「俺がオースフィヨルドに?」
北方にてデグレチャフ姉妹に割り当てられた部屋で俺は姉ちゃんに問いかける。
「ああ。上層部が今回の極秘作戦の内容を鑑みた結果204魔導中隊が適任だとされた。日の昇らない間に輸送機から出撃し強襲する」
俺は溜息をつきそれからこう言った。
「上層部は俺達を爆撃機とでも思ってるのか?」
「帝国には余力が少ないのだ。使えるものはなんでも使うのさ。それが馬であれ群衆であれ…例えそれが本来の用途と違ってもな」
そう姉ちゃんは窓の向こうを見ながら話す。
「あれを見ろ」
そう姉ちゃんは俺に窓の外を見るように促す。そこには敵国である協商連合の銃を背負っている帝国軍人が居た。
「何事も無限に利用できるリソースというものは無い。ラインで見たくないというほど見ただろう。物資に困窮する部隊を」
「確かにそうだったな」
そう言いながら視点を窓の外から机の上に戻す。
「俺たちの攻撃目標はなんだ?」
その問いに対し姉ちゃんはある地点を示した。
「敵の沿岸砲の破壊。それだけだ。しかしそれを短時間で行わなければならない。敵の魔導士も必ず居るだろう」
「護衛隊は?」
「我々203大隊が引き受ける。残業は嫌だからな。しっかりやってくれよ?」
「ああ。任せろ」
作戦日当日、203大隊と204中隊がそれぞれの輸送機に乗り込みオースフィヨルドへ向けて出撃した。
「ベルガー大尉。恐らく上は俺達のことを爆撃機だと思ってるそうだぞ?」
「少佐殿。それは少し語弊がありますよ?前の戦闘では爆撃機の迎撃を任されましたしね」
「はっはっは!!確かにそうだな!!では上は便利屋として俺達を使ってるらしいなぁ?」
「上層部の靴でも磨きましょうか?」
「それは良いな!!しかしその前に目下の課題を片付けなければな。中隊各位へ。我々の目標はあくまでも沿岸砲の破壊だ。では中隊諸君?出撃だ」
「絶景だな」
そうアンソン・スー大佐は呟く。複雑な地形に高火力な重砲を配置した姿はまさに天然の要塞といえる。視界の隅に訓練したばかりと見える新兵たちが訓示を受けている姿が映る。
「これはスー大佐!ご昇進おめでとうございます!」
廊下のほうを見ると昔会ったことのある士官が居た。
「おお!久しぶりだな!…しかし上が足りなくなったという理由で昇進するのは良いことなのか悪いことなのか。戦線は日に日に悪化しているそうじゃないか」
「ええ…本来なら喜ばしくない昇進なのですが…こればかりは仕方ありませんね」
そうしてまた窓の外を見る。すると爆発音と共に1つの沿岸砲から火の手が上がる。
「なんだ!?」
無意識のうちに声を上げてしまう。そして次の爆発音で何が起こったのかを察する。…敵の…攻撃…!?
