お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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下が見えないんですけど

 

アイリーン様を巻き込んだ企画配信は大成功を収めた。

 

アイリーン様という新規の出演者。しかもリアルお姫様。

これからこの街の命運をかけた戦いに赴く俺達に対する応援、支援。

そしてちょっと偏見が入っているけどお金を持っている俺達より少し年上の方々に刺さりそうなブルマ姿。

 

それらいろいろな要素により、今回MPは500万近く増加した。過去最大値だ。ピーク時の視聴者数は10万を軽く超えていたとはいえ、凄まじい額である(増加するMPは手数料を差っ引いた後の数字だから、実際は700万ちかく投げられている訳だし)。

 

さすがにここまで一気に投げられるとこの後しばらくは皆も簡単にはスパチャは投げれないと思うので、このMPは大事に使いたい──といっていられる事態でもない。おかげさまでかなり余裕は出来たので、一つの実験を行う事にした。

 

今、俺達はレンオアム大森林に来ている。といっても最深部ではなく大分外周部に近い場所だ。

 

この場にいるのは前回アイリーン様達にカミングアウトした時にいたメンバーの中から、カシュナート様を除いた8人である。お姫様であるアイリーン様がいるのに実力者であるとはいえ騎士が二人だけなのは少ないと思うが、アイリーン様自体実力者だしいざとなったらギリギリポイントテレポートで逃げれる範囲だろうからそこは問題ない。

 

で、ここに来た理由だけど……ヒロイックサーガのテストの為だ。

 

今の所は"知識の召喚"しか試したことがないからな。次の戦いで"能力の召喚"を使うのは決定しているけど、さすがに本番でいきなり使用は怖すぎる。能力があっても使い方がわからないとかだと洒落にならんからな。いろいろ確認のためのテストである。

 

勿論、ここでMPを使いすぎるわけにはいかない。……使っても5分くらいかな。そこまでに力の使い方理解できればいいけど……一応これまでの能力を考えるかぎり、そこまで使い勝手が悪いってことはないと思うが……

 

「それじゃあ、行きますね」

 

周囲を見回してそう声をかけてから、メニューを操作する。"ヒロイックサーガ"、"トウドウ サエ"、"能力の召喚"だ。

 

「うっ……」

 

選択をした瞬間、体がむずっとした。それからゾワゾワした感覚。それに続けて体の感覚が変わった。これまでより視界が少し高くなり、髪の毛が背中に触れる感触を感じる。そしてなにより……重心が前に偏っている気がする。

 

──その理由はすぐに解った。ちょっと視線を落とせば、その先には巨大な双丘が聳え立っていた。

 

元の俺の体も胸はそれなりにあったけど、比ではない。さすがに漫画とかに出てくるトンデモサイズというわけではないけど、現実的なものとしてはかなりでかいサイズだ。足元が全く見えねぇ……。

 

コメント欄も『デッ』とか『エッ』とかで埋まってるし。おうお前ら、言語を喋れや。

 

ついでにいえばシグレさんがこちらをキラキラした目で見ている。これで俺は自身の身に起きたことを確信する。

 

この能力、能力だけではなく外見もそのものに変わるのか。自分では確認できないけど今の俺は"知識の召喚"でみたあの姿と同じ姿をしているんだろう。

 

『うおおこの外見でコスプレRPして欲しい……』

 

しねえよ馬鹿。

 

元の体は自身で作り上げた3Dモデルがベースになってるから俺の好きに扱うのに抵抗はないけど、こちらの体は完全に借り物だ。さすがに好き勝手するのは申し訳なさがすぎる。あとこっちの世界の立場を考えるとばれたらシグレさんや彼女の所属する国に猛抗議されそうだし。

 

そもそも1分10万MPも消費するので、コスプレRPの目的であるMP集めには向かないだろ。マイナスになる可能性が高すぎる。

 

まぁそれはおいといてだ。今回の主目的についでだが、

 

「どう? カズサちゃん」

「大丈夫、ちゃんと使い方がわかる。行こう」

 

アキラさんの問いにそう答え、俺は先頭を切って森の中を走り出す。

 

