お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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新たな場所へと

 

「とりあえずギルドへの報告は私がしておくわ。映像も見せないといけないしね」

 

アンノウンが消えた場所を見つめていたアキラさんが、ふぅ、と一息を吐いてからそう告げた。それには異論がないので、俺達は全員頷く。うん、まぁそれはいいんだけど……

 

「それで”アンノウン”に関して聞かせてもらえるのか」

 

多分アキラさん以外が聞きたいと思っている事を、口にしてくれたのはグウェンさんだった。その問いにアキラさんはコクリと頷く。

 

「私まぁそれなりに顔広くてさ、知り合いから聞いた情報ではあるんだけど」

 

アキラさんこの年齢でこの実力だもんな。そりゃ顔が広くても不思議じゃない。

 

「クウェントスで出現した未知の怪物の話知ってる?」

 

アキラさんの言葉に、グウェンさんとテイルさんが頷く。

 

えっと……クウェントスって今俺達がいるのとは別の大陸の事だよな? そこに現れた怪物……?

 

『カズサちゃーん、聞いた事ある話だよー?』

 

へ?

 

『以前スパイス屋で話に聞いたよー』

『化け物が出たせいで農地があれて、スパイスが値上がりしているって話。 覚えてない?』

 

スパイス屋……値上がりしてるってのは覚えてるけど……そんな話だったっけ?

 

『あーこのぽかーん顔は覚えてませんねー』

『だらしない半開きのおくちすき』

『カズサちゃんポンコツだからね、仕方ないね』

「いやポンコツじゃないからな!?」

 

そもそも確かスパイスの件って、パストラに来てすぐの事だよな? そこから大分時間がたってるし、そんな細かい事覚えているわけないだろ! むしろリスナーの中にそんな所覚えている奴がいるのがびっくりだよ!?

 

「カズサちゃん? 話進めていいかしら?」

「あ……スミマセン。ツヅキヲドウゾ……」

 

アキラサンに言われて、即答で謝罪する。なんか棒読みっぽくなっちゃったけど……別にアキラさん怒っている感じじゃなくて、ちょっと年下の子を窘めるお姉さんみたいな感じだったけど……。まったく、すぐ人を煽ったり揶揄ったりするリスナー達のせいで、と思わずカメラを睨んでしまえば

 

『しょぼん顔からのジト目頂きましたー』

『最近カズサちゃん一部の連中の性癖把握したせいでジト目頻度減ってるからこれは嬉しい』

『供給ありがとうございます!』

 

こいつら……いや駄目だ、アキラさんの言葉に集中しよう。

 

「話を続けるわね。で、そのクウェントスって現れた未知の怪物、倒すのが大変だったって話も聞いてるわよね?」

「騎士団とかが出張ったのにかなり手こずったのは聞いたよー」

「通常武装が通用しなかったというのは聞いたが……同種か?」

 

グウェンさんの言葉に、アキラさんが頷いた。

 

「サンプルが貴方達が捕まえた一体だけだし、クウェントスの情報も詳細なデータを取得で来ているわけじゃないから断言はできないみたいだけど……国やギルドはその可能性が高いという見解を発表してるわ」

「発表?」

「大っぴらにじゃないけど、関係ギルドとかには通達が言っているわ。じゃないといくら貴方達でも私がぺらぺら喋る訳にはいかないでしょ?」

 

ごもっとも。いくらパーティ組んでるっていっても、国が管理する機密に近い情報なら話せないよね。

 

「じゃあ、こいつらはクウェントスから来たって事か?」

「出現したのがパストラだったし、恐らく船か何かに潜んでやってきたって考えられていたんだけど……ここで出現したという事はそうは断言できなくなってしまったわね」

「パストラに出た奴と同じで、船で渡ってきてどこかに潜伏してたのでは?」

 

そう、口を出してみる。パストラで遭遇したアイツだってどこかに潜伏していたはずなので、可能性はないわけじゃないだろう。この場所だって、パストラからは数日あるけば辿り着く距離だ。それは当然アキラさんも理解しているらしく、こくりと頷く。

 

