お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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浄霊は任せろー

「皆、ありがとう!」

 

まだスパチャが飛び回っているが、必要な分はもらえた。俺はカメラを正面から見つめて頭を下げると、正面においていたコメント欄とカメラを横に移動して走り出す。

 

説明分に書いてあったが、<<ピュリファイ・スピリット>>には有効距離がある。その距離は10Mだ、かなり短い。

 

戦場となっている場所へ突入するのが怖くないわけじゃない。でもみんなのおかげでアドレナリンがでているのか、先ほどまで竦んでいた足は驚くほど素直に動いてくれた。そのまま俺は一番近くで戦っている女傭兵の後ろへと駆け寄っていく。

 

女性はすでにいくつか傷を負っていたが、それでも引く様子はない。このままだとじり貧なのはわかっているだろうに、レイスに憑かれた男の攻撃を防ぎ続けている、

 

すごいと感嘆しつつ、俺は彼女の背後に回った。女性は気づいたようだが余裕がないのだろう、視線をこちらに向ける様子はなかった。ありがたい──後で冷静になってから気付いたが、いきなり戦闘能力のなさそうな少女が後ろに回ったことに気を取られて女性が殺されていたらトラウマどころの話じゃなかった。

 

──腕を突き出す。術の説明には、利き手の平を向けた方向に術の効果が発動するとあったからだ。

 

そして俺は術を発動させるため、叫ぶ。

 

「<<ピュリファイ・スピリット>>!」

 

頭に浮かんでいるのは、発動してくれという事と、効いてくれという思いだけ。

 

──断末魔が響いた。

 

まるで、金属をひっかいた音のような不快な悲鳴。それと同時、糸の切れた操り人形のように、女性の前にいた男が崩れ落ちた。

 

これは……効いたのか?

 

崩れ落ちた男は動き出す気配はない。そしてそれを確認した女傭兵が、こちらを振り返り声を上げた。

 

「貴女! 浄霊の魔術が使えるの!?」

「はっ、はいっ! 使えます!」

「だったら、他もお願い。私が前を守るから、私の指示に従ってどんどん浄化して頂戴!」

「わかりました!」

 

俺が頷くのを確認し、彼女は駆けだす。こっちとしても指示を貰えるのはありがたい。術が怪物に通用するのは解った。不謹慎かもしれないが、先ほどまでの不安が消え、心が湧きたつのが分かる。

 

みんなのお金の力で、この街を護れる!

 

 

◇◆

 

「これで最後よ」

 

崩れ落ちた男を見下ろしつつ発された女傭兵の言葉を耳にして、俺はどっと脱力して地面にペタンと座り込んでしまった。スカートを抑える事も忘れたので地面に直接お尻が触れるのもわかったが、治す気も起きない。むしろひんやりとした地面の感触が、興奮と走り回った事により火照る体に心地よかった。

 

「大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

 

心配気に女傭兵が覗き込んで来たので、頷いておく。

 

前衛を彼女が張ってくれたおかげで、俺自身はレイスに直接襲い掛かられてはいない。

ただ、これは恐らく術を使ったので消耗したのだろう。全身を疲労感というか倦怠感が包んでいるのを感じる。

 

安堵、それに今更戦場にいたという事に対する恐怖がポップアップしてきて、力も入らない。少しこのままでいれば、落ち着いてくれるかな。

 

途中で女傭兵だけではなく他の警備兵の皆も俺が浄霊出来る事に気づいたので、全員が上手く連携して動いてくれた。結果として俺が参戦した以降に深い傷を負った人間は一人もいなかったようで、良かったと思う。

 

すでに怪我をしていた人たちも、すでに治療を受けているようだった。手を翳しているのは<<ヒーリング>>とかを使っているのだろうか。

 

女傭兵は俺の無事を確認すると、他のけが人の手当に向かっていった。本人も怪我しているのにすごい人だなぁと思う。俺は立ち上がる事も出来ないっていうのに。

 

でもまぁ、安全になった事に気づいた町人たちが戻ってきて手当やらなにやらに回ってくれているので、人手は問題ないだろう。というか俺頑張ったし。俺としてはめっちゃ頑張ったし。命に係わるような重体の人もいないようなので休ませてもらってもいいよね。

 

何人かの警備兵の人が声を掛けてくるのに笑顔で答えながら、ため息を吐く。こっちの世界に来てからずっとのんびりすごしていたのに、突然の大騒動だ。

 

でも無事に潜り抜けられた。みんなのでおかげで。

 

ふとそういえばと横に回していたコメント欄とカメラを前に回すと、激しくコメント欄が回っていた。「お疲れ様」「よく頑張った!」「えらい」とかいろいろねぎらいの言葉が流れてて、思わず顔に笑みが浮かんでしまう。

 

とたん、「あっ、その笑顔いい!」「可愛い!」とかコメントが様変わりして、今度が笑いが口から洩れてしまう。

 

ほんと、美少女相手だとちょろいよな、みんな。

 

でも、この結果は皆のおかげだ。背中を押して、力を貸してくれた俺のリスナーは皆、最高だ。

 

だから最大の感謝を込めて、笑顔とピースサインをカメラに向けた。

 

「本当にありがとう。サイコーだよみんな」

 

◆◆

 

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そろそろストックが切れそうです
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