お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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帰還と不死の王

 

視界に見慣れた部屋の光景が広がる。アキラさんの魔術でリンヴルムの借家に一瞬で戻って来たのだ。

 

「アイリーン様達は?」

「大丈夫よ。こちらより先に消えていたわ」

 

少しだけ浮いた状態でこの場に出現し、床に足がつくと同時に即座にテイルさんが発した言葉にアキラさんが答える。その答えを聞いて全員の体から少し力が抜けた感じがした。

 

まあね、一応それぞれの判断で撤退して構わないとはされていたけど、別の場所にいたならともかくあの状況下でまがりなりにもお姫様残して逃げたらちょっとアレな事になりそうだしね……

 

「しかし何だったんだアレは」

 

荷物をひとまず床に降ろしながら、グウェンさんが呟く。

 

「明らかに意図をもって集められた感じだったよね」

「普通に考えるとあの喋る骸骨が何かしでかしているよね。俺達もゾンビにするような事言ってたし……」

「そうだな……ん、ちょっとまて」

 

俺の言葉に頷いたグウェンさんが言葉の途中でビクッと一瞬体を震わせてから、懐から通信機を取り出す。そういえばそのまま持って帰ってきちゃってね。

 

「……ええ、全員無事帰還しています。……はい、はい……わかりました」

 

グウェンさんは通信機を耳に当てると数度のやり取りをしてから、通信機を耳から離しテーブルの上に置く。

 

「今回の探索の統括本部からだ。一度森に探索に出ている部隊を全部呼び戻し体制を組みなおすらしい。今後の動きに関してもこれから軍の本部で検討するから連絡があるまで少なくとも今日中は待機していて欲しいとのことだ」

「待機なのね? 今回の仕事はひとまず終わりという話ではなく……情報連携は……まぁあの状況はあっちもみてるんだろうからいらないか」

「だな。待機させるのは現時点で俺達をリリースしたくないからだろう」

「アキラさんとカズサちゃんは特にリンヴルムの中でも重要な戦力になるだろうしねぇ……」

 

実力もそうだけど、<<ポイントテレポート>>持ちのアキラさんと対霊術を使える俺をこの状況下で手放したくはないのは確かかな。

 

「この先の仕事に関しては内容が大きく変わるだろうから受けるかどうかは改めてになるだろうけど、現時点ではまだ仕事継続中扱いで待機は致し方なしかしらね」

「だねー。しばらくは向こうもドタバタしてるだろうし。まぁ無期限じゃないしいいんじゃない? 方針検討はボク達が関わる話じゃないだろうし」

 

あくまで今回の俺達は雇われの探索者で、現場の動きはともかく全体の方針に関わるようなポジションじゃないしな。アイリーン様達に比べて有為な情報を持っているわけじゃないしさ。

 

「一応、私達の中でも話し合いたい事はあるんだけど……まずその前にすべき事があるわね」

「すべき事?」

 

聞き返すと、アキラさんがにっこりと笑って言った。

 

「お風呂よ」

「賛成!」

 

◆◇

 

あの光景を見たリスナー達の中には『そんなのんびりしていていいの?』とかいう人たちもいたけど、今回の1件俺達は中核にいるわけではないし、何か重要な情報を握っているわけでもないので、雇い主から待機を申し使わされている以上俺達が勝手に動くわけにはいかない。

 

というわけで、数日ぶりのお風呂を頂きました。

 

さすがにゆっくり湯船につかって……という事はしなかったけど、暖かいお湯で汗を流して頭も洗えたので大分さっぱりした。

 

多分探索中に何度も口にしていたせいで皆から勧められたのでありがたく一番風呂を頂きました。そのままアキラさん、テイルさん、グウェンさんの順で汗を流し、今は服も新しい普段着に変えて食堂のテーブルを囲んでいる。

 

