お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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再会

 

砂浜に沿うように並び立つ林の木々の一つのもとに立つその女性は、見おぼえのある姿をしていた。

 

銀色の髪に菫色の瞳。以前はポニーテールに結い上げていた髪は、今は腰までストレートに流してある。

 

俺よりも背の高い、美しい女性。時間にしたら顔を合せた時間はほんのわずかにすぎない彼女は、このパストラに辿り着く前に会った人間の中では尤も鮮明に印象に残っている。

 

「アキラさん……?」

 

俺がこの世界で最大のピンチに颯爽と現れたヒーロー。彼女がいなければ俺はいろいろな物を失うところだった。忘れるはずがない。

 

だけど、何故彼女がこんなところに?

 

そう思ったが、すぐに彼女がパストラの住人であることを思い出す。先日の一件の時にはまだ戻っていないようだったが、戻って来たのか。

 

──いや、そうだとしてもやっぱりこんなところにいるのはおかしいって。

 

街の側ならわかるが、ここは街から離れている。街と街を繋ぐ街道からも離れているから、ちょっと立ち寄るような場所じゃない。あえていえばこないだテイルさんと一緒にいった崖の上に繋がる道が近くを通っているから、そこに向かう途中だった可能性はあるけど。

 

そんな思考にとらわれる俺と視線があった事に気づいたアキラさんは、真顔のままこちらへと近寄って来た。

 

俺はそんな彼女の姿を呆然とみながら、

 

「……くしゅっ!」

 

くしゃみが出た。

 

『カズサちゃん、とりあえず頭拭いた方がいいのでは?』

『着替えも早くした方がいいかも。セクシーだけど風邪ひいちゃう』

 

そうだね。なんで俺は着替える場所に行く前に水被ったんだろうね……

 

そんな事を考えている間に、アキラさんは俺の前までやってきた。そして、ゆっくりと俺の方に体を伸ばしてきて──

 

『<<ドライ>>』

「うわ!?」

 

彼女が俺の服に触れた瞬間、一瞬でずぶ濡れだった服の水気が消えた。

 

彼女は突然自分の服に対して起きた事に慌てる俺を見て、ようやくその真顔を崩しクスリと笑った。

 

「真夏じゃないからそんなずぶ濡れじゃあ風邪ひくわよ。服しか乾かせないからまた濡れちゃうかもしれないけど……」

「あ、はい。ありがとうございますアキラさん」

 

<<ドライ>>はあくまで衣服を乾かす魔術のため、それ以外には使えない。人体とかに使うとお肌や髪に多少の悪影響が出てしまうのだ。なので俺の体や髪は濡れたまま。乾いた服も再び湿っていく……が、さきほどのずぶ濡れの状態よりははるかにましだ。

 

てか<<ドライ>>やっぱり便利だな。あんまり多用すると生地がちょっと傷むらしいけど……<<ディスインテグレイト>>と<<ヒール>>覚えたら、やっぱり覚えようかな?

 

「あら、覚えててくれたのね。カズサちゃん、だったわよね」

「はい。その節はどうも」

 

うん、やっぱりアキラさんで間違いなかったようだ。てかこんな美人そうそう見間違えない。

 

「ここにいるって事は、温泉で言ってた通りパストラに住むことにしたんだ?」

「ベルダさんという方の所を借りる事にしました」

「あー、あの人の所なら安心だね」

 

あ、やっぱり知ってるんだ。

だが、アキラさんはその言葉の後に「でも」と続けた。

 

「貴女は本当に気を付けないと。ここは早々変な奴いないと思うけど、それでも不用心よ。見ている私にもなかなか気づかなかったし」

「なかなかって……」

 

え。もしかして。

 

「いつから、みて、ましたか」

「ちょうど歌が終わった辺りかしら」

 

結構前ぇ!

 

え、ちょっとまって、ということは"アレ”最初っから全部見られてたって事!? てか全然気づかなかったんだけど! どんだけ間抜けなんだよ俺! そもそもアキラさんも元早く声を掛けてよ! そこそこの時間やってたんだけど!?

 

うう、顔が火照ってくるのを感じる。カメラ越しに見られるのはもう大分気にならなくなってるけど、リアルで見られるのは違うんだよ……相手の顔が見えるからさぁ……

 

「……顔赤いけど大丈夫?」

「ダイジョウブデス……」

「そう? ところで聞きたいというか、聞いていいのかわからないんだけど」

「ハイ」

「……さっき何してたの?」

「……」

 

まぁそうなりますよね!

 

『はたから見てると、明らかに怪しい人だもんね』

『歌の所だけだったら説明しやすかったんだけどね』

 

そうだな。

 

『演技の練習してたとかいっておけばいいんじゃないかな?』

 

そ・れ・だ!

 

さすが俺のサポート妖精! ただ俺は勿論演劇なんてやってるわけではないのでそこを聞かれるとややこしいことになりそうだから、ちょっと捻って。

 

「実は海見てたら好きな小説のシチュエーション思い出しちゃって! なんかその時小説イメージして演じてみちゃったんですよ、あはは」

 

これでいいだろう。ちょっと夢見がちな痛い子と思われそうだけど、それはどうにもならんので甘んじて享受する。やってたことを考えるとどう説明してもアレな子と思われるのは避けられそうにないし。

 

「ふぅん」

 

俺の言葉を見て、彼女は少し考える仕草を見せた。これは……信じてもらえた感じだろうか?

 

そう思って、俺より背の高い彼女の顔を覗き込もうとしたら、彼女と目が合った。彼女は俺の目をじっと見てくる。え、なになに?

 

「カズサちゃん」

「はっ、はい」

「もう一つ聞きたいんだけど」

「なんでしょうか……」

「貴女も他所の世界から来たのかしら?」

 

……。

 

はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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