お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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目が覚めたら満天の星空

 

パチパチとした音と、喧騒の音がうっすらと耳に入ってくるのを感じる。

 

……パチパチって、これ焚火の音かな? たまに寝る時にチル系のBGMをあわつべでかけっぱなしにすることがあって、その中には焚火+BGMみたいなのもあったけど、別にBGMは聞こえないな……?

 

あー、でもなんかぽかぽかする。あれ、これリアル焚火? いやなんで部屋の中で燃えてるんだよ、火事か!?

 

そう思った瞬間一気に意識が覚醒し、パッと目を見開くと飛び込んで来たのは見慣れた天井……ではなく、満天の星空だった。

 

うわぁ、素敵なシチュエーション……ではなく。

 

音のする方に視線を向けると、そこには思った通り焚火があった。そしてその焚火の向こうにテイルさんとグウェンさんが座っている。

 

「あ、カズサちゃん起きた?」

 

俺が起きた事に気づいたらしいテイルさんが声を掛けてきて、それに合わせてグウェンさんもこちらを向いた。

 

俺はそれに返事する前にまずは体を起こそうとして──ついた手の肘の力がぬけて、自分が寝ていたシートか何かの上に速攻で戻る事になった。

 

「無理して起きる事ないわ、寝てなさい?」

 

頭上から聞こえてきたのはアキラさんの声。ああ、姿が見えないと思ったら俺の頭の上の位置にいたのか。顔だけ反らせて頭上を見れば、そこにはアキラさんが優しい笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 

見ていたんだけど……ごめんなさい、その前にまずその下にあるご立派な奴に目がいっちゃった。うん、顔より見やすい位置にあるから仕方ない。でも多分アキラさん視線に気づいてそうだし、後で揶揄われそうな気がするな。

 

「具合はどう?」

 

ただ、少なくとも今はそういうことをしてくる気はなさそうだ。アキラさんは俺の方に手を伸ばすと、顔に掛かった髪を優しくのけながらそう聞いてくる。

 

俺はそう言われて、初めて自分の体に意識をやった。

 

「えっと……正直ちょっと体が重いです。あと頭痛も少し」

「そう。とりあえずもう少し休んでなさい、今日はもうこのまま夜営だしね」

 

ああ、やっぱりそうなのか、と思う。焚火に照らされた周囲の光景は既に夜の帳が降りているし、見上げる空には星が瞬いている。どうやら結構な時間俺は眠っていたようだ。

 

体調は正直芳しいとはいえないので、俺はアキラさんの言葉の通りうつ伏せに体勢を整えて体の力を抜く。

 

──なんで今自分がこんな風になっているのかは、まぁ意識がなくなる直前の事をちゃんと覚えているので理解できる。あの後俺がぶっ倒れたせいで、帰還のテレポートを使えなかったから夜営となったんだろう。一応クーストスにアキラさんが仮でポイント設定をしていたハズだけど、それを使っちゃうと今日の一日の進行分がパーになっちゃうからな。たた一応持ってきている野営用の道具の大部分は俺の<<インベントリ>>の中だし……とそこまで思ったところで、俺は自分の体に毛布のようなものが掛けられている事に気づく。それに頭の下……枕のポジションにも布を丸めた何かがあるし、そもそも体の下にも何かが敷かれている。少なくとも地べたに直接横になっているわけではない。

 

一体どこから持ってきたんだろう。もしかして猟師小屋とか見つけてそこから借りたのかなと焚火とは反対側の方に視線を向ければ、すぐ側にカメラと、その先のコメント欄が視界にはいった。

 

『自分で置いたカメラにおどろいちゃうカズサちゃん可愛すぎない?』

『パチパチおめめ動かすの愛らしすぎる』

『添い寝気分で横になってたワイ、突然こっち向いたカズサちゃんを見て一日の疲れのすべてが吹っ飛んだのを感じる』

 

なんでこんな側にカメラがと思ったけど、そういえば<<チャージ>>を使う前に割と雑に口元にあったカメラを横にどけたからそれか。いやでも横向いたら自分の顔があったらそりゃ普通に驚かない?