机の上には飲み物と、簡単につまむモノ。俺とアキラさんが汗を流している間にテイルさんがぱぱっと食材をいくつか買って来てくれていたのである程度髪を乾かした後に俺の方で作った。

 

正直な所家に帰って来たならこのままお布団で寝たい気持ちもあるんだけど、その前にしなくちゃいけない事があるからね。

 

「それじゃ、今後について話しましょうか」

 

料理を口にしながら、そう切り出したのはアキラさんだった。

 

そう、今後についての話し合いだ。といっても先ほど述べた通りリンヴルムとしての今後の方針決定に関しては俺たちが口を出す事じゃない。話し合うのはあくまで俺達の今後の身の振り方についてだ。

 

現状はまだ仕事の依頼が一応は続いている状態であり待機中であるため、その辺りがどうなるかわかってからでもいいと思うが、アキラさんが共有したい事があるらしく、それを踏まえて皆で話しあいたいと口にしたのである。

 

「で、まず最初に話しておきたい事ってのはなんだ?」

 

お風呂からあがってから時間がたっておらず、まだ髪の毛が少し湿っているグウェンさんがグラスの水を口にしながらそう問いかけると、アキラさんは頷いてから話だした。

 

「まだ断定できるような話ではないってことを前提で聞いて欲しいのだけど」

 

そうして前置きをしてから、一呼吸間を開けて、告げる。

 

「最後に出現した黄色いローブに赤い瞳の骸骨。500年前にここで滅んだハズの存在……不死の王(ノーライフキング)かもしれないわ」

 

今回の探索の前にアキラさんが上げていた懸念。500年前にアンデッドの軍勢と共に突如出現した不死の王、或いは死者の王。その存在を示す言葉にグウェンさんが眉を顰める。

 

「……そう思う理由は?」

「本来ならありえないレベルでのアンデッドの群れとその場所が不死の王が滅んだレンオアム大森林なのは前提として。私が過去の文献をいろいろ読み漁っているのは知っているわね?」

 

アキラさんが俺の方を見たので、俺はコクリと頷いておく。

 

「その文献のいくつかには不死の王"ゼノギア"の容貌が残っているんだけど、いずれも黄色いローブで頭蓋骨の眼窩の中に赤い光を蓄えていた、とあるわ」

 

そこまで聞いて俺はある事に気づいて、それを口にする。

 

「そういえば巫女の人がアイツの姿を見た時、青ざめて硬直してたけど……もしかして?」

「彼女の祖国、フリージアには当然ゼノギアの話は伝わっているでしょうし、恐らく気づいたでしょうね。……いえ、恐らくアイリーン様もその可能性は頭に在るハズ」

 

まぁアンデッドが多数発生している時点でなんらかの関連性は疑っていただろうしなぁ。滅んだハズの存在がなんで500年もたって再び出現したのかはわからないけど。……もしかして俺がこっちに来た理由とつながっているのかなぁ。

 

明確な理由はいまだわかっていないけど、今の所少しでも関係しそうなのは"アンノウン"だよな。……アイツスケルトンに憑依してたし。というか浄霊系の術が効かないからアンデッドとは違わないけど、やってることはレイスみたいなもんだよな、アイツ。

 

ふと思い当たっただけのことではあるが一応それを口にすると、皆が少し考え込んだ。

 

「パストラの街やクアンドロ地下遺跡でボク達が遭遇したのって、あんな流暢にしゃべってはいなかったよね?」

「クウェントスに出現した奴に、会話したって話はあったか?」

「ないわね。さすがにアレは"アンノウン"が憑依したって感じではなかったけど……」

 

だよねー。俺としても正直な所タイミング以外でアイツの関わりを連想させる事もないし。話の腰をおっちゃってごめんねと頭を下げたらアキラさんが首を振って、言った。

 

「いいえ、思い当たった事はむしろ口にしてもらえた方が助かるわ。まぁでも話を戻すと、今私がこの話をしたのは、最初にいった通りこの先の私達の方針を決めるためよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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