お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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初陣

 

ゴォォォォォォン!

 

「ひあっ!?」

 

間近で響いた硬いもの同士がぶつかり合う事で生まれた轟音に、思わず口からなっさけない悲鳴が漏れでてしまった。

 

『ひあっ』

『ひあっ』

『ひあっ❤』

 

おーしお前ら後で説教な! 特に最後の奴!

 

ってそんな場合じゃない!

 

グウェンさんの大きな体越しに音のした方に視線を向ければ、物語に出てくる悪魔みたいな外見の石像が羽を羽ばたかせ武器を振るうグウェンさんからの距離を取っていた。ガーゴイルという奴である。

 

なんで石像が空を飛んでいるのかといえば……ファンタジー世界だから今更だな。こっちの使う魔術にも飛行魔術はあるしさ。

 

奴は天井付近から突然現れた。石像なんだからちゃんと通路に設置されてろよと思うが、どうやら天井付近にあるくぼみに出来た物陰に潜んでいたらしい。一直線に俺に向かってきたのを防御力上昇の術を使っているグウェンさんが防いでくれた形だ。ありがたい。まったく反応できなかったからね……一人なら下手すると脳漿ぶちまけて死んでましたよ、それくらいの音したもん。

 

街を出てから3日目、いよいよ俺達は目的地であるクアンドロ地下遺跡に突入していた。

 

その名前の通り明らかになんらかの人工的な建造物だと解るこの場所は、天井の高さもそこそこある。その高度から襲い掛かって来た石像を盾を使ったとはいえ正面から受け止めたグウェンさんマジ凄い。

 

ただ相手が再び高度をとってしまったので、反撃は届かない。グウェンさん弓も扱えるらしいんだけど、クアンドロ地下遺跡の石像達には殆ど役に立たないからって今回は持ってきていないらしい。なので、飛行されてしまうと攻撃の手立てがない。

 

グウェンさんには、だけど。

 

「<<レッグカバー>>」

 

再び降下してこちらへ襲い掛かってくるガーゴイルの後方へ、すでにテイルさんが回りこんでいる。

 

彼女は上へ向けて手を伸ばし、

 

「<<ランドインザエア>>」

 

そう呟くように唱えると、空中にうっすらと板のような何かが浮かび上がった。

 

その間に、再び襲い掛かってきたガーゴイルの一撃をやっぱりグウェンさんが防いでくれる。……なんか俺狙ってきている気がするけど、一番弱そうに見えるからだろうか? 

 

反撃の一撃は今度は硬い音と共に体の一部をわずかに削ったが、再びすぐ距離を取られる、が、

 

「<<ハイジャンプ>>」

 

そのタイミングでテイルさんが飛び上がった。5mはある高さへと軽く跳躍するとクルっと体を回し──先ほど生み出した空中の板を蹴って軌道を変える。ガーゴイルの後ろ後方へととびかかる。

 

同時に、まるで軽業師かのように空中で体を前方に回転させ、

 

「<<ヘビーウェイト>>」

 

綺麗な回転かかと落としを叩き込んだ。

 

「!?」

 

再び降下しようとしていたガーゴイルはその威力に抵抗する事ができず、そのままの勢いで地面に叩きつけられる。

 

えらい勢いで落ちたガーゴイルだが大してダメージはないようで、すぐに再び飛び上がろうとする、

 

「<<チェインバインド>>」

 

だがその前にアキラさんが生み出した半透明の鎖が絡みつき、ガーゴイルは地面に縛り付けられた。

 

すっげ……

 

「カズサちゃん?」

「はひっ!?」

「出番よ?」

 

そうだった! テイルさんの流れるような動きやアキラさんの手際に見とれてる場合じゃねぇ!

 

俺は守ってくれていたグウェンさんの陰から飛び出すと、ガーゴイルに向けて手を向けて叫ぶ。

 

「<<ディスインテグレイト>>!」

 

途端、脱力感と共に力が前方に展開されるのを感じる。その力はガーゴイルを包み込み──数秒後にはガーゴイルはガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

 

「はぁ……」

 

その様子を見て安堵の息を吐く俺の傍ら、テイルさんが軽やかな足取りでガーゴイルの元に近寄ると、その残骸の中に手を突っ込む。

 

「えっと……ああ、あったあった」

 

そう呟いて残骸の中から引っ張り出された彼女の手の中には、黒光りする石があった。

 

これが先ほどまでガーゴイルを動かしていた動力源であり、今回の俺達の目的である魔石だ。

 

「いやぁ、ほんとカズサちゃんの<<ディスインテグレイト>>はすごいねぇ。ゴーレムもガーゴイルも一撃なんだから」

「すごいのは皆でしょ……ねぇみんな?」

 

言葉と共に側面に置いたカメラに視線を送ると、即座に賛同が返ってくる。

 

『テイルさんの動きが凄すぎて、思わず見とれちゃった』

『なんであんなの正面から受け止めて微動だにしないんだ……』

『俺もアキラさんにあの鎖で縛ってもらいたいです』

 

うちのリスナーの中に一定数存在するいつもの特殊性癖君は無視して、と。

 

それぞれ皆に対して賛辞のコメントが流れる。それをテイルさんは照れ臭そうに、アキラさんは興味深そうにみていた。グウェンさんは完全スルーで周囲を警戒中。

 

確かに全員、すごかった。

 

実はこの戦いは二戦目だ。第一戦目はガードマンのように遺跡の入り口付近にいたゴーレムだったんだが、こいつは上手く感知される前に遠目から<<ディスインテグレイト>>を使って倒す事ができた。<<ディスインテグレイト>>は使用後効果が出るまで数秒のラグがあるため効果発動前に感づかれたが、動きが鈍重だったため問題なく倒す事が出来たかたちだ。

 

それに対して二戦目は奇襲だった。その上動きの速いガーゴイルなので<<ディスインテグレイト>>で捉える事ができず皆に動いてもらったんだが、皆とっさの応対だったにも関わらず見事な動きだった……俺以外。

 

特にすごいと思わされたのが、テイルさんだ。

 

以前から言っている通り、この世界では魔術はゲームのようにただ口にすれば発動するわけではなく(※俺以外)、体の中で力を練り上げて使用する。だから余程スムーズに呪文が練れるようになってないと連続発動は難しいんだけど、先ほど彼女は流れるように初級レベルのものが多かったとはいえ4つの術を立て続けに使った。テイルさん年齢的にはJKくらいなのに実力えぐくない? この年齢でこれってめっちゃ将来有望株なのでは?

 

 

 

 

 




筆者はネーミングセンスが死滅しています。

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