍はハンバリン惑星防衛軍として、宇宙軍はハンバリン防衛艦隊として活動し日々ハンバリンと宙域の安全を守っていた。
その為ジュディシアル・フォースと同様彼らも異変に気づき同じようにアジトを発見していた。
最初はハンバリン防衛艦隊の持つ最大級の軍艦、“フォートレス・オブ・ハンバリン”の艦隊であった。
不審な艦船がハンバリン本星に向かおうとしているのを阻止しそこでテロ組織の存在に勘付いたのである。
それから共和国情報部から情報提供を受け、ハンバリン惑星防衛軍はケイト・ニモーディアのジュディシアル・フォース同様ハンバリン内のアジトを撲滅した。
他にもアーゴウ、クワット、コレリア、レンディリ、ホズニアン・プライム、ライサル、ギジュー、イセノ、シャンパラなどの惑星でテロ組織のアジトは存在が存在していたが全て撲滅された。
やはりテロ組織では各地に構成員を展開するのが精一杯で軍隊のようにそれぞれのアジトに最規模な戦力を置くことは出来なかった。
しかしアジトを叩いたからとはいえイコールテロ組織の全滅ではない。
彼らはまだ少なからず構成員が生存しておりまだ正体すら掴めていない指導者や多くの大幹部の指揮の下、共和国に対する攻撃を開始するだろう。
そうなる前にテロ組織を根まで叩く必要があるのだ。
その為にはまず情報が必要である。
対テロ戦の指揮官の1人としてブライトン大佐は副官や幾人かの幕僚達と共にハンバリンに訪れていた。
ハンバリン宙域防衛軍でもケイト・ニモーディアと同じようにテロ組織の情報を手に入れたそうだ。
2つの組織が手に入れた情報を照合し戦いを次へと進める必要があった。
隠密性も兼ねて情報の照合や将校同士による話し合いはハンバリン防衛艦隊の旗艦“フォートレス・オブ・ハンバリン”で行われていた。
「そちらが手に入れた議事録やアジトの記録ではテロリストは共和国及び構成加盟国に対する更なる攻撃を行う予定だった…つまりテロ組織銀河救済団は第二、第三のテロを行うつもりだったということですね?」
「はい、その通りです。現にケイト・ニモーディアに拠点を構えていた連中はケイト・ニモーディアの橋上都市を攻撃し橋を落とすつもりでした。それが実行されたら一体何万人のケイト・ニモーディアの市民が犠牲となるか、見当もつきません」
ハンバリン宙域艦隊の海兵部隊司令官であるライランズ大佐にブライトン大佐はケイト・ニモーディアでの事を話した。
オールダム大尉らは本当に良い仕事をしてくれた、おかげでテロ組織の情報をジュディシアル・フォースで山のように確保出来た。
一々共和国情報部と元老院情報部の遅い諜報活動を待っている暇はない。
「我々で得た情報ではアジトにコメナー経由でゼルトロスにいる上位の幹部が訪れるとありました。そちらで得た情報にも似たようなことが記述されていました。恐らく幹部がアジトに訪れて発破をかけるつもりだったのでしょう。新たな攻撃を実行する為に」
「なるほど、となると幹部の1人はゼルトロスにいるという訳ですね」
ハンバリン軍との話し合いで早速成果が出た。
アジトの指揮官程度では知り得ない情報を持っているだろう大幹部がゼルトロスにいるというのだ。
恐らく敵はまだゼルトロスにいるしケイト・ニモーディアとハンバリンのアジトが壊滅した事も気づいていないだろう。
であればチャンスはある。
「しかし問題は我々の軍隊では条約や権限、戦力の面から鑑みてもゼルトロスまで向かうことは不可能な事です」
「それに関しては我々に任せてください、既に特殊部隊を向かわせるつもりです」
ブライトン大佐の進言に対しハンバリン軍の面々は少々不安げな表情だった。
実際ジュディシアル・フォースの介入力に疑問を持たれるのは仕方ない。
ジュディシアル・フォースは所詮準軍事組織であり介入するとしても大抵の場合が平和維持、もしくは限定的な戦闘行為のみでそれだけやるにしても元老院で何千という手順を踏み、それ以上に何千という手間が掛かる。
ジュディシアル・フォースの介入が決まった時にはもう遅かったということも多かった。
故に同盟国の軍隊であっても不信感を持たれることはよくある。
仕方がないことなのだ、銀河共和国の組織である以上は。
「……まあ近いうちに共和国防衛連合条約も発動されるそうですし我々も動きやすくなるでしょう」
「あのRDCTがですか?」
RDCTとは
今より大凡200年前にも共和国防衛連合は結集されある災害に派遣された。
今回は久々の招集となった。
「アンダーワールドのテロ事件と各地のテロ組織アジトの件を相当重く受け止めたようです。数十年に一度単位の演習しかないアレがまさか動き出すなんて」
「それだけ今回の事件が与えた影響というのは大きいのでしょうね……なるべく意識だけは今のままでいてほしいのですが」
ブライトン大佐はそう愚痴を溢した。
「ええ、ですが防衛軍及び保安軍の中にも少々不穏な動きが見られます」
ライランズ大佐はそう進言した。
彼は部下から受け取ったタブレットをブライトン大佐に見せた。
そこにはブライトン大佐もオールダム大尉も不安を覚えていたことが記載されていた。
「我が軍のアジトにナブー王室保安軍製のブラスター製兵器が確認されました。しかも21丁ほど、とても払い下げ品を買っただけの数とは思えません」
