お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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変身巨乳巫女さん、無双を開始する。

 

大地が揺れる。

 

伝わってくるのはそれほど大きな揺れではない。そして断続的に来る揺れは大地が揺れておこったものではない。

それは巨大な質量が動くことによって起きている者。

 

「……アンデッド達の本隊、並びにドラゴンゾンビ含む大型アンデッド多数、出現を確認しました!」

「……頼むぞ、カズサ嬢!」

「はい」

 

外から騎士の声が響く。その声を耳にしたカシュナート様から掛けられた声に、俺は振り返って頷く。

それからすぐにメニューを開き、こないだと同じように"ヒロイックサーガ"の操作を行った。体に走る、むず痒さも感じる感覚。そして下への視界がふさがれる。

 

……あいかわらずでっかーい。

 

まぁそんな事を考えている状況じゃない。

 

「カズサちゃん、これ」

「ありがと、テイルさん」

 

テイルさんから差し出されたものを受け取る。それは白い仮面だった。俺はそれをそのまま自分の顔に身に着ける。視界を阻害しないように目元は結構大きく開いているが、それ以外の部分は隠されている。これで皆は顔を認識できないだろう。

 

別にカズサとしての顔ではなくなっているのでそのままでもいい気がするが、まぁちょっとしたカモフラージュだ。事前にローブを纏ってこの仮面をかぶった女性に天幕の中に入ってもらっている。幸いというかこの姿は胸元に滅茶苦茶目立つ特徴があるので、その辺りを偽装してだ。これで多分俺の事はその時の女性と思ってもらえるのではなかろうか。

 

「行くよ、テイルさん」

「うん、いこ」

 

テイルさんに手を伸ばし、そして握り返された掌を俺もぎゅっと握り返す。そうして二人そろって足を踏み出し、天幕の外に出た。

 

「わぁお」

 

視界に飛び込んできた光景に、テイルさんが声を上げる。

 

前線は先ほどとよりも激しい乱戦になっていた。大多数のアンデッドと騎士や探索者、巫女たちが乱戦を繰り広げている。そして更にその後方にはドラゴンゾンビを筆頭に大型のアンデッドが続々と森の中から姿を現している。

 

──今の戦況を見る限り、あの大型のアンデッドが戦線の突撃したら崩壊するかな。

 

概ね予想通りの状況だ。

 

「跳ぶよ? 準備はいい」

「だいじょぶ!」

 

繋いでない方の手で大型のナイフを掲げて頷くテイルさんにコクリと頷き、俺は視線を戦線の方へ向ける。向ける先は戦線の中で僅かに間が空いている位置。そこに意識を置いて、俺は術を発動する。

 

「《テレポート》」

 

先の検証の時ちらっと確認はしておいたんだけど、こうして変身した状況でも元の俺の能力は使えるようだ。なので《テレポート》を使い、俺とテイルさんは一気に最前線に合流する。

 

──飛び込んだ最前線は、すごい状況だった。そこら中に砕かれ、潰されたアンデッドが転がっている。幸いなことに、そのなかに生きた人間が見当たらなかったのは僥倖だろう。

 

突然現れた俺の姿に周囲で戦っていた騎士達が目を見開くが、さすがは精鋭。戦いの手を鈍らせる事はなくアンデッド達を屠っていく。

 

とりあえず人型や小型の獣のサイズのアンデッドが問題なさそうだ。人型のアンデッドは騎士や探索者達が叩き潰し、動きの素早い小型の動物のアンデッド達は魔術士達が吹っ飛ばしている。……ただ近接で戦っている者達の攻撃の通りが悪くなっている。巫女たちによって《コンセクレーション》を付与されている武器は本来なら憑依している霊体にダメージを与え動きを鈍らせ、滅ぼすはずだけど……数度の攻撃を受けてもまだ動いているアンデッドが出始めている。おそらく《コンセクレーション》の効果が切れ始めているのだろう。巫女やそれ以外の対霊術者の数も限られているしな……術としても《コンセクレーション》より《ポセッションガード》を優先している以上、これは仕方ないか。

