配信内容検討中?
「あんまりパストラと変わらないな」
「まぁ3日程度離れたくらいじゃあね」
周囲の光景に目をやりながらなんとはなしに呟いた言葉に、すぐ隣を歩く美女から答えが返される。
まぁアキラさんなんだけど。
──クアンドロ地下遺跡でアンノウンに遭遇してから、すでに大体10日程過ぎた今。俺はパストラではない別の街にいた。結局一度パストラを離れることにしたのだ。
何せ、元々配信の方はマンネリ気味だった。ある程度映像的なインパクトのある遺跡探索と、テイルさんとアキラさんという美少女配信協力者がいたおかげで続けていられたくらいだ(基本グウェンさんは配信の方は不参加)
勿論遺跡探索は毎日行っていたわけではないので、その間も街の散策とかの配信は行ったわけで。トータルで考えると俺がパストラにやってきたらそれなりの時間が立つ事もあり、パストラで場所的に配信に目立つ場所はほぼ回っちゃったんだよな。
そしてそのタイミングで最近の配信の一本の柱だった遺跡探索が封じられたわけで、そうなるといいタイミングだと考えて旅立ちを決断する事にした。
勿論、以前同行してくれると言ってくれたアキラさんやテイルさん達、それにリスナーの皆にも相談した。
その結果、全員そろって似たような回答が返って来た。
『別に難しく考えなくていいんじゃない? パストラに戻ろうと思えばすぐ戻ってこれるわけだし』
ごもっともである。リンブルムへは15日程かかるが、旅路の途中でパストラに帰ろうと思えばいつでも帰れるわけで。重く考える必要は何もなかった。
というわけで、リンヴルム行きが決定したのである。
まぁ決まったからと言って即日出発した訳じゃないけれど。実際出発したのは一週間程立ってからだ。
俺自身は身軽な身ではあるけど、同行してくれるアキラさんの都合もあるからね。アキラさんがいないと日帰り移動もできないし。
アキラさん自身も以前から街を離れることが多いため、家の方の整理とかは問題なかったっぽいんだけど……今回アンノウンの報告をアキラさんが担当してくれた関係もあり、数日間ほど聞き取りやらなにやらでパストラから離れづらくなってしまったわけだ。なので今回、彼女の方の都合が完全についてから出発する事にしたのである。
まぁ俺の方も身軽だし日帰りできるとはいえ日中はほぼ離れているし、日によっては戻らないわけで、まるっきり何も準備しないわけでもないんだけど。例えば食料。家にある食料はそこまでずっと保存が効くわけでもないから、あまり残しておかない方がいい。返ってくるときの食糧は外で何か買って来ればいいしさ。
そもそも急ぐ旅でもなかったので、余裕をもっての出発となったのである。
ちなみにテイルさんとグウェンさんは同行していない。別件の仕事があるそうで、それが片付いて、行程の中で危険度が増す後半の方で合流する事になっている。ま、これも予定通りだな。
とまあ、そういうわけで今俺は久々に別の街にいるわけだ。パストラに住み着いて以降は一切別の街に行ってないので、数か月ぶりの新しい街である。
ただ、目新しさはまるでない。というか複数の文化が交じり合い若干カオスになっているパストラと違い、この街は以前いたグリッドとさして変わらない感じだ。アキラさん曰く、割とこの国の南方の平均的な感じらしい。
「……配信的には、ちょっと厳しい感じかなぁ」
「まぁ数日は仕方ないんじゃないかしら?」
「リンヴルムの方に近づけば大分変ってくるんだよね?」
「あっちは植生や生息している動物や魔物も変わるし、建物の感じも変わってくるわね」
そこまでいけば、リスナーを飽きさせることはないんだろうけど。ここ最近はちょっと視聴者数が下がり気味の日も多い。旅に出てアキラさんと一日行動するようになってある程度回復はしたけど、旅の光景自体は馬車に乗って移動しているだけで眠くなるようなのどかな景色が続くだけだからなぁ。
視聴者数がそのまま力に繋がる訳じゃないから、突き詰めて言えば普段は少なくても問題ないっちゃないんだけど。
『コスプレして旅行してくれれば皆喜ぶと思うよ!』
『RPしつつやってくれればなおヨシ!』
そんなクソ目立つ真似はしたくないし、RPしつつやったらもはやただの変な人だろ。馬車だって乗り合い馬車で他の客だっているんだからな? 『どうせ数万人単位で見られているしいいじゃん』とか言うけどな、極論乱暴に言えば数字の大小とコメントの量でしかないリスナーと、リアル視線は全く違うんですよ。後日本で話題になっても今の俺は全く困らないけど、こっちの世界で変な噂が立つので却下です。
後アキラさん一緒にいるんだから視線に巻き込むだろうよといったらむしろ『一緒にして?』とか言われたけど、調子に乗るなよ? 屋内とかならともかく外でそんな事アキラさんにさせるわけないだろうがよ。
とにかく旅の途中であまりリスナー向けの企画をやるのは無理。それは解っていたので待機中の期間にコスプレRPと歌練習配信はやっといてよかったと思う。ちなみに別にやりました。部屋で歌練習配信は他の住人に迷惑がかかるし、コスプレRPは前述の理由で外でやりたくないので。
え、また歌配信やったのかって? いやいや、歌配信じゃなくて練習配信デスヨ?
