その結果──
『ようするに生活していくのにスパチャが欲しいと』
『めっちゃ金目当て配信やんけ』
そうなるよね。ただここは誤魔化しても仕方ないしなぁ。世の中儲けるための行為を毛嫌いする人もいるし、ここで去っていく人間が出るのは仕方ない。なので俺は説明の言葉を続ける。
「否定はしないよ、俺が生活していくには必要なことだからね。ただ勘違いしないで欲しいんだけど、スパチャが投げられないからってなにもしないってこともないし、逆にスパチャを貰ったから言う事聞くってこともしない」
『でも育成計画とか名打ってるけど?』
「それに関してだけど、俺はこの世界に関しての知識は実は皆とほぼ同程度……ようするに殆どないんだ。そんな世界で生きていくために、皆にいろいろ相談に乗ってほしい。頼れるのは皆だけなんだ。そうやって俺を見守ったうえで、助けてやってもいいとか、支援してやってもいいと思ってくれたら投げ銭してくれたらいいよ」
この辺のセリフは俺一人で考えたわけじゃなく、常連の皆と一緒に考えたもの。ただうわべだけのセリフではない、きっちりとした本心だ。
だから。
「よろしくお願いします」
俺はカメラに向けて大きく頭を下げた。
視界の端に映るコメント欄に、どんどんコメントが流れていく。だが、俺はそちらに気を取られることなく、意識を頭を下げる事に集中する。
そして大体十数秒か立った後に頭を上げると、俺はそのままの勢いで立ち上がる。
これで言いたいことは一通りいった。ミッションは次のフェーズに移行する。
「それじゃ、そろそろ出かけようか?」
『出かけるって、どこへ?』
そんなコメントに、俺は笑みを浮かべながら答える。
「勿論、異世界案内にさ」
◆◇
『おー、なかなかファンタジーっぽい光景!』
『うおー、もしかして異世界からの配信ってマジなの?』
『いや、やっぱりゲーム画面じゃね? シェーダーとかライティング設定次第ではマジで現実みたいに作れることができるし』
『さすがにここまで全く違和感のないのは……』
『セットじゃないの? 歩いているのはエキストラとか』
『どんだけ金掛けてるんだよ』
外に出てすぐに、コメント欄は議論の場に変わった。明らかに現代日本とは違う街並みや行きかう人の姿に、様々な予想が乱れ飛ぶ。
俺はそれを眺めながら、心の中でちょっとだけ笑みを浮かべる。
この展開は予測していたし、悪くない。こうやっていろいろ予想したりするって事は興味が湧いているってことだからな。
そのまま特にそういった予測コメントには触れず、街の中を歩いていく。時たま『あれは何?』と聞いてくるコメントに回答しつつ、のんびりと。気分はガイド役だね、というかまんま異世界ガイドなんだけど。
こういう時、本来ならバスガイド辺りの服を着たら受けるのかね? でもタイトスカートなんて穿いてる人間全くいないからくっそ目立ちそうだけど。うーん、服の製作にMPが掛からなければそういった配信者らしい準備もできるんだけどなぁ。優しくないシステムだ。
尤も消費無しで作れたら自作服で衣は片付くし、作った服をうって金を稼げれば食と住もなんとかなるからそもそもこういう配信やってない可能性が高いけどな。
『そういえばさ』
「うん?」
『もっとファンタジーっぽい服着ないの? ビキニアーマーとか』
「視界に入る町人の中に一人でもそんな格好している人いるのかなー?」
街中には旅人なのか傭兵なのか鎧を纏った人間もたまに見かけるが、男女問わず纏っている鎧はちゃんと胴体全体を守る露出の低いものだ。そりゃね、ビキニアーマーとか急所殆ど守ってないからね。実際の防具としてあんなもん装備してる奴がいたらそれはただの露出狂だろう。あるいは防御が薄いほど攻撃力があがる能力持ちとか。