お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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同じベッドの上で

 

俺の言葉を気にする事もなく、そのままアキラさんはもぞもぞとこっちの布団の中に入ってくる。

 

「ちょっとアキラさん、自分のベッドで寝てくださいよ!」

「んー、でも今日ちょっと肌寒いじゃない? ほら、カズサちゃん体温高そうだから」

 

確かに夜になってちょっと冷えてきた事は事実だけど……

 

『カズサちゃん体温高そうなのは解りみしかない』

『カズサちゃん湯たんぽだそう。爆売れ確定だし』

 

こっちに来てから体温とか測ったことないし(そもそも体温計あるのかね?)、通常の体温が高いのかどうかさっぱりわからんけど。そういう風に見えているの? 一応今の俺の体の元になってるアバターのデザインどちらかというとクール系だったからむしろ体温低そうに見えない?

 

「というわけでカズサちゃん一緒に寝ようか。ほら、この部屋割と広いからベッド遠くて話しづらいじゃない?」

 

確かに今日の部屋、ベッド二つしかないわりに広い。その上ベッドは並べて置かれているわけではなく両方の壁沿いに置かれているので、夜が遅くなれば話ずらいのは間違いないだろう。ここの防音性能がどのくらいしかわからんけど。

 

「てか寝ないのアキラさん?」

「眠るにはまだちょっと早いんじゃないかしら?」

「いや俺結構眠いんだけど……」

「えー、せっかく旅先なんだもん。もうちょっと夜更かししよ?」

『そうだよ』

『そうだよ』

『そうだよ』

「お前ら……」

 

ちなみに、こんな話をしている間にアキラさんは体を俺のベッドの中にねじ込んで来た。

 

うっ、風呂上がりのいい匂いがする……それに、なんか毛布の下がぽかぽかしてきた気もする。俺よりアキラさんの方が体温高いんじゃ? ……いや、俺の体が火照ってきているだけか?

 

何にしろこれまでを見る限り、アキラさんが引くことはないだろう。なので俺は少し壁の方に向けて体をずらすと、くすっと笑われた。

 

「相変わらず気にするのね。──こないだは私の胸に顔を埋めて眠ってたのに」

「その節はまことに申し訳なく!」

「別に怒ってないわよ? なんなら今日は最初から抱っこしててあげましょうか?」

『お願いします!』

『さすがです姐さん!』

『できればそこが良く見えるようにカメラを設置して頂けると……』

「だからなんでお前らが答えるんだよ」

 

ため息。

 

「途中で寝ちゃっても怒らないでよ?」

「怒らないわよ。その時はカズサちゃんの可愛い寝顔を堪能させてもらうわ」

「……それはご自由にどうぞ」

「あら想定外の反応」

 

残念ながら寝顔ならもうずっと万単位の人間に晒し続けているんで。なんなら涎垂らした寝顔すらみられてるので。今更で御座います。

 

「というかカズサちゃん、前も一緒に寝てるのにそんな気になる?」

 

あの時、なかなか寝れなくて大変だったんですけど? 眠るまで体が固まったままだったんですけど? あと一度や二度寝ただけで美人や美少女と一緒に寝る事になれるほど俺の精神は図太くない。特に今回は二人っきりだし。

 

とはいえアキラさんもテイルさんも距離感が近い分、触れるのとかは流石に慣れてきているけども。なので今くらいの距離をとれていれば大丈夫だ。それに今回は反対側には動けるし。この宿屋ベッド大き目で良かった!

 

それから俺とアキラさんはベッドの上で向き合ったまま、今日の昼間の事などを話し合った。眠かったハズだけどいざ話始めるとなかなかに盛り上がってしまい、眠気もどこかにいってしまい眼が冴えてきてしまった。実際眠るにはまだ少し早い時間帯だったためアキラさんも眠くないらしく話し込んでしまい、やがて話題はこれまでの話ではなく、これからの話に移り変わった。

 

「こうして二人でいちゃいちゃ出来るのは後2日だね」

「イチャイチャ」

『もっとイチャイチャしろ』

『三人でイチャイチャしてもいいんですよ!』

 

イチャイチャというか俺的には遊ばれている感にが日に日に強くなってるんだけどな……今だってアキラさんちょっとニヤニヤ笑ってるし……リスナー達は完全にイチャイチャしていると思われているみたいだけど。しまいにはコメント欄で『ねえカズサちゃん、アキラさんの事お姉様って呼ばない?』とか言い出す奴等結構でてきてるし……どんなRPを求められているのか概ね理解できるけど、やりません。「やらないの?」やらないです。──まぁ記念配信とかでのRPとして、短時間ならやってもいいけど。

 

閑話休題。

 

アキラさんのいう通り、二人で旅をするのは残り2日となる。3日後には、テイルさんとグウェンさんが今受けている仕事を終えて合流してくるからだ。ちなみにもしかしたら1、2日くらいはズレるかもしれないが、その時は素直に移動をやめて二人を待つ事になる。それにはちゃんと理由があって

 

「丁度その辺りから魔獣の出現率が高くなるんですよね」

「そうね。さすがにここら辺程のどかではなくなるわ。まぁ街道周りはそこまで出現しないハズだけど」

 