……だってさー、皆がまたやってっていうんだもん。でも前回やった通り、俺の歌は今の体のスペックでごり押しする感じで、技術力は平均レベルでしかないわけで。『でもせっかく滅茶苦茶強い声を持ってるんだから練習しようよ。天下とれるよ』というのがリスナー達の談である。ところで何の天下?
で、俺の場合は隠れて練習して技術を身に着けるというのはできないのでその練習自体も配信にした。そもそもどういった練習をすればいいのかわからないので、”リスナーに教えてもらった方法で歌練習する枠”みたいな感じで。この配信はなかなかに受けた。練習とはいえ歌は歌うし、何より皆の指示を受けていろいろするのが受けたらしい。明らかにこれ歌の練習じゃないだろっていうのもあったけど、それもRPの方に比べると可愛いもんだ。
そもそもウチのチャンネル名、「TS少女育成計画」だしな。人気のあるコンテンツも指示系のコスプレRPだし、こういうリスナーの指示通りに行動したりチャレンジしたりする系のコンテンツもう少し増やしていくべきかね?
まぁ出先だとやりづらいことだから、少し先の話だけど。最近ダンジョン探索とアキラさん達に結構頼り切ってたところがあるから、個人での配信もまたいろいろ考えて行かないとなぁ。皆にも『アキラさん達と一緒の配信もいいけど、カズサちゃんと正面から向かい合った配信ももっと欲しいなぁ』って言われてるし。アキラさんやテイルさんと一緒だとどうしても視線はそっちに向きがちだからね。確かにその辺はわかる気がする。いくらカメラ越しでも会話しているときに視線が来ているのと来ていないのじゃ気分も違うだろう。
うん、もうちょっとリスナーに視線を向けよう。物理的にも精神的にも。俺の生命線だからね……
ま、今はそういうわけにはいかないけど。
あ、ちなみにコスプレRPは”きっちりとしたスーツを纏った女教師”でした。外見的に幼さがあるから合わないんじゃないかと思ったけど、『童顔でぴっちりしたスーツ来た女教師ってエロくない?』だそうだ。知らないよって言いたいところだけど、なんとなくわかってしまうのが悲しい……正直自分じゃなければ似たような感情を抱いてしまったと考えると、なにかに敗北してしまった気がする。
『でも絶対にこんな先生いたら授業まともに聞いてられないよね』
『エロ誘惑罪でPTAから叩かれそう』
『絶対に(自主規制)』
そんな恰好させたのお前らだからな? 後最後の奴はさすがに自重しろ。
そんな出発前の事を考えつつ心の中でため息を吐いていると、横を歩いているアキラさんからクイクイと袖を引っ張られた。
「? なんですアキラさん」
「ねぇ、カズサちゃん。あれ食べよっか?」
「アレって……屋台?」
立ち止まったアキラさんが指さした先には若いお兄さんはやっている屋台があった。聞いてみると何やらこの辺の特産の果物をつかったフルーツゼリーのようなものらしい。
まぁゼリーのようなものだったら対して腹にもたまらないだろうしいいかなと頷くと、そのままアキラさんは俺の手を引いて屋台の方に向かって買ってくれた。でも買ったのは一個だけだ。あれ、アキラさんは食べない感じなのかなと勧められるまますぐ側のベンチに腰を降ろすと、アキラさんは自分の手で器を持ったままスプーンでゼリーを救い、こちらに差し出してきた。
「はい、あーん♪」
前回残MP:636030
今回増減:
スパチャ +814760(※前回からの増加分トータル)
残MP:1450790