お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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軌道修正不可

 

あああああ、アイリーン様とは離れたキャラで行こうと思った結果変なセリフを口走ってしまった!

 

これあれだな? 考えすぎた結果、日本にいた時呼んだコメディ作品に出てくるポンコツタカビーお姫様のキャラクターだな!?

 

左右を見れば、執事姿のアキラさんとメイド姿のテイルさんがきょとんしとした顔でこちらを見ていた。うん、そうだよね! 最初にこのRPをやるって話をした時は、普通におしとやかなお姫様の演技をするって話をしてたもんね。

 

思わず、頬が熱くなっていくのを感じてしまう。

 

それでなくてもこのRPは羞恥心を感じるものでもあるのに、誰からも言われたわけでもないキャラクターを無意識に出してしまった。これほど恥ずかしい事はないだろう、俺は思わず顔を抑えると膝の力が抜けてしゃがみこんでしまう。

 

いや、なんなん、俺……過去に読んだ作品に出てくるお姫様のキャラクターなんていくらでもいるだろうに、なんでそこを選んだ俺の無意識……

 

どうするんだよこの後……元の路線に軌道修正するか? それとも別のキャラクターを考えるか? 今あんまり頭回ってないんだけど……

 

「姫様」

 

座り込んで顔を覆ったまま思考の渦に飲まれていると、頭上からアキラさんの声が掛かった。その声に誘われて顔を覆う手を外し視線を上げると、アキラさんが優しい笑みを浮かべてこちらに手を差し伸べていた。

 

「皆さまがお待ちですよ。ご心配なく、私の姫様なら大丈夫です。ほら、立ち上がって姫様の可愛らしいお姿を皆に見せつけましょう」

「そうですよ、姫様! その姿もすごくお似合いですし何の心配もいりません!」

 

いやテイルさん、恰好が恥ずかしくて座り込んでいたわけじゃないんですけどね? 恥ずかしくないわけでもないけれども。

 

ただまぁそもそもこのままにしているわけにもいかない。俺は覚悟を決めて立ち上がると、正面に配置したカメラとコメントの方に視線を向ける。

 

『想定外のお嬢様キャラきたこれ』

『高慢お嬢様系? カズサちゃんのイメージとはだいぶ離れたキャラだな』

『滲 み 出 る ポ ン コ ツ 臭』

『かわいいからヨシ!』

『これ、カズサちゃんの反応見るに用意していたキャラと別キャラがとっさに出ちゃったんじゃ? 昨日のアイリーンさん見て恥ずかしくなっちゃったのかな?』

 

 

最後の奴はプロファイリングの専門家か何かなの? 理由を寸分たがわず当ててるの何なんだよ。

 

……だが、反応は悪くないか。だったらもうこのまま行くしかないだろう、別のキャラクターの案も浮かんでいる訳でもないし、なによりもう軌道修正出来る空気ではない気がする。

 

俺は心を決めると、びっとカメラの方に指を向けながら声を張り上げていう。

 

「ほーほっほっ! この高貴なわたしくがお前達庶民の相手をして差し上げますわ! わたくしの美しい姿をその瞳に収めながらこのわたくしと会話できる栄誉をかみしめなさい!」

 

……なんかどんどんキャラクターが変な方向に言っている気がするけど、もう気にしない!

 

『言ってる事は高慢だけど、顔真っ赤だからもう無理して虚勢を張ってるポンコツお嬢様にしか見えない』

『可愛いがすぎる』

『最近カズサちゃんちょっと照れが減ってきてた気がしたけど、滅茶苦茶照れていて実にベネ』

『わからせたい。わからせたくない?』

 

ああもう受けてるしこのままでええか。精神面がいつにもまして疲弊しそうだけど今更だ。ただわからせは拒否するが。カメラの前のリスナー相手にはともかくさすがにテイルさんやアキラさんの前でそんな醜態さらしたくない。

 

「姫様、こちらに」

 

アキラさんが優雅な仕草で椅子を勧めてくれる。動き自体はお姫様ポジの俺より全然洗練されているのがアレ。

 

ちなみにいつもと違って早々椅子に座るのは既定路線。このドレス姿かなーり動きづらくて(ちなみにそこまで本格的な話ではなくあくまでコスプレでしかないので、体のラインを整えるためのコルセットなどはいれていない)くるくる動き回るのはしんどいのと、俺がずっと立って動き回っているとせっかく一緒にコスプレしてくれているアキラさんやテイルさんが控えているだけになっちゃいそうなんだよね。

 

「ありがとう、アキラ」

 

うっ、アキラさんを呼び捨てにするのなんかむず痒い。そしてアキラさんいつものニマニマ顔が出ちゃっているので気づいてそう。でもこのキャラクターで執事やメイドに対してさん付けもないしなぁ……

 

「姫様、こちらをどうぞ」

 

