お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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撮影手法

 

『まずは、森の中に入る理由を考えなきゃいけない感じ?』

 

 

最初に目についたのは、そのコメントだった。まぁ観光目的とか絶対通らない理由だし、配信の為とかは納得どころか理解すらしてもらえないだろう。

 

ただこの件に関しては、一応案があるので首を振る。

 

「一応ギルドから仕事を受ける形で森に入る方法はあるんですのよ」

『あったねー』

『うむうむ』

 

ギルドに行っていた時に視聴していたであろう面子から、同意のコメントが返ってくる。

 

「森の進入禁止の理由になっている森の魔物達の生息域の変動ですけど……当然調査が必要なのですわ。でもレンオアム大森林は広大。街の防衛等にも人員を割かなければいけない騎士団では人手不足。なので、ギルドの方にも調査依頼が降りてきておりますの。ただ状況が状況ですので、それなりの実力が必要なのですが……」

 

そこまで話してからちらりとアキラさんの方に視線を向けると、その視線に気づいたアキラさんがにこりと笑ってからカメラの方に向けてドヤ顔でピースサインをする。なんかかわいい。

 

「……こっちにはアキラさんがいるので、問題なく受注できますわ」

 

探索者協会のギルド証はファンタジー物でよくあるようにそれぞれの等級がわかるようになっている。これはまぁ当然と言えば当然だよな、そういった目安となる基準がないと仕事の受発注がやりづらいし。パストラで上位の実力者であるアキラさんの等級は当然高く、またその等級がなくてもギルドの人間が名前を知っている程度には実力も知れ渡っている。グウェンさんもアキラさん程ではないにしろ充分に実力者と呼べる等級になっている。グウェンさんとコンビを組んでいるテイルさんも言わずもがな。俺も例の魔石集めやアンノウンの件もあり一応初心者クラスは抜けている。更にはアキラさんが緊急回避手段である<<ポイントテレポート>>が使えるので仕事自体の受注は問題なくできる。

 

『あれ、だったらその仕事で森に入れるから問題ないんじゃないの?』

「それがそう簡単にはいかないんですのよ。私達が森に入る理由はあくまで調査の為。調査ルートはある程度決められておりますし、長期滞在する事もできないんですのよねぇ……」

 

元々リンヴルムでの魔物や動物観察はある程度森の中に滞在して行う予定だった。そりゃそうだ、相手は生き物相手である。ただふらふらと森を歩いて遭遇できる可能性がそれほど高くない。元々は大体の生息地帯はわかっていたから、そこの近くで張って観察する等を考えていたのだ。俺達の場合<<インベントリ>>があるからいろいろ現地に持ち込むのも容易だしな。

 

だがこの状況下だとそうもいかない。さらに魔獣の生息域が大幅に変わってしまっているのもあってエンカウントするのは完全に運次第となってしまった。

 

しかもさすがにこの調査の仕事、毎日行うようなものでもないし……他にも受注者いるし、実力はこっちが上でも森に対する知識があるリンヴルムをホームとする探索者の方が受注しやすいんだよな……

 

「というわけで、相談内容はその限られた時間の中でどうやっていい映像を抑えるかなんですのよ。一応思いついたのは、以前のアンノウンの時のようにカメラを森の中に設置してくることなんですけれども……」

 

『絶対にNO!』

『完全に悪手だよ。チャンネル登録者激減しちゃう』

『虚無映像になる可能性が高すぎるでしょう』

『カズサちゃん達を映さなくしてまでやる事じゃないよ』

『毎朝カズサちゃんの寝顔におはようって声かけてからつらい仕事に向かう私の癒しを取らないで……』

 

「……だよなぁ」

 

非難轟々である。まぁ予測はできていたけど。

 

アンノウンの一件の時に行った定点カメラ方式だけど、あの時は限られた時間の話だったし、皆に犯人発見の協力要請をしたのもあってか皆も乗り気だった。皆の相手が出来ない時間の解消っていうわかりやすいメリットもあったしな。

