群青の戦士   作:Eitoku Inobe

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「私が第7特殊作戦兵団に配属になった時から何度もマンダロリアンの歴史について教育を受けた。内容はどれも少々右翼的に偏った歴史観であり、一部の戦友はこの教育に過感化されて彼自身がそういう性格に変貌してしまった。元特殊作戦兵団麾下の将軍が書くのも何だが、第7特殊作戦兵団が限られたマンダロリアン専門の特殊部隊であるからこそ一部思想が先鋭化するのは当然のことであった」
-元第7特殊作戦兵団所属ウェイン・D・ダウニング退役准将自伝録 “兵士マンダロリアン”より抜粋-


Kriegs Mando'ade

かつて、マンダロアでは動乱があった。

 

735BBY、マンダロア銀河共和国加盟から3年後の出来事だ。

 

戦士の伝統を守らんとする者、共和国の飼い犬になるのは真っ平御免な者、マンダロアの称号を我が物としたい者達が反乱を起こそうとした。

 

これらの勢力はクライトサッド派と呼ばれ738BBY以前の体制、つまりマンダロアの一国主義体制を望んでいていた。

 

クライトサッド派マンダロリアンの戦士達はクーデター計画を考え、最終的には銀河共和国との全面戦争を望んだ。

 

再びマンダロリアン戦争を引き起こそうと考えたのだ。

 

しかし計画は途中で発覚しマンダロア政府とジュディシアル・フォース内で結成されていたマンダロリアンの特殊部隊によって破綻。

 

伝統と旧体制を重んじる一派がいる一方で共和国や銀河諸国との繋がりを重んじて新しいマンダロリアンの戦士の伝統を築こうとする者達もいた。

 

新しいマンダロリアン達は別に平和主義でもなかったがクライトサッド派とは激しく対立していた。

 

その為クーデター計画が破綻した瞬間両者の対立は一気に新しい戦いへと発展した。

 

本土マンダロアを除くマンダロア宙域全土でマンダロリアン同士の激しい内戦が始まったのだ。

 

途中で本格的に参戦したジェダイとジュディシアル・フォースらを含めた熾烈な大戦闘の末、クライトサッド派は壊滅し危機は去った。

 

後にこの戦いはマンダロア動乱と呼ばれコンコード・ドーンを含めた幾つかの惑星が戦争の傷跡により大きく壊された。

 

生き残ったクライトサッド派のマンダロリアン達がどこへ行ったのかは分からない。

 

だがもう700年も何事もなく平和は続き、マンダロリアンの戦士達は戦いをマンダロアの外で行った。

 

殆どがマンダロア宙域防衛軍かジュディシアル・フォースに所属し自慢の戦士達を銀河系の治安維持、安全保障の為に使った。

 

戦士達は青き制服に身を包みジェダイと並んで共和国の守護者となった。

 

無論ジェダイとの諍いもあり時には大きな問題に発展したがその後の700年までは不満を溜めつつもひとまずの平和は続いていた。

 

だが銀河に封じ込められてきたありとあらゆる暗黒が解き放たれる時代が遂に訪れたのだ。

 

ジェダイ、マンダロリアン双方の旧敵が。

 

片方はシスと名乗る者、そしてもう片方は自らが封じ込めたはずのかつての同胞。

 

「我々マンダロリアンは牙を抜かれ今や共和国の犬だ!ジェダイの膨大な権力に対し、我々はあくまでジュディシアル・フォースのいち特殊部隊という立場!これでは我々に救いがない!戦士の魂が飼い殺しにされている!」

 

指導者の1人は魂の悲痛を込めてそう叫んだ。

 

隣の老人も同じように不平不満を口にする。

 

「マンダロアの現政府は共和国の腐敗した体制と堕落し切った平和主義に毒され真のマンダロアを忘れている、ここにいる勇敢な戦士だけが唯一戦士の魂を清きままに保ち続けているのだ!」

 

「立ち上がれ諸君!決起の日は近づいている!既に我らの僕たる組織は行動を起こした。この動乱に乗じて我々はマンダロア政府を急襲し我らがものとする、そして我々は今度こそ銀河共和国との“()()()()”を行うのだ!」

 

指導者達の前に並ぶ戦士達は腕を空高く掲げ大声で叫んだ。

 