「実際王室保安軍はその辺かなり厳しく管理していますからね。ですが今回のテロ組織、銀河救済団はナブー製のブラスターを使っている。アンダーワールドでのテロでも同じような事例が確認されています」
「やはり…ですか…」と重い表情でライランズ大佐は目線を落とした。
惑星ナブーの王室とナブーの民を守るナブー王室保安軍、その中に“裏切り者”がいるのだ。
裏切り者はナブーの民を守るための武器をテロ組織に流し銀河の民を傷つける武器に変えた。
これは同じ軍人としても到底許し難い行為だ。
「この件については実はナブー王室保安軍のある士官が我々に密告しているのです。その人物は元共和国特別機動部隊の隊員だったのでその伝で」
「それは知りませんでした。ではこちらもジュディシアル・フォースが対処を?」
「ええ、この件は私の直轄の担当です。既に特殊任務分隊を送り込む手筈も整っています。ご安心ください」
ライランズ大佐はどこかホッとした表情を浮かべていた。
別の軍隊とはいえ身内に裏切り者がいると知ってはとてもではないが安心して戦えない。
それにブライトン大佐はケイト・ニモーディアも含めて数々の特殊作戦を成功に導いている。
その為他のジュディシアル・フォースの将兵よりは信頼が篤い。
するとライランズ大佐はナブーのことで何かを思い出したように付け加えた。
「それとこれはまだ確定ではないのですが一つ、あなた方に情報提供を。我々の諜報機関が情報解析中に発見したものでして…」
ライランズ大佐はブライトン大佐らジュディシアル・フォースの面々に確証はないが得た情報を話した。
それから暫くハンバリン軍とジュディシアル・フォースの話し合いは続いた。
だがブライトン大佐はライランズ大佐が話したある事に確信を持ち、話し合いが終わった後もずっと気にしていた。
司令部の部屋からジュディシアル・フォースとハンバリン軍の将校達が外に出て雑談を交わしていた。
ブライトン大佐はライランズ大佐と堅い握手を交わすとすぐに通信室の場所を借りた。
大佐は副官と共に司令部の執務室に急いだ。
「直ちにオールダム大尉の部隊に命令を出す、彼らの所在地は」
「ケイト・ニモーディアでの作戦が成功し現在は“リライアンスⅢ”と共に近くの第十八護衛艦群に合流しました。現在は旗艦のプロキュレーター級の中で待機しています」
「第十八……演習の為にデノンに向かっている護衛艦群か」
「はい」
デノンはブライトン大佐の生まれ故郷であり現地には共にジュディシアル・アカデミーで学びその後デノン惑星防衛軍に移籍した大佐の友人も多くいる。
その為ブライトン大佐はデノンに対しある程度融通が効く。
「丁度いい、護衛艦群にオールダム大尉と“リライアンスⅢ”もついて行かせろ。そのままハイディアン・ウェイを通過して目標地のナブーに行かせる」
「しかし送る部隊としては一隻多くなりますが」
「では“リライアンスⅢ”にはケイズ・ブライトン大佐の直属部隊がいると伝えろ。私の名前を出したらバウアール辺りがなんとかしてくれるはずだ」
2人は早歩きで通信室に向かっていった。
しかし副官の方はどうにも疑問顔だ。
「それとナブーの次は例の場所に行くよう命じるつもりだ。オールダム大尉らには私から直接伝える。上手くいけばこの対テロ戦、ここで決着が付くかもしれない」
「…しかし大佐、仮にハンバリン軍の情報が本当だとしてもあそこは…」
副官は思わず不安を口にした。
ハンバリン宙域軍が入手した情報の一つは確かにブライトン大佐が言う通り上手くいけば対テロ戦の決着がつくようなものであった。
彼らハンバリン軍は見つけたのだ、“
銀河救済団の最高指導者、通称レンズは以前はセントラル・アイソプターの司祭的立場であった。
その為昔の記録は存在するのだが銀河救済団の結成とほぼ同時に姿を消し今の今まで全く見つからなかった。
だが情報によるとこのレンズはアウター・リムの南方、惑星サラストに身を潜めているらしい。
しかし問題はこのレンズが潜んでいるサラストにある。
サラストの方面は大セスウェナ、エリアドゥを中心とする辺境域保安軍の管轄であり残念ながらジュディシアルの介入力はここまでない。
以前カナという女海賊いたのだが彼女はセネックス=ジュヴェックス領域で海賊行為をしておりジュディシアルと対立した。
何度か逮捕に成功したのだが結局部下達の手引きで刑務所から脱走され、最終的にはジュディシアルの艦船が六隻も破壊され大セスウェナ方面へ逃げられた。
多額の賞金をかけたもののカナを捕まえる事はできずジュディシアルもどうすることも出来なかった。
そこでカナを捕らえ、治安の為少々残忍な方法で処刑したのは辺境域保安軍であった。
この一件でジュディシアルの介入力のなさと辺境域保安軍の名声が高まった。
辺境域保安軍とは一応ジュディシアル・フォースも協力関係にあるのだがスターク・ハイパースペース紛争や辺境域保安軍誕生に際して少々問題があった為関係はグレーゾーンだ。
故にオールダム大尉の分隊をナブーから一気にサラストに送り込んだとしても最高指導者レンズの殺害に成功するかは分からない。
ジュディシアルが出来るサポートは限られているし辺境域保安軍はコア・ワールドの惑星防衛軍のように全面を上げて協力してくれる可能性も低い。
いくらオールダム大尉の分隊が精鋭とはいえ作戦成功率は極めて低かった。