席に着くと目の前の小ぶりなテーブルに、すっとティーカップとお菓子が盛られた皿がテイルさんの手によって差し出される。ちなみにこの紅茶はテイルさんがちゃんと入れてくれたいお茶だ。彼女は一時期喫茶店のようなところでバイトしていた事があったらしく、こういった事はできるとのこと。

 

男の頃の俺だったらテイルさんみたいな子がバイトしている所だったら頻繁に通っちゃいそうだなぁ。いや今の俺でもテイルさんがこんな格好でバイトしてたら通っちゃいそうだけど。

 

後うちのリスナーがこっちの世界にこれたらその店常時満員御礼になりそう。ただそうなった場合俺も大変な事になりそうなので絶対に起こって欲しくない。

 

俺がこっちに来た方法いまだに謎だけど、それが解明されたらこちらの方に来れる可能性がないとはいえないからなぁ。まぁ戻る方法が不明な以上そうそうその選択肢を選ぶような人間はいないだろうけど。俺みたいにチートもらえるかも不明だし。俺がこっちの世界に来る切っ掛けになあった可能性があるVRCのワールド、他のリスナーが確認しても見当たらなかったらしいから、その可能性が低いとは思うけどさ。

 

とりあえずそんな事を考えつつも、差し出された菓子に手を付ける。──あ、美味しい。近隣で見つけた店から適当に買ってきたけど、これは行きつけの店にしていいかも? 俺料理は出来るけど、菓子とかはあんまり作れないしな。

 

「姫様」

「ほへ?」

 

配信中だというのにお菓子にきを取られてもぐもぐと味わっていると、再びアキラさんから声を掛けられる。味に気を取られていたせいで間抜けな声で反応をしつつ彼女に顔を向けると、何故かアキラさんが俺の頬に手を当ててきた。

 

「にゃにゃにゃ!?」

 

突然感じた少しひんやりしたアキラさんの手の感触に、困惑の声が口から漏れる。だがアキラさんはそれを気に留める様子もなく、優し気な微笑みを浮かべ、

 

「口元に菓子の粉がついてしまっています。拭わせて頂きますね」

 

そう告げるとハンカチを取り出し、俺の口元を拭ってくれた。

 

「はい、姫様の愛らしいお顔も綺麗になりました」

「でも先ほどの姫様も、可愛らしくて良かったですよ?」

 

なんかテイルさんも持ち上げて来たんだけど?

 

想定外のアキラさんの行動と続くテイルさんからの追い打ちで、ようやく冷めてきたと思っていた頬の火照りが再び強くなってきた気がする!

 

『いいよいいよそういうのもっと頂戴!』

『アキラさん一瞬こっち見てウィンクしたな。さすが俺らの求めるものをわかってらっしゃる』

『AKR!AKR!』

『弱ったところを見逃さないテイルちゃん流石』

『もうすべてが可愛いんだけど?』

『可愛い』

『可愛い』

『可愛い』

 

あ、コメント欄の方で可愛い連呼されたらなんか逆に落ち着いてきたわ。面と向かって可愛いと言われるといまだに照れは出るけど、リスナーに可愛いと言われるのはもう完全に慣れてしまってるんだよな。こいつら俺が何しても大体可愛いって言ってくるし。

 

その後一応当初の予定通り俺が姫、二人がその従者として、リスナーからの要望のシチュエーションのRPを行うなどした。ただキャラはそのままでいったので、本当に予定通りかと言われると疑わしいところではあるが……その予定通りにいかなかったキャラに対してきっちり予定通りのRPをこなしてくれた二人はすごいと思う。ちなみにやったのは概ね物語によくあるシチュだけど、アキラさんが俺に対して跪いて掌にキスをするシーンとか(これもくっそ恥ずかしかった)テイルさんにお姫様抱っこされたりするのは明らかに執事とメイドじゃねぇよなぁ?

 

まぁ何はともあれ大好評で終わったので良しとしよう。途中でキャラが行き過ぎてアキラさんがちょっと笑いすぎてたけど。

 

大体30分ちょっとの時間をかけて、いつもより精神的に疲れた気がする(自爆な気がするが)、リスナー希望のシチュエーション実行のターンは終了。この後は別のコーナーに入ります。なんかいよいよ何かの放送じみて来たな? いや放送だけど。

 

『もう終わりかぁ』

『満足感が高い』

『切り抜き師、頼むぜぇ。俺この回無限リピートしたいんや』

『テイルちゃん、アキラさん、ありがとうございます!』

 

ちゃんとお礼を言えるのは偉いね。

 

「というわけで、次のコーナーに参りますわよ! 心して聞きなさいな!」

 

まぁコーナーいうか今後の方針の話をするだけなんだけどね。

 

後キャラはもうこのまま行きます。リスナー喜んでるし、俺もなんだか楽しくなってきちゃったし。冷静に考えればギャグ的なノリで行けるだけ、以前の妹キャラとかよりは楽な気がするしな!

 

後で後悔しそうな気もするけども!

 

 

 

 

 

 

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