マンダロアに暗黒が、銀河系に新たな戦いが訪れようとしている。

 

クリークス・マンダロリアン、それが彼らの名前。

 

彼ら彼女は“()()()()”に操られ戦い続けるのだ。

 

 

 

 

 

-インナー・リム ゼル星系 惑星ゼルトロス-

ゼル星系周辺の宇宙空間に何隻かのスターシップがジャンプアウトした。

 

うち三隻の大型艦はジュディシアル・フォースの特徴的な赤いペイントが施されていた。

 

その内訳はIGV-50ゴザンティ級早期警戒監視船が一隻、その護衛としてカンセラー級軽アサルト・クルーザーが二隻配備されている。

 

この小規模の機動部隊は今回の特殊作戦において通信傍受と早期警戒、ゼルトロスの通信妨害を行う為に派遣された。

 

作戦の実行部隊を担う戦力はこの三隻よりも小さいコムルク級ガンシップ・トランスポートに乗船する28名のマンダロリアンの兵士達に任されていた。

 

機体の中でマンダロリアン達は自身のアーマーや武器の手入れを行い、いつでも戦闘が出来る状態を整えていた。

 

そんな中28名の隊員達を取り纏めるマイルズは全員に呼びかけた。

 

「よしみんな、集まってくれ。作戦の最終確認を行う」

 

さっきまでバラバラに動いていたマンダロリアン達はマイルズの一言で彼の目の前に綺麗に整列した。

 

全員が真剣な表情で彼を見つめ、彼の言葉を待っている。

 

コムルク級のパイロット班である9班の隊員達もコムリンクを繋いでマイルズの言葉に耳を傾けた。

 

「今回の作戦はテロリストのアジトの制圧だ。敵はゼルトロスの森林部にある放棄された古城型の別荘地を勝手に根城として使っている。我々はここを強襲し拠点としての機能を維持出来なくさせる。徹底的に破壊し、徹底的に殲滅しろ」

 

その一言で隊員達はニヤリと笑みを浮かべ任せておけと自信を露わにした。

 

きっとマイルズも一隊員としてこの場にいたらきっとこっち側だっただろう。

 

マンダロリアンは闘争を求めている、いつの時代もどんな姿になってもだ。

 

「今回は我々ドラグーン3の全戦力を投入する。1班から9班まで全員で敵地に襲撃をかけるぞ」

 

「了解」

 

「それではみんな、我ら戦士の誓いを果たさんことを」

 

隊員達は皆口を揃えて「我ら戦士の誓いを果たさんことを」と宣誓をした。

 

数百年も前から彼ら彼女らの一族はこの宣誓と共に共和国とマンダロアに刃向かう敵を全て倒してきた。

 

ある者は共和国の守護者はジェダイだというがそれは間違いだ。

 

この世界にとって銀河共和国の守護者とはマンダロリアンのことなのだ。

 

コムルク級はゼルトロスの大気圏を超え惑星内へと入った。

 

「自動操縦に切り替え、ハッチを解放」

 

「着陸地点セット完了、我々も行こう」

 

コムルク級の操縦席に座っていた隊員達もシートベルトを外しヘルメットを被った。

 

他の隊員達と合流しドラグーン3のマンダロリアン達は皆降下準備に入った。

 

「周囲に物体なし、降下可能です」

 

9班のエンジニアがマイルズにそう報告した。

 

「では行こうか」という一言と共にマイルズはコルムク級から飛び降り、エルトンやアヴィー達もそれに続いた。

 

数十人のマンダロリアンがコルムク級から降りてくる姿は圧巻である。

 

マンダロリアン達はパラシュートの代わりにジェットパックを僅かに吹かせて地上へ静かに着陸した。

 

降下完了とほぼ同時に各班長の指示に従って森の中を移動した。

 

「ここがゼルトロス、観光で来れたら最高だったのにな」

 

「こんな時によくそんな冗談が言えるわね」

 

エルトンがボソッと呟いた冗談にアヴィーはすぐにツッコミを入れた。

 

だがエルトンの気持ちも分からんではないとマイルズは心の淵で思っていた。

 

ゼルトロスは銀河系有数のリゾート地であり華々しいパーティーと娯楽施設で有名だった。

 

その為軍高官もよくゼルトロスに訪れており元老院議員や最高議長がよく会談場所に指定することもある。

 