だがブライトン大佐はジュディシアルの“
「無論辺境域保安軍には協力してもらう。個人ではあるがその為のコネクションもジュディシアル内部にはある」
「それは一体なんですか?あそこがそう簡単に乗ってくれるとは思えませんし余裕もないと思いますが…」
副官はまだその人物について思い立っていないようだった。
「ハルシオンの英雄、ジュディシアル・フォースの中に“ウィルハフ・ターキン”という少佐がいたはずだ。彼ならきっと我々と辺境域保安軍を取り持ってくれる」
ブライトン大佐は期待を込めながら通信室に急いだ。
-銀河共和国領 コロニーズ ケラー星系領域内 ジュディシアル・フォース第十八護衛艦群-
ジュディシアル・フォースの護衛艦群を形成する機動部隊と言っても戦力に様々な幅がある。
例えばドレッドノート級重クルーザーを旗艦としてそこから編成される部隊。
こちらの方が一般的でありこれらがいくつか集まると護衛艦群という単位になり護衛艦群がいくつか集まると護衛艦隊となる。
護衛艦群ならまだしも護衛艦隊クラスとなると旗艦にはプロキュレーター級スター・バトルクルーザーか置かれ、僚艦として二、三隻ほどプロキュレーター級が存在していた。
プロキュレーター級はクワット・ドライブ・ヤード社が181年ほど前に初めて開発した2,000メートル級艦船である。
アナクセス軍事大学校式分類法ではバトルクルーザーに分類されジュディシアル・フォース以外にも多くの惑星防衛軍が使用していた。
ジュディシアル・フォースはこのプロキュレーター級を何十隻か保有しており就役した年数はかなりバラバラである。
それこそ180年前のものもあればつい最近、2、3年前のものもある。
その為ずっとドック入りして出てこないプロキュレーター級もいたり常に航行しているプロキュレーター級もいたり、武装もかなりバラバラだったりした。
故に整備や改修など問題は絶えないがそれでもプロキュレーター級はマンデイター級を除くとジュディシアル・フォース内では最も戦闘能力のある一般的な主力艦であった。
そしてこの第十八護衛艦群の旗艦は最新鋭のプロキュレーター級スター・バトルクルーザーでドレッドノート級重クルーザー四隻、キャラック級軽クルーザー六隻、CR90コルベット七隻、そしてカンセラー級アサルト・クルーザー九隻を従えていた。
艦名は“アーバトレイター”、艦長はヴァルナー・ドナシウス大佐が務めており護衛艦群司令官はラスロ・ドリッツ少将が務めていた。
このラスロ・ドリッツ少将はスターク・ハイパースペース紛争にも参加したことのある歴戦の猛者だ。
他にも護衛艦群の幕僚としてテリナルド・スクリード少佐、乗組員にはゾーズライダー・スレイク少尉とのちの銀河史に名を残す顔ぶれも確認出来た。
艦列の中には“リライアンスⅢ”も加わり護衛艦群はデノンを目指して航行していた。
輸送船に乗り込み“アーバトレイター”に到着した分隊員達は“リライアンスⅢ”の艦長と副長と共にブリッジに訪れ艦長と司令官に挨拶した。
挨拶は手早く終わり“リライアンスⅢ”の面々早めに自身の艦へ戻った。
「我々の護衛艦群はこのままデノンに向かい現地の惑星防衛軍と上陸作戦や艦隊戦の演習を行う。君たちはどうする?」
「ブライトン大佐からの命令が出るまではなんとも、ですがこのまま行くなら我々はナブーに向かいます」
「ほう、何故ナブーへ?」とドリッツ少将は尋ねた。
いくら少将といえどオールダム大尉はあまり任務の内容を話したくないと考えていた。
たった一言で作戦が失敗する可能性すらある。
「秘匿義務があるのであまり言えませんがブライトン大佐なら言えるかも知れません」
「ああそうか、それはすまなかったな。流石特殊部隊の兵士たちだ」
ドリッツ少将は非礼を詫びてオールダム大尉らを称えた。
スターク・ハイパースペース紛争で似たような特殊任務トルーパー達と共に戦ったことのあるドリッツ少将はその性質をよく理解していた。
「国家とは常に我々のような兵士が守るもの、君達はそんな最も誇り高き名誉ある存在の頂点に立つ影の存在だ。本来は銀河の全てから拍手で迎えられ讃えられるはずなのだが…中々そうはいかないな。悔しいものだ」
「今じゃ、我々や惑星防衛軍に頼らず自衛し始める企業とかも増えてますからね…」
ドナシウス大佐はドリッツ少将に付け加えた。
少将は重く頷きため息をついた。
ウィルトにはなんとなくドナシウス大佐やドリッツ少将の気持ちが分かる気がする。
特にジュディシアル・フォースは常に日陰者だ。
恐らく今後も報われることはないだろうし報われるようなことがある日は今のような人々が深く傷つく事態が起こった時だ。
そうならないのが良いことなのだろうがそれでもやり切れない。
それが人である以上永続的に存在する性というものだ。
「せめて共和国にもっと力があって我々にももっと力があればな…すまない、愚痴が多すぎた」
「いえ、お構いなく」
「少将、大尉、ハンバリン艦隊司令部より通信です。現地に赴いているケイズ・ブライトン大佐というジュディシアル・フォースの大佐からだと」
スクリード少佐一向に報告した。
報告を受けてオールダム大尉の反応で大体察したドリッツ少将は「あそこのホロテーブルを使うといい」と3人を連れていった。
