お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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アキラさんは割とさっぱりした性格をしているらしく、俺に対して一通りの忠告を終えるとそれ以上その話を引きずる事はなかった。

 

『アキラさん優しいなぁ』

『美人でさっぱりしている女性っていいよね……』

『お? カズサちゃんから浮気か? お?』

『カズサちゃんもアキラさんもどっちもいい』

『それはそれとしてカズサちゃん、アキラさんと並んで入らない? ほらカメラに一緒に映るようにさ』

『カズサちゃんだけアキラさんの入浴姿見れてズルくない?』

 

いや、映すわけないだろう。湯着をちゃんと着ているとはいえ、入浴中の姿だ。俺自身はカメラあるって解ってるし納得済みで映しているからいいけど、それを知らない人間を勝手に映すわけにはいかないだろう。

 

許可も得ず温泉の映像を配信したら本当にヤバいってのはわかるでしょ? 勿論こっちの世界で配信に対するプライバシー問題なんてないと思うけど、倫理感の問題として。

 

「俺で我慢しとけ」

 

そっとカメラに顔を近づけ、小声でそう囁くと『はーい』『我慢しゅる~』『もうちょっと斜めからの角度が……』とか返ってきた。ちょっとキモイとは思ったけど、声には出さない。

 

閑話休題。

 

忠告が終わっても、アキラさんの話は終わらなかった。一件クールっぽい外見によらず、意外と話好きらしい。

 

ちょっとした雑談からどこに向かって旅をしているのか聞かれ、パストラに移住する為に目指していると話すと驚いた顔をされた。

 

「私パストラから来たのよ。偶然ね」

「本当ですか!?」

 

詳しく聞くと、アキラさんはパストラに住んでいるらしい。今回はちょっと用事があり、パストラを離れて別の街を目指している最中とのこと。

 

「帰りのルートだったら<<ポイントテレポート>>で一気にパストラに連れていってあげれたんだけどね。尤も帰りはそれで一気に戻るつもりだったから、そもそもここで会えていなかったと思うけど」

「そういう意味では、私はアキラさんが行きのタイミングでちょうどここに寄ったことに感謝しないといけませんね」

「そうね、カズサちゃんは幸運だったと思うわよ?」

 

そういって、アキラさんはフフと笑う。年齢的な外見は俺とそれほど変わらないのに、どこか艶っぽさを感じる笑みだ。間違いなく女の子歴が3桁日数どころかその半分にも満たない俺には出来ない笑い方だよな、コレ。こういった笑みが出来れば登録者数増えるのかねぇ……いつになっても出来る気がしないけど。

 

ちなみに<<ポイントテレポート>>は<<テレポート>>の上位術ともいえる術で、事前に設定しておいたポイントに移動する能力だ。視界範囲内で可能距離も短い<<テレポート>>と違い、一気に距離を稼ぐ事ができる。難点はポイント設定が必要なため一度行ったところにしか行けない事と、マーキング設定が一か所しか出来ない事か。まぁそれを鑑みても有用性は高く、また取得難易度も高い術である。なにせ取得の為のMPの消費コストがくっそ重かったので。

 

 

……今更だけど、アキラさんめっちゃ実力者だよね。男達と接した時もいくつかの術をポンポン使ってたし、こんな高コストの術も覚えているし。俺みたいな能力取得のチート技術もないのにこの若さでそんなに術を覚えてるって事は滅茶苦茶エリートな人なのでは? そんな人がたまたま同じタイミングで温泉に立ち寄ってくれたのは本当に奇跡だ。自分の幸運にほんと感謝したい。そしてここで幸運を使い切りましたってことになってない事を祈る。

 

その後もいくつか雑談──殆どアキラさんからパストラの事を聞いていただけだったが──を続けた後に、俺達は風呂から上がり旅に戻る事になった。順番に着替えた後(一緒にならないように、俺の方が少し早めに上がった)本街道まで一緒に向かい、そこでお別れだ。向かう方向が逆だしね。

 

「パストラで住むところ決まったら連絡頂戴」と連絡方法を教えてもらい、最後に改めてお礼を言って俺たちは手を振りあって別れた。

 

……温泉ではひどい目にあったし、猛省が必要だと思うけど、結果だけ見たらアキラさんと知り合いになれたんだから結果としては温泉によって正解だったよな? そんな事をぼそっと口にしたら皆に聞きとがめられて滅茶苦茶「反省してないね?」と言われた。いやいやすごく反省してるって! 俺もこんな目には二度と遭いたくないし!

 

その日は結局予想通り話を聞きつけた後から来たリスナー達にかわるがわるお小言を頂く事になった。うう……今後は気を付けますってば。

 

そして翌日以降の旅路は、味気ない感じになった。リスナーにも撮れ高は気にしないで、とにかく自分の安全を重視してと強く言われたので。俺としても、偶々男達しかいない場所に行くとビクッと反応しちゃうようになってしまったので、素直に従う事にした。余計な寄り道は一切せず、ただ目的地へ向かう旅。

 

幸いな事に天候には恵まれて、旅は順調に進み──俺は予定通りの日程で目的地に到着する事ができた。

 

──交易都市パストラへ。

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