お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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合流

 

『カズサちゃん、こないだと同じ配信またやろうよ。あの配信滅茶苦茶視聴者伸びたんだよ!』

『世界が求めているんだよ』

 

「世界って何の世界だよ……あとそうそう都合よくちょうどいい所に顔が行くわけでもないだろ」

 

『最初っからカメラの上でうつ伏せに寝ればいいのでは?』

 

「最初っからそれを目的でやったらもう完全に胡散臭いチャンネルなんだよ」

 

すでにいろいろやらかしているいる気がするけど、常時配信なんだから事故が起きるのは許して欲しい。当チャンネルは気持ち的には健全なチャンネルです。BANされると困るので。

 

『素材提供オナシャス!』

『お口のだらしないカズサちゃん本当に愛おしい』

『カズサちゃんよだれまとめ動画、すごい再生回数行ってるし間違いなく新しい新規リスナー獲得に導線になってるよ?』

 

「ちょっとまって何そのまとめ動画聞いてないんだけど!」

 

そこまで俺が涎垂らしているシーンってあったか!? と思ったけど、毎晩寝てる姿晒しているんだからそれなりにありそうだな。ぶっちゃけ俺寝相あんまりよくないし……というか、

 

「というか変態紳士はそろそろ自重しなさい。延々と涎の話していたら、若い子とか女の子とかご新規さんとか困惑するだろ」

 

さっきちょっと風景を見て間抜けな顔で口を開けていたせいか涎の話に流れたが、さすがに涎とかあまり綺麗じゃない話は断ち切っておきたい。

 

『ちょっとカズサちゃん! 女がカズサちゃんの涎に興味ないと思ってるの!?』

『美少女のだらしない姿が大好きな女の子だっているんだよ! 差別だわ!』

 

 

そういう話じゃねぇんだよ。というか変態淑女もお帰りください。

 

「ねぇ、よだれって何の話?」

「いやテイルさん、気にしないで?」

「あのね、テイルちゃん。こないだね?」

「アキラさんっ!!」

 

その涎の一件からすでに今日で3日目となる。先日パストラに戻った時にテイルさんから別件の仕事の方が完了したと連絡があったため、本日よりグウェンさんとテイルさんも合流している。ちなみにこの2日間はパストラに帰還して寝ていたので、アキラさんと寝たのはあの日だけです。

 

んで。

 

二人の合流に合わせるように、周囲の景色も変わりつつある。

 

ここまでの行程は概ね平野以外はそれほど規模の大きくない森林や田園風景が広がっていたりしたが、ここから先は凹凸のある地形へと変わっていく。遠方には背の高い山脈が見え、その前にもいくつかの小山や森が広がっている。

 

丁度先ほど一つの丘を越えたあたりで山は見えていたものの平野部も大きく景色が変わったので、思わず少し呆けてしまったくらいだ。その結果涎の話題が再燃したわけだけど。

 

「あそこを抜けて行くんですよね?」

 

とりあえず話題を逸らしたくて首を傾げるテイルさんといつものくすくす笑いを浮かべているアキラさんから視線をそらしグウェンさんにそう問いかけると、彼はコクリと頷いた。

 

「ああ、あのルートが一番近いからな」

 

俺の指さした先には、やや遠目ではあるが広大な森とそこそこの高さの山がいくつか並んでいる。高さとしては数百m程度ではあるがゆるやかな傾斜のそんな山がいくつか並んでいるので、丘陵地帯といった感じだろうか。確かにあれを完全に迂回するとなるとかなりのタイムロスになりそうだ。

 

「あの森すごいよー。いろんな生き物がいるからね! カズサちゃんのりすなーさんも喜ぶんじゃないかな」

「うん、結構楽しんでもらえるんじゃないかな」

 

横に並んできたテイルさんの言葉に同意する。

 

別に俺のチャンネルのリスナーは変態紳士や変態淑女だけというわけではないし、美少女の生活風景を見たいという人だけでもない。ファンタジー世界のリアルな映像を見たい! という人も多い訳で、そういった人たちには喜ばれるだろう。これまで生物とかは小動物を除けば殆ど遠目でしか映していなかったので猶更だ。

 

「その分危険性もあがるが、夜営の心配しないでいいというのは助かるな」

「夜何の心配もなく安心して寝れるというのはいいよねぇ」

 

こないだ遺跡の方に行った時はその道中は街にまだ近い事もあり、一応見張りは建てたとはいえ危険性は殆どない場所だったけど、あの森や丘陵地帯の当たりは街道沿いは比較的安全とはいえ野生の動物や魔物と遭遇する可能性はかなり高いし夜はそれほど安心して寝る事ができないだろう。それにルートによるが街道沿いは盗賊みたいな連中も出ると聞く。なかなか気の抜けない夜となるはずだ。

 

だけど俺達は俺とアキラさんの<<ポイントテレポート>>でパストラとの行き来が出来る俺達は、夜は自宅で寝れるためその心配がない。これは大きなメリットだろう。疲労も充分に回復できる分昼の移動も余裕をもって行う事ができる。

 

全員軽装ではあるけど、食料とか水とかは俺の<<インベントリ>>に格納しているだけなので物資だって万端だ。アキラさんが優秀な術者だし、グウェンさんとテイルさんの実力だってこないだの遺跡探索で実証済み。俺自身も戦闘自体はひとまず経験しているわけで、これからリスクのあるルートを通るとはいえあまり心配はしていなかった。モザイク機能導入したからエグイ映像が映っちゃう心配もないしね!

 

この機能がなかったら、ヤバい光景が映ってしまうのが一番の敵になってたからな。あの選択した俺偉い。

 

とにかく諸々の準備は万全。リンヴルムへの道のりへの懸念事項は無しである。

 

勿論、自分自身への強化も行った! 新しい術を2つほど獲得してある。

 

……うん、獲得した。獲得したけど、獲得しただけなんだよね。

 

 

なので──

 

「さて、そろそろ進むぞ。今日中にあの森の入り口までたどり着くには、あまりのんびりはしていられないからな」

 

グウェンさんが地面に降ろして置いた武器を手に取る。その答えに俺達も頷いて、少ない手荷物を背負いなおした。

 

今日はこの後ひたすら森へ向けて街道を進む予定だ。少々距離があるが、まぁ陽が完全に沈む前にはたどり着くことができるだろう。そこに<<ポイントテレポート>>のポイントを設置して今日はパストラへ帰還。充分な休養を取り、明日になったらいざ森の中の街道へ突入──する前に。

 

実践訓練を行うことになっていた。勿論俺の為だ。

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