この森に来た理由は単純で、能力の試し打ちをするためだ。すでに少し離れた所に数体のゾンビがいるのも確認している。それ以外は見かけなかったから恐らく逸れた個体だと思うが……こんな森の外周まで来ているのを考えるといよいよ決戦が近そうだが、それは置いておいてだ。

 

元々行動は話し合っていたので、駆けだした俺に皆もついてくる。──しかし、走りづらいな! 男の体から女の体に変わった時、走る時に揺れる胸を邪魔に感じていたけど、それに更に輪をかけた感じで邪魔だ。一応抑えつけられている感覚はあるからサラシか何かをしているとは思うんだけど。

 

 

そうやってなれない感覚に若干振り回されつつも、目的地にたどり着く。そこは少し開けた場所で、イノシシのような動物のゾンビがぶらぶらと目的もなく彷徨っていた。

 

俺はそれを確認してから、一度後方を振り返って全員が来ているのを確認する。それから前に向き直り、自身の手を前に向けた。

 

「"竜胆"」

 

力の使い方は、変身した後に頭に自然と浮かんできた。術の名前もだ。ちなみに彼女の流派では術の種類によって花や植物の名前が割り振られているようだが、花の名前にはあまり意味がない。多分ただの連番のようなものだろう。

 

流派の中でのみ伝わる技で外部に広める目的がないのなら、解りやすい名前にする必要はないもんな。

 

"竜胆"は彼女の使う技の中でも基本に近い技だった。効果としてはサンクチュアリだ。ただ、両方の技を使った人間として感覚でわかるけど、あきらかに"竜胆"の方が洗練した技であることを感じる。何せ効果範囲はサンクチュアリより広いのに、力の消費はサンクチュアリよりも少ない。

 

広がる力は瞬く間にイノシシゾンビを飲み込む。ただそれだけで、イノシシゾンビは地面に崩れ落ちた。体を操っている低級霊が浄化されたためだ。

 

「これが……サエ様の術ですか」

 

その光景に声を上げたのはシグレさんだった。対霊術式を扱う彼女にはある程度"竜胆"の術がどのようなものか見えたのだろう。

 

「ぜひ研究させて頂きたいものですが」

「そういった話はまた後で」

 

今は時間が惜しいので。この周辺に他にアンデッドはいないはずなので、これ以上このままの姿でいる必要はない。俺は術を解除する。

 

『ああ、元に戻っちゃった……』

『やっぱり俺は普段のカズサちゃんの恰好の方が好きだなぁ』

『服まで変わるの便利だよね……服は元のままならどっちでも素晴らしい光景が見れたのに』

 

だからBANされるだろうが。いやでも服も同時に変わってたのは確かに助かった。いろいろ体のサイズが違うので、大惨事になってただろうからな。特にサヤさんの方に変わった時。

 

「どうだ、カズサさん」

「感覚ですが、効果範囲も威力も消費魔力も従来の対霊術式の数段上のものと感じます。また変身中は魔力も上がっているようで、かなりの力があることを感じました。大きな戦力になれると思います」

 

アイリーン様の問いにそう答えると、彼女はちらりとシグレさんの方に視線を向けた。そして彼女が頷くのを確認すると、安堵のため息を吐く。

 

「そうか。一安心……とは言えないが、非常に心強い味方を手に入れることができたわけだな」

 

その言葉のあとにぼそっと「あんな恥ずかしい恰好をした甲斐はあった」と呟いていたけど、聴かなかったことにする。

 

「能力を使えるのは一時間ちょっとなので、使いどころは考える必要はありますが」

「うん、それに関しては戻ってから皆で詰めよう。それじゃあアキラさん、お願いしていいかな」

「承知しました」

 

本当は"英雄の召喚"も試しておきたいけど……今と同じ時間を使うだけでも100万MP消費だ、それだけで戦える時間が10分削られるのはさすがに痛すぎる。"能力の召喚"を考えるとそこまで使い勝手がわるい力ではないと信じよう。そもそも"英雄の召喚"を使うような状況にならないことが理想的だけど。

 

さて、これで準備は万端。決戦の時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




前回残MP:1387230
今回増減:
ヒロイックサーガによる消費 -400000
スパチャ +5125400(前回からの増減分含む)
残MP:6112630
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