ブリッジの少し奥には空いていたホロテーブルが存在し分隊員の3人はそこでブライトン大佐のホログラムと対面した。
『大尉、それから准尉と二等保安長、よくやってくれた。君たちのお陰でケイト・ニモーディアの安全は保たれた』
3人はブライトン大佐に敬礼し大佐も敬礼を返した。
ブライトン大佐は今度はドリッツ少将に向けて『少将、コルベット艦の合流を許可して頂きありがとうございました』と例を述べた。
「気にするな、スターク・ハイパースペース紛争の恩に比べればな。それにこれから行くデノンは君の故郷だ」
後ろでウィルトはフラウト准尉に耳打ちしていた。
「大佐はあのスターク・ハイパースペース紛争にも参戦なされたのですか?」
スターク・ハイパースペース紛争、6年前に起こった紛争でありジュディシアル・フォースや辺境域保安軍が一連の紛争に関わった。
ここ最近に発生した軍事闘争の中では最も大規模な戦いでかなりの犠牲が出た。
それ故にこの戦いに参戦したというだけで軍人として一気に箔がつく。
「ああ…大佐はありとあらゆる戦いに特殊部隊として参戦された方だ。だから我々を正しく導いてくださる、オールダム大尉だって一度は大佐に命を救われたそうだ」
流石このジュディシアル・フォースで特殊部隊の大佐にまで昇進された方だ。
尊敬の念が湧き上がってくる。
『ええ…そういえば少将は辺境域保安軍とも交流がありましたね』
ブライトン大佐は思い出したようにドリッツ少将の経歴を呟いた。
少将も「ああ」と頷きつつ過去を振り返った。
「私は辺境域保安軍からの移籍組だったから今でも交流がある、それがどうかしたか?」
『いえ……今後の任務上、辺境域保安軍の管轄下に向かう可能性が高いので…』
「では私からも何か紹介状を書いておこうか?」
『お構いなく、既にこちらで人員は確保しています。その前にまず大尉達には予定通りナブーに向かって欲しい』
ケイト・ニモーディアでの作戦が成功し情報をジュディシアル・アーコロジーに転送した時点からナブーに向かうことは大凡決まっていた。
前々からナブー製の武器がテロ組織に流れていることについての疑念があった。
流出の調査の為にもオールダム大尉らを送り込む可能性は示唆されていた。
「ナブーにはやはり…」
『ああ、既に我々が持つ疑念は“
「裏切り者ですって!?」
ウィルトはあり得ないと言った声音で驚いた。
ナブー王室保安軍は志願兵制の規模が小さな軍組織ではあるが規律が整っており腐敗などの噂はあまり耳にしていなかった。
ましてやテロ組織に裏切り者がいるなど恐らくどの惑星防衛軍、惑星保安軍でもあり得ないはずだ。
『それを確実にこちらで逮捕しテロ組織の最高指導者の居場所を吐かせる。厳しい任務になるだろうが任せ…』
「どうした、何があった」
突如ブライトン大佐のホログラムが乱れ音声もぶつ切りになり始めた。
ドリッツ少将は急いで近くの通信士官に尋ねたが「妨害電波が放たれています」と報告が返ってきた。
「我が艦隊との通信を妨害出来る電波だと…?」
『どう……た……信状況………悪化して……』
「妨害電波が発せられています大佐。これ以上は傍受の恐れがある為通信を切らせて頂きます。君、急いで通信を」
「りょっ了解…!」
『ああ…!』
オールダム大尉の判断で通信が切られ辺りには不穏な空気が漂っていた。
それはブリッジのセンサー士官の一言で一気に爆発する。
「少将!ハイパースペースより正体不明の船団が接近中!数は小型艦も含めればこちらの2倍はいます!」
「敵か、味方か、どっちなんだ」
「分かりませんが全艦隊を戦闘配置につかせるよう指示を出しました」
ドリッツ少将が命ずる前にスクリード少佐は指示を出していた。
彼を深く信頼しているドリッツ少将はいいぞという念を込めて頷いた。
この状況下ではジュディシアル・フォースに敵意を持つ存在の可能性も十分にある。
例えば件のテロ組織とか。
「戦闘となれば数はこちらの方が不利だ、相手の艦艇の性能が分からない以上こちらが後手に回って敵を知る必要がある。全艦艇は防御陣形を構築し待機せよ」
「了解!各艦に次ぐ、防御陣形を構築しつつ待機。繰り返す……」
「正体不明船団、ジャンプアウトします!」
士官の報告と共にジュディシアル・フォースの護衛艦群の前に何十隻もの艦艇がジャンプアウトした。
ジュディシアル・フォースのように艦艇が同じカラーリングで統一されておらず、全く疎の寄せ集めの船団と言った感じだった。
ゴザンティ級クルーザーにスフィルナ級ハンマーヘッド・コルベット、リヴァリー・クルーザー、コロナ級武装フリゲートやDP20フリゲートなど様々な艦船で船団は構成されていた。
それだけではなく武装した軽貨物船やガンシップ、シャトルなど本来は艦隊戦に不向きなはずの船まで動員されている。
ジャンプアウトした船団は時を待たずしてジュディシアル・フォースに攻撃を開始した。
レーザー弾がジュディシアル・フォースの艦船に被弾するも低出力のレーザーは全て偏向シールドによって阻まれた。
「船団、攻撃してきました!」
「応戦して構わん、正当防衛だ。スターファイター隊も展開して敵を殲滅しろ!」
ドリッツ少将の命令によりドレッドノート級や“アーバトレイター”からスターファイター隊が発艦した。
