パストラに帰還して数日が経過した。
戻ってきて以降、俺は久々に一人きりの日々を満喫している。いや、別にアキラさん達との生活が嫌だったとかではもちろんないけど。あと俺は常に数千数万の視線に晒されているので厳密には一人きりではない。
戻ってきて以降、アキラさん達は皆いろいろ忙しくしてるようだ。こっちの世界に来て短い上にあまりこっちの世界で決まった仕事をしたこともない俺と違って、アキラさん達はいろいろな関係性もあるだろうしね。一応<<ポイントテレポート>>で偶にこっちには戻ってきていたからずっと離れていたわけではないけどゼノギアの件が起きてからは大部分リンヴルムに詰めていたし、この後またしばらくパストラを離れる可能性があることから、今のうちに出来る事は済ませてしまおうかということらしい。
ちなみに俺だって暇にしていた訳じゃないぞ! 衣装のモデリングもしてたし、企画だって練ってたからな!
大部分部屋に引きこもってたけど。
……いいじゃないかよー。リンヴルムではかなり動き回ってたんだから。しばらくのんびりしてたっていいだろー。
それに今日は朝から動いてたし──企画だけど!
こないだから作ってた衣装が完成したので、リスナー感謝の企画を本日行っていたのである。
企画名は"カズサちゃんと一日疑似同棲生活"である。勿論ネーミングはリスナーであって俺ではない。企画提案も雑談をしている中で割と多数のリスナーからこんなことをしたいっていうのを取りまとめた結果落ち着いた結果である。
てか、同棲っていつも配信で俺映ってる訳だし、それとそんな変わらないのでは? などと思ったりもしたわけだけど、普段のそれはあくまで普通に生活している俺を垂れ流しているわけであって、皆にやって欲しいのはその場にいるていでのRPをして欲しいとのこだった。以前の企画配信とやることは似通ってるんだけど、この部分を時今回は強く求められている。
……いや、そういうRPは普通にこれまでもしてきたけど、丸一日かぁ。なかなかにしんどそうではあるがここ数日は結構リフレッシュさせてもらったし、リンヴルム関連での協力で皆に感謝を示したいのも事実なので企画を実行させてもらった。
尚本日のスケジュールは以下の通り。
①起床。起きたらそのまま横に設置したカメラの方を向いて、おはようと声を掛ける。
これ地味に俺にとってもリスナーにとっても一番難易度が高かった気がする。
まず現状として、何時何分に置きますってのが出来ない。いや、こっちの世界にだって時計はちゃんとあるんだけど、持ってないんだよね。
……宿とかだと宿の人が起こしてくれたりするんだけどね。まぁそういうことで俺の自然起床に合わせてもらうという高難易度ミッションに。救いは割と俺はだいたい似たような時間に目を覚ますことが多いってことくらいかな。
そして俺としては寝起き即座にRPである。難易度高くない? と思ったが、コメント欄に自分のコメントを固定して目さ覚めたらそれが目に入る位置においておくことで解決した。力技である。結果、第一のミッションは無事達成することができた。うまくタイミングを合わせられたリスナー曰く『寝起きのとろんとした顔でのおはようた大変良かったです』とのこと。喜んで貰えたなら何より……どんな顔だったのか覚えてないけど。
②朝食。まぁタイミングを合わせてご飯を食べる奴で、これは割と普段からやってたりするんだけど。
今回はこっちで作る料理を出来るだけ日本側で用意しやすいものにして、食べるものも合わせやすい様にした。朝食は野菜とハムのサンドイッチ。おいしゅうございました。
③午前中は観光。まずはケモナーの方々向けの企画として港付近で行われている朝一にいったよ。あの辺り港の関係者の他、獣人が多く住む区画もあるから獣人の人たちがいっぱい歩いているんだよね。それ以外にも他の大陸の珍しい品物とかもあるから、見て回るだけでも結構楽しかったりする。
その朝市が終わったら、今度は街の中心街へ。
最近はそっち関係全然してなかったんだけど(旅をしていたりリンヴルムで暮らしていたのもあって)、元々俺の部屋の内装って、皆の意見を取り入れて(勿論俺の意見も加味するけど)作っていくってことにしていたので、久々にそういった小物を買う事にしたのだ。リンヴルムの一連の出来事で、報酬はかなりの額を貰えているから金銭的な余裕もあるし。あと、俺の普段着とかも皆の意見を聞いてまた買い足す事にした。勿論下着は覗いてね!
『おお……同棲している感が出ててすごくいい』
『これがカズサちゃんの部屋に飾られるのか。俺達が選んだ小者が推しの配信に映りこむの……実にいいね?』
『カズサちゃん、以前と比べてそれっぽいムーブ上手くなったよね』
そりゃ何度もこんなことやってるしな。恋人ではなくて親しい友人と考えて動けば余裕よ。
『でも、相変わらず恋人っぽいムーブをしようとすると照れが覗くカズサちゃんが好き』
『そのままの君でいて』
うるしゃい。たまに『これ男に戻ったあと思い出したらなぁ』とかどうしても偶に頭に浮かんでくるんだよ。
とにかくそんな感じで午前中は終了。昼食は外食なので軽くすまして、午後の部に突入。
④午後はまずは街を離れて、以前の海岸へ。やることも以前と同じで歌枠である。シチュエーションとしては一緒にカラオケに来たというノリ。今回は勿論下に水着とか来てません。
『防音魔術とかなかったっけ?』
「あるなぁ……」
『それ取得すれば、自宅で歌枠できるのでは?』
「……検討シマス」
歌、別段自身があるわけじゃないからあまりする気にはならないんだけど、リスナーからの評判はかなりいいんだよなぁ。防音魔術、他の使い道もあるし今度取得を検討するかなぁ。
⑤生活必需品を買いだして帰宅。
これいる? って聞いたら大多数のリスナーから強く肯定された。こういったものを抱えて一緒に帰宅するのがいいんでしょうということらしい。なんかラブコメストーリー的な夢みすぎじゃね? と思わず口を滑らせてしまったらRPないんだからそれくらい夢見たシチュエーション望んだっていいでしょう! と反発された。
⑥夕食の支度、夕食。
これは朝と同じだね。事前に宣言していた料理を作って、みんなと食べる。朝と違ってこっちはちゃーんとあーんもしてやりたとも、ええ。
……とまぁ今はここまで終わった状態である。一通り終わったと思われるかもしれないが、リスナー要望は「おやすみ」を言うまでなので、そのおやすみを言うのも含めてあと二つほど企画が残っている。
当然お風呂配信とかそんなものではない。ギリギリを攻めるわけではないし、今はもう俺の自身の体に対して感じる恥じらいは普通の女性とかわらなく(むしろ普通の女の子より反応かわいいわよ? とかアキラさんは揶揄ってきたりするが)なっているので、そんな配信はしない。
──いや、これからやろうとしていることも普通に恥ずかしい奴だけどな。うん、皆様もお分かりだろう、ある意味本日のメインイベント。
コスプレ撮影会である。
リスナー君達、同棲相手(一部女性リスナーからするとルームシェアの相手)的な存在にそんな行為を求めるのはやめておけよ? あくまで俺がファンタジー的なアレで必要に応じてやっているだけで、大半の相手にはひっぱたかれて愛想つかされかねないからな?