「モザイク機能……」
「モザイク……」
俺の発した言葉をオウム返しに呟く二人に、俺はコクリと頷く。
そんな俺に対して、二人が口をそろえて言った。
「「モザイク機能って何?」」
あれぇー、通じてない!? こっちに該当する言葉がないってこと? モザイクアートとかないの?
とにかく意味が通じないなら仕方ない。俺はモザイクについて説明する事にする。まぁモザイクというか求めている機能についての説明だけど。それ自体は単純な事なので、二人もすぐに理解してくれた。
「成程。見えたらいけないものを見えないようにする機能なのね」
「カズサちゃん、そういったのをカメラに映しちゃうと能力失うっていってたもんねぇ」
テイルさんのいう通り、現状一番不味いのはアカウント停止処分を喰らってこの能力を失う事だ。ここまで獲得した能力はさすがに失う事はないと思うけどその保証もないし、何より現時点では殆ど"逃げ"と"守り"と"風呂"に特化した能力しか獲得してないから(こう考えると最後のはどうかと思うが……)、現時点でMPを獲得する手段を失うのは致命的だ。
それに帰る方法や元の姿に戻る方法もこの<<ウィッシュ>>のように能力としてアンロックされる可能性があることを考えると、本気で対策が必要だった。
「今後の事考えると、そういった対策はどうしても欲しいんですよ」
普段からそういったものは映らないように気をつけてはいるけど、これまでの活動範囲ならともかく今後範囲を広げていくとどうしても"そういったもの"が映りこむ可能性が高くなる。あわつべの規約は比較的緩い方ではあるし、そもそもこの謎接続状態であわつべの規約がどこまで有効になっているかも謎だが、少なくともBANされた人間がいる実績はあるからな。
そもそも最初からつけて欲しい機能ではあるが、この能力を授けた存在がそういったことを知らなかった可能性もあるし。だから頼めばいけるのでは? となった感じだ。
「んー、でも想定外だったわね」
「? 何がですか?」
「え、だって今後ちょっとえっちな配信をやっていくってことでしょ? 水浴び配信とか」
「しませんよ!?」
なんでそっちの方になるんですか!? 死体とかもヤバいって説明してありますよね?
『えっ』
『えっ』
『えっ』
『ええー』
『ご一考を! ご一考をお願いします!』
「しないからな!?」
この機能が通って映らなくなったとしても、あまり露骨な奴をやってしまえば不味いかもしれないし、後さすがにこの体でそれなりの時間を過ごしてきたせいで、下着程度ならともかく例えモザイク越しでもそういった所を数万人の目に晒すのはさすがに抵抗が強くなっている。
『あ、顔が赤くなった! 可愛い!』
『これは間違いなく女の子としての自覚がどんどん強くなってきていますねぇ(ニチャア)』
『俺達は今TSした男性が女の子とし覚醒していくという非常に貴重なシーンに立ち会っている』
『せめてお風呂配信を! お風呂配信をお願いします! 事故防止できるからいいですよね!』
『30万人記念配信の内容が決まりましたね』
あーもー、こいつらは! 一度意識しちゃった後にそんな事言われると余計気にしちゃうだろ! 後なんか必死な連中居るけど、やらんからな!
彼らは俺の話し相手で力を授けてくれる存在だからわりかし要望聞いちゃっているけど、そのせいで最近ちょっと調子づいてやがんな! ここはガツンといってやらないと!
「とにかくそういった企画はやらないからな!」
強めの口調でそう否定の言葉を口にして、顔を背ける。……カメラを今回ちょっと離れた場所においてあるせいでフェードアウトしたりカメラから視線を外し続けるのが難しかったのでとった態度だったが……やってしまったと気付く。視線を戻してみれば案の定コメント欄は『可愛い』で埋まっていた。男がやっても可愛くない反応なのに、女の子がやると帰ってくる反応がこれである(男でも美少年なら違うかもしれんが)。……そんな反応が無意識に出てしまった辺り、順調に仕草をリスナーに調教されている気がする。
……
……
これ以上考えるのはやめよう。
こうやってふざけ始めた(?)リスナーに反応しているといつまでたっても話が進まないし二人を置いてきぼりにしちゃうので、俺はコメント欄から意識を外し……いや、配置ミスった、どうあがいても二人と話そうとすると視界に入ってくる! ……とにかくなんとか意識から外して……
「えっと、こいつらもこんな事いってますけど、勿論そういう目的じゃなくてですね?」
「怪物達の死体対策よね?」
解っているならなんでさっきあんなこといったんですか?
くっ、カメラの向こう側だけじゃなくてこっち側にも敵がいる。いやアキラさんこの揶揄ってくる所がなければ滅茶苦茶頼れるお姉さんだけど……
とにかく彼女が口にした言葉はその通りなので、頷きを返す。
「クアンドロ地下遺跡みたいに非生物型の怪物しか出てこないんなら今のままでもなんとかなると思うんですけど、俺の能力を考えるとずっとあそこに通っているのも不味いので」
クアンドロ地下遺跡に向かっているのは、勿論魔石を集めてお金を稼ぐためだ。それ自体は生活費としてMPをこちらのお金に変換したりテイルさん達みたいに護衛を雇う為に必要な事だけど、どれだけお金を稼いでもお金からMPの逆変換ができないから能力の成長が見込めなくなるんだよな。
テイルさんやアキラさんのバトル光景が派手だから今回はむしろ最高額のMPが集まったけど、同じ場所同じ怪物相手ではどうしてもマンネリ化していくだろう。いずれ新しい撮影ポイントを開拓する必要がある。
それにパストラの街で生活基盤は作ったが、俺の最終目的はこの世界で永住する事じゃない。世界を回って情報を集める必要があるはずだ。いざ何かしなくちゃいけなくなった時に何もできませんわかりませんでは後悔する事間違いなしなので。
だから、冒険や戦闘以外の企画を考えるのは勿論だけど、それ以外にも今後の事はきちんと計画を立てている。これも、リスナーの皆と相談して決めたことだ。
それを俺は、二人に向けて口にする。
「なので、今後何度かクアンドロ地下遺跡に潜って資金を集められたら、とある街に向かってみようと思ってます」
「え、カズサちゃんパストラ離れちゃうの? ちなみにどこへ向かう予定?」
ちょっと寂しそうに眉尻を下げて問いかけてくるテイルさんに、俺は皆で決めた目的地を告げる。
「"城塞都市"リンヴルムです」
※この作品の配信プラットフォームとなっているOurtubeはYoutubeとは似て非なるものとお考え下さい。Youtubeそのままの規約だといろいろやりづらいので、Youtubeよる緩い感じで一つ。でも
・直接的な行為
・性器などの投影
・死体や過度な出血などの映像の配信
はNGな感じです。