Z-95ヘッドハンターやCL-1cランセット・インターセプターらが発艦し敵船団へと向かった。
それを察知したのか敵船団も微量ながらドロイド・スターファイターを発艦させて応戦しようとした。
ドロイド・スターファイターとジュディシアル・フォースのスターファイター隊がぶつかる前に艦隊同士の砲撃戦は激しさを増していた。
早速敵船団の何隻かの艦船が砲撃により被弾し轟沈し始めていた。
ジュディシアル・フォースといえど使用している艦船は全て軍用艦、敵船団とは大きな性能差があった。
特にプロキュレーター級“アーバトレイター”の砲撃は凄まじく、たった一度の砲撃で何隻もの敵船が被弾し撃沈に追い込まれていった。
だがそれでも敵船団は怯むことはなかった。
「敵船団、続々とハイパースペースからジャンプアウトしています」
「ハンガーベイからシャトルや貨物船を展開し前線に対応する数を増やしています」
「数を増やして対抗するつもりか」
乗組員らの報告では敵船団は性能差を埋める為に物量でなんとかしようとしていた。
こちらが捌き切れない数の艦船を送り込んで殲滅するつもりだ。
「敵船の殆どは無人で生命反応がありません」
と別の通信士官の報告しドリッツ少将はそれにあった命令を出した。
「では敵船の特攻に気をつけろ、無人艦船ならそれくらいやりかねんぞ」
このまま敵船団の攻撃を受け続けていても大したダメージにはならないが特攻は別である。
特にスフィルナ級の攻撃を受ければCR90やカンセラー級であれば轟沈してもおかしくない。
そうならないように各艦でカバーし、敵を遠ざける必要があった。
「しかしこれほどの無人艦船がいるとなれば艦隊の何処かに全体の司令船がいる可能性がありますね」
「ああ、最も通信回線を多用している有人船を探し出せ。それがきっと司令船だ」
“アーバトレイター”の乗組員達は必死に船団の有人船から通信回線の多い船を探した。
スクリード少佐とドリッツ少将が考えていた司令船はすぐに見つかった。
ブリッジの乗組員の1人が「司令船を発見しました!」と大声で報告した。
「船団中央後方のリヴァリー・クルーザーです!!」
モニターに乗組員が示したリヴァリー・クルーザーが表示された。
何隻ものの船に護衛されている。
「やはり、頑強に護衛されていますね」
リヴァリー・クルーザーの周辺を見渡しながらスクリード少佐はそう呟いた。
この安上がりの船団はあのリヴァリー・クルーザーさえ撃破すれば船団の半数以上が機能停止に陥る。
特にドロイド・スターファイターなどは全く動かなくなるのだ。
当然敵もそれは承知であり周囲に艦艇を取り付けてしっかりと守っていた。
このまま護衛艦群の陣形を転換して中央突破を図ったとしても戦闘はかなり長引くだろう。
スクリード少佐もドリッツ少将もある程度それは認識していた。
「そうだな、このまま安全策を取って防御陣形のまま敵を殲滅する方が…」
「いや、我々を行かせてください。あの船団構成ならガンシップやスターファイターであるなら突破が可能です。ガンシップに乗った我々がクルーザー内に侵入し司令機能を制圧します」
オールダム大尉はドリッツ少将に進言した。
むしろこういう時こそ敵内部へ浸透して内側から破壊工作を行う特殊部隊の仕事だ。
「いくらなんでもそれは危険では?」
スクリード少佐はオールダム大尉らの生還を心配しそう呟いたが大尉達が退くことはなかった。
「危険は承知の上、我々の任務に危険を伴わないものはありません。ですがこの任務が成功すれば不要な戦闘を行わないで済むだけでなく敵船団を多く鹵獲出来ます」
テロ組織に更に近づけるかもしれない、オールダム大尉はメリットを幾つも付け足した。
最初は迷っていたドリッツ少将も軍事的合理性を優先してオールダム大尉に許可を出した。
「……分かった、任せたぞ。ハンガーベイ、ガンシップの中で整備の整っているものはあるか?今すぐSTSを乗せて司令船へ突入させたい」
『1機あります、パイロットの方は』
通信に出た甲板士官はドリッツ少将に尋ねた。
オールダム大尉は「我々で操縦します」と先に進言した。
「必要ない、STSが操縦して敵陣に突っ込む。全武装を万全の状態にしておいてくれ」
『了解!!』
「スターファイター隊に伝達、STSを乗せたガンシップを敵司令船まで突入させる。各隊は転送された座標までガンシップを護衛せよ。また艦内の海兵隊員は直ちに戦闘準備、STSが敵艦を制圧したのとほぼ同時に増援に出す」
恐らく司令船の中には生身の戦闘員も含まれているだろう。
司令機能が停止されたとしても残った戦闘員が一斉に襲い掛かってくる可能性がある。
その為即座に増援の
危険と隣り合わせの破壊工作作戦、正に特殊任務分隊らしい戦いの始まりだ。
オールダム大尉は内心でそう喜んでいた。
『ガンシップLT-225、これよりテストを行う。こちらの通信は聞こえているか』
“アーバトレイター”のブリッジからオールダム大尉らが乗り込んだジュディシアル・ガンシップに通信が届いた。
操縦席に座るオールダム大尉は「こちらLT-225、聞こえている」とすぐに返答した。
このガンシップは副操縦士も含めると本来2人のパイロットが必要なのだが砲座にウィルトとフラウト准尉を乗せたことによりオールダム大尉1人で操縦する事となった。