 

それに対して今回はもっと長時間になる事は確実。カメラ自体は固定解除をすれば手元に戻せるんだけど、一度戻してしまえばまた設置しに行かなければいけないから気軽に手元に戻せない。そうなると数日単位で配置しっぱなしになるんだよなー。

 

しかもそれだけ放置しても取れ高があるか怪しいという……それこそ俺やアキラさん達をただ映しているだけの方が視聴者が伸びるのは間違いない。

 

『なんか撮影系の魔法とかないの? 魔石泥棒の時なんか聞いた気がするけど』

『遠視の術とか、確か能力リストの中にあったよな』

「あー、遠視は駄目じゃないかな?」

 

掲示された案に、否定的な言葉を発したのは俺の横からコメント欄を覗き込んでいたテイルさんだった。

 

「レンオアム大森林は木々の密度が高いから、遠視系の術じゃ視線が通らなくて意味がないと思うよ」

「だよね」

 

ここまでくる途中に抜けてきた森も結構な密度だったし、リンヴルムの東側に位置する中心部分に向かう方面は更に密度が高いとの話だ。森の外から見たくらいじゃアレは本当に外周部しか見えないだろうな。そもそもそれができるなら調査もわざわざ森に入らないでもできるだろう。

 

『それ以外にもいくつか、撮影系の魔法合ったよね』

『確かアキラさんと初めて会った時に撮影術つかってたよね』

 

よく覚えてるな。もう何か月も前の事だぞ。

 

「<<レコーディング>>ね。あれは一応術として設置も出来るけど……その場合だと継続時間がそれほど長くないのよね。魔力を回収しに行く前に拡散しちゃうわ」

「離れた場所の状況をリアルタイムで映す術もあるんですけれども、これは有効距離がそこまで長くないのですわよね……」

 

結局どの術も問題があって無理なんだよな……

 

んー、どうしよう。リンヴルムの街の散策一通り終わったら、やっぱりこちらの状況が落ち着くまでパストラに戻ってこれまでと同じような配信をすべきだろうか。1、2か月くらいたてば状況が変わってくる可能性もあるし……

 

『そちらの世界にカメラみたいなのはないのかな。魔術ではなく道具で』

『魔道技巧だっけ? そのアイテムで<<レコーディング>>みたいなことができる奴ってあるのかな』

「どうなのかしら、アキラさん?」

「ある事はあるわね。ギルドや国が状況を記録して国等の分析機関に回したりするのに使っていたりするし」

 

『あるの!?』

『それでいいじゃん!』

 

「コストパフォーマンスが悪すぎるわね。ギルドや国が使うのも短時間の撮影に使っているだけだし……」

 

『でもカズサちゃん達魔石なら大量に用意できない?』

 

「あ」

「あ」

「あ……ですわ」

 

俺達は三人で顔を見合わせる。

 

「そっか、普通だと考えられないレベルの魔石の無駄遣いになるから自然と意識から外してたけど……」

「カズサちゃんがいれば、ボクたち普通に魔石自力入手できたね」

 

テイルさんとアキラさんが頷きあうと、こちらを見た。

 

「確かに……王子様からもらった報酬で金銭面はかなり余裕ができたから魔石を売って稼ぐ必要は当面なさそうだし……ただ、今在庫はないよ?」

 

あ、口調元に戻っちゃった。まあいいや。

 

俺のその言葉にアキラさんは頷き、口元に手を当てる。

 

「そうね。クアンドロ地下遺跡の封鎖が解かれていないと、無理か」

「それに撮影用の道具も手に入れられるかだね。アトランド商会で取り扱ってるかな?」

 

あー、いろいろ確認しないといけない事があるか。でも、

 

「検討に値する案ですよね、これ」

「そうね、一度パストラに戻っていろいろ確認しましょう」

「りょーかい! なら今日にでも一度戻って明日動くことになるかな? グウェンにも伝えなきゃ!」

 

とりあえず仮方針決定、かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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