お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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炎の魔物

 

わずか2戦目でちょっと怖い目を見るはめになったが、それ以降は俺達のダンジョン探索は順調に進んだ。

 

ゴーレムは概ね動き出す前に仕留めるか、動き出しても足が遅めだからそれほど苦労しなかったし、ガーゴイルも2戦目以降はグウェンさんかテイルさんが叩き落としてからの<<チェインバインド>>で拘束の流れが出来てスムーズな物だった。

 

有効打を持つのが戦い慣れしていない俺なので、集団と遭遇してしまった場合は素直に撤退しようとしていたんだけど、幸いな事にここまでは単体としか遭遇していないしな。

 

ところで集団といえば、一つ気づいた事がある。そのことを、ダンジョンの中歩を進めながら横を歩くアキラさんに話しかけた。

 

「ここ大きいダンジョンだし、他の探索者も見かけるかと思ったんですけど、全くいませんね?」

 

その問いに彼女はきょとんした後、「あー」という顔をしてから答えてくれた。

 

「だって、ここはあまり()()()()()()ダンジョンだもの」

「へ? 美味しくない? こうやって魔石が取れるのに?」

「逆に言えば魔石しか取れないのよ、この遺跡。しかも必ず倒さないといけないし。──ランクの低い冒険者じゃあ一体倒すのも苦労するわ。しかも固いから武装も損耗するし」

『カズサちゃん、自分がチート能力持ちって事たまに忘れるよね』

『そんなポンコツぶりも魅力だよ』

 

……ああ成程、確かに。俺は<<ディスインテグレイト>>という特攻になる術があるから倒すのに苦労はさしてしてないけど、グウェンさんやテイルさんが打撃を加えても全く致命打になってなかったもんな。まったく削れないわけではないからいずれ倒せるだろうけど、一体倒すのに余り疲弊しすぎるようではあまり効率がいいとはいえないだろう。魔術も相手がそもそも魔力を纏った存在だけあって効きが悪いらしいし、生物じゃないからここで遭遇する殆どのエネミーは火炎とか雷撃とか、そういった属性の術は意味がないらしいし。そして曲がりなりにもダンジョンなので、あまり強力な術をぶっぱして外したら事である。爆発系とか物理破壊力の高い術は使いづらい。

 

「でも、それこそ俺みたいに<<ディスインテグレイト>>使える術士なら稼ぎたい放題なのでは?」

「……カーズーサーちゃん?」

 

続けて放った質問には、今後は露骨に呆れた顔をされた。更に人差し指でほっぺたをつんつんと押される。

 

「あのね? <<ディスインテグレイト>>は適正持ちが少ないだけじゃなくてね、習得難度も高いのよ? 複雑な形に魔力を練らなければいけないの。ようするにね、本来はカズサちゃんみたいに極一部の術しか使えないなんてことはなくてね、様々な術を使いこなすような一線級の術士しか使えない術なのよ」

「あ、はい」

「そんな術士は当然高額の報酬で国家とか様々な組織に雇われているのよ。それ以外のフリーの人たちだって、遥かに実入りのいい仕事が受けられる。魔石は確かに高く売れるけど、だからって一資産稼げるってほどじゃないでしょ? そういった人たちにはここは()()()()()()の」

「成程……」

 

魔石は確かに高値で引き取ってもらえるが、一個一個が法外に高く売れるわけではない。理由は単純で現状需要に対して供給が足りているためだ。以前話した通り現状は魔石、そして魔道技巧を用いた道具は高額の為、王侯貴族などの富裕層にしか出回っていない。そして魔石自体はここ以外にもいくつか採取方法がある。なので高額とは言え高騰しすぎるということはない。俺にとっては生活費の糧として充分な報酬を得られるけど、たしかにエリートさんならそんな事より全然稼げてそう。

 

まぁでもそういうことならここでは俺が取り放題って事だよな! 他の冒険者達と取り合いになったり狩りすぎて枯渇するとかもなさそうだから。俺にとってはいい事だらけだ。当面の生活費稼ぎはここで──

 

「止まって」

 

テイルさんの声に、意識を彼女の方に向ける。

 

見れば、彼女は俺の事を押しとどめるように腕をこちらに突き出し、前方へと視線を向けていた。

正確にいうと前方の通路の先。左に向けて曲がっているためその先は見えないが、彼女はその先に意識を向けている気がする。

 

「何かいるんですか?」

 

小声でそう問いかけると、彼女は頷く。そして俺にその場を動かないように示すと、先行して通路の向こう側を覗き込み……そしてため息を吐いてこちらに戻って来た。

 

「何がいた?」

「イフリートがいたよ」

 

俺らの後方から声を発したグウェンさんの声に、テイルさんが答える。

 

イフリート……ファンタジー小説で言えば炎の精霊とかそっち系統の存在してよく名前を聞くけど、こっちではゴーレム達と同じ魔石を核にして動く魔法生物だ。纏っているのが石とかではなく、炎というだけ。成程、テイルさんがため息を吐いた理由が分かった。

 

なにせ纏っているのが炎なので、物理打撃がほぼ効かない。倒す方法はそれこそ核になっている魔石を破壊するしかないだろうし、そもそも接近するのが困難だ。耐性を上げる魔術もあるからどうにもならないってわけでもないけど、足止めも難しい。

 

「引き返して別ルート探してみます?」

 

そう提案してみる。

 

俺達は別にこのダンジョンを完全攻略しに来たわけじゃないので、今のルートにこだわる必要はない。ここまでもいくつか分岐があったから、ルート変更をしてゴーレムやガーゴイルを探しにいくので問題ない。

 

そう思って提案したんだけど、それに頷こうとしたテイルさんをアキラさんの声が押しとどめた。

 

「テイルちゃん、サイズはどれくらいだった?」

「んー……ボクと同じくらい?」

「なら引き返す必要はないわね、進みましょう」

 

そう言って、テイルさんより前に進む。それから振り返って、こちらに手招きした。

 

「カズサちゃん、いらっしゃい。ここは私達二人だけで充分だわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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