「どう、かな?」
カメラの範囲外で着替えを終え、皆の前に姿を現す。
いや、さすがにこの時間だとちょっと肌寒いな?
ええと、一応皆の反応は、と
『ぎゃわいい!』
『素晴らしいよカズサちゃん』
『これはセクシーカズサちゃん』
『いいねいいね、滅茶苦茶に似合ってる』
『いざ着た姿を見るとめっちゃ凝ってる衣装ねコレ』
『くるっと回ってみて~』
「ん、こんな感じ?」
大好評のコメント欄の中から一つのコメントを拾い取り、くるりと殻を回す。
スカートの後方のレース部分がふわりと浮かぶ。それとわかってたけど、前面の超ミニ部分も浮かび上がりその下がさらけ出される。まぁスパッツ穿いてるけどね。というか穿いてなければこんなことしないし、絶対に浮かびあがらないようにするけど……でもこの長さだと動き回らなくてもちょっと足を上げるポーズを取るだけでも絶対に中身見えるよな。細かい装飾はともかく全体のディテールは元ネタに結構近くつくれたらしいけど。これでパンチラしまくらないのおかしいだろ。
それに胸元も。ちゃんとストラップついてるからずり落ちる心配はないし、一応他にもずり落ち対策はしてるけど激しく動いたらやばいんじゃないの?
二次元に突っ込んでも仕方ないけどさ。
『ヂュッ』
『うおおおおおおおおおお!』
『ひらひらしてかわいい~』
『しかし出来のいい衣装だね。特に背面がすごい』
「ん、背中凄いでしょ。今回のは特によくできたと思ってるんだ」
今回の衣装、前面はふとももがっつりでてたり胸元も開いていたり露出は多めだけど作り自体はわりとシンプルな作りなのに対して、背中は下半身のレース部分もそうだけど、腰の辺りにも似た素材で大きなリボンが誂えてある。ぶっちゃけ背面の方が衣装としては見どころが多い。上の方は肩甲骨のあたりががっつりさらされてるけど……
『モデリング中も見てたけど、実際の衣装化するとすごいな、これ』
『アニメの奴とはいろいろ違うけど、クオリティのレベルでいえば上いってんじゃねぇかってレベル』
『これみちゃうと他の衣装とかも作って欲しいところではあるけど……、文字だけで伝えるのは限界があるからなぁ』
それは思うな。向こう側から画像とか音楽とか提供できるかあるいはこっちから閲覧できる手段があれば、いろいろやれること増えると思うんだけど。なんで配信は出来るのに閲覧はできないのさって話だよね。
ああ、でも、
「考えてみれば、俺がこっちに来る前に見てた作品ならもう少し元ネタに近い感じで再現できるかもな?」
『やろう!』
『それだ!』
『どの程度のレベルの奴ならいける!?』
反応はえーよ。
「完璧に記憶している奴なんてそうそうないからパーフェクトな再現は難しいけど、元ネタ欠片も見たことない奴よりはな」
むしろ完璧な再現はさすがに難しいのと、モデリングツールに慣れきっていなかったこれまでは避けていたけど、ツールももうほぼ完ぺきに使いこなせるようになったし、今回の奴とか考えると完璧な再現はしなくていいなと考えれば、ネタとしてはアリだよね。というかシンプルな職業系衣装だとネタ切れきそうだし。
「そこそこアニメやゲームも有名な奴はある程度履修できてるから、比較的最近の奴ならそこそこいける……くちゅっ」
『助かる』
『たすかる』
『ぶれすゆー』
『可愛いくしゃみ』
『ふと疑問なんだけど、カズサちゃん今の姿になる前からそんな可愛いくしゃみしてたのかしら』
「もっと豪快にしてたと思いマス」
自分がどんなくしゃみしてたかなんてあんまり覚えてないけど、さすがにこんな大人しいくしゃみではなかったハズ。俺の今の仕草とか行動ってこの体になってからある程度意識していた行動が身についたものが多いけど、くしゃみの仕方とかさすがに意識してないもんな。まぁ体別物になってるし、くしゃみの仕方だってそりゃ変わるか。
