お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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不安になる符号

 

「アンデッドかもしれないわ、これ」

 

一通り動画編集を終えた日の夜の事。

 

動画編集と共にフリップ擬きも完成させたが、あくまで外見と本に描かれた絵を比較して判断しただけなので、帰宅したアキラさんに一応チェックしてもらうにした。

 

いやまぁそこまで正確な情報をリスナーが求めているわけでもないだろうけど、〇〇です!って言い切った後に、別の所で実は××だったとか発覚すると格好悪いからね。ほぼ確実にしばらくは擦られると思うし……

 

で、編集した映像を見せつつ確認をしてもらっていた所、丁度例の人影が見えたところでその部分をもう一回再生しなおす事を求められた。そしてその映像をじっと見つめた後、やや困惑の見える表情で告げた言葉が先の言葉である。

 

「アンデッド……?」

 

言われてこっちも改めて映像を見るけど、何せカメラの目の前ではなく湖の向こう側だ。はっきりとわからない。

それはリスナー達も同様なようで、『なんでわかるの?』 といった言葉がいくつもコメント欄に流れていた。

 

そんな俺の視線とコメントに、アキラさんは映像を指さして答えてくれる。

 

「勿論断定できるわけではないのだけれど……密猟者の類にしては肌の色が青白いし、動きもおかしいのよ。可能性として病人の可能性もあるかもしれないけど、今あの森にそんな状態の人間がいるのはおかしいでしょう」

 

言われて改めてじっと見てみる。

 

……確かになんか不健康そうな肌色に見える……かな? 言われて見れば、確かにそう見えるかも……ってレベルではある。でもアキラさんが言うんだからそうなんだろう。

 

動きの方はその肌色よりは解りやすかった。確かに危険度の増しているあの森の中を歩いているにしては周囲を警戒するどころかまるで夢遊病の人間のようにふらついているように見える。街中ならまだしもあの場所にこんな動きをしている人間がいるのは違和感があった。勿論、あの近場で何らかのモンスターに毒なり魔術なり喰らった可能性もあるとは思うけど。

 

『さすがアキラさん、目の付け所が違うぜ!』

『さすアキ! さすアキ!』

『モンスター紹介文追加かな、これ』

「いやぁ、アンデッドでゲームとかならともかく現実だとそのまま動いている死体だろ……? さすがに悪趣味が過ぎないか?」

 

そんな事をリスナーと俺がやりとりしている中、アキラさんは何やら考えているようだった。

 

「どうしたの、アキラさん。確かにアンデッドかもしれないけど、別にそれほど珍しいものでもないでしょ?」

 

アンデッドはさすがにそこらにぽこぽこ存在するものではないけど、激レアモンスターというほどでもない。そう思ったのだがアキラさんの話によると、多種多様の生物がひしめくというレンオアム大森林だがアンデッドが見られる事は殆どないという。

 

「勿論、北方から流れ着いてきた可能性はあるんだけど……」

 

アストラ王国より北方にある国(例の"巫女"さん達がいるという国だ)ではアンデッドが珍しくないという事だし、そういった魔物が他の地方まで移動するような事はない話ではない。ただ彼女の言い方だと懸念点があるようなので、俺はそのまま次の言葉を待つ。

 

そうして十数秒くらいまったあたりで、再びアキラさんが口を開いた。

 

「あのね、カズサちゃん。過去にカズサちゃんみたいに異世界からやって来た人間がいたって話覚えてる?」

「……はい? それは勿論覚えてるけど」

 

なんか話がいきなり飛んだなと思いつつ頷きを返すと、アキラさんは言葉を続ける。

 

「じゃあそれと同時に未知の怪物が現れているってのは?」

「それも勿論……もしかして、あいつが俺が召喚された理由だったり?」

「いやそれは飛び過ぎよ。別にアンデッドは未知の怪物じゃないでしょう?」

「あ、はい……」

 

『これは恥ずかしい』

『カズサちゃんはあわてんぼうさんだから仕方ないよ』

『触りの情報を聞いて、その途中でああ俺はすべて理解したぞって奴大体外れるよね』

 

スキを見つけた瞬間煽りに来るのやめろや。ちょっと思いついた事口にしただけじゃん。

……とりあえず話をぶった切っちゃうからカメラ睨みつけとくだけにしておこう。どうせそういう視線も喜ばれるんだろうけど意思は示さねば。

 

「続けるね?」

「あ、はい」

「話戻すけど……あのね、アンデッドってこの文献で確認する限りは500年前まではこの世界には存在しないものだったのよ。大分昔の話になるけど……その時代より前にアンデッドと思われる存在の記述はないの」

「ということは、アンデッドに関しては500年前にこの世界にやってきた異世界の怪物ってこと?」

 

俺の言葉に、アキラさんは頷く。そしてコメント欄では、

 

『今度はあってた!』

『カズサちゃんえらいねぇ、かしこいねぇ』

『まぁこれ誰でもわかったと思うけど……』

 

カメラに対して中指立てていいか?

 

「そのアンデッドの王は、異世界転移してきた人間が主となって滅ぼしたらしいんだけど……その最終決戦になったのがレンオアム大森林の最深部だったらしいのよね」

「マジすか」

「考えすぎだと思うけど、いろいろ噛み合っちゃうじゃない?」

「確かに……」

 

アキラさんの懸念の理由がようやくわかった。

 

普段出現しないアンデッドがレンオアム大森林に出現した。これだけならさして気にする事はなかっただろう。だけど現在レンオアム大森林では深部の方から多数の魔物がまるで何かから逃げるように移動してきているという異常が起きている。更に過去にその場所でアンデッドの王が滅ぼされるとなると……

 

「怖い考えが浮かんでくるかな……」

「でしょ?」

 

『大丈夫? 夜一人で寝れる? 一緒に添い寝しようか?』

『アキラさんとカズサちゃんの間にカメラとコメント欄おいて一緒に寝ようぜ』

「そういう意味の怖いじゃねぇよ」

 

あと添い寝はただのお前らの欲望からくる願望だろ。

 

「でも、どうしようこれ」

 

嫌な事に気づいてしまったわけではあるがあくまで想像でしかないし、そもそも俺達ただのリンヴルムに滞在しているだけの旅行者みたいなもんだからなぁ……

 

「とりあえずアンデッドの事は報告してみるわ。 明日出かける前にさっきの所魔術で撮影させてもらっていいかしら」

「それは全然問題ないけど……俺達が森から戻ってきてから大分日付立っちゃってるけどどうするの?」

「そこは正直に、撮影していたデータを確認していたら気づいたって事でいいんじゃないかしら。知識欲が強い私が研究の為に記録していたみたいな感じで」

 

まぁ問題ないか。何にしろ俺達はしばらく森には入れないし、後はギルドの方に任せるべきだな。

 

『しかしアンデッドとか最初の街以来だねぇ』

『あの時のカズサちゃん格好良かったよ』

『カズサちゃんの無双見れちゃう? 見れちゃう?』

 

正直な所アンデッドとは遭遇したくないなぁ……グリッドの街であったのは生きている人間に憑依している奴だから外見的には問題なかったけど、ゾンビとか絶対グロいしあまりリアルで遭遇したくないだろ。

 

 

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