『では武装テストを行う。両砲手はこれより指示に従い砲手を動かせ。右、右、左、下、上、固定。これを3回繰り返せ』
「了解!」
砲手席にいるウィルトは言われた通り操縦桿を握ってガンシップの砲塔を動かした。
ガンシップの砲塔は問題なく稼働しすぐに3回繰り返し終えた。
「こちらもスラスターのチェック完了、いつでも行ける」
『LT-225、了解した。ミサイルは全て積み込んである、どんな敵が来たってこのガンシップは貴方達が操縦している限りやられないはずだ。護衛のスターファイター隊によろしく頼む』
「LT-225、そうであってほしいと願うよ。リパルサーリフト作動、ガンシップLT-225、出るぞ」
機器を操作し3人を乗せたジュディシアル・ガンシップは浮遊し“アーバトレイター”のハンガーベイから出撃した。
発艦と同時に加速し一気に敵陣までの道のりを進んだ。
「敵が来たらこちらでも応戦する。だが大半はスターファイター隊がなんとかしてくれるはずだ」
「なんとかしてくれなかったら我々がなんとかする、了解です」
フラウト准尉は冗談まじりにそう返した。
リヴァリー・クルーザーまではスターファイター隊が護衛してくれるそうだが奥に進めば進むほど護衛も難しくなる。
ウィルトは初めてガンシップの砲手席に座った。
ガンシップの兵員室なら乗ったことがあるが砲手席は初めてだった。
その為緊張し少し震えていた。
「ウィルト、緊張しているのか?」
オールダム大尉は部下の些細な異変も見逃さなかった。
「えっええ…!まあ…ガンシップの砲手なんて初めてなもので…」
「大丈夫、こんなのデカいブラスター・ライフルと一緒だ。敵が来たら狙いを定めてとにかく撃つ、あんまり変わらんよ」
フラウト准尉は若い後輩を落ち着かせようとウィルトに言葉をかけた。
ウィルトはまだ完全には近くしていなかったが自身の中には緊張だけでなく戦いの中で育まれる特異な高揚感も含まれていた。
まだこのような戦いの経験が少ないウィルトはこの両者の違いを把握し切れていなかった。
既に周囲ではジュディシアル・フォースの軍艦の攻撃で破壊されたり損傷した船が当たりを漂っており、討たれた仲間の陰から敵船団の生き残りは攻撃を行っていた。
そんな合間からついにガンシップを狙う敵が姿を現した。
「前方からドロイド・スターファイター2機、来るぞ!」
「了解!」
「任せてください!」
ウィルトとフラウト准尉は砲口を敵のドロイド・スターファイターへ向け、引き金を引いた。
青いレーザー弾発射され回避される前にドロイド・スターファイターを両機とも撃破した。
白い爆発の中をガンシップは悠々と駆け抜ける。
「更に前方から3機来てるぞ!」
「チッ!今度ばかりは一度には無理そうだ!」
フラウト准尉が毒付く中後方から放たれた青いレーザー弾によってドロイド・スターファイターは3機とも撃破された。
「友軍の攻撃!?」
ウィルトが当たりを見回していると背後から1機のZ-95ヘッドハンターが横切った。
フラウト准尉の方向からも、オールダム大尉の頭上からも1機ずつZ-95がガンシップを横切り前方に展開される。
『こちら第231航空団長、バルシフト大佐だ。護衛は任せてくれ』
「LT-225、オールダム大尉。任せました、我々の命は231航空団に預ける」
『了解した、全機抜かるなよ!』
バルシフト大佐のZ-95と共に所属機のCL-1cランセット・インターセプターや他のZ-95ヘッドハンターが続いた。
迫り来るドロイド・スターファイターやシャトル級、系貨物線を次々と撃破しガンシップの通り道を作った。
前方から迫り来るスフィルナ級ハンマーヘッド・コルベットも2機のZ-95が素早くエンジンに振盪ミサイルを撃ち込んだことで航行不能に陥れた。
更にCL-1cがスフィルナ級のレーザー砲塔を速やかに破壊し接近するドロイド・スターファイターも撃破した。
動かなくなったスフィルナ級を避けながらガンシップは前方のリヴァリー・クルーザーに接近する。
『我々の火力ではあのリヴァリー・クルーザーに対して大きなダメージは与えられない、出来る支援も僅かだ』
バルシフト大佐は僚機と共にリヴァリー・クルーザーに接近しながらそう報告した。
敵船団はガンシップの動きを察知して艦列を狭めてガンシップを撃墜しようとしているが護衛艦群とスターファイター隊によってそれは阻まれていた。
そんなスターファイター隊でもあのリヴァリー・クルーザーにまでダメージを与えられる力はなかった。
「問題ありません、我々が必ずクルーザーを占拠する」
ガンシップを操縦しながらオールダム大尉はそう返答した。
バルシフト大佐も『我々も全力を尽くす!』と言葉を返し前方から接近するGR-45中型輸送船を僚機と共に破壊した。
ウィルトとフラウト准尉も何機かの敵機を撃墜しガンシップを守った。
そうこうしているうちに目標のリヴァリー・クルーザーのすぐ近くまで接近していた。
「突入準備に入る、全員衝撃に備えておけよ…!」
機器を操作しながらオールダム大尉はそう呟いた。
これから彼は敵艦に強行突入をかけるのだ、何か一つ間違えれば3人の命はない。
先行したZ-95やCL-1cがリヴァリー・クルーザーの注意を引き付けている中ガンシップは静かに前進した。
