お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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戦闘の時は集中しましょう

 

「おおー、めっちゃ燃えてる」

 

先ほどのテイルさんと同じように通路の上を覗き込むと、通路の先の方は明るくなっており、その中心に炎が立っていた。……うん、炎が立っているって表現がおかしい気もするけど、人型を取っているので丁度そんな感じなのだ。

 

「まごう事なきイフリートね」

 

そんな俺の頭の上で、アキラさんの声がする。彼女は俺に背後から覆いかぶさるようにして、同じように通路の先を覗き込んでいた。ちょっと屈みこんだ俺に少しだけ体重をかけるようにしているので、首元にですね、ふにょんとしたモノがですね。

 

『またえっちなこと考えてますね』

『むっつりTS少女カズサちゃん』

『これは間違いなく性欲強い』

 

……何故速攻で気づく? そんな顔に出てなかったろ今! あと性欲はしかたないだろ、中身は健全な成人男性なんだからさ! 自分にもあるものとはいえ、そりゃこんなふかふかしたものを首元に押し当てられたら性欲も湧いてくるわ!

 

というかアキラさん、中身男だって知ってるのに容赦なく体押し当ててくるからなー。

 

『アキラさんこれわざと当ててる?』

『アキラさんはカズサちゃんを揶揄うの好きだし、俺達はそんな二人を見るのが好き。WINWINだな!』

『当ててんのよとかいってくれないかな』

 

リスナーのみんなのいう通り、アキラさんからかい半分で体くっつけてくる事がある。こっちっとしては堂々とその感触を堪能できる性格だったらいいのだが、どうしてもそれ以外の感情がいろいろポップアップしてきてしまう。俺はエロシチュをあっさり受け入れるエロ漫画の主人公にはなれそうにない。なるつもりもないが。

 

でも、アキラさんのこういったスキンシップがより強くなったらどうしよう。俺だって、あまりに無防備にそんな事されたら我慢が──

 

「あてっ」

 

とそこまで思考がそれまくった所で、頭に軽い痛みが走った。首の辺りの柔らかい感触も消えていたので上を見上げると、アキラさんの握りこぶしがあった。今度は俺がアキラさんに小突かれたらしい。軽くだけど。

 

「カズサちゃん、集中力散漫すぎ。皆が気になるのはわかるけど、敵を目の前にしてそれだとグウェンさんに怒られるわよ」

「ア、ハイ。スミマセン」

 

ごもっともすぎる指摘だった。まだあっちが気づいてないからとはいえ敵が見える状態なのに、変な方向に思考トリップしている場合ではない。というかさっきのアレ、今回に関してはわざとじゃないな。無意識だ。……ようするにそんな事は気にしていない、というか今は普通に女の子としか認識していないからとった行動だろう。

 

とりあえず、コメント欄は一度意識から外して、と。

 

「それで、あいつどうしますか? とりあえずあの距離だと<<ディスインテグレイト>>は届きませんけど」

 

気を取り直して、俺はアキラさんにそう問いかける。

 

距離が足りれば奇襲をかけるのも作戦の一つだが、残念ながら有効射程より倍以上の距離がある。そしてこの角から先、アイツがいるあたりまでは遮蔽がないのでこれ以上気づかれずに近づくのも難しい。いやあいつが視界から索敵してるのかはわからんけど。どう見たって、目がないし。

 

「別にやる事は変わらないわよ。動きを止めて、カズサちゃんがトドメね」

「でもあいつの足どうやって止めます? <<チェインバインド>>ですか?」

「<<チェインバインド>>は有効射程が短いから駄目ね。そもそもアイツを拘束できるか微妙だし」

 

<<チェインバインド>>は物理的なものだけではなく、魔術的なロックもかけて不定形態の怪物すら拘束する強力な術式だが、さすがにイフリートのようなそもそも形状があやふやなものだとそもそも拘束できない可能性が高い、魔石を核にしているのは間違いないのでその辺りを上手く拘束できればいいのだが、やはり射程が短いためイフリートのように近寄り難い化け物相手には確かに微妙だ。

 

でもだとしたらえーっと、相手が炎だから……もしかして氷か?

 

「それじゃ<<フリージングバレット>>?」

「<<フリージングバレット>>だとすぐに溶かされてろくに拘束できないわね。まぁ半分当たりね。いくわよ」

「えっ」

 

そう告げると、アキラさんは無造作にイフリートのいる通路の方に足を進めた。それにつられて俺もあわて飛び出すと、イフリートと目があった──気がした(目ないけど)。

 

そして、明らかにイフリートが反応を見せる。やっぱり視界で索敵しているのか? こちらに気づいたらしいイフリートはこれまでの魔物たちと同様、こちらの方へと向かってくる。

 

そんなイフリートに向けて、アキラさんが腕を伸ばし、言葉を紡ぐ。

 

「──<<マジックシールド>>」

 

その彼女の声が響いた途端、イフリートの動きが止まった。アキラさんの生み出した不可視の魔術の盾に押しとどめられたのだ。

 

ただ、<<マジックシールド>>は相手を拘束する術式ではない。あくまで魔力の盾のようなものを生み出すだけだ。イフリートも不可視の盾の存在に気づき、その盾を迂回するような動きを見せる。

 

そこに、再度アキラさんの声が響く。

 

「<<アイスコフィン>>」

 

──そこからは圧巻の光景だった。イフリートの四方に白い霧が漂ったかと思うと、それが各方向へ広がっていき……そしてイフリートの周囲を覆う。それに気づいたイフリートはそこから逃れようとしたようだが……遅かった。四角い箱のように広がった白い霧はその内側へと更に広がっていき……気が付けばイフリートの動きを完全に固めていた。……中でちらちらと炎が動いているのが見えているから、中は空洞みたいだけど……

 

「カズサちゃん、見てないで距離つめて<<ディスインレグレイト>>早く使ってー。割と消耗するのよ、これ」

「あっ……はいっ!」

 

そうだった! 幻想的ともいえる光景に思わず見とれちゃったけど、ぼうっとしている場合じゃねぇ!

 

俺は<<ディスインテグレイト>>の有効射程まで距離を詰めるため走り出した。

 

いやしかし今更だけどほんとアキラさんすごいな!?

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