『こんばんはー……あれ、作業中?』
『今モデリング中』
「あ、いや、今ひと段落ついた。大丈夫」
視線の端でコメントが流れたのを見て、俺はモデリングツールから目を離して前傾姿勢になっていた体を起こした。んー……胸にバラストがあるせいか、いつもより肩が凝った気がする。気のせいかもしれないけど。
『何モデリングしてたの?』
「下着」
『……あれ? 今日買いに行ったんじゃなかったっけ?』
「あー、服は買ったんだけどな」
3着ほど購入した。2着は外着で、1着は寝間着兼用の部屋着としてだ。値段的にもう少し買っても良かったんだけど、この宿が仮宿な以上あまり荷物増やすのも良くないと思ってそれだけにした。これでこの世界の服のサンプルは手に入れたわけだし、場合によってはモデリングしてもいいわけなので。ちなみに本当はズボンも買いたかったけど、皆の勧めで買ったのは地味なワンピースとブラウスにロングスカートである。
これは皆が俺にスカートを穿かせたがった……というわけでは(多分)なく、この街の住人を見る限り女性でパンツルックな人間は殆どいなかったためだ。こういう規模の大きくない街では、状況が見えていない間はあまり目立たない方がいいだろうと何人かに言われ、その意見に俺も納得したので従った。
後部屋着も配信に映る事を考えてダボっとしたものではあるが、外に来て行ける奴だ。
他にもリュックのような背負い袋と腰に下げるタイプの小物袋、それに財布を購入。全部ひっくるめて値段交渉の上小銀貨7枚となった──しめて7000MP也。
単純な現代日本に比べると恐らくこっちのが物価は安いけど、それでも今の全財産の4分の1近くなるので払う時ちょっとドキドキしたのは内緒だ。
ただ、今説明したラインナップの通り
「下着は買わなかったんだよ」
『なんで?』
『カズサちゃん好みの可愛い下着がなかったんだよ』
「違ぇよ、馬鹿」
勿論そんな理由ではない。
「紐で縛る奴しかなかったんだよ」
『え、紐パン?』
『それと褌っぽいつくりの奴な』
『あー、ゴムないから?』
「いや、ゴムはあるらしいぞ? ただそういった下着はくっそ高級品でしかないらしい」
要するに貴族とか富裕層向けだそうだ。なんで、平民向けの衣料品店にはそもそも実物がなかった。
あとそもそも今俺が穿いているパンツにはゴム使われてるしな。それでこの世界にゴムがないとなると俺のパンツがオーパーツになってしまう。
別に俺は中世にタイムスリップしたわけではないだろうし、何があるかないかは実際調べていかないとわからんな。
「というわけで自作する事にした」
『紐パンで良くない? 見せるもんでもないわけだし』
『ほどけないか不安になるんだそうだ』
……だって、そういうのこれまで身に着けたこと当然ないじゃん。結んでも動き回ってたら解けるかもしれないじゃん。ほら靴紐ってすぐ解けるし。
「というわけで、モデリング完了! 後は素材選択してテクスチャ塗って終わり! ……ってあれ?」
マテリアルの素材メニューを選んで、ゴムを選択しようとしたら……選択できない。なんでなんで?
あ……。
『どしたの?』
「……ゴム指定できない。ゴムだけで必要MP25000掛かる」
クソ高ぇ! 25000もあれば今の俺には10日分以上の生活費だぞ!?
『あー、これアレか。そっちの世界の希少度に合わせて消費MPの設定がかかってんのか』
『ゴム希少すぎワロタ』
『で、どーする? 足りない分投げようか?』
コメント欄の優しい書き込みに、俺は首を振った。
さすがに下着一着ではきついから複数作る必要があるし、パンツだけじゃなくて上も必要だ。それだけ作るといくらかかるかわからない。少なくともパンツ2着作るだけで20日分の生活費がある訳で。
「アシタヒモパンカッテキマス」
『なんか片言になってるけど平気?』
「ダイジョブ」
まぁきっちり縛ってれば大丈夫だろ、大丈夫。それに激しい動きをする予定があったら、その時は今穿いてる奴を使えばいい。うん、よし諦めた。
作者用メモ
前回残MP:31960
今回増減:
洋服代 -7000
残MP:24960