俺の女の子議論は置いておいて。
最終的に俺の提案を受け入れてくれた事により、さっそくその提案通りに俺達は動くことになった。
正直ゼノギアがいつ本格的に動き出すかが見えないからな。俺達に存在を認識されたことにより、多少準備が済んでなくても動き出す可能性ができたわけだし。そもそも準備が済んでないかもはっきりしない。
とにかく今俺達が最初にすべきことは、アイリーン様達に今の状況を伝える事だ。
最悪ゼノギアに対してはサエさんの力を借りて俺が対抗するにしても(どの程度の力が出せるかにもよるが)、あの軍勢を俺達だけで対処するのは絶対に無理だ、リンヴルムの軍の力は絶対にいる。というかそもそも俺達だけでなんとかしようという話でもないし。
幸いな事にというか何というか、俺達はまだアイリーン様達との契約の元にいるし、なんなら彼女達と連絡が取れる手段もある。それをありがたく利用させてもらいアイリーン様にコンタクトを取ったところ早々に時間を取って貰える事になった。
正直な所これはちょっと予想外だった。いくら契約中でかつ俺が彼女の命の恩人のようなポジション、うちのメンバー自体もかなり強力な戦力になるとはいえ、あくまでこっちはただの雇われ傭兵みたいなもんだ。そんな人間が王族、しかも緊急事態でクソ忙しい時に簡単に会ってもらえるがずがないのだ。
この件の種明かしに関しては後日の話になるけど教えてもらうことができた。
なんとアイリーン様はこの時点で俺が過去に記録にある異世界から来た英雄かそれに近しいものの可能性を考慮していたらしい。
彼女がそう思ったのは単純な理由で俺の魔術の適性があまりに幅広すぎたためだ。
<<ポイントテレポート>>
<<ディスインテグレイト>>
それから心霊系の魔術。
心霊系魔術はともかくとして<<ポイントテレポート>>も<<ディスインテグレイト>>もアイリーン様達の前で使ったわけじゃないんだけどなと思ったけど、<<ポイントテレポート>>はアトランド商会の一件の時で探索者協会の方には知られてるし、<<ディスインテグレイト>>もアンノウンの時に協会に映像付きで報告してるからな。あの時俺は映りこんでいたわけじゃないけど、他の3人は過去の経歴では<<ディスインテグレイト>>を使った形跡がない以上、割と過去が不明な俺が使った可能性を考えられるのは当然だろう。
いずれも適性を持つ可能性が低く、その中のどれか一つを使えることすら希少な部類に入る術を複数行使可能で、
さらに明らかに異常なレベルの<<エリアヒール>>まで使用した。
術の威力は置いておくにしても王城に仕える高位の術者ですら持たないレベルの適正の広さだ。必ず何かがある人物だとは思っていたようで、その中の可能性の一つとして異界の英雄な可能性も頭にあったとの事。そういった相手がゼノギアに関する情報があるといってコンタクトを取って来たのだ。聞いてみようという気持ちになろうというものだろいう。
ちなみにこれを調べたの自体はアイリーン様じゃなくてカシュナート様である。というかアイリーン様には恩人の事を調べるなんて申し訳ないと謝られた。でも別に根掘り葉掘り調べられたとかじゃなくて問い合わせればわかる内容だからなぁ。カシュナート様に関しても、特殊な力を使った人間の事をある程度調査するのは当然な気もするし。そのお陰で話が早かったので結果オーライではなかろうか。
とにかく、そんなこんなもあって俺達は即日アイリーン様やカシュナート様と謁見することができた。
「……というわけで、これが先ほど話した事の証明となりますが、いかがでしょうか」
部屋の中には全部で9人。俺達4人の他はアイリーン様、カシュナート様、前回アイリーン様と一緒に行動していた巫女さん、それに部隊長クラスらしい男性が二人。一人は前回の探索チームの1隊を率いていた人だった。
がっつり能力を開示するつもりだったので、出来るだけ口の堅い最低限の人数にして欲しいと頼んだ結果選抜されたメンバーがこの5人である。
「シグレ嬢、どう思う?」
「サエ様のお姿は残されている姿絵と瓜二つでした。先にお話しいただいた情報もフリージアに残る記録と食い違うものではないし、信じてよいと思います」
ヒロイックサーガの能力で俺が投影をしたサエさんの姿を見終えたカシュナート様とフリージアの巫女であるシグレさんが、そう言葉を交わす。
尚見せたのは1分だけだった。MPコスト勿体ないしね。先にこちらが入手した情報を直接伝え、その情報の証明としてサエさんの姿を見せたのだ。
この世界にはこないだの動物観察配信で使ったような映像を記録する技術は存在しているけど、さすがにリアルタイムで応答するような映像を作る魔術はないようなので、それを見せるだけで信憑性はあるだろう。そもそもの話この映像コラボ相手にしか見えない可能性もあったので、事前にコラボ登録して俺のメニューとかも開示してある。……その時にまぁいろいろドタバタしたけど、それはおいておいてとしてだ。さすがにあのメニューやコメント欄は想像の範囲外にあるものだったらしく、それもあってこれで完全に信じて貰えた、かな?
