お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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別動隊

 

声のした方に顔を向ければ、アキラさんがグウェンさんと一緒にこちらに向かって走ってきているのが見えた。

 

というかアキラさん、俺の名前呼んじゃってる……混戦状態だし今俺の近くにはテイルさんしかいなから大丈夫だとは思うけど、アキラさんにしては珍しいポカだ。わざわざこちらに向かってきている辺り、何か焦るようなイレギュラーが発生したのだろうか?

 

今すぐにでもアキラさんに駆け寄って話をしたいところではあるけれど、通信機の呼び出しも入っている。通信機の呼び出し元の人間を考えると放置するわけにもいかないので、後ろ髪ひかれつつも通信機を取り出す。

 

『カズサ嬢、今会話は可能か?』

 

通信機から聞こえたのは予測通り、カシュナート様の声だった。

 

「大丈夫です、何かありましたか?」

『クーストス方面に向かう森の中で、アンデッドの集団が確認された』

「……出現しましたか。向こうの戦力では難しい数ですか?」

 

可能性としては想定した話であり、そちらにも戦力は割いている。とはいえリンヴルム側は大群を相手にする事がほぼ確定していたから、割いた戦力としては限られていた。想定規模を超える数だと少々厳しい戦いになるが……

 

『……大型はいないが、数としては想定の数倍という報告があった』

「は? ……南方方面にはそれほど大きな集団の動きはありませんでしたよね?」

『恐らくそれぞれ個別で移動していたのを集結させたのだろう。足の速い獣型を中心とした集団だそうだ。すでにクーストス近郊までやってきているようで、あまり時間的な猶予がない』

 

……まさかの奇襲戦法を受けた形になったのか。こちらに向かっていたアンデッドの集団がかなり大規模だったし多かったからリンヴルム側は万全の準備をして迎える形になったけど、それが少し裏目に出た形になったか。

 

『それと』

「それと?」

『向こう側の集団の中にボロボロの黄色いローブを纏ったアンデッドが確認された』

「……は?」

 

その言葉に、俺は視線を先ほど倒したゼノギアの方に視線を向け──そして、俺の頭の中で状況と状況が繋がった。

 

まるで手ごたえのなかったゼノギア(?)と、別の場所で目撃されたもう一人のゼノギアらしき姿。

 

──まさか、コイツ偽物か!? クーストス方面に向かっている集団が本隊!?

 

でもこちらには明らかに本命と思える程の戦力が送り込まれてきている。それがダミーだなんてありうるか!?

 

いや、今はそんな事を考えてこんでいる場合じゃない。向こうにゼノギアがいるならクーストス側は抑えきれない可能性が高い。急いで向かわないと……

 

「急いでそちらに向かいます! 術者の準備を」

『了解した、頼む』

 

緊急時用にクーストス側に<<ポイントテレポート>>できる術者が待機している。その人物の力を借りればまだ全然間に合うはずだ。こちらの戦闘が終息したわけではないけど、大型の大部分を滅ぼしゼノギアもいないならこちらの戦力だけでもなんとかなるハズだ。あの最後のドラゴンゾンビも──いや、先ほどのアイツが偽物だとしたら?

 

そう思った瞬間、体に振動を感じる。先ほども感じた感覚は、ドラゴンゾンビが地面を駆けるものだ。テレポートした俺を見失うことなく、こちらに向けて再び突撃を行って来ていた──だよな、ゼノギアが偽物ならアイツ倒しても止まる謂れはないよな!

 

とはいえ、だとしたらどうする? "彼岸桜"は効いている気配がない以上、"竜舌蘭"も通らないだろう。他にも術はあるけど、奴に心霊の気配は最早感じない以上通用するとは思えない。悩んでいる間にも奴はこちらに突進を続けて……その顔面の側面で爆発が起こった、

 

横殴りの強力な一撃は奴の頭を消し飛ばすことはなかったものの、奴の突進の威力を完全に殺すことができた。そしてその間にアキラさん達がすぐ側にやってくる。

 

「カズサちゃん」

 

再び名を呼ばれるけど今度は意識してかな。周囲に人いないし。

 

戦闘が始まってからこうやって顔を合せるのは初めてだ。時間としてみればほんのわずかな時間なのにすごい離れていた気がして話をしたいけど、今はその余裕がない。

 

「アキラさんごめん、クーストス方面で──」

「あのドラゴンゾンビなんだけど──」

 

俺とアキラさんの言葉が綺麗に被った。それで俺は言葉を止めてしまったんだけど、アキラさんはそのまま言葉を続ける。

 

「──アンノウンかもしれないわ」

「え、アンノウン?」

「カズサちゃんさっきアイツに対霊術を使ったけど、効いてなかったでしょ?」

 

その言葉にコクリと頷きを返す。

 

「正確にいうと、効いてはいたと思うのよ。ただ多分、二重に憑依していたんじゃないかしら」

「二重?」

「カズサちゃんが術を使うまでは感じなかった力を、術を使った事で感じとれるようになったの。──クアンドロ地下遺跡で見たアンノウンと同種な感じがする」

「マジか……」

 

だとしたら、心霊術をこれ以上叩き込んでもこれ以上無理だろう。パストラの街の時のように拘束するか、クアンドロ地下遺跡の時のように倒すか。だけどあの巨体で更に強い魔術抵抗力を持つドラゴン相手に拘束は難しい。

 

だとすれば倒すしかないが、アレがアンノウンだとしたら<<ディスインテグレイト>>を使う必要がある。俺は即座に通信を入れなおす。

 

「カシュナート様」

『どうした、カズサ嬢』

「今回の戦力の中に、<<ディスインテグレイト>>を使える術者はいますか?」

『……いや、いないハズだ』

 

<<ディスインテグレイト>>は<<ポイントテレポート>>等と比べても使える術者が少ない術者だ。この場に俺以外は一人も使い手がいない可能性は充分ある。

 

……となると、俺がこの戦場から離れてしまうとあのドラゴンゾンビを倒すのが中々に困難になる。

かといって、南方に現れたゼノギアを放置する訳にはいかない。

 

「どうすれば……」

「……他にも何か起きてるの? カズサちゃん」

 

思わず言葉を漏らした俺に、アキラさんがそう問いかけてくる。

 

俺は南方にアンデッドの集団とゼノギアらしき姿が出現した事を伝える。すると、アキラさんだけではなくテイルさんとグウェンさんも顔を顰めた。

 

「不味いわね、どっちもカズサちゃんが必要な状況だわ」

「こっちのドラゴンゾンビをとっとと倒して向かうしかないんじゃないか?」

 

グウェンさんの言葉にアキラさんは首を振る。

 

「<<ディスインテグレイト>>は効果範囲がそれほど広くない。あのサイズを動かしているとなるとそう簡単に倒せない可能性が高い」

「カズサちゃんが二人に別れる事なんてできないもんね……」

 

アキラさんの言葉に、思わずつぶやかれたテイルさんの言葉。それは当たり前すぎる話だったんだけど、それにリスナーの皆が反応した。

 

『いや、二手に分かれることできるんじゃね?』

『カズサちゃんが二人とか天国だけどそんな術ないの?』

 

在る訳ないだろ、と取るに足らないコメントに反応はせずなんとか思考をめぐらせようとしたが、それに続けてコメントでその思考が中断した。

 

『カズサちゃんは二手に別れるのは無理かもしれないけど、サエちゃんならいけるんじゃね? "能力の召喚"と"英雄の召喚"平行使用できないのかな?』

 

──ありなのか? それ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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