しかし今は娯楽やパーティーといった言葉とは縁遠い作戦行動中だ。

 

冗談を言ったエルトンも今は娯楽心よりも内から湧き出る闘争心に興奮していた。

 

マンダロリアン達は素早く移動し、目標の古城に辿り着いた。

 

一見するとゼルトロスにはよくありがちな別荘に見えるが辺りには数人の武装した戦闘員が控えていた。

 

マイルズは目標の手前で停止命令を出しマンダロリアン達は草叢に隠れた。

 

「5班と7班は外にいる戦闘員を狙撃しろ、3班と6班は接近して爆薬をセット。残りの全班は空中機動戦に備えろ」

 

「了解」

 

命令を受けた隊員達は換装式ブラスターをスナイパーモードに切り替えヘルメットとスコープをリンクさせた。

 

デジタル化されたターゲティング装置がターゲットを表示し、射撃手たるマンダロリアン達は確実にターゲット狙撃していった。

 

静かに放たれたブラスター弾がターゲットの頭を撃ち抜き絶命させる。

 

マイルズの命令から数分も経たずに外にいた戦闘員は1人残らず始末された。

 

ハンドサインで狙撃手達が制圧完了を合図し、それと同時に3班、6班の隊員達が敵アジトへ向け接近した。

 

ジェットパックを用いたホバー移動は走るより遥かに速くそして素早い。

 

当然ジェットパックを巧みに操る技量も必要になってくるがその分得られるものはある。

 

接近した3、6班の隊員達は素早く爆弾をセットして少し離れた場所で待機した。

 

『セット完了、いつでも行けます』

 

「了解、5班と7班は引き続き狙撃して援護を。残りは合図と共に全員で強襲をかける…!」

 

隊員達は自身のブラスター・ライフルやブラスター・ピストルにグレネードランチャーを接続し戦闘に備えた。

 

全員が武装を整えたのを確認した瞬間マイルズは指示を出した。

 

「ドラグーン3攻撃開始!」

 

草村から一斉に数十人のマンダロリアンが飛び出し、その瞬間設置されていたすべての爆弾が起爆し偏向シールドや重要な武装を全て破壊した。

 

偏向シールドの消失をヘルメットの機能で確認したマンダロリアン達は一斉にジェットパックのミサイルを発射しアジトへ攻撃を開始した。

 

攻撃支援に入っていた5、7班の隊員達も携帯用スマートロケットでアジトに砲撃を加えた。

 

爆発を確認しようと外に出てきた戦闘員やバトル・ドロイドを巻き込みテロリストに被害を与えた。

 

「一体何がっ……グワァっ!?」

 

辛うじて生き残っていた戦闘員やバトル・ドロイド達は潜んでいた3班と6班の隊員に銃撃され始末された。

 

急いで現場に急行しようとする戦闘員達も草叢に残って狙撃を続けている隊員達によって窓越しから狙撃されアジトの通路に死体を連ねていった。

 

アジトのあちこちから煙が上がり見渡す限り戦闘員はほぼいなかった。

 

「突入準備をっ!?」

 

マイルズはベスカー製のガントレットで突然空中から放たれたブラスター弾を防ぎ、反撃を叩き込んだ。

 

すると2体のバトル・ドロイドに直撃し地上に墜落した。

 

どういうことだとマイルズが状況を把握する前にエルトンが報告した。

 

「3時の方角から飛行タイプのOOMバトル・ドロイド多数接近!数は分からん!」

 

既に隊員達はそれぞれ背中を合わせて防御陣を作りながら応戦していた。

 

マイルズも敵のバトル・ドロイドを何体か倒しながら命令を出す。

 

「戦闘隊形ABで対応!敵部隊を1体たりとも残さず撃破する!その間に3班、6班は先行して突入しろ!」

 

『3班了解!』

 

『6班了解!』

 

既にアジトに着陸していた3班と6班の隊員達は内部へ突入し残りの空中に浮遊する隊員達は命令通り戦闘を開始した。

 

草叢では狙撃中の5、7班がターゲットを変更し飛行するバトル・ドロイドを狙い撃った。

 

所詮は改造されたOOMバトル・ドロイドといった有様でブラスター弾を喰らえばすぐに撃破出来た。

 

