お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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いや俺には無理だって

 

『しかしマジでテイルさんのアクロバット凄かったな。速攻切り抜きあがりそう』

 

確かに。しかも複数上がりそうだ。俺だって見返せるものなら見返したいくらい凄かったし。

元の世界ではまず不可能な動きだし、それをやってるのが3次元の美少女とかまずバズらないわけがない。

 

『あれ定期的にやれれば、更にチャンネル登録者増やせそう』

『チャンネル企画でなんてああいうアクション系の企画なんで上がらなかったんだろうな?』

『カズサちゃんとああいうスタイリッシュなのは結びつかないからでは?』

「どういう意味だよ」

 

いや思わず突っ込んじゃったけど、実際はめちゃくちゃ納得できるけどな。

 

『いや、カズサちゃんドジッ娘だし……』

『MU☆RIをさせるのはちょっと心が痛むというか』

『着地失敗して顔面から地面にスライディングしているのが簡単にイメージできるんだよなぁ……』

『カズサちゃんは俺らに笑いかけながら媚を売るだけでいいんだよ❤』

 

ひ、否定できない。正直自分でも無理だと思うし、顔面ヘッスラも容易に想像できるので。

別段元の俺は運動音痴ってわけではなかったけど、あれはノーマル運動神経の人間には無理でしょ。

ただ少しは言葉にオブラートを被せような?

 

『でも、カズサちゃんが頑張るなら応援するよ』

『もしやるならスカートでしてくれると嬉しいなぁって……』

『陸地でやると危ないから、湖とかに飛び込むような形でやろうよ』

「いや、やらないから。皆が言ってる通り、あんなの俺には無理だから」

『でもリスナーが望むなら……?』

「やらねーって」

 

いくら視聴者数やスパチャが稼げるとしても顔面ダイブはいやだって。

 

「えー、でも練習すればカズサちゃんも出来ると思うなー?」

「テイルさん!?」

「カズサちゃん、どの術も覚えられるんだよね? それに魔力を練り上げる必要もないんでしょ? だったら行けそうだけど」

「いやいや無理だから!」

 

確かに俺の場合魔力練り上げのタイムラグは必要ないからその分難易度は低くなるけど、それ以前にあの動きは運動に関するセンスがないと無理だ。子供の頃からずっと練習するならまだしも、今から配信の為に覚えられるようなものでは決してない。

 

「そうかな?」

「そうだよ」

「そっかー」

 

よかった、納得してくれたようだ。正直テイルさんに「そんなことないよいけるいける」とか押されたら練習する羽目になっているところだった。

 

「んー、まぁそうだね。だったらボクが見せればいいわけだし」

「へ」

「だって、さっきみたいなの見せれば皆が喜んでくれて、カズサちゃんの力の元投げてくれるんでしょ?」

 

……やっぱり彼女は大天使なのでは? いや、大天使どころではない。テイルさんの優しさは熾天使クラスだ、間違いなく。

 

「……お願いしてもいいの?」

「もっちろん。あ、ただし今は駄目だよ?」

「勿論です」

 

さすがにこんな探索の最中に無駄な魔力を使わせるような事はできないけど、街に帰還した後に協力してくれるだけで死ぬほどありがたい……あのアクロバットは異世界とか関係なしに数稼げるの間違いないし……最近は金銭的な余裕はあるからMPをお金に変換ってのはやってないけど、久々に換金してきちんとスパチャでもらった一部を報酬で渡すのとか検討した方がいいかもしんない。

 

「んー、それじゃ街に帰ったら……あいたっ」

 

柔らかそうなほっぺに指を当ててその先の予定を考え出したテイルさんが、その途中で小さな悲鳴を上げた。グウェンさんが、拳骨を当てたのだ。まぁ拳骨と言ってもごく軽く小突いたという程度で痛みが残るようなものではないだろうけど。

 

突然与えられた一撃に振り返ったテイルさんに向けて、グウェンさんが呆れ顔で告げる。

 

「その辺にしておけ、探索中だぞ? 注意力が散漫になりすぎてる、本来なら今の拳骨だってお前気づいて躱せてるだろう」

「あー、はい。ごめんなさい」

 

ごもっともな指摘だったので、テイルさんは素直にグウェンさんに謝った。そうだよな、ここはダンジョンだし、更に先ほど奇襲を受けたばっかりだ。多少の雑談はともかくとして、コメント欄みてがっつりやりとりするような場所じゃなかった。

 

「申し訳ないです、グウェンさん」

 

当然この流れは俺の責任なのでそう頭を下げると、グウェンさんは首を振った。

 

「カズサは今回は雇用主だから気にしなくていい。そもそもテイルは先行警戒担当でもあるからな」

 

そう言ってもらえるのは有難いけど、でもやっぱり気を付けよう。うん。ダンジョン探索中はあまりコメント欄に気を撮られすぎないようにしないと。

 

『テイルちゃんのアクロバット配信楽しみ』

『せっかくだから専用衣装作りましょう。勿論スカートで! スパッツ着用でいいんで!』

 

……。

 

思った早々突っ込みどころのあるコメント欄が目に入り、俺は小さくため息を吐く。

 

ちら、と確認すればテイルさん達は本来の位置取りに戻りこちらを確認していないので、問題ない。俺の背後をカバーしているグウェンさんはコメント欄は特に気にしていないからな。

 

俺はそっとカメラを引き寄せて口元に近づけると、小声で呟く。

 

「あのさ、俺相手のそういった発言は別に構わないけど、テイルさんやアキラさんに対しては自重してくれな?」

 

『了解であります!』

『ライン引きは大事』

『あっ、近』

『おくちぷるんぷるん……』

『今モニターにキスした奴いますね、間違いない』

『「私以外にそんな事いわないで」って上目遣いで言ってるって脳内変換された。勿論君だけだよ、カズサちゃん……』

『そういうウィスパーボイス、ゾクゾクするからもっとやって?』

 

……よし、とりあえず意図は伝わったな! 後はスルースキル発動しとこう、突っ込んでたらきりがないからね! 後最後の奴は別にやっても構わないので(RPとかに比べればなんともないので)今度企画リストに入れておくか。、

 

 

 

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