「しかし、これが事実だとすると、時間の猶予があまりありませんね」
そう口にしたのは部隊長の一人……確かクラッドさんだったかな。その言葉に、アイリーン様が頷きを返す。
「そうだな。時間がかかるだけ向こうの戦力は増えるだろうし」
「とはいえ、まだフリージアからの援軍が来るまでは動けないぞ。対霊術の使い手の絶対数が足りない」
「相手を考えると、対霊術のサポート無しで戦うのは自殺行為ですしね」
こないだのレンオアム大森林の探索に協力してもらった術士はそのまま確保しているらしいけど、数が全然足りない。それに正直な所、俺とシグレさん、あともう一人の術士を除けば他の術士は力が弱い。アンデッド自体はゾンビやスケルトン相手であれば術士じゃなくても倒せるけど、エネルギー体であるゴーストやレイスは術士じゃないと倒せない上、レイスの場合は<<ポセッションガード>>がなければ憑依されてしまう可能性が高い。
「そもそもこの戦い、精鋭以外は出すべきじゃないわね兄様。下手したら向こうの戦力を増やすだけだもの」
「たとえ<<ポセッションガード>>でガードしても殺されたら同じだからな……一般兵士や等級の低い探索者は戦力とは考えるべきではないか」
「リンヴルム以外に向かう可能性も考慮しないといけないわね。あの位置からなら間違いなくリンヴルムが最寄りなのは間違いないけど」
「他の街や村に防衛線を引くほどの戦力の猶予はない。森の南側を監視してそちらに向けて動くようだったらすぐ対処できるようにしておくしかないだろう。イアン、監視部隊の人選を頼む」
「はっ」
「殿下、数日の間であれば南方からのルートは一時的に封鎖した方が良いと思いますがいかがいたしましょう」
「……そうだな、頼む」
俺達の前で、カシュナート様やアイリーン様を中心にしてこれからの対応について話が進んでいく。さすがにこの大都市の上層部の方々だけだあって動き出しが早い。
さすがにこの辺りは俺達が口出しをすることではないので(シグレさんも)黙って話に耳を傾ける。──どうやら、フリージアから高位の力を持つ巫女が10人程こちらに派遣されているらしい。それ以外にも最大限近隣から集められる戦力を集めるとの事。<<ポイントテレポート>>等の移動系術を使う術と中継ポイントを使った遠隔通信等の手段も利用して……3日間。勿論もっと日にちをかければ戦力は更に集まるけど、状況的にフリージアの巫女が到着するその日数で攻勢に出るのを彼らは決定した。
それにしても、3日か。だとしたらやっとくべき事があるな。
丁度話が一段落したタイミングで、俺は口を開く。その相手は──アイリーン様だ。
「アイリーン様。今回の戦いに辺り、不躾なお願いがあるのですが聞いていただけますでしょうか」
「なんだ? 報酬の話なら後で──」
「いえ、報酬の話ではなく。これから私達も戦いに参加するにあたり、私の対霊の戦闘能力を上げるためにアイリーン様にご協力して頂きたい事があるのです」
「そんな手段があるのか? 私に出来ることがあるなら協力するぞ!」
よーし、言質とった! リンヴルムの為になることだし、これまでのアイリーン様を見る限り、これからお願いするくらいの事だったら彼女が前言を翻すことはないだろう。
──リアルお姫様のコスプレ企画とか、注目を集めないわけないよね?