無理やりジェットパックや飛行ユニットをバトル・ドロイドに装着させ空中戦に対応させたようだ。

 

マンダロリアン達はバトル・ドロイドが放つブラスター弾を避けながら逆に次々とバトル・ドロイドを撃破していった。

 

あるマンダロリアンは最早ブラスター弾を避けず全てアーマーで弾いて接近しバトル・ドロイドを倒していた。

 

エルトンもアヴィーと協力しバトル・ドロイドを撃破していった。

 

バトル・ドロイドは辛うじて空中戦が出来てはいてもやはりシステムやプログラムに無理があるようでただ浮いているだけの固定砲台となっているバトル・ドロイドも存在していた。

 

所詮単純な改造を施されただけのOOMバトル・ドロイドでは銀河最強の兵士であるマンダロリアンに敵うはずもなかった。

 

戦闘が開始して数分が経つ頃にはドラグーン3の2倍近くの戦力があった飛行バトル・ドロイド群は全滅していた。

 

マンダロリアン達は何事もなかったかのように周囲を警戒しながらアジトへ着陸した。

 

「ドロイド制圧完了!」

 

2班の班長がマイルズに報告する。

 

「よし、5班、7班も支援狙撃を終了して上がってこい。3班、6班、そっちはどうだ」

 

コムリンクで先に突入した3班、6班の班長達に通信を繋いだ。

 

早速通信先では銃撃の音が聞こえてくる。

 

『意外に頑強な防御体制ですが…!いけます!』

 

『出来れば早めの増援をお願いします!』

 

意外にも敵は立て直し、建物の中に防御陣を築いて立て籠もっているようだ。

 

恐らく敵にカリスマ性と冷静な判断力がある指導者がいるのかそれとも“我々の存在を知っている人物がいるのか”。

 

マイルズはふとアーゴウで目撃したマンドア語の記述とルック准将と話し合ったことを思い出した。

 

もし敵に“()()()()()”がいるのだとしたら…。

 

「5班、7班到着しました!」

 

6人のマンダロリアンガジェットパックで建物の屋上に乗り上げてきた。

 

これで突入した2つの班を除く全ての隊員が揃った。

 

マイルズは考え事は後にしてガントレットのホログラム地図を基に隊員達に指示を出し始めた。

 

「現在3班、6班は左区画を攻撃中でこちらは真っ直ぐ行くと直接的の指揮所があると思われる室内に繋がっている。だが敵の兵舎と思わしき場所は反対側にある」

 

ホログラムに言及のあった二箇所が大きく映し出された。

 

「私達1班と2班は3班、6班の救援に向かう。残りの4班から9班は右区画に強襲をかけ、バトル・ドロイドも戦闘員も残らず殲滅しろ」

 

「了解!」

 

「それでは健闘を祈る」

 

隊員達はそれぞれ分かれて敵地に突入した。

 

左区画は殆どの敵をもう3班と6班が倒してしまったようで殆ど接敵することなく進めた。

 

「急げ!距離的には後少しで合流出来るはずだ!」

 

マイルズの命令で6人のマンダロリアンはひたすら通路を走った。

 

すると通路の脇からブラスターの先端についたバイブロ=ナイフが2本突如飛び出してきた。

 

先に気づいたエルトンは両腕で無理やり棒を押さえつけ攻撃を食い止めた。

 

「先に行け!!僕が食い止める!」

 

「分かった!」

 

「無茶すんなよ!」

 

エルトンのことを信頼している2人はこの場を彼に任せ2班の隊員達と共に走り去った。

 

敵はどうやらホロワン・メカニカルズが開発したIGシリーズの改良品のようでロングバレルのブラスター・ライフルに銃剣としてバイブロ=ナイフを備え付けていた。

 

エルトンは掴んでいた銃先を放し自身のブラスター・ピストルを拾って2体のIGバトル・ドロイドを撃った。

 

ブラスター弾はドロイドを掠りはしたが致命傷は与えられず2体のIGバトル・ドロイドはブラスター弾を放ちながら銃剣を振るってきた。

 

「チッ!こんなものまで隠し持ちやがって!」

 

苛立ちと共にヴァンブレイスのリスト・ブレードを出現させドロイドの手を切り落とした。

 

当然片手を失ったからといってドロイドは痛みを上げるわけでもなく再び斬りかかってきた。

 

