『招集とな?』
『カズサちゃん何しでかしたの!?』
『カズサちゃん安心して……俺達ちゃんと出所してくるまで待ってるからな』
「いや何もしてないからな!?」
そもそもトイレとかの短時間を除いてずっと俺の姿は配信上に映ってるんだから、何かしてたならお前らも知ってるだろうがよ。
「ふふっ、ぷんすかしてるカズサちゃんも可愛いからってあんまり揶揄いすぎちゃだめよ」
『小学生なのかな、ここの男子共は』
『でもカズサちゃんの怒り顔が可愛いのも事実。なんというか小動物っぽさがある』
『はーい、ごめんなさいアキラさん!』
「いや俺に謝れよ」
後、小動物っぽいって何? そこまで迫力ないって事?
「ま、リスナーちゃんと戯れるのはそこまでにして、話を進めましょうか」
「あ……そうだ、招集って何?」
「先日アンデットの件ギルドの方に報告したじゃない?」
「うん」
例の映像に映りこんでいた人影の件なら、アキラさんがギルドに報告したのは聞いている。
「その報告を受けてギルドの方でその辺り注意して探索を行ったらしいんだけど……他にも2体、アンデッドが発見されたそうよ」
「他にもって事は、映像に映っていたアレとは別個体?」
俺の問いに、アキラさんは頷く。
「人型じゃなくて、レンオアム大森林に生息する生物がアンデッド化したものだったらしいわ。しかも、そのうち一体はレンオアム大森林でしか見かけられない固有種だったらしいの」
「げ」
それは……あまりよろしくない情報かもしれない。
「となると、レンオアム大森林で新たに生まれたアンデッドであると?」
「レイスか何かが憑依しただけかもしれないから、断言はできないわ。でもこれまでレンオアム大森林でそういった類は見られる事はほぼなかったのよ」
成程、話は分かってきた。
「さすがに放置できる状況じゃなくなってきたと」
「そういう事ね。私達が懸念していることは、当然彼らも懸念し始めたわ。それにともなって、リンヴルムの司令部は大規模調査をする事を決定したみたいなの」
リンヴルム、というかこの世界の人間だとあまり考えたくない事なんだろうけど、現在アンデッドの存在は確認されていないレンオアム大森林で立て続けにアンデッドが見つかっている。そして過去レンオアム大森林はこの世界にアンデッドが生み出される原因となった存在との最終決戦が行われてる。
過去のこういった話はそこまで受け継がれている感じではないっぽいけど、さすがにレンオアム大森林の魔獣達を抑えるために存在しているといえるリンヴルムなら知識として知っている人間はそれなりにいるだろう。そしてそういった人間なら、当然過去の話と今回のアンデッドは紐づけるはずだ。
特に……確かレンオアム大森林の深部から、そちらを生息域にしているハズの魔獣の類が移動してきているらしいからな。
「成程、それでアキラさんに声が掛かったと」
アキラさん実力者だからなー、と思ってそう口にしたら、そっこうで彼女の口から否定の言葉が飛び出してきた。
「何言ってるの? 声が掛かるのはカズサちゃんよ」
「へ? 俺?」
「カズサちゃん、ギルドの方に<<ピュリファイ・スピリット>>を使える事申告してるでしょ」
「あ」
確かにそうだ。
「リンヴルムとはいえ、普段はアンデッドは出現しないもの。希少な浄霊系の術を使える人間はかなり少ないわ。人材確保の為にリンヴルムの首脳部はギルドに要請するだろうから、登録している人間は皆声がかかるわよ。スケルトンやゾンビとか程度ならいいけど、それこそレイス辺りに遭遇したら困るもの」
「ごもっとも……」
グリッドの街での一件が脳裏に浮かぶ。あの時に比べれば装備は充実しているだろうし、拘束系の術を使える人間も多数いるだろうから動きを止めるくらいなら問題なくいけそうだけど、だとしても憑依された人間が無事でいられるかはかなり怪しくなるからな。そういった存在がいる可能性がある以上、浄霊能力者は確かに同行させたいだろう。
「で、よ。招集があった場合、カズサちゃんはどうしたい?」
「へ、どういうこと?」
「別に招集は強制じゃないもの。断る事も可能だけど?」
「あー、そっか」
別に軍属じゃないもんな。襲撃をされるとかだったら事実上強制招集に近くはなりそうだけど、調査だけならあくまで任意の協力要請か。
ただ断った場合は、今後リンヴルムでは動きづらくなりそうだよなぁ……そういった仕事は受けないのに近場の調査案件は受けるのは何なんだって思われそうだし。後、リンヴルムの上層部に繋がりが出来ちゃってるしなぁ……
それに……ちょっと考えてる事もある。
「なぁみんな」
俺はカメラの方に向き直り、リスナーに向けて話しかける。
「俺さ、別に自分が救世主だー! みたいな事を言う気はないんだけどさ、でもいまだに状況が良く見えないじゃないか? だからある程度積極的に動いた方がいいと思うんだけど、どう思う?」
どんどんこっちの世界に馴染んできちゃってるし、大分こっちに来て時間が経っちゃった事とアキラさん達と出会ったことでとにかく早く日本に戻りたいって気持ちは薄れてきてはいるんだけど……ただやっぱり自分がこちらに来た理由がいまだにわからないのがもやもやするんだよな。
勝手に呼び出されて世界を救えーって言われてじゃあ救います!ってほどおめでたい頭はしていないけど、何も知らないでこのまま過ごしていざという時に困るってのもいやなんだよな。
とはいえじゃあそういった事を知るためのヒントは殆どないわけで。今の所はアンノウンくらいだったけど、今回の件が例えば過去の俺と同類が関わっている話なら、もしかしたら何かあるかもしれないじゃん? いや、万に一つの可能性があるかもしれないじゃん?
なんてそんな考えをリスナーやアキラさんに語ると、皆が意見を返してくれる。それは背中を押すようなものもあったし「危ないからやめた方がいい」って意見もあったけど。
『もしかしたらアンノウンが関わっている可能性もあるしな』
……そっか、こないだスケルトンになってた奴もいたからな、その可能性もあるのか。
『そういった場所にいけばフラグが立って新たな能力とか解放されるかもしれないしね』
これも確かになと思った。グリッドでの初戦闘の時とか、アキラさんにいろいろバレた時とかに能力や機能覚醒もあったしな。アレ結局具体的な条件は解ってないけど、少なくともアキラさんの時はMP条件ではなく行動でフラグがたったわけだし。それを考えるとやっぱり積極的に動くメリットはあると思う。
結局それらの意見が最後の一押しになり、最終的には依頼があった場合は受諾することに決定した。
めちゃくちゃ危険な事に飛び込むことはないけど、今回も調査でこないだの延長上であり危険があれば<<ポイントテレポート>>で緊急回避できるしな。まったくリスクはないわけではないが、それを言ったら例の地下遺跡探索だって充分リスクがある話だし。
それに断ってしまうと今の状況下では今後森の中に入る依頼が受けづらくなりそうだし、あとまぁちょっとアレな話だけどより深いところにいくなら撮れ高が期待できるなーって事もひっそり思った事もあったしね。ま、最終判断は今パストラに戻ってる二人の意見も聞いてからになるけどさ。
『そっか。じゃあ行く日がきまったら告知はまかせろー』
『またあの汗だくでちょっとエロい感じがするカズサちゃんの素材が増えるのか!』
告知はいつもありがたいけど、素材って何の素材だよ。