というわけで、(あくまで依頼が来たらだが)レンオアム大森林のより深い位置に潜る事が決まって。
いくつか持っていくものとかまた購入しておかないとね、とかアキラさんと話していたら、リスナーから『新しい能力も取得した方がよくない?』とコメントされた。
「確かに、追加で何か覚えてもいいかもしれないな。結構MPも溜まったし」
<<チャージ>>で一度ほぼ使い切ってしまったMPだが、お姫様コスプレRPや今日の配信とその準備配信、それに実際にレンオアム大森林に行った時に投げて貰ったスパチャで<<チャージ>>を使った時の倍のMPがすでに溜まっている。
『今いくらくらい溜まってるんだっけ』
「えっと……278万と8980だな。いつもありがとうございます」
『いえいえ』
『大分たまったなー』
『さっきの配信でも結構飛んでたもんね』
『やっぱりリアルでいたら絶対にPTAから苦情が来そうなエロ女教師コスは凄いな!』
あの格好で実際教師やってたら苦情が来そうなのは同意するけど、今日スパチャが飛んできたのは頑張って作った映像の効果だからな!?
──そう言う事にしておいて欲しい。しておいてくれ。
『んで、能力を取るとして何を取るの?』
『<<チャージ>>用に、前回と同じ分くらいはMP残した方がいいかな?』
『やっぱアンデット向け能力じゃね』
「んだね、とりあえず半分くらいは残しておきたいかな」
これだけMPがあれば高威力の術も覚えられるんだけど、現状の俺は高威力の術を覚えても使いどころがないからコスパが悪いんだよね。ぱっと考えて高位術で取った方がいいかもっていうのは回復系くらい。それ以外の術を取るくらいなら、大抵の術に適用できるから汎用性が高い<<チャージ>>のためにMPを残しておいた方がいいのは間違いないと思う。
それに俺の場合MPがありさえすれば、いざという時にその場で能力覚えて使うって事もできるからな。少なくとも半分くらい……150万前後は残しておいた方がいいよな。それだけ残しても130万くらいは使い道があるわけで……んで、アンデッド向け能力かー。
「確かにアンデッド対策として依頼されるのに、使えるのは<<ピュリファイ・スピリット>>だけってのはちょとアレか」
「それに懸念事項を考えると、アンデッド対策はしておいた方がいいかもね」
「だとすると、えーっとこの辺りにアンデッド系の術が……ああ、あったあった」
アキラさんもリスナーの意見に賛同して来たので、俺はメニューを開くとうろ覚えの記憶から取得可能の術の一覧を操作し、アンデッド向けの魔術が並んでいる辺りを表示する。
「《ジャッジメント》《サンクチュアリ》《ポセッションガード》《コンセクレーション》……この辺りかな?」
『《ジャッジメント》とか《サンクチュアリ》とか中二病患者が好きそうな名前だな』
『カズサちゃん使う時決め台詞言って欲しい感がある』
『どんな能力なの?』
「あっと……カメラに映す?」
「私にも見せてもらえる?」
そう口にしたところで、右側から柔らかい感触が来た。先ほどまで正面にたっていたアキラさんが、一覧を見るためにこちら側に移動して来たらしい。覗き込むようにしてきたからぎゅっと体が寄せられてるし、なんなら顔も近い。
そしてそれに合わせて俺の問いに対するコメントが一定方向にまとまる。
『あーダメダメアングルはそのままで!』
『今映像が天国だから! 変えちゃ駄目!』
『魔術リスト君、君には二人のご尊顔を超える価値はないのだよ』
『カズサちゃん内容読み上げてー』
「はいはい」
まぁただの文字列見るだけより美女美少女がくっついているのを見ている方がお前らはるかに好きだもんな、そうなるよな。
それにしても、今日もうっすらとアキラさんいい匂いするな。お風呂上りって訳じゃないから香水使ってるのかな? この匂いを堪能できるのはこの場だと俺だけだぞ羨ましいだろとかリスナーを煽ってやろうと一瞬思ったが、そんな事いったら最後間違いなくアキラさんに弄られまくりそうなので踏みとどまった。
「……?」
そこでちらりと彼女の横顔をみていたら、視線に気づかれたらしく顔がこちらを向いてニコリと微笑まれた。
うっ……いくら近くでも見慣れているとはいってもこの滅茶苦茶近い距離でその笑顔は破壊力が強すぎますよアキラさん、顔が良すぎる……! ベッドで一緒に寝ててもこんな顔が近い事はそうそうないからなぁ。
『おっと突然見つめ合い始めたぞ』
『メトメガアウー』
『これはとても良いスメルが感じがしてきたわね……』
『チューしろチュー』
あ、コメントみたら落ち着いたわ。今更こんなコメントで過剰反応しねぇからな?
