お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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死念

このサエさんは意思を持っているのではなく、単純に生前(?)のサエさんが持っていた記憶をデータベースとして、そこから答えを返すだけのAIのようなものなんだろう。グウェンさんの問いに考え込む様子もなく、答えは即座に提供された。

 

「ゼノギアの力の源は死念と呼ばれるエネルギーです。この死念は生物が死んだときに通常世界に対して拡散されますが、奴はそれを収集して自らの力とし、その力からエネルギー生命体である心霊を生み出しアンデッドとして操ります。またゼノギア自身はこのエネルギーがある限りは不死身です。奴自身は物理攻撃でそのエネルギーを失う事は殆どないため、物理攻撃で奴を倒す事はできないでしょう」

 

「あの骸骨の姿を殴っても意味がないということか?」

 

「はい。ゼノギアのあの体は簡単に再構築が可能なものであり、砕いても殆ど意味はありません。奴自身がエネルギー生命体に近い存在です」

 

その言葉に、首を傾げたのはアキラさんだった。

 

「だとしたら、なんで奴は復活したのかしら。私はてっきり奴の亡骸になんらかの理由で力が注がれたのかと思ってたんだけど」

「恐らくは過去の戦いの時に、完全消去させる事ができなかったのでしょう。そのため長い時間をかけて死を迎えた生物の死念を収集し、復活をしたと考えます」

「とはいえ、直近でなんらかの切っ掛けがあったとは思うけどね」

 

テイルさんの言葉に、俺は頷く。

もし地道に力を貯めただけで復活を遂げたなら、もう少し早くからアンデッドに関する目撃例は増えていた気がする。復活直後であんな量の軍団を増やす事は難しいんじゃないかと思われる。

 

えーっと、

 

「サエさん」

「はい」

「より強い死念を放つ存在ってどんなものなのかな?」

「強靭な肉体を持つもの、またこの世界でいえば強い魔力を持つ存在も同様です。ただしあくまで生命体な必要があります。生命の死を介さない力は奴は吸収できません。私の知る術士の中には制約をつけることで術の威力を上げているものがおりましたので、それに類するものではないかと想定します」

「それは……まぁいい情報かしらね」

「生きている生命からとかからも吸収できちゃうんだったら、もう手をつけられないもんね」

「となると、やはりドラゴンが関係している可能性が高いか? 奴等は強力な肉体も強い魔力もある」

「ドラゴンゾンビがいたものね」

 

俺の問いに対する回答を聞いて、他の三人がそう語り合う。ドラゴンがあの近場で丁度死んだとか、そういったことになるのかな。ただ。

 

「アンノウンは関係ないかな?」

 

どうにも気になるんだよな。理由はタイミングくらいしかないんだけど……

 

「ないとはいえないけど……遺跡で遭遇した奴はともかくボク達がパストラで捕まえた奴って、監視の目をかいくぐっていたくらいだから知性はあるよね」

「だが、奴の行動理念はいずれのケースも魔石だった。今回の件に魔石が関係するか……?」

「魔石を集めているのは成長の為じゃないかしら。成長した後の別の目的があるのでは。じゃないとクウェントスでアレが暴れたって話が繋がらないのよね……パストラに戻ったらもう少し情報を集めてみようかしら」

「何にしろ、今ある情報から整理すればアンノウンに繋がる部分はないし、情報もない。考えても、無駄だろう。カズサ、それでいいな?」

「あ。うん」

 

あくまで気になるだけだからね……今の会話の中で何かが閃いたわけでもないから、これ以上話も続けられないので異論は特になかった。

 

『ゼノギアの件に話を戻した方が良くない?』

『質問タイムは時間制限付きだよー!』

 

そうだった! サエさんへの質問に繋がらないような考察は後回しだ!

 

「次の質問は……そうだ、奴が次に行うであろう行動は予測できる?」

「現在の状況がわかりません。状況を教えていただければ回答可能です」

 

この流れは想定できていたので、事前にとりまめておいた状況をサエさんに説明すると、答えはやはりすぐに帰って来た。(経過した時間の分だけMPを消費するから、このレスポンスの速さは助かる)

 

「一定の戦力をすでに確保できているなら、最寄りの人の集落を襲う可能性が高いと思います。より死への恐怖を強く感じるものほど死念のエネルギーの効率が良いらしく、生物の中では多めの魔力を持ち、そのうえで戦闘能力は高くないものが多く、更に高い知性を持つ分死への忌避感も強い人間が奴にとっては最大の"燃料"です。過去の時も奴は人の集落を多く襲撃していました」

 

その回答を聞いて、俺達の間に一瞬の沈黙が訪れる。ごくりと唾をのんだのは多分テイルさんと、俺だ。だけど、すぐにアキラさんが「まず質問を進めましょう」と口にしてくれたので、俺達は用意した残りの質問をしていく。

 

ただやはり彼女の知識は500年前のものであり、更に彼女が知りえた情報だけとなるので回答できる内容は限られるようだった。それ以降の質問に対してはあまり有効な答えを出る事はできなかった。

 

「やはり、心霊術式じゃないと駄目なのね」

 

最後の一つ前の質問。心霊術式以外で奴を滅ぼす方法があるかというアキラさんの問いに対する答えは、「私の知る限りでは存在しない」だった。

 

そして最後の質問を俺は口にする。

 

「──ゼノギアを倒す事は、貴女と同レベルの術士がいなくても可能ですか?」

「ゼノギアが当時の実力を取り戻しているのなら、数での対応は不可能です。私と同格、或いは私に準ずる高位の術士が数名必要です」

「……ありがとう」

 

ひとまず用意した質問はこれで終わり。他の面子を見てもコクリと頷かれるだけだったので追加の質問はないだろう。俺は能力を解除する──その前に、皆で用意したゼノギアに関する質問ではない、自分だけで用意していた質問を口にした。

 

「サエさん。貴女は日本の出身ですか」

「はい」

 

……先ほどの生体エネルギーの話を聞いていて思ったことがある。

この生体エネルギーというのは、俺達の世界で言う怨念や無念によって生まれる残留思念などの心霊現象に近いのだろう。そして……俺的にはそういった存在は物語としてしかないと思ってたけど、実際に存在していてそういったものを浄化するのを生業にしているサエさんみたいな人たちが存在していた。

 

ゼノギアの扱うその力に類似したものを相手に戦う術をもっていたサエさんが召喚されたということではないだろうか。

 

「貴女は召喚された理由を知っていますか」

「想像はできますが、真実は不明です」

 

──であれば、状況は俺と同じだ。恐らく彼女が想像している事も、今俺が考えた事と一緒だろう。

 

次が、本当に最後の質問。

 

「貴女は、日本へと帰還しましたか?」

「いいえ。私の記憶はゼノギア戦の少し先までしかありませんが、そこまでの記憶に帰還に関する知識はありません」

「……わかりました。また近いうちにお力をお借りすると思います」

「ワタクシに出来ることでしら」

「それでは」

 

 

 

 

 

 

 

 

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