お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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お姫様といっしょ

そういって広く開けた場所に移動したのでそちらにカメラを向けなおすと、彼女は一度目を瞑ってから緩やかにその剣を持って動き出した。

 

「これは……」

 

それは踊りのようにも見えるが、何かと戦っているようにも見えた。踊るような流れる動きから、鋭い剣の一撃を放つ動き。そしてその動きから連撃が行われ、そしてまた踊る様に流れるような動きに戻る。凄いのはその動きのすべてが途切れることはなくシームレスに行われている事だった。

 

「アストラ王国の王族が毎年先祖への奉納として踊っている剣舞ね」

「知っているんですか、アキラさん」

「直接見たことはないけど、聴いた話と特徴は似ているし何より踊っているのがアイリーン様だもの。そうだと思うわ」

「一応建国記念の祭の中で行われる奉納は一部平民でも見ることができるけど、招待されるような功績とか実績はないと駄目だからねぇ。ボクも初めて見るよ」

 

気が付けば反対側にも人の気配。テイルさんが横にやってきていた。

成程、そんな王族が踊るようなものを見せちゃっていいのかとも思ったけど、秘匿されているものではないのね。

 

『アイリーン様……お綺麗でございます』

『神楽舞みたいな感じかしら』

『なんて神秘的な姿なんだ……さっきまでちょっとアレな眼でブルマ姿見ていた俺の汚れた心が浄化されていく……』

『というかマジで動きが途切れないな。アイリーン様すげぇ』

『滅茶苦茶綺麗な感じなんだけど、それを体操服姿で踊っているのはちょっとシュールだな』

 

リスナー達も見とれていると思う。それくらい素晴らしい動きで動きが途切れないのもあり、彼女の動きから目を離すことができなかった。そうして気が付けば数分の時間が経ち、結局彼女はその動きを一度も止めることもないまま、最後の動きを終えて剣舞を終えた。

 

「……いかがだろうか?」

 

ふう、と大きく息を吐きながらそう問いかけてくる彼女に、すぐに答える事ができずにただコクコクと頷きを返す。

 

次に左右から、パチパチと手を叩く音が響く。テイルさんとアキラさんが拍手をしている音だった。その音である種金縛りのような状態になっていたのが解除され、俺も慌ててぱちぱちと手を叩く。

 

「アイリーン様、素晴らしかったです! リスナーの皆も褒めたたえております!」

 

なんかまだ若干思考が固まってるのか、ヨイショしている家臣みたいな言い方になってしまったけど事実である。コメント欄は「素晴らしかった!」「アイリーン様神々しかったです!」「ビューティフォー……」みたいな声で埋め尽くされている。

 

……一部「汗かいた体操服姿のアイリーンちゃんエッ」「リアルお姫様の滴る汗ぺろぺろ」「濡れ髪のアイリーン様艶っぽすぎる」とかいうコメントがあるので、直接見せるのは躊躇うけども。いや、最後の奴はまあいいだろうけど。

 

ちなみにそのコメントの通り、準備運動や先ほどの鉄棒での運動ではまったく汗をかいてなかったアイリーン様が今は汗だくになっていた。それだけ先ほどの緩急を激しくつけつつも流れるような動きは大変だったのだろう、本当に汗だくだ。

 

「あの、アイリーン様、これ」

「ああ、ありがとう」

 

先程テイルさんに渡したように用意していたタオルをアイリーン様に渡すと、木剣を置いた彼女はそれを笑顔で受け取り汗を拭っていく。俺用のタオル以外は殆ど役目を果たしていなかったけど、ここにきてやっと役目を果たしたようだ。

 

……コメント欄じゃないけど、濡れた体操服が肌に張り付くみたいになってて、今のアイリーン様の姿はなかなかに刺激的だ。ちゃんとした生地で作ってるから透けてはないし下着のラインが出ちゃっている訳でもないけど、えっちさを感じるのは否定できない。

 

なんかアイリーン様、俺が最近失いつつある男の部分を呼びさましてくる所があるな。俺は男であることを失いたいわけではないので、アイリーン様俺にとっては回復薬では? 間違っても本人には言えないけど。

 

いや、テイルさんやアキラさんも魅力的だし、普段から感触とかラフな姿にドキドキすることはあるよ? ただ二人は普段から距離が近いし、共同生活し始めてからそれなりに長いのもあるから慣れてこないと心が死んじゃうからね!……あと格好とこの汗だくの姿がね! 男としてやっぱりね! 性癖が呼び覚まされるというか!

