『うおおアキラさんめっちゃかっけぇ!』
『出来る女感が凄い……! いや実際アキラさんは出来る女だけども』
『テイルちゃんみたいな元気っ娘が、こういう大人しそうな恰好してるのよくない?』
『この姿もいいけど、ミニスカメイドの方が絶対似合うと私は思います』
王子様達への謁見をしたその翌日。
これからリンヴルムで本格的に動きだすにあたり、まずは激減しているMPを確保しようという事で久々となるコスプレ配信を行う事にした。
元々リンヴルムに到着後に行う予定だったので、衣装自体はすでに準備済み。場所としても家を借りているから問題ない。ちなみに王子様からの報酬で金銭的にかなり余裕が出来たので、もう少し広い家を借りる? という提案をしてみた。すでに同室でいいという話はしていたんだけど、俺と一緒だと常時配信に巻き込まれるから予算に問題が無ければ別室がいいと思ったので。
結論からすると契約したばっかりで、当面分の賃貸料も払った直後だったのでこのままでOKとなった。まぁ同室で寝るのはもうなんどもしているか今更だし、借りた家の内一室は結構広いからカメラの画角に気を付ければそこまで行動が制限される訳ではないので。着替えの時は……まぁ俺が表に出ておけばいいだろう。
一緒に寝たりもしているし、着替えくらい今更では? とリスナーはいうし、二人も別に気にしないというけど俺が落ち着かないんすよ。間違いなく視線そっちにいっちゃうし、生唾を飲み込む音とか二人に聞かれたらいたたまれないし。
繰り返すが、自身の裸と他者の裸は違うのである。相手が気にしていない以上後は慣れでは? と言われるとその通りなんだけどな。少なくとも純粋な男時代に比べればそういった事は平気になってきているとは思う……ただこれに慣れすぎると元に戻った時に不味いので俺は男のちょっとむっつりした心を持ち続ける必要はあると思います。
それに事故回避を考えると、俺は席を外しているのが正解だとは思う。下手に慣れた結果カメラ固定忘れて振り向いた結果二人の裸映しちゃうとかあったら大惨事なんで。
閑話休題。
そういうわけでそれなりに広い俺達3人の自室にて、コスプレ配信を今から行う事になったわけだ。そう、3人で。
以前から配信に協力すると言ってくれていた二人は、このコスプレRP配信に関する協力も快く受け入れてくれた。そして先に着替えてもらい、カメラの前に出て貰っている。
今回の衣装に関して、RPが絡む事もあり衣装の系統は統一していた。
アキラさんはテールコート……すなわち、執事服。テイルさんはメイド服だ。正直申しまして二人とも滅茶苦茶に合っていると思います。
アキラさんの方は男性向けの燕尾服イメージだが特に胸を抑えつけることはなく膨らみはそのまま、髪は結い上げてポニーテールにしているので男装というよりはそのまま女性のイメージのままで、だが滅茶苦茶格好よく仕上がっている。
逆にテイルさんの方は普段は結い上げている髪を降ろしている。身を包むのはメイド服だ。某電気街近辺とかで見られる丈の短い奴ではなくクラシカルなロングスカートの奴な。前回の俺が着ていた膝丈くらいの奴よりも全然長い奴。リスナー要望はミニスカメイドだったけど、穿かせる訳ないだろ! テイルさんはくるくる動き回るから危なっかしいし……事故るのは俺だけでいい。いや、俺も事故りたくはないけども。
で、だ。
肝心の俺の恰好なんだが……正直これまで何度もコスプレしているし、今回の衣装は露出も少ない。正直あまり気にせず着れる恰好だと思ってたんだ……昨日までは。
「姫様、こちらへどうぞ。皆さんお待ちかねですよ」
固定したカメラの範囲外にいる俺に対して、アキラさんがそう口にしながらを差し出してくる。
……うん、まぁいつまでもこうしているわけにもいかないし。覚悟を決めよう。俺は差し出されたアキラさんの掌に指をあわせるように手をそっと重ね、エスコートされるようにしてカメラの中へと姿を現す。
途端、コメント欄が滝のような勢いで流れ出す!
『うおおおかわええええええええええ!』
『なんかいつもより照れてる? 可愛いけど』
『これは間違いなくお姫様ですわ』
その言葉にとある理由から顔が熱くなるのを感じながら俺はアキラさんから手を離し、スカートを掴めながらゆっくりと片足を引き、もう片方の膝を曲げるポーズを取る。俗にいうカーテシーという奴だ。先日アイリーン様が行ったものの見様見真似である。
──そう、今日の俺の恰好はドレス姿。お姫様コスである。
見た目上はレースもふんだんに誂えられた豪奢なドレス。胸元などの部分には色とりどりの宝石──に見せかけたガラス玉が飾られている。当たり前である。モデリングしたものをそのまま物質化させる能力はその素材によってコストが跳ね上がる。MPを集めるためのコスプレRPでMP浪費するのは本末転倒なので、すべて色付きガラスで対処した。ついでにいえばドレス自体の素材も安価なもので済ましている。
それでもまぁ問題なかったのだ。何せ見せる相手はこの世界の住人ではなく、配信を見ている日本人たち。日本でドレスを見る機会なんてそれこそテレビとか動画くらい、後はそれこそせいぜいコスプレくらいだろう。そしてコスプレ衣装にさすがに本物に準じた素材などは使われない。だから近くで見ればチープなものでも全く問題なかったのだ。
……昨日、本物を見ていなければ。
自身でわかる。本物を見た後だと俺が着ているのは明らかにバッタもんである。というか、宝石とか素材とかに限らず装飾部分は全般的にこっちがチープっすね。まぁ元の世界で得た記憶とチラ見した書物からの情報、それにテイルさんやアキラさんからの口頭の聞き取りで作ったんだ、俺は頑張ったのは間違いない。
そもそもがコスプレでしかないので、ぶっちゃけドレスがチープに見えるようになってしまったのは多少アレな気持ちはあるものの恥ずかしいと思っているわけではない。別に俺職人じゃないし。
じゃあなんで恥ずかしがっているかというと……わかるだろ?
ガチお姫様見た翌日に、お姫様のRPをさせられるんだぞ?
いうなれば、ガチプロの歌手が歌った後に、その人と同じ歌を歌わされるような気分である。しかも全国ネットで。今回事前告知していたから視聴者数万人単位になってるんだぞ。まだ増え続けてるから、もう一つ桁が上がる可能性もないとは言い切れなくなってきている。
しかもその事前告知をしてしまっていたせいで逃げられないという……生き地獄である。
なあ、俺どうすればいい? 昨日のアイリーン様をトレースすべき? でもあの気品は一朝一夕でまねできるものじゃない。だったら別方面に振り切るべきなのでは?
そんな事を考えている最中に、テイルさんの方から「姫様、ご挨拶を」と声を掛けられた結果
「貴方達! わたくし、カズサが今から貴方達のお相手をして差し上げますわーっ!」
気が付けば俺は後ろに高笑いでも着きそうなセリフを口走っていた。