お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

202 / 202
再び森の奥へ

 

「また、ここに来るとは思わなかったなぁ」

「背負うか?」

「ううん。だいじょぶ、グウェンさん」

 

頭上を鬱蒼と生い茂る木々に塞がれ、薄暗い森の中。張り出した樹の根や縦横無尽に伸び捲っている蔦に足を取られつつもぼそっと呟いた俺の言葉が耳に入ったらしい。すぐ横を歩いていたグウェンさんが掛けてくれた言葉に、首を振りつつそう答える。

 

まぁ前回程気を張ってはいないので、疲労に関してはまだマシだし。移動距離もまだそれまでじゃないしな。

 

──メニューに組み込まれた新機能を確認してから数日後、俺達は今再びレンオアム大森林の奥深くへとやってきていた。

 

……本当は、ここ最近くっそ忙しかったし、何より先の戦闘で皆に助けてもらったからお礼も兼ねて何か企画でも考えつつのんびり過ごそうと思ってたんだけど。結局こんな何かを示唆する情報を見せられておいて放置したままだと気になって夜も寝られず──いや、リスナー曰く『すやっすやだったよ!』らしいけど──結局あの昨日の指し示す場所へとやってきているわけである。

 

勿論、すぐに来たわけじゃないけど。

 

まずなんだけど、新機能をしって最初にアキラさん達に相談した後にアイリーン様達にもゲートの件に関して連絡した。残ったアンデッド達の掃討の為、軍や探索者協会から人員を出してレンオアム大森林の探索をしているという話だったので。もしかしたらそれらしい何かを見つけている可能性もあるかもしれない、と思ったのだ。

 

結論からいうと、そんな事はなかったけど。レンオアム大森林広大だからね、仕方ないね。

 

その際にアイリーン様から「方角を指し示しているのであれば、クーストスの街で確認してみるのはどうだろう?」という提案を受けた。先の戦いで冴さんやアキラさん達をクーストスの街まで運んだ<<ポイントテレポート>>の使い手がまだポイントの設定そのままにリンヴルムに滞在しているとのことだったので、お言葉に甘えることにした。二点から方角を確認すれば大体の位置が特定できるからね。距離が遠ければ同じような方角しか差さないだろうけど、それはそれで今考えても仕方ない場所に在るって判断できるし。

 

で、クーストスから測定した結果。差した方角は北東だった。その方角をリンヴルムで確認した方角と合わせて地図上で検証した結果──レンオアム大森林の奥地を指しているのが確認された。というか、以前俺達がゼノギアと遭遇した辺りだ。

 

当然、これは確認すべきだという事になった。といってもさっきいった通りいきなり来たわけじゃない。

 

まずカシュナート様がレンオアム大森林を調査しているメンバーの中から優秀な部隊を使って最深部の調査を実施してくれた。俺がいけば早いんだけど、消耗している俺の体をおもんばかってくれてまずはそちらで調査となったんだ。

 

ただ結局それらしきものは発見できなくて、俺がこうやってやってくることになったんだけど。先遣隊の中に組み込まれていた術士(クーストスに運んでくれた人)が最深部にポイントを設定してくれていたおかげで前回のように夜営をせずに一気にここまでやってこれている。マジ助かります。

 

……まぁそこから先はくっそ動きにくいジャングルの中を進むんですけどね。

 

「カズサさん、このまままっすぐで良いのだよな?」

「はい、大丈夫です」

 

前を歩いて確認してくるアイリーン様に、俺は出しっぱなしのゲートレーダー(仮命名)を確認して頷く。

 

……うん、何故かアイリーン様も来ているんだ。

 

今回の探索に来ているのは、俺達4人にアイリーン様、シグレさん、術士さん二人、騎士さん二人である。俺の正体の都合上同行できる人材は限られるとはいえさすがにここにいる面子だけってわけでもないのに、なんでこのお姫様は一緒に来ているんだろうか……まぁ今回の事を重要視しているのかもしれないけど。

 

ちなみにレーダーを使っている俺が先頭を歩いているのは安全の為もあるけど、少しでも歩きやすいルートを選ぶためでもある。マップがあってもこんな森の中を素人がまっすぐあるくとか不可能なんで。

 

ついでにいうとレーダー見ながら歩いているせいかちょくちょく転びそうになってて、テイルさんやグウェンさんに支えてもらっている。すみません。

 

でもまぁ、それもあともうちょっとだ。

 

「止ってください」

 

俺は周囲の皆に声を掛ける。

 

転移してきた時点でレーダーはこれまでのように方向を指し示すのではなく、とある特定のポイントに光る点が表示される形となっていた。そしてそちらの方向へ進むたびにその点は中央へと近づいていき──もう殆どど真ん中と言える場所になっていた。恐らくこの辺りに、"ゲート”とやらがあるハズ。

 

「多分この辺りに、何かあると思います」

「……それらしきものは見当たらないわね」

 

俺の言葉に、アキラさんがそう口にする。確かにぱっと見それらしいものは周囲には見当たらない。とはいえさすがに何もないとは考えづらいんだけど……

 

「……ちょっと来てくれ」

 

そのまま全員で周辺を確認し──そう皆を呼び寄せたのはグウェンさんだった。

 

全員が彼の元へと集まり、彼の向けた視線の先を追って……眉をひそめた。

 

「成程、これは解りにくいな」

「アイリーン様、余り不用意に近づかない方が……」

 

"それ"に近寄り覗き込むアイリーン様の前にすっと騎士の一人が体を差し込むと、アイリーン様は苦笑いして少し下がった。やっぱりアイリーン様は好奇心が強すぎる気がするなぁ。まあ実力のある人だから大抵の事は対処できるというのはあるんだろうけど、親御さんとか部下の方々とか結構胃を痛めていたりしない?