繰り出された銃剣刺突を寸前で回避するとエルトンはドロイドを蹴り飛ばした。

 

その隙にともう片方のバトル・ドロイドが再び斬りかかってきたが即座に回避し懐に潜り込んでブラスター弾を叩き込んだ。

 

装甲が完全に溶解し内部がズタズタに破壊されたIGバトル・ドロイドは完全に機能を停止した。

 

敵が持っていた銃剣付きロングバレルライフルを奪い取ったエルトンはIGバトル・ドロイドと斬り合い、ライフルの銃床でドロイドを殴りつけた。

 

少し距離が取れたところでエルトンは敵の銃剣を足で押さえつけながらドロイドの胸部目掛けて銃剣刺突を繰り出した。

 

胸部に刺さったバイブロ=ナイフがドロイドの内部を破壊しこちらも機能停止した。

 

ようやく2体を倒したと思ったのも束の間、奥から数人の戦闘員がブラスター弾を放ちながら姿を現した。

 

エルトンは自身のブラスター・ピストルを拾い確実に1人ずつ撃ち抜いていった。

 

最後の数人が逃げるのを防ぐ為にグレネードを投擲し爆発と破片で全員を始末した。

 

「これで制圧完了……だな」

 

敵がいないことを確認したエルトンは休むことなく先に行った仲間達に追いつこうと走り出した。

 

一方先に救援に向かったマイルズ達は後もう少しで到着するところまで迫っていた。

 

マイルズはコムリンクを繋げ3班、6班の班長達に通信を繋げた。

 

「今到着する!後少し踏ん張れよ…!」

 

『はい…!ですが敵は手強いです!それに……うわっ!!』

 

マイルズ達が到着したのとほぼ同時に6班の班長と数人の隊員がマイルズの足元まで吹き飛ばされた。

 

それを庇うように3班と6班の隊員達がブラスター・ライフルやブラスター・ピストルを構えた。

 

「大丈夫か!?」

 

マイルズはブラスター・ピストルを構え班長を抱き抱えた。

 

「はい……腕を折られましたがまだ戦えます…!」

 

「無理をするな、6班は負傷者を後方に下げろ。残りの班は司令部に突入しろ、班長の仇は1班で取ってやる」

 

マイルズは立ち上がってブラスターを近接装備に変えようとすると6班長が左手でマイルズの足を掴んだ。

 

マイルズが「どうした」と尋ねる前に班長は最後に報告した。

 

「敵にお気をつけください…!なんとか2人持って行きましたが……敵はっ……敵は我々と同じ“()()()()()()()”です!!」

 

「……何…!?」

 

班長の報告にマイルズよりもアヴィーが先に驚いた。

 

ついてきた2班の隊員達も同じように驚いていた。

 

敵に自分達の同胞がいるかもしれないと知ったらこうなるのは必然であろう。

 

だあが一方のマイルズはただ小さく「そうか…」と呟くだけだった。

 

「敵が何者であろうと私は戦士の誓いを果たしこの任務をやり遂げるだけだ。アヴィー、行くぞ」

 

アヴィーも動揺していたがマイルズに諭され2人は走り始めた。

 

通路を抜け階段を降り、地下室と思わしき場所に出た。

 

するとそこには1機のアガジョア級シャトルが停泊していた。

 

マンダルモーターズ社製の一般的なシャトルだ。

 

しかもシャトルの前には特徴的なヘルメットとアーマーを纏った数人の“()()()()()()()()()()”。

 

「…追いつかれたか、負傷者を頼む。我々で時間を稼ぐ」

 

敵の指揮官と思わしき人物は抱えていた負傷兵を他の仲間に任せアヴィーとマイルズの方へ振り返った。

 

そのアーマーとヘルメット、その姿を目にしたマイルズは明らかに動揺していた。

 

「なんであんたがここに…!」

 

マイルズは苛立ちを含んだ声を上げながらブラスターを向けて近づいた。

 

それに対して敵の指揮官は怒りを煽るように敢えて返答した。

 

「その声、ローン少尉か?随分と偉くなったようだな。部下まで引き連れて」

 

どうやら敵はマイルズのことを知っているようだった。

 

「マイルズ、こいつは一体…!?」

 

「アヴィー、お前は他の2人を頼めるか?俺はこいつを必ず倒さねば!」

 