 

『何にせよ無事そうで良かったー』

『仕事から帰ってきたらカズサちゃん寝込んでるんだもん。焦ったわ』

『アキラさんが魔力の過剰消費で気絶してるだけだから心配しないでっていってたし、大丈夫だろうとは思ったけど』

「……そういや、何でぶっ倒れたんだろ?」

 

コメント欄の言葉に、俺はふとそう疑問を得る。確かに<<チャージ>>を使う前に結構力を消耗していた感じはあるけど……<<チャージ>>自体は術を滅茶苦茶強化するけどその原資はMPであって俺の魔力じゃない。だからあんな一気に消耗するはずないんだけど……。

 

「カズサちゃんは、なんとしてでも治そうと思う気持ちが強く出すぎちゃったんだと思うわ」

 

そんな俺の呟きに、答えを返してくれたのはアキラさんだった。

 

「なんとしてでも助けるって強く思った結果、術の限界まで魔力をつぎ込んじゃったんだと思う。ただ本来ならそれでも術の最大出力には上限があるんだけど……恐らく<<チャージ>>の影響でその上限がおかしくなっていたのではないかしら?」

「成程……」

 

彼女の説明は納得のいくものだった。確かに<<チャージ>>を使った後は消耗が更にすごかったと思うし、間違ってないと思う。そんな説明は書いてなかったが、あのメニュー説明不足な所割と多々あるしな。

 

「となると、術の出力の制御の練習もっとしないとなぁ」

「そうね、習得は簡単にできるけど、修行は頑張らないとね。感情で術の威力が変わっちゃうのは一流の術士とは言えないわよ?」

 

そういってアキラさんは悪戯っぽく笑った。いや、一流の術士になるつもりもないですけどね? 取得方法はゲーム的なアレだし、なんの苦労もせず(いやMP稼ぐための努力はしてるが)術を取得している俺をそもそも術士といって良いものか。

 

「まぁ、そういった話は元気になってからにしよ? それよりカズサちゃんお腹すいてる? スープあるけど」

「あ、うん。すいてるかも」

 

テイルさんに言われて意識してみると、確かに空腹を感じた。周囲も暗いし結構な時間寝てたっぽいから当然といえば当然か。

 

「そっか、おっけおっけ」

 

俺の答えにテイルさんはうんうんと頷くと、焚火の上に設置されていた鍋から木製の食器にスープをよそい、その食器をもって俺の下に寄って来た。そして背中に手を回して体を起こしてくれる。

 

「結構熱いから、僕が冷ましながら食べさせてあげるね」

「え、いや食べるくらいなら……」

「いーからいーから、遠慮しないで?」

 

テイルさんは俺の言葉を全く気にせずスープを掬い取ると、ふーふーと何度か息を吐いて冷ませてからスプーンをこちらに差し出してきた。

 

「はい、あーん」

 

こんな美少女にふーふーからのあーんをしてもらえるとか、俺前世でどれだけ徳を積んだんだろ? いや、その美少女と同じ布団で寝たこともあるんだけど! 今後ろにいる美女とも!

 

あっちの世界じゃ絶対にありえないシチュエーションだぜーと思ったけどこっちで起こる事大抵あり得ないシチュエーションだし、なんならこっちに来た事自体がありえない事だけど。

 

「カズサちゃん? あーんだよ?」

「あ、はい」

 

あかん、目の前の光景に一瞬思考が飛んでたぜ。

テイルさんの催促に口を開くと、スプーンが差し込まれた。味はシチューみたいな感じかな? 暖かいけどやけどする程ではない程よい温度。さすがですテイルさん。

 

「はい、もう一口。あーん」

「あーん」

 

『これはてぇてぇ』

『定期的に百合営業してくれるカズサちゃんねる最高です』

『テイルさんその場所変わって』

『カズサちゃんその場所変わって』

 

いやこの程度で百合営業は言い過ぎでは? いつものアキラさんが仕掛けてくるのは、そもそもアキラさんがそういうのを意識してやってるし営業という言葉は否定できないけどさ。後うちのチャンネル名はTS少女育成計画であってそんな名前ではない。

 

それと最後の二人、それリスナー同士になるけどええのか?

 

その後沸き立つコメント欄を後目にテイルさんの冷ましてくれるスープを美味しくいただいて、大分お腹も膨れてきた頃の事。ふと、その場にいる面子以外の声が聞こえた。

 

「ああ、よかった。彼女、目を覚ましたのか」

 

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