「ふふ、ありがとう」
一人目を皮切りに可愛いとか美人とかそういうコメントが大量に流れたが、アイリーン様はそれを微笑とともに照れることもなく軽く受け流した。ま、美人さんだし王女様なんだから賛辞の言葉なんてさんざん聞いているだろうしね。
「まぁ親しみやすいというのは悪い話ではないので喜んでおこう。いずれちゃんと威厳も付けたいけどね」
いや威厳がないわけじゃないんですよ。ただあくまでこいつらカメラ越しなんで、どうしても可愛さ綺麗さが先に来ちゃってるだけなんだと思う。多分直接前に立ったらもう少し固くなると思うよ。尤も中には威厳じゃなくて美人の女の子ってだけで反応固まっちゃう奴もいそうだけど。
『む! 今なんかカズサちゃんが俺達の事馬鹿にした気がする!』
してないよ! というかなんなんだよ本当に! エスパーか!?
……俺知らないうちに考えている事口に出しているとかないよな? ……うん、周りのメンバーの反応を見る限りそれはなさそう。
『あ、目を逸らした』
逸らしてない。
「あ、そういえばアイリーン様はすぐリンヴルムに戻るんですか?」
『話のそらし方が不自然すぎる』
『これは何か俺達に失礼なことを考えていましたね』
『これは後で上目遣いで目を潤ませながらごめんなさいしてもらわないといけませんね』
あーうるさいうるさい、やりませんよ。企画のRPとして求められたらやるけどな!
ちらりと見えるコメントから視線を外しアイリーン様の方を見れば、彼女はフルフルと首を振ってこたえを返してくれる。
「いや、しばらくは王都に滞在する予定だ。建国祭も近いしな。何かあれば私に声を掛けてくれればいい」
「さすがに王女様をそんな気軽に扱うのは……」
「大丈夫、父上も言っていたが貴女は私の命の恩人としての扱いだ。それに私は王都ではそれほどする事もない。手持無沙汰の末子の王女が恩人の応対をしていても特に問題はないさ」
「そういうものですかね……」
一応今の俺達の扱いだけど、TOP層の俺の能力を知っている人たちを除けば、命を落としかけたアイリーン様を使った治癒術士ということになっている。その話だけなら腕のいい治癒術士というだけになるからそこまで目立たないだろういうという判断だ。逆に何もなしで王城に呼び出されていたら胡散臭い事このうえないしね。
「あ、でも図書館の件はお願いしますね」
「うん、それは大丈夫だ。もう許可もとってあるからいつでもいけるぞ。なんなら今日から行くかい?」
「いえ、今日はちょっと疲れたので……」
精神的に。
で、図書館の件だけど、これは俺達の今後の活動方針に関わってくる話だ。
俺の新能力、ヒロイックサーガ。リンヴルムでは役に立つどころじゃないレベルで活用しまくったこの能力だけど、扱えるのが明らかにサエさんだけではないわけで。だとすれば、今後他の過去の英雄の力を必要にする可能性が高いのは間違いないというのが俺達の共通認識だ。
そしてその能力の解放条件だけど、サエさんの時を考える限りはその人物が深く関わった場所にいく必要があると思われる。──んだけど、過去の英雄は何百年前、或いは千年以上前の存在だ。過去にこの地方にこういった英雄がいた、というのはあるんだけど……多分ある程度具体的な場所までいかないといけないわけで、その場所ははっきりしていないケースが多い。異世界からの英雄と魔王が戦った古戦場がこちらです、みたいな観光名所があれば楽なんだけどね……
なのでまずは情報収集って話になったんだけど、そこで都合のいいことに王族と繋がりができたわけで。
「王都の蔵書を調べさせてもらいましょう」
そう提案してくれたのはアキラさんだ。王国はそれなりにながい歴史を誇る国であり、数百年前の書籍なども保管されているらしい。ただそういった書籍は貴重品で、一般公開はされていない。その蔵書を見れば具体的な場所が絞り込めるんじゃないかという話になったので、アイリーン様にお願いしていたのである。
ついでに王都観光も企画にして配信すれば王都にいる間にMPも情報も集めて一石二鳥! ということで、しばらくは俺達も王都滞在する予定である。
「だけど、本当に泊るところはこちらで用意しないでいいの?」
「ええ、それは大丈夫です」
滞在の話をした時アイリーン様は宿の用意もしてくれるという話だったんだけど、そこまでしてしまうと目立つだろうということで宿は独自で取る事になった。上層部には知らているが、リンヴルムならともかく王都であれば俺達は無名の人間……いや、アキラさんはそうでもないな……ともかく、あまり注目を集めないで済むので。建国祭直前になると宿を取るのも大変になるけど、今くらいの時期ならまだ余裕があるし、グウェンさんが当てがあるというのでそうすることにした。今回も報奨金でてるのでマジで金銭的な心配はほぼ不要になってるしね。
「場所はお伝えするので」
「うん。図書館の他にもみたい所があれば行ってくれ。出来るだけ融通を効かせるから」
「助かります」
まぁでもとりあえずは図書館だ。何か見つかれば今後の予定も立てやすいし。
それからしばらく雑談した後、アイリーン様は呼ばれて去って行った。本人は手持無沙汰とかいっていたけどさすがに王女様だ、やることはきっといろいろあるんだろう。
「それじゃ俺達も宿に向かうか」
グウェンさんの言葉に俺達は頷き、王城を後にした。用事は全部済んだので王城にいる意味がないし、何よりやっぱり落ち着かないからね……パストラに変える時は自分達のポイントテレポートで帰れるから、今後は呼び出しでもされない限りは王城に来ることはないだろう。何かしらヒントになるような事をみつけたら協力をお願いするためにアイリーン様に会う事になるかもしれないけど。状況次第だ。
あまり目立たないように裏口的な方に案内してもらって、外に出る。
そうして城壁の外にでて見上げれば、ようやく自分がいた場所の全貌が目に入る。
「……なんか今ようやく自分達がお城にいたのを実感したかも」
元の世界の高層ビルほど高い建物ではない。だけどこちらの世界で考えれば非常に高さのある建造物が聳え立っている。
『見た目自体は海外のお城に似てるね』
『でも上のでかさより横の広さの方がすごそう』
「確かに」
城壁はかなり広い範囲で広がっている。王城は城は一つどかーんと立っている訳ではなくて、敷地内にいくつも建造物がある感じだ。例えば俺達がいた場所は外交などや外部の人間を招き入れるのに使う場所らしい。騎士団関連や事務方関連、それに王家の方々が暮らす場所はまた別の建物にあるそうである。まぁそりゃそうだよね。
だから正直ヨーロッパとかのものの系統と見た目は似ているとはいえ、山の上にそびえたっているようなお城と比べるとぱっと見の見た目自体は地味に見える。だが壮大さでいればこっちの方が上だ。さらにこっちは城の周囲にそのまま街が広がっている。それを含めてみれば豪華さもこちらが上だろう。正直高いところから見たら元の世界ではまず見られない壮大な光景がみられるんじゃなかろうか。
……飛行系の魔法で上空から配信してみるか? でもちゃんと報告してやらないと後で怒られそうな気がするし、最悪撃ち落とされたりするんじゃなかろうか。お城の上空を飛ぶ人影とか不審どころじゃない気がするし。
まぁ上からの光景は後だ。まずは普通に街を歩いてその光景を配信させて頂くといたしましょう!