「マイルズちょっと待て!」

 

マイルズはアヴィーの静止も聞かずブラスター・ピストルの引き金を引きながら走り出した。

 

アヴィーは後から止めようとしたがすぐに2人のマンダロリアンの妨害されて止められなかった。

 

敵の指揮官はヴァンブレイスでブラスター弾を防ぎながら自身もブラスター・ピストルを向けた。

 

2人は接近し銃口を互いに向けた。

 

マンダロリアンのアーマーはブラスターすら弾くベスカー製だが他のアーマー同様に全身を完璧に守れるわけではない。

 

僅かな隙間が存在しそこに弾丸を叩き込めば相手にダメージを与えることが出来る。

 

2人は互いにそれを理解しブラスター・ピストルを向けあった。

 

そして互いの銃口をずらしながら自らも引き金を引き攻守を兼ね備えた攻撃を繰り出す。

 

巧みな技量により互いに致命傷を与えられずにいた。

 

「チッ!邪魔だお前ら!!一体どこの氏族の従者だこの野郎!」

 

アヴィーはブラスター・ピストルとバイブロ=ナイフを持ち、ヴァンブレイスのリスト・ブレードを展開してマンダロリアン2人相手に大立ち回りしていた。

 

マンダロリアン2人も容易には接近出来ずブラスター・ピストルを構えながら、リスト・ブレードで近接戦に対応しようとしていた。

 

「邪魔だ!どけ!」

 

アヴィーはヴァンブレイスからグラップリング・ラインを発射し片方の戦士の足に巻きつけた。

 

もう片方の戦士にはパラライジング・ダートを投擲し邪魔をさせないようにした。

 

その間に勢いよくグラップリング・ラインを引き寄せ相手の態勢を崩させた。

 

当然相手はマンダロリアンで対処法もよく知っている。

 

敵戦士はウィップコードをリスト・ブレードで切り落とし、すぐにブラスター・ピストルで反撃した。

 

アヴィーはボディのアーマーで防ぎながら僅かにジェットパックでジャンプし2人を跨いだ。

 

これでマイルズの救援に行けると思った矢先、今度は同じようにグラップリング・ラインを敵戦士が放ってきた。

 

左腕に絡みつきあの場には行かせないと引っ張られた。

 

すぐにバイブロ=ナイフで切り落とすが即座にジェットパックで飛んできた別の戦士に妨害され再び近接戦となった。

 

バイブロ=ナイフとリスト・ブレードが鍔迫り合いの状態となり、周囲に火花を散らした。

 

「邪魔だと言っているんだ!そこをどけ!」

 

同じように接近してきた戦士の斬撃をリスト・ブレードで防ぎながらアヴィーは両腕の力を強めた。

 

だが2人のマンダロリアンも指揮官の下に行かせる訳には行かない為ありったけの力を込めた。

 

2対1、当然劣勢なのはアヴィーであり彼女は次の攻撃の手を考えていた。

 

もうこの2人を飛び越えてマイルズの救援に行くのは無理だ。

 

まずは彼らを確実に始末しなくては。

 

仮に同胞であろうとマイルズの言った通り戦士の誓いを果たすだけだ。

 

するとそんな彼女の下に救援が訪れた。

 

「アヴィー避けろ!」

 

遠くから若い男の声が聞こえ、敵戦士達にブラスター弾が命中した。

 

当然致命傷にはならなかったが衝撃は大きくその間にアヴィーが片方の戦士の脇腹に鋭い蹴りを入れた。

 

もう片方の戦士もすぐに救援に駆けつけた者の飛び蹴りを喰らい遠くへ吹き飛ばされた。

 

「エルトンか!早かったな!」

 

助けに来たのはIGシリーズと格闘し伏兵を倒してきたエルトンであった。

 

彼はアヴィーとマイルズが追撃に出たと他の班から聞いて急いで救援に駆けつけた。

 

「まずはこいつらを倒す。行けるか」

 

「当然!敵がどうも僕達の同胞に見えなくはないが所詮パチモンだろう!」

 

「フッ言ってくれる。だが時間は十分に稼いだ!」

 

敵の指揮官は火炎を周囲にばら撒きマイルズとの距離を取った。

 

