お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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異世界転移ものとしては定番の能力だよね?

 

「そろそろ切り上げて寝る支度しろよ」

 

あれからずっとリスナー達との雑談を続けていた俺達にそう声を掛けてきたのは、それまで我々と少し離れた場所でもくもくと武器の手入れをしたり焚火の管理をしながら何かを読んでいたグウェンさんだった。

 

当然彼にも俺の事は説明済みだけど、配信に関しては基本的にかかわるつもりはないようだ。まぁ協力的なアキラさんとテイルさんの方が珍しいとは思うけど。

 

それに多少協力するような気になっても、こんな美少女3人がきゃぴきゃぴ(死語)している中に混じるのはしんどいわな。俺だってこの外見になって、なおかつ結構な時間をすごして女の子であることに慣れていなければなければ間違いなく混じってない。

 

しかし、もうそんな時間か。カメラから視線を外して空を見上げれば、確かに結構夜遅くになっているようだ。月の位置を見る感じだけど。この世界には一応時計もあるらしいけど高級品だから当然持ってないし、まぁ具体的な経過時間を知りたければリスナーに聞けばいいだけだしな。それにしても結構な時間話してた事になるな。

 

特に現時点では何の企画もしてなかったから本当に雑談してただけなんだけど、随分盛り上がったもんだ。盛り上がってたのは俺以外だったけど。

 

ただ盛り上がり方がちょっと想定から外れていたんだが。

 

てっきりリスナー達がアキラさんやテイルさんを質問攻めにするのかと思ったら逆だったんだよねぇ。アキラさんやテイルさんの方がリスナー達の事を質問攻めにしていた。というかまあ大部分アキラさんだけど。

 

アキラさんはどうやら俺の世界の事に興味津々で、リスナーからの質問(とりあえずお約束とばかりにスリーサイズを聞いた奴は自重しろ)は軽く流して次から次へと質問をリスナーにぶつけていた。そうなるとノリのいい連中のことで、我先にと皆語りたがる訳で。ちなみに当然のように嘘を教えている奴がいたのでそこはきっちり訂正した上でカメラ越しにジト目を送っておいた。返って来たのは『ああ、いい……』とか『その目で見られるとゾクゾクする』とかいった反応だったけど。うん、シッテタヨ……

 

ともあれ、寝る支度しますかぁ。

 

『テントとかじゃなくてハンモックなんだ』

「テントは嵩張るからねぇ」

 

受け取ったハンモックをテイルさんからレクチャーを受けながら、目に入ったコメントにそう返す。

 

まぁさすがにテント運ぶとなると荷物としては邪魔になる。元々行く予定だったグウェンさんとテイルさんのコンビは二人共近接系……特にテイルさんは速度を武器とする軽戦士だから、背中に荷物を背負ったままでは戦闘力が落ちる訳で。

 

まぁそれでもこういった森の中や荒野なら敵性生物の接近は感づけるし、そうすれば交戦状態に入るまでに荷物を放り出せばいいんだけど、ダンジョンの中となると中々そうはいかない。

 

だからこういった場合、普通はポーターと呼ばれる運び屋を雇うそうだ。

 

荷物持ちといっても、ちゃんとした職業でありギルド経由で正式に依頼が必要となる職業だ。誰でも出来る職業じゃない。

 

 

重い荷物を長距離運ぶための体力は勿論の事、直接戦闘に参戦はしないものの怪物がいる場所についていくのだ。怪物達から己の命と荷物を守りきるためには怪物やその場所に関する知識もいるし、荷物を背負ったまま動き回るための体術も必要となる。

 

更には生命線となる荷物を預けられるのだ。信頼性も必要になる。だからダンジョンや長期の散策に出る事が多いパーティーなどは専属のポーターを雇っているとのこと。

 

