お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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2 交易都市パストラ
生活拠点


 

「つっ……かれたぁ!」

 

持っていた荷物を投げ出して、飛び込んだ先はベッドの上。陽の香りのするシーツへと顔を埋める。

 

「あー……わざわざ干してくれたのかな。いい匂い」

 

疲れた体にベッドの柔らかさと匂いが心地良すぎて、このまま眠ってしたい気分になる。が、そういう訳にもいかないと顔を上げる。

 

『カズサちゃんカズサちゃん』

「ん-、何?」

『スカート捲れてるけどいいの?』

「えっ、マジ!? ……って、この程度か」

 

顔を上げた途端コメントに指摘され慌てて半身を起こして確認したが、確かに捲れているとはいってもせいぜい膝上あたりまでだった。考えてみれば今日俺が穿いているのは丈の長いスカートで、そうそう上の方まで捲れあがるなんてありえなかったな。

 

「この程度だったら、セーラー服の時の方が足出てるじゃん?」

『ま、そうなんだけどね。普通に見えるのと捲れて見えるのじゃ価値が違うんだよ?』

『ガードの固い格好している子が、油断して見せるちょっとした露出が好物です』

 

いやさすがにこんなところまで気にするほどガード固くしているつもりもないけど。ていうかお前ら前もこの程度で反応してなかったか? 

 

『あとカメラだと膝裏とかあんまり映らないからちょっとドキドキするよね』

『カズサちゃんの膝裏ハァハァ』

『膝裏フェチとかレベルが高すぎないか?』

 

俺もそう思うけど、特殊性癖持ちが唐突にコメント欄に生えてくるのはもはや今更な事なのでスルーする。

 

というか、俺が見てた女性配信者のコメント欄だとここまで特殊性癖持ちが湧いてなかったけど、俺の所では大量発生するのはやっぱり中身が男だから、半ばネタ感覚で性癖ぶつけやすいのだろうか? それはそれで配信者として売りになるのかね。まぁコメント欄がそんな奴ばっかりになるとノーマル性癖の人が参加しづらくなるかもしれないから、推奨をすることはしないけど。別に特殊性癖ぶつけられたいわけじゃないし……この程度ならいいけど、もっとどぎつい特殊なのぶつけられるの怖いし……

 

「よっと」

 

とりあえず捲れあがったスカートの裾を元の位置に戻しながら、俺は体を起こす。

 

そしてベッドの上で胡坐をかき、周囲を見渡した。

 

今俺が居るのは、木造建物の一室だった。部屋の広さはこれまで俺が過ごしてきた安宿に比べると広く、多分16畳くらいはあるんじゃなかろうか。ただ広さに対して家具の数は簡素な物だ。今俺が乗っているベッドに人二人が食事できるくらいかなというテーブル、それに椅子が二つ。木製のクローゼットと小さな棚、ランプ。多分水を汲んでためておくためのものかな? 壺のようなものがあって、後は珍しいのは料理が出来そうな台があった。一応料理も可能らしく、その上には排煙の為の穴も開いている。

 

それらを一通り確認して、俺はうんと頷く。

 

「なかなかにいい家が見つかったよな」

『本当だねー』

 

パストラに辿り着いて。

 

到着した当日は歩いた分も含めて旅の疲れもあり一晩は宿を取って休んだ後、まず俺が最初に行ったのは当面の住処を探すことだった。

 

グリッドの街はそれほど長く滞在する気がなかったので宿生活で済ませていたが、このパストラはこの国の中では王都に次いで広く、"ネタ切れ"も早々にはしないであろうことから当面はここに滞在、或いは移動するにしても生活拠点にするつもりだった。

 

そうなると、さすがに宿生活では金がかかりすぎる。特にグリッドに比べてばこのパストラは物価も高いため、俺はこのパストラでアパートメントを借りるつもりだった。じゃないといつまでたっても私物も増やせないしな……

 

家の条件は家賃が予算内に収まる事、治安が悪い場所にない事が大前提。他にもいろいろ細かい条件はあったが、他はまぁ取捨選択できる内容だ、だがこの二つは外せない。前者は当然として、後者は俺もそう思ったけど、何よりリスナーのみんなに強く言われてしまった。

 

──本当はパストラの街につくまではアキラさんの住んでいる近くに住めたらいいなーなんて事をぼんやり考えていたんだけど、さすがにエリート(と思われる)アキラさん、普通に家賃の高いエリアに住んでいたので速攻で断念した。

 

そうしてまぁ、この街の不動産屋? らしきものを宿の人に教えてもらい、いろいろ条件を相談した結果紹介されたのがこの家だったんだが……かなりの好条件であり、即決した。

 

まず立地に関しては街の中心からは離れているものの、警備隊の詰め所が近くにあり治安はそれほど悪くない。家賃も充分に予算の範囲内だった。

 

それから大家さんは恐らく50前後の女性だったんだけど、この方元は冒険者をやっていたらしく、腕っぷしも強いのが知られており、そうそうこのアパートメント周りで問題を起こす人間はいないこと。また宿自体を一人暮らしの女性を支援するためにやっているようなのものらしく、入居条件が女性一人暮らしか子連れの女性のみ。今はその子連れの女性も娘しかいない。更には男の連れ込み不可……要するに私生活の中で事故ったりそういったトラブルに巻き込まれる可能性は限りなく少ない。……正直これは割と理由としてでかかった。情けない話であるが、もし男がいる場合風呂に入った際にどうしてもしばらくは気になってしまいそうなので。

 

そう、それも即決した理由の一つ。このアパートメント、住人の共用であるがお風呂があるのである。

 

これでリスク無しに毎日お風呂にはいれるのだ!

 

 

 

 

 




進行の遅い作品ですので、区切りの為に章管理を追加しました。
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