アヴィーと熾烈な格闘戦を繰り広げていた2人のマンダロリアンもその隙にアヴィーとエルトンの間合いから離れた。

 

「待て!」

 

エルトンは敵を追おうとしたが周囲に煙幕を張られその隙にアガジョア級ごと3人は離脱した。

 

最後に一言、「ハインツに一言言っておいてくれ」と伝えて。

 

マイルズは誰よりも早く「逃すか!」とグレネード弾を放ったがアガジョア級には命中しなかった。

 

するとヴァンブレイスの通信が繋がり2班の班長が報告した。

 

『こちら2班、3班、敵司令部を制圧し敵の指導者と思わしき人物を捕獲しました。そちらはどうですか』

 

「……ああ、こちら1班マイルズ・ローン。悪いがこっちは取り逃した。右区画へ突入した班はどうだ」

 

『こちら4班長、突入した班に死傷者はなし。5人が投降し残りは全員始末しました。またこちらでもバトル・ドロイドの簡易修理製造工場を発見。軌道上の部隊が上陸次第制圧を解除します』

 

「分かった、8班は2班と3班に合流しろ。軌道上チーム、1機のシャトルを逃した追跡を頼む。残りは地上支援を」

 

『了解』

 

一通りに命令を出しコムリンクを切るとマイルズは2人に話しかけた。

 

「エルトン、アヴィー、今から言うことをよく聞いてくれ。今度アイツらのような敵と戦うことが増えるかもしれない。その時さっき戦った敵が何を言おうと必ず倒せ。例え俺やホック准将が倒されてもな」

 

「あっああ……そりゃ当然だが何があったんだ…?」

 

途中から合流してきたエルトンは事情がよく分かっていない様子だった。

 

だがあの激情したマイルズを見たアヴィーは重く受け止めて頷くしかなかった。

 

「あの敵はもしかしたら俺やホック准将が命を掛けて倒す必要があるかも知れない敵だ。必ず…!」

 

マイルズはまるで誰かに誓うかのようにそう呟いた。

 

この時エルトンもアヴィーもまだ知らなかったし気づいていなかった。

 

この戦いにまつわる過去と情念、そして激化していくことを。

 

 

 

 

 

同じ頃、ゼルトロスを抜け出たアガジョア級の船内ではエルトン達と戦っていたマンダロリアン達がヘルメットを脱ぎ、それぞれ休んでいた。

 

こちらは2名の負傷者を出し配下の勢力も壊滅させられてしまった。

 

あの幹部には共に脱出するように迫ったのだがどうも狂信にかまけて現実的な施策を見失ってしまったようだ。

 

尤もあのような雑兵達が100人死のうが100万人死のうが知ったことではないが戦士が2名重傷を追ったのは痛手だ。

 

あのジュディシアルのマンダロリアン、流石は班長クラスと言ったところだ。

 

あそこで腕の一本でも折っておかなければローンと合流して厄介なことになっていただろう。

 

彼ら彼女らのような最良な戦士達が今も銀河共和国の犬になっていることは到底許されたものではない。

 

ローン少尉もハインツも……あいつだってあの時共に来ていればここで戦うことも死ぬこともなかったはずだ。

 

真実が見ていない者達が今のマンダロアには多すぎる。

 

だから我々正しきマンダロアの臣民が目覚めさせる必要があるのだ。

 

正しいマンダロリアンに、あるべき本当の闘争の姿へと。

 

『随分酷くやられたようだな』

 

老人のホログラムが浮き上がり、彼に話しかけた。

 

この老人こそが彼の主人であり正当なマンダロアの地を継ぐ正しい指導者だ。

 

「ジュディシアルのマンダロリアン部隊に介入を受けた。だが目標は達成される。今回の一連の事件でジュディシアルと惑星防衛軍の戦力はコアから外部へと移った」

 

『では間も無くか、正しいマンダロアが帰ってくるのは』

 

彼は小さく頷いた。

 

「ええ、“第二次マンダロリアン戦争”までもうすぐですよ。閣下」

 

我々が本来あるべき闘争とはこれだ。

 

共和国の犬なんぞに成り下がる必要はない。

 

弱者は弱者らしく闘争によって滅ぼされるのだ。

 

その為に我々、“正しきマンダロリアン(クリークス・マンダロリアン)”はいるのだから。

 

 

つづく

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