今回はダンジョンに潜るとはいえがっつり深く探索するわけじゃないし、そこまでの道程もそれほどリスクの高い場所はないということで、ポーターは雇わず来ることになった。その分荷物は最小限にするためテントは除外したわけである。

 

まぁポーター雇わなかったのは俺の配信の都合の方が結構大きいけどさ。せっかく他の同行者には伝えているのに更にそこに一人追加したら結局配信できなくなるし。

 

ちなみにそのまま地面に寝ればいいのでは? という意見は却下である。森の中で地面で寝たりなんかしたら虫に集られたり嚙まれたりして大変だそうだ。──本来は。

 

「私がいるから、別に地面に雑魚寝でも大丈夫なんだけどねぇ」

 

わりと楽し気に自分用のハンモックを用意しつつそう呟くのはアキラさんだ。

 

彼女曰く、一定サイズ以上の生物の接近を感知する魔術、虫よけの魔術が使えるので、虫に関しては気にしなくても大丈夫とのこと。そんな便利な魔術あるのかと思ったが、こういった便利系の魔術はわりと旅する上で必需品となる上に難易度はそれほど高くないので、結構研究が進んでいるそうだ。

 

成程、それなら地面に雑魚寝でもいけそうだ。といっても冷たい地面の上に薄い布一枚敷いて寝るだけじゃ熱を持っていかれるから、ちゃんとテントが欲しいよな。今回とか天候は安定しているからいいけど、雨降ったら困るし。一応タープみたいなのはあるようだけどさ。

 

そういや、以前<<インベントリ>>って能力を見かけたな。異世界物では定番の能力。値段が……確か50万だったっけ? とにかくくっそ高くついたのと、街中で暮らしている分にはそこまで必需品となる力じゃなかったから獲得対象にしてなかったけど、今後こうやって外に出る事が増えると考えた場合獲得優先度高いかもしれない。何よりポーター雇わなくていいのってのがでかい。配信で人目を気にしなくてよくなる。あとその費用をテイルさん達に回せるし。

 

以前だったら50万とかくっそ遠かったけど、前回の配信で一発で集めれてるしな。アキラさん達効果でチャンネル登録者数も加速してるし、二人に協力してもらって一日がっつり企画配信すればいけるか? 勿論少し間は開けないとこないだ投げて貰ったばっかりだからアレだけど。

 

ま、今回が無事終わったらゆっくり考えましょ。皆にも相談しつつな。

 

──よし、ハンモック準備完了。実はハンモックで寝るのって初めてなんだよね。ちゃんと寝れるかなぁと思ったけど、今日さんざん歩いたせいか横になったらいきなり眠気が来たから大丈夫そう。

 

「それじゃグウェンさん、お先に失礼させて頂きます」

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 

見張りを受け持つグウェンさんに挨拶。それからテイルさんとアキラさんにも挨拶して夜空を見上げる。ちなみに俺は見張り役は免除されている。雇い主とはいえそれは申し訳ないと申し出たら、「もし何かに急襲されたとして、対応できるか?」とグウェンさんに言われました。ごもっともすぎて何も言えなかったです……。

 

体が疲れてるのは事実だし、それならお言葉に甘えてゆっくり休ませてもらうけどね。明日疲れで移動に影響が出るのも問題だし。

 

それじゃカメラはいつもの寝る時の場所にセットして、と。

 

「それじゃ、今日はコメント欄消して寝るから」

『え、なんで?』

『なんなら俺達グウェンさんとかテイルちゃんとお話ししててもいいんだよ?』

「……だからだよ、俺の目のとどかないところで妙な事吹き込まれたら困るからな」

『俺ら信用なさ過ぎて草』

『カズサちゃん、俺達の事もっと信じて』

 

これまでの反応を見ると信じられるわけないんだよなぁ。

 

『あっ、あっ、今日はジト目は多くて嬉しい!』

『ビクビクビク』

『今日もよく眠れそうだぜ』

 

……ああ、もう! 寝る前に血圧上がっちゃうから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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