速過ぎずそれでいて遅過ぎないスピードでブリッジに最も近いハンガーベイに向かって航行する。
当然ガンシップに気づいたリヴァリー・クルーザーが対空防御としてレーザー弾はを放ってきた。
オールダム大尉はレーザー弾を回避しつつリヴァリー・クルーザーへ迫った。
即座にウィルトとフラウト准尉がレーザー砲塔に攻撃し出来る限りの攻撃を減らした。
「よぉし…!突っ込むぞ…!掴まってろよ…!!」
オールダム大尉はペダルを踏み込みハンガーベイへと一気に突入した。
レーザー弾が1発、ガンシップの装甲に掠り火花が出たが気にしている余裕はない。
ハンガーベイの偏向シールドを無理やり打ち破り、ガンシップは強制着艦する。
辺りのコンテナや整備ドロイドを巻き込んで破壊し、床とガンシップの装甲が擦れ合うことによって再び火花が辺りに飛び散った。
オールダム大尉はブレーキを踏み込みガンシップがハンガーベイの壁面と激突する前に停止させた。
その間にウィルトとフラウト准尉はレーザー砲でハンガーベイの中の敵兵をブラスター砲で掃討した。
逃げ惑うバトル・ドロイドや乗組員が撃ち倒され地面に斃れていった。
「ハンガーベイ制圧完了!」
「ブリッジに急ぐぞ!」
コックピットや砲手席のキャノピーを開けてブラスター・ライフルを持った男達がそれぞれ出てきた。
敵船団からは迎撃の為に数十体ものバトル・ドロイドがハンガーベイに投入された。
ブラスター・ライフルを疎に発砲し牽制しながら包囲して殲滅しようとしている。
言葉を交わすこともなくいつも通りと言わんばかりにフラウト准尉は自身のスナイパー・ライフルを用いて狙撃を開始した。
まず指揮官タイプのバトル・ドロイドを撃ち倒し、次に厄介なプローブ・ドロイドから狙撃していく。
その間にオールダム大尉とウィルトがガンシップの兵員室からバトル・ドロイドを銃撃した。
防御する素振りすら見せないバトル・ドロイド達は次々とブラスター弾を前に倒れ、数十秒も掛からず殲滅された。
残りのバトル・ドロイド1体をフラウト准尉が撃ち倒し、3人はブリッジまで前進を開始した。
ドアを抜け奥で待ち構えていたテロリストの戦闘員やバトル・ドロイドをを撃ち倒す。
このような艦内での近接戦は彼らの最も得意とする戦闘だ。
ブラスター・ライフルの青い光弾が飛ぶ度に必ず敵に命中し倒していった。
ウィルトも本来はジュディシアル部門の犯罪捜査局出身であるにも関わらず手慣れたように戦っていた。
背後から飛びかかろうとしてきた戦闘員をブラスター・ピストルで速やかに撃ち殺す。
その間に前方に展開していたバトル・ドロイドの1個分隊をオールダム大尉とフラウト准尉が片付けた。
3人が持つブラスター・ライフルは互換武器システムを導入している為ブラスター・ライフルやスナイパーライフルの入れ替えが素早く行える。
火力も高くバトル・ドロイドも重武装の戦闘員も平等に薙ぎ倒された。
ブリッジに急ぎつつクルーザー内の区画を一つづつ確実に制圧していった。
「ドアが閉められるぞ!」
オールダム大尉が声を上げた頃にはもう既に向こう側にいた戦闘員達によってブラスト・ドアが閉められてしまった。
取り残された戦闘員やバトル・ドロイドもいたが当然見捨てられウィルト達によって全員始末された。
ウィルトは試しにブラスト・ドアに向けて発砲したがブラスター弾はブラスト・ドアを破壊出来ずただドアに煤を生み出すだけだった。
「無理です大尉、ドアを破れません」
「分かった、他に通り道は」
「この形状のリヴァリー・クルーザーだとないですね。秘密の通路とかは改造されてあるかも知れませんが」
フラウト准尉はすぐに首を振った。
「フィポットの野郎が復帰すればこんなのすぐなんですが」
「いないんじゃ私がすぐやるしかないな」
オールダム大尉はバッグから近接反応爆弾を取り出しドアに取り付けた。
ハンドサインで2人を後退させある命令を出した。
その命令を聞いたウィルトとフラウト准尉はブラスター・ライフルに換装式のグレネード・ランチャーを装着した。
オールダム大尉自身も安全地帯に向かったところでスイッチを押して近接反応爆弾を起爆した。
ブラスト・ドアは破壊され辺りに破片が飛び散る。
ドアが破壊された瞬間ドアの向こう側の戦闘員やバトル・ドロイドは一斉にブラスター・ライフルの銃撃を喰らわせようとした。
だがそれは3人の事前の準備によって失敗に終わる。
ウィルトとフラウト准尉がグレネードランチャーの引き金を引きグレネードを投擲する。
その間にオールダム大尉もサーマル・デトネーターやインパクト・グレネードを内部に投げ付けた。
それぞれの爆弾が一斉に爆発し待ち伏せていたテロリストの戦闘員達は全員爆発の中に消えた。
爆煙がまだ消えないうちに3人はブラスター・ライフルを構えて再び前進を開始した。
爆発の影響で完全に体勢が崩れたこの区画の戦闘員達は後方に逃げようとしたがウィルトらに背後からブラスターで撃たれた。
バトル・ドロイドも足や腕が吹き飛ばされて戦闘出来る状態ではなかったがドロイド脳が生きている限り危険は付き物だ。
1体ずつ脳天や胴体にブラスター弾を撃ち込んでいった。
「制圧完了」
「では行くぞ」
ブラスター・ライフルのクーリングを済ませるとオールダム大尉は2人を先導して走り出した。
迫り来るバトル・ドロイドも一掃し3人を阻むものは何もなかった。
