お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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リンヴルム到着

 

翌日は馬車での移動となった。用意してくれたのは当然騎士団の方々である。

 

先日、一足先に戻った騎士たちからの連絡を受けて怪我人(いや、怪我自体は治ってるけど)の輸送の為、派遣されて来たらしい。その一台を割り当ててくれたのだ(というか、割り当てる用の奴をそもそも送ってきていた)

 

正直、これは助かった。先日の術の行使による魔力欠乏からはまだ回復しきっておらず、だるさがかなり残っていたからだ。昨日の行程は途中で終わってしまったのでリンヴルムまではまだ距離が割と残っており、そこまでを歩いていくのは正直無理だったと思う。かといってずっと抱えて運んで貰う訳にもいかないしね。さすがに一日ずっとそれは迷惑かけすぎだと思うし、何より人目の少ない森の中とはいえ恥ずかしいし。

 

なのでありがたくお言葉に甘えることにした。

 

ちなみに俺がこんな状況であまり動けないし、外の景色も森で殆ど景色変わらないし、そもそも御者もすぐ側にいるからあまり話しかける事もできずリスナー相手は放置状態になってしまうため、出発前に今日は見なくていいよーと伝えたんだけど……なんか割と視聴者が多い……

 

ちらっと小声で何見てるのって聞いてみたら

 

『美少女達が楽しそうに話してるだけで天国なんだが?』

『みんなの話し声BGMにして作業してる』

 

というまぁ割といつも通りの答えの他

 

『まことに申し訳ないんだけど、けだるそうにしてるカズサちゃんにちょっと色気を感じてとても良いです』

 

みたいな意見もあった。

 

いや、これなんとなくわかる気がしちゃって微妙に突っ込みづらい。勿論俺自身に対してどうのという話ではなくて、そういうシチュエーションで色気を感じちゃうのがわかるというか。中身は健全な男の子なので。現在彼女がいるわけでもないのに、最早女体は見慣れてしまったという訳の分からない状況になっている男だがな……

 

あと見慣れたのは自分の体だけだけど。他の人のは慣れてないです。

 

閑話休題。

 

馬車での旅は何かトラブルが起きる事もなく、俺はたまにうとうとしたりそのまま寝たりコメント欄で『カズサちゃんヨダレやったー!』とか言われて慌てて口元を拭ったりしているウチに、やがて目的のものが見えてくる。

 

 

「うわぁ、すっご」

 

太陽が頂点を超えて大分すぎた頃になると、リンヴルムを囲う城壁が見えてきた。

 

それなりに背の高い木々の多い森を抜けたわけでもないのにその向こう側に見えるその壁は、恐らく5m以上あるのではないだろうか。パストラも街の周囲に壁はあったけどパストラ周辺は危険の獣や魔物の類は殆どないため場所によっては壁というより、囲いといったレベルの場所も多かった。

 

それに対してこれはまさに砦! という感じだ。所々屋根がある場所は物見櫓みたいな感じなんだろうか? 人がいるかは……見えないけど。

 

『そこは「うわぁ、おっきぃ」でしょ?』とかいうコメントが目に入ったけど、それは無視して、と。

 

「立派な壁だねぇ」

「ここいらにでる魔獣の中には軽く人の背の倍くらいは飛び跳ねる奴もいるからな。これくらいの高さは必須なんだよ」

「飛行型の迎撃にも出来るだけ高さがある方が有効だしね」

 

俺と同じように壁を見て目を輝かせるテイルさんに、恐らく過去に来た事があるんだろう、グウェンさんとアキラさんが解説をしている。

 

でも、そっか。こんな高さの壁が必要になるような魔物が、この街の周辺にいるのか……

 

そう思った瞬間、先日の魔物の亡骸や血だらけの騎士達の並ぶ光景を思い出してしまう。

 

「……カズサちゃん大丈夫? 寒い?」

「あ、ううん、平気」

 

思い出した光景に思わず震えたのを、寒くて震えたのかと勘違いされたらしい。アキラさんが心配げに聞いてきたので、首をふるふると振って否定しておく。

 

うん、震えている場合じゃないよな。その魔物とか獣たちを配信のネタにするためにパストラから離れたこの城塞都市までやって来たんだから。

 

未だ俺がこっちの世界にやって来た理由は明確にわからないけど、アキラさんの情報等からある程度予想はできてきつつある。その予想があっているかは全然わからないし、あっていたとしても俺が実際の所どのようにかかわっていくかだってはっきりしていないけど、今回のようないざという時のための力を溜めておくべきだろう。

 

そして俺にとって溜めるべき力はMP一択。……いや基礎体力や魔力、それに覚えた能力を使いこなす技術も磨くべきではあるけれど、何よりも優先すべきはMPの獲得なのは間違いない。何より昨日殆ど<<チャージ>>で使っちゃったから、現在殆どすっからかんだ。リンヴルムついた後……まぁ体調が戻ったら用意してある衣装でコスプレRPするからそこである程度は取り戻せるだろうけど、それだけじゃ足りないしな。怯えている場合じゃない。

 

うん、がんばろう。

 

◇◆

 

リンヴルムに到着して俺達はアイリーン様達騎士団の面々とは別れる事になった。

 

といっても、これで彼らとは縁が消えるというわけではなく、俺の体調が回復した後に礼をしたいからと再会の約束をした。というかさせられた。

 

礼は別にいいので、出来ればそっとしておいてもらった方が助かる気もするけど……今後多分ギルド経由でリンヴルムで動いたりするだろうし、リンヴルムのギルドは騎士団からの要請も多々あると聞く。あまり強く断ると後で微妙な事になるだろうから仕方ないな。

 

とにかく現状は俺がまだ体をずっと起こしているのは怠い事(アキラさん曰く、このだるさは人にもよるが数日は続くらしい)、アイリーンさん達も傷は塞いだとはいえ重傷をおっていたので念のため医師による精密な検査を受ける必要がある事、そしてそもそも今日は時間が遅い事もあり数日後に改めてギルド経由で連絡を受ける事になった。

 

なんかなんなら泊るところとかも斡旋してくれそうな勢いだったけど、そういうの逆に落ち着かなさそうだしな。

 

それに今は俺の状態がこれなんでしないけど、回復したらパストラとも行き来するだろうからあまりすぐ呼び出されそうな場所はよくない気もするし。

 

これから先、リンヴルムには長期滞在するからな。今日はとりあえず時間もそれほど早い時間でもないし俺の体調もアレだから割と高めのお宿をとったけど、明日以降はもう少し長期滞在に向いた部屋を借りる予定。場合によっては宿ではなく一軒家を借りるのも手だしな。<<ポイントテレポート>>と<<インベントリ>>でいろいろものを持ち込めるから、なかなかに都合がいいし。

 

まぁなにはともあれ、まずは俺は体調を戻さないとだけど。

 

とりあえず今日も早めにお休みなさーい。カメラは俺の顔の上に固定しておくので(変な方向に向けておいて同室のテイルさんやアキラさんの着替えとか映ったら不味い)俺の可愛い顔を見て我慢しててくれ、リスナーの皆よ。

 

いや冗談でもこんな事いったらずっと擦られるからいわないけどな!

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