 

……俺は誰に対して言い訳してるんだろう?

 

「……どうした? カズサさん」

「あ、いえ」

 

いかん視線が向いているのに気づかれとる。とはいえ変な視線を向けているとは思われている感じではないけど。

 

アイリーン様は一通り汗を拭うとタオルを置き、もう一度大きなため息を吐く。それからこっちを見て……何故か、ふむと頷くとこちらに手を差し出してきた。

 

え?

 

きょとんと首を傾げてしまった俺にアイリーン様が「手を」と言ってきたのでその手を取ると、彼女は俺の手を引いてカメラの前の方に移動する。

 

え、何? 何なの?

 

「剣舞がいいのであれば、ダンスもいいだろう」

「え、ダンス?」

「カズサさん、ダンスの経験は?」

「ない! ないです!」

 

アイリーン様の言葉に、俺はあわててぷるぷる首を振る。ダンスなんてやった記憶ないよ!

 

「そうなのか」

「ですです。ダンスの相手が必要ならテイルさんとかアキラさんの方が!」

 

そう言って二人の方へ視線を向けるも、

 

「ボクもダンスの経験はないなぁ。うまくできる自信が全くないよ」

 

いやいやテイルさんの運動神経なら絶対にそつなくこなせるって!

 

「私も経験ないし、体動かすのはそんなに得意じゃないから難しいわねぇ」

 

嘘だっ!! アキラさん口角上がってるからね! 経験あるでしょ本当は!

 

「全員未経験者か。なら……カズサさん、このままお相手してもらえるかな? 大丈夫、ただ私に身を委ねてくれればいい」

「うう……はい」

 

アイリーン様はあくまで俺のMP獲得の為の好意でこういってくれているだけのはずで、そう言われてしまうと首を振る訳にもいかず、俺はこくりと頷く。

 

『なんか今のセリフいいね?』

『確実に切り抜き対象』

『カズサちゃんここはアイリーン様をお姉様と呼ぶべきだよ』

 

うるせえよ。

 

コメント欄に対して心の中で突っ込みを入れている間に、アイリーン様はゆっくりと動き出した。同時に優しい感じで腕に力が込められたので、先ほどのアイリーン様の言葉に従ってその力の導きに体を委ねる。

 

お……お……?

 

本当に俺の体に回されたアイリーン様の腕に身を委ねているだけなんだけど、ちゃんとそれっぽく? 動けている気がする。といっても俺の方ががっつり動いているわけでもない。基本的には俺を中心軸にして、アイリーン様が大きく動いている感じ。かと思えば俺を抱え上げて回すような動きも見せる。結果、自分の姿がどんな感じなのかははっきりわからないけど、ちゃんとそれっぽくできている気がする!

 

勿論足がもつれそうになるところもあるけど、そうなりそうになるとアイリーン様が抱き寄せてフォローしてくれる。そうしているうちに少し動きに慣れて余裕ができてきたのでアイリーン様の方に視線を向けると、かなり近い位置で微笑みを向けられた。

 

『カズサちゃんこれやっぱりお姉様と呼ぶべき』

『アイリーン様がお姫様なのに、どうみてもアイリーン様が王子様でカズサちゃんがお姫様にしか見えなくて草』

『こんな尊い光景が無料で見れるってマジ?』

 

投げ銭してくれてもいいのよ?

 

というか今も結構赤スパ投げられている。先ほどのアイリーン様の剣舞の時は演技が終わってから一気に投げられていたけど、今は最中もガンガン投げられている感じ。勿論アイリーン様の演技中だけじゃなく先ほどのテイルさんやアキラさんの時もかなり飛んでたし、なんなら最初に姿見せた時も、俺が見本?演技を見せていた時も飛んでいた。間違いなく過去一番の金額が投げられているハズだ。

 

これはアイリーン様や体操服ブルマ、皆の演技の力は当然だけど、この後に戦いが控えているのもあると思う。実際最初の頃の投げ銭のコメントには『戦い頑張って!』『わずかだけど力を貸そう!』『アイリーン様達を救うためなら一か月もやし生活くらい楽勝だぜ!』なんてものが並んでいた。最後の人はあまり無理しないで?

 

皆、マジでありがとうな。

 

 

 

 

 

 

 

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