お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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映りこんだ人

 

『ところでカズサちゃんは何書いてるの?』

 

「ああ、これ?」

 

ふとコメント欄に流れた疑問に答え、俺は木の板の上にあった紙を手に取るとカメラの前に掲げる。

 

『あら可愛い』

『カズサちゃんイラストのセンスもあるのか』

 

そこに書いてあるのは、デフォルメされた魔物のイラストと、日本語で書かれたその魔物の説明文だった。

編集した動画を流すときにただ流すだけじゃ味気ないと思って、配信時に使うフリップみたいな感じで用意した。

 

イラストに関してはさすがに本職絵師様とかとは比べるのもおこがましいが、一応は書けるんだよね。少なくとも動物や魔物のデフォルメイラストくらいは書ける。反応もいい感じだな。まぁリスナーは俺に対していろいろ甘いところがあるからその評価はあまりあてにならないかもしれないが、うん、自分でもなかなか上手く書けたんじゃないかなと思う。

 

ちなみに説明文は、板の横に置いてある本から翻訳して転記したもの。本自体はアキラさんが用意してくれた。

これを皆が映像監視してくれている間に作ってたって訳。なんかこういう作業しているの結構ひさびさだったから楽しくなっちゃったので鼻唄とか歌ってたんだよな。足ぱたぱたは無意識だったけど。

 

ともあれリスナーの皆の協力のおかげで、動画編集は順調だ。数日後には本番配信も可能になるだろう。土日まではまだ日があるから今週中にはいけるかな。

 

まぁ作業を手伝ってもらっている以上結構な人数の人が映像を見てしまっているので、純粋な初見な人の割合は結構減りそうだけど……

 

『でもなんかこうしてると、カズサちゃんと一緒に作業している気分がしてきてなんか楽しい』

『俺明日学校で美少女と長時間一緒に作業してたんだぜって自慢するんだ……』

『こういう企画、今後もたまにやってくれると嬉しい』

『推しの役に立てる喜び』

 

といった感じで、喜んでくれている感じなのでいいだろう。それにこうやって協力して何かをするコンテンツは結構いいかも? こちら側だと企画ネタはあまり思い浮かばないけど……それも皆と話し合って考えてみるとかもいいかもな。

 

『カズサちゃん、動物?でたよー』

『魔物出現であります』

「っと、マジ?」

 

コメントに教えられて映像の方を見たら、映像の中に確かに動く何かが映っていた。しかも大分手前側から現れたのでがっつり映っている。

 

映ってるんだけど……

 

「うわ、キモ」

 

それの姿は上半身は猿の様で、下半身は蛸のような姿だった。なんというか生物的にアンバランスな感じがして、思わずそう口にしてしまう。

 

『スキュラ的なモンスターっぽい?』

『こーゆーのは上半身は裸の美女だろ……? なんで猿やねん』

『エロ同人属性を持つカズサちゃんは絶対に遭遇しちゃいけない相手だな……』

『同人では見たい気持ちがないとはいえないけど、リアルでみたら精神が死ぬんだわ』

 

だからそんな属性は持ってねーんだわ。まぁそんな謎属性とか関係なしにあまりエンカウントしたい姿じゃないけど。

 

というか、これどうしよう? キモイ事はきもいけど、生理的嫌悪を催すほどではないし保存しとくか。ある意味こんな明らかに化け物的な奴はファンタジー世界らしさを感じるしな。

 

映像を姿を現す直前まで戻し、映像の再生速度も等速に変えてから、俺は撮影用の予備の記録装置を手に取って映像を撮影する。この最中はカメラに背を向けることになるけどしゃーなし。

 

ちなみに、音は記録していないので喋るの自体は問題ない。術的には音も記録できるらしいけど、その分魔力のコストもかかるらしいので、今回みたいな長時間の撮影には向かないので。

 

「ん、よし」

 

映像の中の猿スキュラ?は湖の中に入ると、その触手で数匹の魚を捉えてからフェードアウトしていった。その場で食べなかったって事は子育て中か何かだったのかね。

 

記録装置の動作を止めてか、カメラの方へ向き直る。

 

「教えてくれてありがとね、〇〇さん」

 

今回最初に報告してくれた人の名前は認識できていたので笑みを向けつつ、名前を呼んで礼を言う。仕事手伝ってもらった報酬がこれだけでいいのかという気がしなくもないが、呼ばれた人たちは喜んでいるし他のリスナーも褒めたたえたり羨んでいるようなのでいいのかな。というかこの人数で個別の人にこれ以上の事をするのはなかなか難しいところではあるし。

 

さて、それじゃアイツの名前とか調べるか。ベッドにコロンと転がり、置いてある本を手に取る。割と特徴的な外見だし探すのは難しくないかな。

 

ぺらぺらとページをめくりつつ、コメント欄の方もちらちらとチェックする。教えてくれるのを見逃すわけにもいかないからねー。

 

『カズサちゃんカズサちゃんカズサちゃん、ちょっとさっきの所戻して。アイツが魚を獲ってたあたり』

 

ほら、こんな感じで……って。

 

「え、なんか見つけたの?」

 

もしかしてあの時、何か他にもいたってことかな? とりあえず指示された所辺りへと映像を戻す。

 

「この辺りかな……」

 

そこから改めて再生をかけた。

 

『カズサちゃん、手前じゃなくて対岸の森の辺りを見てて』

「ん、OK」

 

成程、そっちか。当然さっき見た時は猿スキュラの方に意識がいってたからそっちは視界に入ってなかったわ。言われた通り、そちらの方に意識を向ける。目の前に来てる奴の絵面が強いのでもってかれそうになるが……でも対岸の方向だと大分遠めになるから、映像としては使えるかなぁと思うけど。サイズが大きい魔物とかだったらワンチャンって感じかなぁ。

 

えーっと……別に何もいな……いや、小さいけどいるな。

 

いや、これって……

 

「人、か?」

 

そう、人だ。というかこれ記録装置を設置しにいった時に俺だけがみた人間じゃないか?

 

今流した映像は、設置に行った日の翌日だ。という事はコイツ、あの辺りにキャンプでも張ってなにかしているってことか? 目的が見えないが……

 

『あー、これもしかして撮影の時にカズサちゃんがいってた人か』

『完全に人だなぁ。動画には使えんか』

『スキュラ擬きと同じタイミングだから普通に使われるけどな』

『あー、怪物じゃなかったか、残念』

 

うん、これはもうただの映り込みの人みたいな扱いかなー。何しているかはほんと謎だけど協会には人がいた可能性は報告済みだから俺達がこれ以上気にする事でもないし。

 

普通に考えれば密猟者的な感じなのかねぇ? ただだったらあの時普通に俺達がいたのに姿を現したのが本当に意味不明だけど。

 

ま、いっか。そんな事想像したところで意味ないし、今はそれより動画編集っと。

 

──なんてことを、この時は考えていたんだけど。

 

 

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