お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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アンノウン

 

本来ならバラバラになっているハズの骨は、ゴーストの力によって紐づいているだけ。<<ピュリファイ・スピリット>>によってその存在が消去されてしまえば、紐づける力は無くなりスケルトンは動きを止め、骨はバラバラに崩れ落ちる……ハズだったんだけど。

 

「アレぇ!?」

 

<<ピュリファイ・スピリット>>を受けたスケルトンは崩れ落ちるどころか、まるで効果がないようで魔術の鎖に囚われたままじたばたしている。え、もしかしてレジストされた? だったら!

 

「<<ピュリファイ・スピリット>>!」

 

もう一回同じ術を叩きつける。

 

……が、状況は変わらず。スケルトンの動きはやはり変わらず、欠片も効いている気配がない。

 

「ええ……なんでぇ」

 

特殊個体は<<ピュリファイ・スピリット>>が効かないくらい強力って事?

 

「えっと、もっと強力な浄霊系の術を覚える必要が……?」

 

確か能力リストの中には<<ピュリファイ・スピリット>>の上位的な術もあったハズ。

 

『あたふたしているカズサちゃんかわいい』

『<<チャージ>>で強化すればいいんじゃない?』

『眉尻さがって困ってるカズサちゃんの顔ゾクゾクします』

「ああ、成程。<<チャージ>>って手があるな」

 

上位術って獲得コストバカ高いし、それでいて浄霊系の魔術ってグリッド以降一切使っていなかったくらい使いどころがない術だから、この場の為だけに取得するのはちょっと悩みどころなんだよね。その点<<チャージ>>だったらコスト抑えられるかも。

 

コメント欄、偶に有用な助言くれる人いるのは助かる。コメント欄流れ早い上に概ねは「かわいい」とか他愛のない発言が殆どなんでそういう発言は見逃しがちにはなるんだけども。

 

あーでも、問題はどれくらいMPを積めばコイツに効くかだな。

 

「んー……いくら乗せようか?」

「ちょっとまって、カズサちゃん」

 

思いつかない場合はそれこそ聞いてしまおうと口にした俺を、即座にアキラさんが止めて来た。ただし視線はこちらではなくジタバタしているスケルトンを見つめているけど。

 

「どうしたんですか、アキラさん」

「浄霊術はひとまずいいわ。こいつにはそもそも効かないかもしれない」

「え、なんで……」

 

そう、疑問を口にした瞬間だった。

 

ジタバタしていたスケルトンが急に動きを止めた。そして次の瞬間、まるでチューブ式の入れ物から押し出されるような感じでぬるっと黒い何かが飛び出し、そのまま駆けだした。

 

それに真っ先に反応したのは、テイルさんだった。

 

「<<ハイジャンプ>>!」

 

跳躍力を上げる術を上げる使用し、跳ぶ。ただし上に向けてではなく横へ向けて。その行き先には駆けだした黒い存在があった。

 

彼女はそのままの勢いで思いっきりそいつに対して蹴りを入れた。その勢いに、黒い存在は大きく吹っ飛ぶ。

 

「<<チェインバインド>>!」

 

そこへ今度はアキラさんの声が響く。再び発動された魔術の鎖は、骨から抜け出す事でその束縛から逃れたそいつを再び捉えた。

 

そして動きを止めたそいつの姿を見て、俺はある事に気づいた。

 

「こいつ……魔石泥棒の時の奴じゃ……」

 

以前俺達が捉え引き渡した黒い影。それと全く同じ姿だった。

 

「ああ、やっぱりそうなんだ。グウェンさん、あなたの意見は?」

「……同じだな。間違いなく以前俺達が捉えた奴だ」

「え、なんでこんなところに。逃げ出したってこと?」

 

以前捉えた奴は最終的に研究の為国に引き渡されたと聞いている。そこから逃げ出してきたということだろうか。そう思って口にした言葉はグウェンさんが否定した。

 

「いや、アイツは研究の途中で消失したと聞いている。恐らくは内包した魔力を消費しつくしたためだろうとのことだったが……」

 

当事者としてギルド経由で確認をしていたんだろう。

 

「アンノウン……やっぱり他にいたのね」

「アンノウン?」

 

アキラさんが呟いた言葉に、テイルさんがそう問いかける。ちなみに会話しつつ皆の視線は黒い存在の方を見たままだし、すぐに動ける状態を保ったままだ。この辺プロだなと思う。俺どうしても話しかける時ついそっちに顔を向けがちだし。

 

そんな事を考えいる俺の前で、アキラさんがテイルさんの疑問の答えてくれる。

 

「アンノウン、アイツの名前よ」

「アイツ、名前が決まっていたのか。いや、国の方で決めたのか」

「違うわ、貴方達がパストラで遭遇する前からコイツは名前がついてたのよ。……まあ細かい説明は後でするわ……割とさっきから<<チェインバインド>>の維持に大分魔力持っていかれてるからあまり長い時間をかけるとしんどいのよ。えっと、カズサちゃん」

「あ、はい」

 

急に呼ばれて俺は慌ててアキラさんの方を見る。

 

「アイツに向けて<<ディスインテグレイト>>を使ってくれる?」

「え、<<ディスインテグレイト>>ですか? <<ピュリファイ・スピリット>>ではなく?」

「ええ、ゴースト系じゃないからね」

「……あの、あの感じだと一緒に<<チェインバインド>>も消しちゃうと思うんですけど、いいんですか?」

「問題ないわ、お願い。……あ、ちょっと待って──<<レコーディング>>」

 

<<レコーディング>>って、映像術式だっけ。そういや初めて会った時にも使ってたな。なんで記録するんだろ?

 

「ああ、記録は残すんだ」

「本来なら捕獲して連れて行きたいところだけど、さすがにここから連れ帰る訳には行かないからね。こんなの抱えてテレポートしたくないし、そもそもチェインバインド掛けた状態でテレポートできないし、他の術だとコイツ抑えておける確証がないし」

「そっか」

 

俺が感じた疑問はテイルさんが聞いてくれたので納得。現物を持って帰るのは無理があるから記録だけでも残す感じか。……まぁこれをリリースするわけにもいかないしな。

 

とにかく理由はわかったので、頼まれた事をきっちりこなす事にする。と言っても俺がすることは奴に手を向けて言葉を発するだけ。

 

「<<ディスインテグレイト>>」」

 

言葉を発した後。わずかなラグの後、術が発動する。術は奴の全身を包むように発動させたそれは──アキラさんの生み出した魔術の鎖と共に、黒い塊の姿を消失させた。

 

消失させる際に一瞬中央部に黒い球形の何かが残ったような気がしたが──それも次の瞬間には他と同様に消失した。

 

──え、嘘、何も残らないの? まさかこいつの正体、全身全てが魔力だったってこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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