リンヴルムに向かうルートは魔獣の生息する森の近くを通る直進ルートと、安全な平野部を通る迂回ルートがあるが、迂回ルートはかなりの日数のロスになるし、直進ルートはリスクがあるとはいえ街道沿いならそこまで危険な魔獣に遭遇することはないということなので、俺達は直進ルートを進む事に決めている。

 

だがそれでもちゃんと護衛はいた方がいいということで、テイルさん達の合流を待つ頃にするにしているのである。俺達が待つ場合は途中の街で立ち往生という事をする必要もなく、普通に進んだところまでポイント設定した上で後はパストラに戻ってきて待っていればいいだけだからね。便利である。

 

魔獣自体は基本的にアキラさんで充分対処できる強さらしいし、例え対処できないレベルの奴が出てきても俺達の場合ポイントテレポートで即離脱ができるからリスクは少ないんだけど、アキラさん曰く「私攻めるのは得意なんだけど、守るのはちょっと自信がないから」との事なので。後アキラさんが守る側は置いておいて攻める側が得意ってのは非常に納得できます。

 

その点グウェンさんとテイルさんの護衛力の高さは、これまでの冒険で実証済みだからね。

 

「あと明日辺りからもしかしたらはぐれの魔獣くらいは見かける可能性があるから、少し術の練習もしておこうね?」

「あ、うん」

 

勿論守られる事だけを考えるんじゃなくて、自分の身を守るためにも術をいくつか追加で取得した。ただあまり練習できていないんだよね。パストラ出発するちょっと前に取得したし、バフ系じゃなくて動く相手に使用する奴だから街の中であまり練習できないし。

 

出発してからもここまでは馬車での移動だったり、一日の移動距離が長かったりして途中で練習って感じでもなかったしな。今日の街の近くにはそういうのの練習相手にもなりそうな奴いなかったし。

 

『カズサちゃん、アキラさんに練習相手お願いしてみない?』

『カズサちゃん、何なら自分にかけてみない?』

「アキラさんにそんな事できないし、俺自身にするのは意味がわかんねえよ」

「さすがにこれは私もお断りかな」

 

よかった、さすがにアキラさんも乗ってこなかった。リスナーが求めてる絵面はわかってるけどお前ら少しは自重しろよ? さすがのアキラさんもドン引きしてるからな。

 

「まったく……ふぁ」

 

呆れからくるため息を吐くのに続いて、自然と欠伸が漏れ出た。一度は消えていた眠気だが、戻ってきたようだ。

 

「そろそろ眠る? カズサちゃん」

「うん……限界も近そう」

「そうね、私も眠くなってきたし……それじゃ寝ましょうか?」

「うん、おやすみアキラさん……ベッド戻らないの?」

「戻らないわよ、温いし」

 

そっすか。まあ今更ぎゃーぎゃーわめかない、今回はちゃんとスペースもあるし。

 

『カズサちゃんカズサちゃんカズサちゃん』

「ん?」

『カメラ、ベッドの上に寝かせるように設置しない?』

「……どういう事?」

『いつもみたいに上の方に配置するんじゃなくて、二人の間のベッドの上に寝かせるように配置するの』

『それによって両側から二人の寝息が聞こえてきて、添い寝して貰っているという最高の体験を俺達はすることができます』

『術の取得でMP減ってるでしょう……(ねっとり)』

 

……いろいろ考えるなぁ、こいつら。後上記の発言全員別の人間なのにひどく連携している。どこかで共謀してきたな?

 

俺としてはカメラの配置位は別にどうでもいいんだが……。

 

「アキラさん、いい?」

「ええー、私とカズサちゃんの間に挟まって寝るのは贅沢すぎじゃない?」

「駄目だそうだ」

『姐さん、よろしくお願いします!』

『何卒! 何卒!』

 

そういったコメントと共に土下座のAAが大量に流れてくる。どこまで必死なんだよ。後アキラさんそのAAの意味わからんだろ。

 

だがその熱意は伝わったのか、アキラさんはちょっと眉を顰めた顔から笑みにその表情を変える。

 

「ふふっ、冗談よ。別に構わないわよ?」

『さすが姐さん!』

『カズサちゃんだけじゃなくて俺達まで弄ぶアキラさん……ありがとうございます!』

『ほら、カズサちゃんもアキラさんみて男心の手玉の取り方勉強して』

 

うるさいよ。

 

とにかくアキラさんが了承するなら、俺も今更抵抗する気はない。俺とアキラさんの枕の丁度真ん中あたりにカメラを上向きに設置する。……この位置だと添い寝というよりベッドに埋まってない? お前らがベッドってこと?

 

……やめよう、また寝れなくなる。余計な事は考えないようにして、と。

 

「それじゃお休み、アキラさん。皆」

「うん、おやすみカズサちゃん」

 

視線の先で微笑むアキラさんの顔を見ながらゆっくりと瞼を降ろし、俺は眠気にその身を委ねた。

 

 

◆◇

 

翌日。

 

目を覚ましたら前回みたいにアキラさんの胸に顔を埋めているなんてことはなかったけど、そのかわりに丁度カメラの辺りに寝返りをうってカメラに対して涎を垂らすという大惨事を起こしたことをお伝えしておきます。

 

ちなみにリアルタイムでは祭状態になってたらしいです。

 

カメラに対して涎を垂らす配信者とか前代未聞だろうからね……

 

 

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