『寒い? 大丈夫?』
「そこまで寒いってわけじゃないけど、言われてみればちょっとだけ空気が冷たいかな? って感じかも」
もう夜だしね。それに太腿とか肩とか背中とか二の腕とか結構露出している部分も多いし。さすがにこの程度で風邪はひかないと思うけど、あまり長い時間この格好でいるのは避けた方がいいか。
「とりあえず、さっきの話はまた今度にして撮影会すませちゃおーか。事前にいってたけど、今回はロールプレイ自体はなしね」
いつもはコスプレはRPがセットだけど、今回はコンセプトが同棲している相手がしてくれたコスプレ撮影会なのでキャラ自体は普段の俺のままで行く、感じだね。そもそもの話コスプレ企画って格好よりもRPの方が精神的な負担が強いので今回は楽でいいです。
そのまま、俺はいくつかポーズをとっていく。ポーズ自体は事前の雑談時にある程度決めていて、それをカメラの前でリスナーのコメントを見ながら微妙に調整していく、そんな感じ。基本的には元ネタのキャラがよくやるポーズっぽい。性格はちょっと背伸びしたお姉さんっぽいキャラらしいんだけど、この格好で……?
「というか、この格好でパンツ見えてないの、絶対にありえないよね」
今俺が取っているポーズは小さな木箱の上に片足をのせた状態で、カメラをやや下側に設置して煽り気味にしているアングルだ。俺はショートスパッツを穿いているから大丈夫だけど、このスカートの短さじゃ絶対映っちゃうあれである。捲れあがるとかそういうレベルではなく。
『そこはまぁ……アレよ』
『毎回きっちりその位置が丁度隠れるような何かがあるんだよな』
何その労力の掛け方。そこまでするならそれこそ俺みたいにスパッツ穿かせるとか、見えても問題ないインナーをつけろよ。何と戦ってるんだよ。
「ん、このポーズはそろそろOK?」
『ばっちりスクショした!』
『無限に見えたいけど、カズサちゃんが風邪ひいちゃうのもやだし我慢する』
『次でラストか。うおお時間の経過が早すぎるぜ……!』
『今来たらもう終わりそうで膝をついた俺がいる』
どうせ切り抜きがあがるはずなので、そちらで見てください。
俺は木箱の上から足を降ろすと、カメラの位置を調整する。それから、少し体を前傾姿勢にして、人差し指をカメラにあてるようなポーズをする。これはアニメの主人公に対して俺の衣装の元ネタのキャラが軽く窘める時にするポーズらしい。いや、俺のキャラ主人気じゃないんかい。
まあいい。えーっと、セリフはシンプルだったな。
「もう、また無茶して。駄目ですからね、めっ」
『(キュン死)』
『ありがとうございますっ』
『ちなみにアニメでは主人公視点になるんですが、視線の先はもうちょっと下ですね』
それ胸元じゃねーか。主人公って女の子の魔法少女だよね? 変態淑女なの?
とりあえず俺はやらんからね?
さて、これで予定したポーズは終わりだ。この後はどうしようか? なんだかんだ細々と動いてたら寒気あまり感じなくなってきたから、もう少し皆に付き合ってやっても──そう思った時だった。
後方から部屋の扉を叩く音が響いた。続いて、俺の名前を呼ぶ声。
「あれ、テイルさん?」
今日は仕事で多分戻らないっていってたと思うんだけど……早く終わったのかな?
「みんな、ちょっと待っててね」
『りょ』
『OK』
『了解です』
コメント欄の皆に断ってから、俺は扉の方へと駆け寄ると扉を開く。
その向こうに立っていたテイルさんは、一度大きく目を見開いた後に今度は目を輝かせてこちらの肩を掴んできた。
「きゃー! 可愛い、カズサちゃん! 何その恰好!」
あ。
前話ひっどい誤字をしてましたね……(除いて→覗いて)