お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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水場だけどサービスの水着シーンはないよ

 

「おお……マジで来た……!」

 

眼前に映る光景に思わず漏れる声。そしてその言葉に反応して即座にコメントの流れも勢いを増す。

 

『おめめきらっきらで今日も可愛い』

『多分現れた魔物の姿を見たいけど、このカズサちゃんも見ていたいというジレンマ』

『こういうのに反応するのを見ていると、カズサちゃんが元は男の子だったという信じがたい情報を思い出すんだよな』

 

いや、こういうのに反応するのは男だけってわけでもないだろ。今の世の中そういった発言は炎上の元だぞー……って違う違う、なんで男として見られる事に否定的な思考を持っているんだ俺は。違うぞー、男としてみられて不満とかじゃなくて、単純に昨今の状勢における発言への気遣いを行っただけだぞー。

 

……誰に対して弁明しているんだろ、俺。ただ考えただけで口にしてないんだから弁明はいらんだろうよ。

 

後元男だって事わすれんな。うちのチャンネル名を思い出せ。

 

そもそも、そんな事よりっと。

 

「ごめんごめん、ちょっとカメラ向けるね」

 

休憩してから再び森の中の移動を再開した俺達は、グウェンさんのいう通りそれほど時間がかからずに目的地に到達した。

 

目の前に広がっているのは澄んだ水が流れる川。いや、それほど深さもないし歩いて対岸に渡れそうな程度のものなので、イメージ的には川というより沢っていう感じだろうか。

 

レンオアム大森林だが、北側に山脈地帯を抱える為か、森の中にはそれほど大きくはないが川がいくつも存在している。それが最終的に一つにまとまり下流で大きな川となっているらしい。

 

そう、俺達が目指したのはその川のある場所……というか水場だった。

 

一部の例外があるが当然レンオアム大森林に存在する魔獣達もその大半は生きていくために水を必要とする。その中でも特にサイズが大きい種族にかんしていえばより多量の水を必要とするため、こういった水場に姿を現す可能性が高い。

 

当然その分ヤバイ魔物の類に遭遇する可能性も高いため、今回戦闘力、退避力が高い俺達がここに割り当てられたわけであるが……正確にはここは最終目的地ではないんだけど、さっそく目の前には獣の姿が見えた。

 

なんだろう、形状的には小型の犀? あるいは恐竜の類? みたいな大きく俺の動物の認識から外れるわけではないけど地球では見なさそうな(別に地球の動物知り尽くしているわけではないから絶対とはいわないが……)獣の親子らしき姿を、カメラに映す。

 

『ああっ、カズサちゃんがカメラからフェードアウトしちゃった……』

 

ちょっと距離があるから、カメラ少しズームしないと解りづらいんだよ。んでズームした状態で俺らも一緒に映そうとするのは無理があるから我慢してくれ。

 

「あれはパノだな……テイル、記録」

「あいあい、了解」

 

カメラを操作して仲良く水を飲む獣の親子の映り具合を調整している俺の横で、グウェンさんとテイルさんがそうやりとりをし、テイルさんは懐から取り出したメモ帳にサラサラっと何かを記述する。

 

今回の俺達の目的は動物撮影の為のカメラの設置だけど、それとは別に依頼事項はちゃんと行わないといけない。やらないといけないことは森の中で遭遇する生物の分布調査だ。ここまでも俺は歩くのに必死だったけど、他の三人は役目をきっちりこなしていくつかの生物の名前をメモしている。

 

それにしても、あの動物の名前パノっていうのか。地球上の生物と同じかかなり近いと思われる生物の名前の場合俺が認識する名前は地球のものになっているから、やっぱあれは地球上には類似も存在しない生物だな。多分。

 

「あ、ほらほらあっちにもいるよ」

「あ、ほんとうだ……」

 

アキラさんにポンポンと肩を叩かれて指さされた方を見てみれば、そちらには今度は大型の鳥がいた。ちょうどパノの親子が水のみを終えて森の方へと歩き去って行ったので、今度はカメラをそちらへ向ける。

 

「どうする、ここに一個設置しちゃう?」

 

そんな俺の様子を見て、メモを終えたテイルさんがそう声を掛けて来た。設置しちゃうとは魔道技巧の記録装置の事だ。

 

「ああ、確かにここは悪くないかもな。視界が開けている」

 

グウェンさんの言う通り、鬱蒼と茂る森の中沢を取り囲む範囲がいくつか岩場となっているせいか、周囲の木々が途切れ開けていた。その更に先を見ると沢の周囲まで緑が広がっているからここは撮影ポイントとしてはかなりいい場所かもしれない。他の場所だと動物が現れても結構木の陰になっちゃいそうだし……

 

向けられた視線に頷きを返し、<<インベントリ>>の中にしまっていた記憶装置の中から一つを取り出してテイルさんへと手渡した。受け取ったテイルさんはそれを片手に持ちながら器用に一番沢よりの木に登ると、手際よく枝と幹の付け根の所にカメラを固定する。

 

「あんまり強く固定すると<<アポート>>が効かなくなるから、ほどほどにね?」

「難しい注文だなぁ……でも了解。えっと……これくらいかな?」

 

下から掛けられたアキラさんの声に頷き、固定する縄の強さを調整する。それからそれをゆすってみせるとアキラさんがOKを出したので、テイルさんがするするとまた素早い動きで木を降りてきた。

 

「これで一個は設置完了だね。いいのが映るといいね、カズサちゃん」

「うん。ありがと、テイルさん」

 

ここに来てそれほど経っていないのにすでに2種確認できたし、なかなか期待できるんじゃなかろうか。

 

ちなみに設置した記憶装置の回収だけど、わざわざここまで再度やってくるということはない。というか森への侵入が制限されている現状そんな短期間でまた同じ場所にやってくるのは無理である。そしてあまり時間がかかりすぎると魔石の魔力が尽きて記録が消えてしまう。

 

そんな時に役に立つ魔術が<<アポート>>である。この魔術はマーキングしておいたアイテムを手元に転移させるというもの。うん、<<ポイントテレポート>>みたいな魔術があるんだからこれもできるよね。

 

ただこの魔術、マーキングできる数に制限があるし、効果期間制限もあるのでなかなかに使い勝手が悪い。現在地から移動するより現在地に呼び寄せる方が術としては難しいらしく、サイズ的にも人のサイズとかは無理。そんな使い勝手の悪さに加え、俺の場合<<インベントリ>>で必要なものは基本持ち運べるので取得予定はないんだけど……幸い転移系の適正を持つアキラさんが習得していたので彼女にお願いする事にしたのである。正直彼女が使えなければ俺が覚えるところだったけど、結構なコストがかかるようだったので助かった。

 

回収は二日後の予定である。最大限長い時間が持つように魔石をガン詰みしたけど、それでもこれが限界だったんだよね。

 

「よし、じゃあ本命に向かうか」

 

設置を終える間、沢の方ではなく後方を警戒してくれていたグウェンさんがそう口にする。

 

そう、この場所は俺達の本命ではない。ここから下流に降った場所……それほどいかない場所に、この沢の水が流れ込む池がある。そこならここよりもっと多くの獣がやってきているハズだ。

 

 

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