お金の力で世界を救ってあげます!   作:みずち

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広がる景色

 

俺の手をひいたままテイルさんに連れ出されたその場所は、視界がこれでもかというくらい開けていた。

 

これまでの行程は上り坂の坂道であり、更に周囲は木々に覆われていたので視界は全く開けていなかったが、やってきたこの場所はこれでもかというくらい遮る物がなにもない。恐らく崖のようなところなのだろう、上や水平方向だけではなく見下ろす視界も抜群だ。

 

俺がいま滞在しているパストラの街は半月型の湾の奥にあり、街の左右の土地は両手を開いて相手を迎え入れようとしているように伸びている。

 

俺とテイルさんは、パストラから見て東側にある、山のようなものを上っていた。そこからの光景がお薦めだよ、というテイルさんの言葉に従って。

 

そのテイルさんの言葉に、嘘はなかったらしい。

 

「ね、最高でしょ?」

 

隣に立つテイルさんの言葉に、俺はコクコクと頷く。

 

まさに絶景だろう。この近隣では最大の都市であるパストラの全体が一望できる。

 

ああ、話に聞いてたけど、パストラの街は区画によって雰囲気が違うんだな。さすがにはっきりとわかるわけではないけど、この距離でも明らかに違うというのがわかるくらい変化が見える。パストラは港町という事もあってか様々な人種が集まっており、数が比較的多い国の人間や種族はある程度まとまって生活しているんだよな。だからその辺りはそれぞれの特色がある。

 

あーもう、望遠鏡とかあればもっとくっきり見えるのになぁ。そういや、能力の中に千里眼の能力があったっけ。<<クレアボヤンス>>だったかな? 使いどころがないって事はないだろうし、将来的には獲得してもいいかもなぁ。さすがにこの場で衝動だけで取得なんてことはしないけど。<<ポイントテレポート>>獲得したばっかりだからMPないしさ。

 

おー、さすがに港町だ。海岸沿いには何隻も大型の船が停泊しているのが見えるし、その先の湾の中では行き来している船も見える。俺の住んでいる辺りは街の入り口側に近い方で港とは反対側なので、まだ港は直接見たことないんだよね。あれだけの大型の船が何十隻も止まっている港なんて日本でも一度も見たことないから一度近くで見に行ってみたいな。配信としても映えるだろう。

 

その港から手前の方に視線をひくと、白い綺麗な海岸線が広がっている。

 

視線の行き先に気づいたのか、テイルさんがその海岸線が人気のスポットだという事を教えてくれた。

 

『海!海岸線!水着!』

『水着配信キタコレ』

 

水着配信は、まだちょっと踏ん切りが、つかないかなっ。事故も怖いしっ!

 

『テイルちゃん誘って遊びにいこうぜカズサちゃん』

『アキラさんもパストラに住んでいるんだよな? 誘って三人できゃっきゃうふふしようぜ!』

 

あー、そういえばアキラさんってもう戻ってきてるのかな? あの人<<ポイントテレポート>>使えるらしいから帰路は一瞬だろうし。大体の住んでいる場所は聞いているから、ちょっと探して訪ねてみようか。きゃっきゃうふふは関係なく、ちゃんとあの時のお礼も改めてしておきたいし。アキラさん明らかに実力者だったし同じ実力者のベルダさん知ってたりしないかな。帰ったら聞いてみよう。

 

パストラから俺達が今いる崖のふもとにまで伸びているであろう海岸線をずっと目でおってから、俺は視線を上げて今度は遠くへと目をやった。そこまで標高が高いわけじゃないから遥か遠くまで見えるわけではないけど、それでもパストラの周辺はわりと平坦な地形であるのでほどほどに見渡す事ができる。

 

俺はその景色をゆっくりと見渡してみるが──やっぱり見えないか。

 

「もしかして、地下遺跡探してる?」

「うん」

「地下遺跡は入り口そんなに大きくないし、さすがに無理だよ」

「だよね」

 

地下遺跡──正式名称はクアンドロ地下遺跡という。なんでも過去に存在したとある文明の遺跡らしいんだけど、俺としてはその文明自体はどうでもいい。なんでそこを気にしているかというと、そこが例の魔術生物がいるダンジョンとなっているのだ。<<ディスインテグレイト>>を覚えた俺が最初にいく事になる(予定の)場所である。

 

せっかくこういった場所まで来たんだし、出来ればどんなところかなーと見ておきたかったんだけど、まぁ仕方ない。テイルさんが大体どのあたりかってのは示してくれたけど、この距離ではっきりとわかる目印がないからよくわかんなかったし。

 

ちなみパストラ近郊にはもういくつかダンジョンがあるけど、そっちも入り口が見えませんでした。

 

「んー実物見て気合入れたかったんだけど。まぁいいや、頑張って<<ディスインテグレイト>>覚えよ」

「待ってるよん」

 

いつの間にかテイルさんの手は離れていたので、両手を体の前でぎゅっと握ってそう口にすると、テイルさんが俺の肩にポンと手を置いてそういってくれた。そういや<<ディスインテグレイト>>の為のMPの他にテイルさんとその相方さんを雇う用の費用も貯めなきゃいけないな。成功報酬なんてわけには当然いかないだろうし。

 

『そうだよね、頑張ろうね、コスプレ』

 

いや間違ってないけどさ……パストラについてから外出先が増えたし、夜もテイルさんとか同じアパートメントの住人と会話したり、人数が増えたせいで勢いが途絶える事のないチャット欄の相手したりしてるんであまり作業時間取れてないから、コスプレ衣装作れてないんだよね。その代わりに日常生活での服は手持ちのなかで出来るだけリクエストを聞いて選んでいるんだけどさ。

 

うん、言われた通り、コスプレ、というか衣装製作は頑張ろう。ファンタジー世界にきて何やってんの? というのは未だに思うが、ウチの主要コンテンツだ。目標のMPの数値を考えたら手は抜けない。

 

まぁそんな事を考えながらも、俺は目の前に広がる光景をゆっくりと眺めていた。この距離からだとあまりファンタジー世界特有って感じはしないんだけど(港の船くらい)、それでもこっちの世界でこんな見晴らしのいい場所に来た事はなかったので、なかなかに飽きない。

 

きゅるるるるる。

 

そんな時間に終止符をうったのは、テイルさんの方から聞こえた可愛らしい音だった。

 

音に反応して景色から目を離し彼女の方へ視線を向けると、彼女はお腹を押さえながらあははと笑っていた。

 

それで先ほどの音が何だったのか気づいた俺は、つられたように笑みを浮かべながら手に持っていた肩にかけていたバッグに手をおろして、告げた。

 

「頃合いだし、お昼にしよっか」

 

 

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