『なんか口元に手をやってるけど、これ無意識っぽいかな?』
『反応かわい』
……。
「とりあえず魔術の説明見ましょうか、アキラさん」
「? そうね」
アキラさんがこっち見てたおかげでコメント欄みられてなくて良かったわ。
露骨に話を戻した俺の反応にコメント欄にいくつもの突っ込みがみられたが、ガン無視をして俺は魔術をそれぞれ読んで説明を始める事にする。いつもの事だが相手をしすぎていると話がいつまでたっても進まないからな。
「ええっと、まずは《ジャッジメント》だけど……これは単純だな。《ピュリファイ・スピリット》の強化版だ。《ピュリファイ・スピリット》では浄化しきれないより高位な霊に対して使うらしい」
『いらなくね?』
『例のレイスでも《ピュリファイ・スピリット》で対処できたし、使いどころ限られそう』
『最悪ノーマル《ピュリファイ・スピリット》で対処できない奴がでたら《チャージ》でいいだろ、これ』
「だよなぁ」
今後俺が対霊を専門としてやっていくならまだしも、今の所使い所はレンオアム大森林だけだ。そして単発レベルでいえば多分《チャージ》の方が効果が高いだろうし、取得する価値は薄いよな、これ。取得対象からは外していいだろう。
えっと……他も効果としてはわりと単純だから一気に説明しちゃうか。
「続けていくけど、《サンクチュアリ》は範囲に対する浄化術、《ポセッションガード》は憑依に対するプロテクションみたいな効果の術、《コンセクレーション》は武器とかに実体化していない霊にダメージを与える力をエンチャントする魔術だね」
『取得MPはどれくらいかかるの?』
「《サンクチュアリ》が70万、《ポセッションガード》が15万、《コンセクレーション》が34万だって」
『《サンクチュアリ》は便利そうだけど高いな』
『数が多く出てきた場合には役に立ちそう。数が出てくれば、だけど』
『《チャージ》でなんとかなる部分じゃないからありっちゃあり』
《チャージ》はあくまで威力をあげるだけで、効果の内容を変える物じゃないからな。ただまだアンデッドの類がぞろぞろ出てくるかわからない状態だとちょっと取得は躊躇するコストなんだよな……。
『《コンセクレーション》はそれ使うくらいだったらカズサちゃんが《サンクチュアリ》でぶっ飛ばせばいい気がする』
『分断して行動することにならない限りはあまりいらないかな?』
『何より優先して取るべきは《ポセッションガード》でしょ?』
「ん? なんで《ポセッションガード》が優先すべきなの? 予防的な意味で?」
値段も安いし。
「一応憑依されても浄化すれば問題ないのはレイス戦で実証済だけど」
『いやカズサちゃんが憑依されちゃった場合どうするの』
「あ、成程」
パーティに対霊の力を持っているのが俺しかいなかった場合、俺が憑依されたら大惨事だな。うん、完全に防御できるようなものではないみたいだけど。コストもお手頃価格ではあるしこれは取得しとくか。
『あとアキラさんやテイルちゃんの中に変なゴーストが入るのって滅茶苦茶いやじゃない?』
いやグウェンさんはいいのかよ。