例え目の前から全身に爆弾を装着したバトル・ドロイドの大群が来ても。
「自爆ドロイドです!」
フラウト准尉の報告と共に5、6体のバトル・ドロイドが武器も持たずにこっちに向かって走ってきた。
既に准尉の報告が終わった時にはウィルトがブラスター・ピストルを引き抜いて2丁のブラスターでドロイドを銃撃し始めた。
ウィルトが放った早撃ちの弾丸はドロイドの頭部に直撃し機能を停止させた。
まずこれで2体、次にフラウト准尉が同じく2体のバトル・ドロイドを狙撃した。
「残り2体!」
「…!後方からもバトル・ドロイド1個分隊接近中!」
自爆ドロイドを突っ込ませている間に武装したドロイドで確実に3人を始末しようとしていた。
オールダム大尉は「ああ分かってる!」と言って残りの2体の頭を撃ち抜いた。
自爆ドロイド隊を倒した瞬間武装したバトル・ドロイド達は一斉に発砲した。
間一髪で3人はすぐ側の物陰に隠れ、或いはその場に伏せて銃撃をやり過ごした。
反撃に転じるがそう易々と殲滅は出来ない。
「お前ら伏せていろよ!!」
オールダム大尉はそう呟くと一番最初にウィルトが倒した自爆ドロイドに銃口を向けた。
2人が伏せたことを確認した瞬間オールダム大尉は引き金を引いた。
ブラスター弾がドロイドの爆弾に被弾しそのまま全身の爆発物が誘爆し爆発を起こした。
近くのドロイドにも誘爆し2つの爆発で接近していたバトル・ドロイド達の半数以上が吹き飛ばされた。
当然辺りに衝撃が撒き散らされウィルトもフラウト准尉もオールダム大尉も頭を抱えていた。
「ああ!!すぐ隊長は無茶する!!」
そう文句を垂れながらフラウト准尉は残ったバトル・ドロイドをウィルトと共に撃ち倒した。
ドロイドの殲滅を確認しオールダム大尉は立ち上がった。
「全く、せっかく可愛い後輩が倒したドロイドをあえて自爆させるなんて酷いお方だ!」
「でも流石の判断力です!」
フラウト准尉は苛立っていたがウィルトはオールダム大尉に憧れのような感情を抱いていた。
その様子を見てフラウト准尉はドン引きしていたが。
「ああ、どうも。このままブリッジまで行くぞ。恐らくあと少しだ」
オールダム大尉は再び走り出した。
非常用の階段を登って一気にブリッジの区画まで駆け上がる。
その途中にも戦闘員やバトル・ドロイドと遭遇したが全て打ち倒して進んだ。
「前方に敵!重火器持ちが1人、戦闘員が4人、バトル・ドロイドが6体!」
オールダム大尉の報告と共に彼は早速インパクト・グレネードを投擲した。
爆発の影響で1体のバトル・ドロイドが破壊され1人の戦闘員が負傷した。
その間に後ろから来た2人が敵陣へ銃撃しまず重火器持ちの戦闘員とバトル・ドロイド3体を撃破した。
戦闘員と残りのバトル・ドロイドが2人に気を取られている間にオールダム大尉はブラスター・ライフルを放ちながら再びインパクト・グレネードを投げた。
残りの戦闘員とバトル・ドロイドは全員始末され3人がブリッジ内部に突入した。
背後でブラスター・ピストルをショックモードにしたウィルトが素早く乗組員を狙撃した。
まず船長と思われるゴウタルの男と操舵手の人間と機器を操作していたアズメルの女が撃たれて気絶した。
残りの5人の乗組員のうち1人はフラウト准尉に銃床で殴られて気絶し後の乗組員はオールダム大尉の銃口の前に手を挙げた。
「今すぐ通信システムの全てを切れ、さもないと」
「わっわかりました!!」
そのうちの1人が急いでコンソールを操作し司令船としての機能を全て停止させた。
銃口を突きつけて脅すだけであっという間に要求を飲んだこの状況にオールダム大尉は拍子抜けといった思いを抱いていた。
テロリスト達ならもう少し粘ると思ったのだが。
「こちら特殊任務分隊STS、ブリッジを占拠し司令船機能を停止させた。そちらの状況はどうか」
『こちら“アーバトレイター”、確認されています。船団のほぼ大多数が停止しました』
「了解した」
オールダム大尉は通信を切り再び乗組員に脅しをかけた。
「おい、残りの友人艦船に投降を呼び掛けろ。今戦闘を停止させれば裁判で死刑じゃなくなるかもな」
「はっはい!!分かりました!!」
再びその乗組員は怯えた表情でコムリンクに向かって船団への戦闘停止を呼びかけた。
また呆気なく要求を飲んだこの状況に対してオールダム大尉以外も疑問を抱いていた。
「隊長、こいつらいくらなんでも脅しに弱すぎませんかね…?」
フラウト准尉は疑問に思いながらそう呟いた。
「とてもこいつらがコルサントであんなことをやった連中の仲間とは思えません」
ウィルトも素人ながらに疑問を感じていた。
オールダム大尉は頷きながら戦闘停止を呼び掛け終えた乗組員に再び詰め寄った。
「ヒィッ!わっ我々はあくまで“雇われていただけなんですぅ”!!」
「雇われていた?誰にだ、銀河救済団とかいう連中にか?」
オールダム大尉が詰め寄ることによってその乗組員は簡単に全てを話し始めた。
「それはどうだか分からないけど……とにかく“
ナブー、その一言で3人はピンと来た。
やはりあの平和なミッド・リムの緑の惑星には何か関係がある。
この一連の悲惨な事件との大きな関係が。
3人の次の目的地はナブー、任務は裏切り者を探すこと。
ナブーでの任務が、この事件に大きな進展をもたらすことになる。
つづく