 

それはおいておいて、アイリーン様の言う通りこれは確かにわかりづらい。"それ"は、一つの巨木のウロの中にあった。

 

「……これ、"門"というか"穴"だよね」

「そうね」

 

アイリーン様に変わって覗き込んだ俺がこぼした言葉に、すぐ横に立つアキラさんが頷く。

 

それはまさに穴だった。ウロの中の地面に空いた穴。直径は多分1mない。穴といったけど、地面がへこんでいるとかではなく円形に黒く塗りつぶされているような感じではあるんだけど……表現するとなればやっぱり穴という言葉が正しい気はする。元々薄暗い森の中で更に木のうろの中にあったせいで非常にわかりづらくなっているけど見た目が明らかに自然のものではないし、多分これで間違いはないと思う。

 

「となると、これを塞ぐ感じ?」

 

俺の背中に体重をかけて、肩越しに覗き込んでいるテイルさんがそう聞いてくる。うん、そうなんだけど……そんな耳元で喋られるとこそばゆいよテイルさん。ぞわぞわしちゃう。そしてリスナー達よ、『カズサちゃんは耳が弱い』じゃねーんだよ。なんで感づくんだというか誰だって耳元に息があたったらゾワゾワくらいするだろ!

 

いや、そうじゃない。さすがにちょっとやばげな物を前にして阿呆な反応をしている場合じゃない。テイルさんの言う通り、予定通りで言えばこれを新機能で塞ぐことになるんだけど……

 

「あまり大きくないから塞げればいいんだけど……」

 

穴を塞ぐためにはMPを消費するわけで。先の戦いで大量に消費したMPは普段からちょこちょこ投げてくれる皆のおかげで少し増えてはいるものの、大分心許ないのは変わらない。

 

とはいえ、まずは試してみないと始まらないか。想像したものよりしょぼ──小さいサイズだったから足りてくれると助かるんだが……足りないのが少しならこの場で芸披露しておひねり貰うか? 芸って何だよ。

 

そんな事を考えつつ、メニューを操作しようとしたその時だった。

 

穴の中から腕が生えてきた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生者、娯楽に餓えて強さを求め、天衣無縫の修羅と化す(作者:暁刀魚)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

異世界にTS転生し、前世の娯楽が失われたことで空虚な毎日を送っていたカグラは、ある日魔力を込めた剣で岩を切ることを経験する。▼前世ではあり得ない強さを手に入れる楽しさに目覚めたカグラは、剣の道を邁進するようになった。▼本人としては異世界での数少ない娯楽を楽しんでいるだけなのだが、自由気ままに強さを求めるカグラを、周囲は天衣無縫の修羅とみなした。▼これはそんな…


総合評価:18835/評価:8.65/連載:116話/更新日時:2026年04月25日(土) 18:05 小説情報

魔法少女の恩師の死体を乗っ取ったクソ外道にTS転生しちゃった(作者:エターナルフォースブリザード)(オリジナル現代/日常)

 魔法少女 メルティ・ルナ。▼ 小学生並みの外見にも関わらず、最強の魔法少女として、多くの魔法少女たちに慕われる彼女。▼ ――の死体を乗っ取ったクソ外道マッドサイエンティストにTS転生しちゃった!? ▼ 目覚めたのは化け物がうごめく研究所。銀髪ロリボディを堪能しつつ、とりあえず、日本に帰って平和に暮らしたい。▼ そう思って街に出てみたんだけど……。▼「ま、魔…


総合評価:1774/評価:8.12/連載:6話/更新日時:2026年02月17日(火) 21:04 小説情報

魔法使い♯ちゃんの世界最適化計画(作者:ざし)(オリジナルSF/冒険・バトル)

科学と合理主義を信奉する転生少女シャロン・P・ウィッケンハイザー、通称「♯ちゃん」は、5歳にしてすでに複数の物理実験を成功させ、家族から“これ以上の実験禁止”を言い渡されていた。地球の技術で世界を変えるつもりだった彼女は、ある日ふと根源的な問いに突き当たった。▼「ここは、本当に地球と同じ宇宙なのか?」▼魔法の存在すら知らなかった天才少女が、科学と魔法の狭間で…


総合評価:6907/評価:8.89/連載:46話/更新日時:2026年05月03日(日) 18:00 小説情報

転生してイージーモード!(作者:ハニラビ)(オリジナル現代/日常)

普通に生きて普通に死んだ男がチートを得て現代日本にTS転生したお話。作者はバカだからよぉ、難しい話は無しにしねーか?(ただのバカ)


総合評価:2392/評価:8.63/連載:13話/更新日時:2026年05月06日(水) 17:17 小説情報

TS転生戦闘人形少女が退職金(?)で暮らす話(作者:フェネ)(オリジナルSF/日常)

 悪の秘密結社の戦闘用ホムンクルスとして転生したけど、組織が滅んだ。以上。▼ 戦闘人形として生まれたTS転生美少女が研究所跡地で偶然拾った四次元バッグ(仮称)に入っていたとても1人では使いきれない大金を持って街に降り、一人暮らしを始めるだけの話。▼ なお周囲の人物はだいたい只者ではないかダメ人間。▼ さらに主人公は金銭感覚・味覚・一般常識・その他諸々がかなり…


総合評価:3732/評価:8.45/連載:5話/更新日時:2025年12月06日(土) 22:32 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>