「勿論その可能性もあるけど、あれから大分たってるし最近は港での検査も厳しくなってる。だからこちらのどこかで湧いている可能性も否定できないんだよね。何せ生態が不明だもの」

「成程、確かに」

「それにしても困ったねー?」

 

あまり困った感じじゃない喋り方で、俺達の会話を聞いていたテイルさんがそう声を上げる。

 

「困ったって?」

「ここ、多分しばらく国かギルドの管理下になると思うよ、カズサちゃん」

「えっ」

「アイツ魔力で体構成しているってことは間違いなく魔力が餌だよね? なんか魔石から吸収してたみたいだし。そう考えるとここアイツにとっては最良の餌場って事になるよね?」

「あっ……」

「未知の生物の餌場。魔力自体が体ということは魔力を吸収して成長する可能性が高い……って考えたら、ね?」

 

──結局その日は帰還して。アキラさんのほうからギルドに報告した結果、テイルさんの言った通り案の定国の方から部隊が派遣されることになった。更にギルドの方からも戦力と調査団が派遣される事が決定した。……クウェントスで出現した"大きく成長した"アンノウンはかなりヤバかったらしく、割と厳戒態勢である。

 

頻繁に潜っていた俺達、特にパストラの中では上位の実力者であるアキラさんにはギルドから誘いがきたけど、これは皆断った。調査団に参加すると他の人たちと一緒に行動する事になるだろうし、場合によっては国の部隊とも一緒に行動する可能性もある。そうすると俺の出来る事は説明する必要が出てくるし、そうなると俺の特異な魔術構成はあまりに目立ちすぎるので、眼をつけられる可能性が高いだろう。

 

現時点であまり目立ちたくないのでお断り一択である、滅茶苦茶動きづらくなりそうだし。さすがに場所が場所だけに<<ディスインテグレイト>>が使える術士も派遣されてくるだろうとの事だから、俺が参戦しないとどうにもならないって事ないだろうしね。そもそもアンノウンにしろ遺跡のエネミーにしろ、<<ディスインテグレイト>>を使えば楽に倒せるというだけで、別に他の術で倒せないわけじゃないしね。

 

ということで俺は不参加。俺が参加しないなら「私も参加しなーい」と相変わらず軽くアキラさんが不参加を表明。グウェンさんとテイルさんは近接特化型なので、俺がいなければあそこでは消耗するだけだと不参加にするとした。丁度他の仕事があるので、ひとまずそちらの仕事をするそうだ。

 

──しかし、他の仕事があるグウェンさんとテイルさんはともかく、俺は完全に手が空いちゃったな。稼ぎは完全にあそこに頼り切っちゃってたしなぁ。まぁ大分貯蓄は溜まってるからしばらくは働かなくても問題ないんだけど。

 

『そもそもカズサちゃんの本業は俺達に可愛い姿を見せる事だよ?』

『テイルちゃんやアキラさんとのイチャイチャもいいけど、カズサちゃんの可愛いRPもそろそろ見たいなー?』

『ぶっちゃけ無職になっても俺らが養うけど?』

 

いやまぁ本業というか……否定はしないけど、皆に投げて貰ってるスパチャは能力の成長に全部当てたいからなぁ……あと別に毎日ダンジョン行っている訳じゃないからちゃんと間の日は相手してるじゃないか。まぁアキラさんかテイルさんと出かける事も増えたから、リスナーと向き合ってお話しする回数は減ったけどさ……

 

んー、でもパストラの滞在期間長くなったし、目新しい配信場所もなぁ……テイルさんはしばらくは仕事で忙しいだろうし、アキラさんに毎日手伝ってもらうのはさすがに気が引ける。結構な人間がコメントしてくるRPは受けるだろうけど、毎日やればそれもマンネリ化するだろうし、ネタも切れるだろうし、なにより毎日やっていたら俺の精神が死ぬ。

 

……これは、以前話した件を実行するべきかな。今回の件は丁度いいきっかけだといえるし、モザイク導入で恐れていたBANリスクも大幅に減った。アキラさんとかリスナーの皆とかに相談は必要だけど、考えてみてもいいかもしれない。

 

新たな場所。"城塞都市"リンヴルムへ向かう事を。

 

 

 

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