 

となると、最初にやるべき事は決まったな。

 

俺は手を上にあげ、言葉と共に術を発動する。

 

「"雪椿"」

 

術の発動と共に、俺の手のひらから周囲に向けて白い小さな粒子が広がっていく。まるで粉雪のように。

 

その白い粒子は戦い続けている戦士たちの上に広がっていく。その中の一粒が一人の騎士の体と武器にふれる。

 

──その瞬間、騎士の体と武器がうっすらとした光が包む。

 

ただそれだけで、熟練の騎士は何が起きたのか理解したのだろう。掛け声と共に手に持った武器を襲い掛かって来たアンデッドに叩きつける。それだけで、先ほどまでは倒すのに数撃が掛かっていたその騎士の装備は、アンデッドの一体を仕留めた。

 

その様子を見て白い粒子が何なのか理解した他の者達が次々と自身から粒子に触れていく。そうして再び霊へ対する強い力を得た戦士たちは次々と森の中からアンデッド達を屠っていく。

 

……とりあえずこれで、ゾンビやスケルトンの類は大丈夫だろう。次は、と俺は視線を向ける。

 

そこにはうっすらと見える透明の何かが飛び回っていた。

 

ファントム。

 

霊体のまま飛び回り、エネルギー弾や念動で動かした石などで人を襲うアンデッド。空中を飛んでいるから戦士たちの攻撃は届かないし(いや、ジャンプ系の術を上手く使って切りつけている豪の者もいるけど)、魔術では実体を持たないファントムには効果を発揮できない。結果心霊術士達が対処せざるをえず……これが彼女達の消耗の理由だろう。

 

カシュナート様にも、ファントムは頼むって言われたしな。

 

「"銀木犀"」

 

とりあえずは飛び回っているのが邪魔くさい。俺は霊力の渦を作り、それを周囲に広げる。その渦は大きく広がり、跳び回るファントムたちを捉えて渦の中央に引き寄せていく。それだけで、空中から陸上の戦いの妨害をしていたファントムたちが満足に動く事も出来なくなっていく。

 

一応この渦自体が霊体を弱らせる効果があるので放っておいてもファントム達は消失するだろうけど……生憎こっちは時間制限付きだ。アイリーン様達やリスナーの皆のおかげで大分余裕はできたけど無駄遣いするわけにはいかない。

 

「"鳳仙花"」

 

渦の中央に集められたファントム達に、霊力を消滅させる強い意志を込めた力を発動する。それだけでファントム達は後かたなく消失した。

 

「すっご……カズサちゃんつよー」

 

テイルさん!? その名前呼んじゃダメだよ!?

 

テイルさんもその事に気づいたらしくて、慌てて開いた手で口を抑えていた。ちなみにそんな気の抜けた声を上げつつきっちりこちらに向かってきたアンデッドを屠っている。まぁ大きな声じゃなかったし戦闘音で周囲には聞こえてないだろう、多分。聞こえてたとしたら別名で誤魔化そう。カルラとか。

 

とにかくこれで戦線は安定するはずだ。後は戦士たちや巫女さん達に任せて、俺はメインターゲットを叩こう。

 

「大物行きます」

「ん」

 

俺は戦線を前に飛び出す。それに呼応してテイルさんと、騎士が数名が俺を護るべく飛び出した。事前に俺の動きを伝えられていた騎士達だ。まぁアンデッド相手なら今この場にいる中では一番強いのは間違いなく俺なので、護衛というよりはデカブツを倒すための露払い的な役割を与えられているハズだが。

 

ここから俺はドラゴンゾンビを筆頭とする大型のアンデッドを集中して狙う。だが、俺の真のメインターゲットはそいつらじゃない。その後ろに隠れているであろうゼノギアだ。奴さえ倒せばこのアンデッド軍団は烏合の衆と化すのだから。

 

奴を見つけ出し、滅ぼす。逃げられてもこちらの負けなようなものだ、MPが尽きる前に絶対にぶち殺す。

 

 

 

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