「目標を破壊したら速やかに輸送機へ帰還し再度爆装、反復出撃せよ!」
ノアが叫び命令する。その周囲にはバックパックに梱包爆弾を満載した204中隊の隊員が目標を破壊せんと急降下と急上昇を繰り返し、そしてその上空では203大隊が待機し対空警戒を行っている。
「予定が思ったよりも早く進んでいるな。嬉しい誤算というやつだ」
そう呟きながら俺は地上へ急降下する。敵は突然の強襲だったからだろうか。対空砲火がほとんど見られない。しかも砲撃できている高射砲は管制が上手くいっていないらしく信管の調整がガバガバ。ありもしない方向へ飛んでいき当たる訳のない高度で炸裂している。そんな砲撃、素人でも当たる訳がない。むしろ当たったなんて知られたら笑いものだ。そんな対空射撃が無く無防備な沿岸砲に梱包爆弾を容赦なく投下。あっけなく大破させる。急上昇しようとしたところどうやら弾薬庫らしきものを発見。そのまま低空飛行で接近し爆弾を投下。巻き込まれないように距離を取ると弾薬庫は恐ろしい爆発音を響かせ衝撃で辺り一面を薙ぎ払いながら火柱を立てた。
「絶景だな」
そうノアは呟いた。
「こちら203大隊。敵魔導部隊が接近中。これより攻撃する。誤射に注意されたし」
203大隊からの通信。その数秒後敵魔導部隊が上空の203大隊の襲撃を受ける。敵は驚き編隊を崩す。そうなればこっちのもの。203大隊がロッテ戦法にて敵をさらに攪乱。もはや統率不能なレベルまで指揮系統が混乱し203大隊に手玉に取られる。その中でも2人、エレメントを崩さない優秀な魔導士が居た。スー大佐とその副官だ。しかし多勢に無勢。下へ、下へと追いやられついに副官が被弾。低空を高速で飛行していたため死亡したと思われる。そのとき上空を見てスー大佐は嘆く。
「なぜ…あいつが…」
金髪で、おおよそ軍人とは思えない身長の、ラインの悪魔。我らがターニャ・フォン・デグレチャフ少佐がその目に映る。そして次の瞬間スー大佐の中で何かが弾け飛んだ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
雄たけびを上げターニャに突撃するスー大佐。それを止めようとヴィーシャがそれを撃つ。しかし効果はなく逆にスー大佐が持つ愛娘からの贈り物。サブマシンガンで撃たれ怯む。スー大佐は足を止めずターニャに狙いを定めた。しかし発砲の瞬間ターニャは急上昇。撃った弾は虚空へと消え去った。そしてスー大佐は絶望する。海上に大型の火砲を持つ化け物。海の王者。そう、戦艦1隻を率いる帝国艦隊がオースフィヨルドに。海の王者は咆哮しあらゆるものをねじ伏せた。鉄道、司令部、ありとあらゆるものがその咆哮の前に崩れ去った。
「こちら203大隊。目標の達成を確認。これより回収地点へ移動する。204中隊も下がれ」
「こちら204中隊。了解した。指示に従う」
スー大佐は絶望した。どこかに逃げ込みたい気持ちの裏側には何故か軍人として最後まで戦い抜くという正反対の感情があった。そしてスー大佐は決断した、軍人の本懐を遂げんと。
「ん?姉ちゃん。敵魔導士が1人向かってきてる」
「ノア。私が行こう。お前はここで待ってろ」
ターニャは急加速しスー大佐へ向かう。そのあいだ全く速度を緩めないスー大佐。ターニャとスー大佐がすれ違う。そしてターニャとスー大佐は急旋回しスー大佐は銃を構えたがターニャはその懐へ素早く飛び込んだ。スー大佐の腹部に異常な熱さを感じる。が、仇敵がそこに居るのだ。嬉々として銃を撃とうとする…しかし体が動かない。そして銃を掴まれ奪われる。風を切る音が耳に入り視界は高速で動く。落ちた。そうスー大佐は確信した。そのとき頭に浮かんだのは愛娘。メアリー・スーのことだった。
「メアリー…」
そう呟きながら彼はこの冷たい海へ身を預けることになった。
ノアとターニャは回収された駆逐艦で再会した。
「姉ちゃん。これで協商連合はしばらく黙るな」
「ああ。そうだな」
彼女らは少しぼーっとしながら話す。まだアドレナリンが抜けきってないのだ。
「帰ったら部下の為にも宴会を開くか」
「204中隊も混ぜてくれ」
「もちろんだとも」
そうとろけながらいう姿は珍しく年相応の見た目だった。
その後。
「はっはー!!!飲んでるかー!!!」
…一体どうしてこうなった。
「ノア。大丈夫だと思っていたがまさかこんな惨状になるとは」
「大丈夫だ姉ちゃん。俺もこうなるとは想定してなかった」
すっかりカオスになった場所を見ながら彼女らはまた溜息をついた。
本日未明、オースフィヨルドが帝国によって陥落しました。これにより協商連合は大きな打撃を受けーーーーー
「お父さん?」
そういえばE-2-1が攻略出来てE-2-2はあと割るだけで終わる。え?E-2-3が地獄だって?…怖く…怖くなんてないよぉ…gkbr