「“
「ッ!!」
一瞬のためを察知して慌てて横に飛び退く。
先程まで自分のいた場所は焦土と化して、辛うじて避けきった私の袴の裾も若干焦げて。
直撃していたらタダでは済まなかっただろう攻撃に血の気が引くが、ここで怖気づく訳にはいかなかった。
「どうしたヤマト。ここまでか?」
「……まだ、終わらない……!」
自分用の小振りの金棒を構えて、ふぅと一つ息をつく。
──ここで終わっていては、私は先に進めないのだ。
□■□
「稽古ォ?」
「うん。……ダメ?」
「いや、駄目じゃあねェがよ……」
九歳の誕生日も過ぎ自身の実力に不安を覚えてきた私は、カイドウに稽古をつけてもらえないかと頼んでみた。
しかしいつもの親バカ具合であれば喜んで受け入れてくれると思っていたのだが、意外にもカイドウの反応は思わしくなく。
一体どうしたものかと説得の方法を考えかけていたところでカイドウが続けた言葉に、私はすぐに納得した。
「お前は戦う必要なんぞねェんだぞ?」
なるほどそこか。
……であれば、方向性は簡単だ。
「でも……たたかうパパもカッコイイから、わたしもパパみたいなぶきでパパみたいにたたかえるようになりたいよ」
「ウッッ」
「それに、忙しいパパの力にもなりたい。
……そしたらパパといっしょにいられる時間も長くなるでしょ?」
「ウッッッッッッッ」
あ、カイドウが気絶寸前。
「………………分かっ………………た」
そうして、非っっ常に……それはそれはもうとんでもなく嫌そうに、カイドウは私に稽古をつけることを了承してくれたのだった。
□■□
首元に突きつけられた金棒に、私は静かに両手を挙げた。
「今日はここまでだ」
「……うん」
稽古をつけてもらい始めて早一年。
十歳になって漸く筋トレやらの体作り、素振りなどの基礎固めから実践形式にステップアップ出来たが……やはりワンピースの世界における血筋の力は偉大だ。
何と言ってもぐんぐん力がついているのが自分でも分かるし、成長も早い。その上直感的に体の動かし方が分かるというか、明らかに前世より戦闘センスがある。
……まぁ、それでもカイドウには傷一つ付けることが出来ていないのだが。
「……」
同じく傷一つない自身の体を見て、私はしょんぼりと俯く。
「どうしたヤマト」
「……私、まだまだだなって」
「ウォロロロロ、そう落ち込むな。その歳にしちゃ良い動きだ」
「でも私にきずを付けないくらい手加げんしてるパパにこうげきを当てることも出来てないし……」
と、カイドウがぽんぽんと私の頭を撫でた。
「焦るんじゃねェ。お前はおれの娘だぞ?
その内どこぞのババアも問題なく殺せるくらいには強くなれる」
「が、がんばる……」
どこぞのババアってもしかしてビッグなマムのことですか???
……あ。
「そういえばパパ、今日のお昼ご飯どうする?」
「あァ……昼は外で用事があってな」
「分かった、じゃあおさむらいさんたちと食べとくよ」
「悪ィな」
「ううん、お仕事がんばって!」
そう言ってカイドウに抱きつくと、カイドウは「お前はいつまでも可愛い娘だなァ……」とまた大ダメージを受けていた。
さて。
そんなこんなでカイドウの見送りも終わり、私はいつも通り地下の小部屋で侍たちと昼食を摂っていた。
「にしても、ヤマトも随分デカくなったもんだ。ほんの二年前まではこ〜んなちんちくりんだったってのに……」
「牛マルさんそれ最近毎日言ってない?」
「感慨深くてつい、な」
「も〜」
「まぁまぁ。我らの中では未だに八歳の頃の印象が強い上、そうでなくともお主は成長が早いのだ。そう早くは慣れられぬよ」
相も変わらず私を親戚の子どものように扱う牛マルに不満を漏らす私をおむすびが嗜めるこの流れも、ある種お決まりになってきたような気がする。
「ときにヤマト、この頃の稽古の成果はどうなっておるのだ。
この間から実戦形式の稽古になったのでござろう?」
「ん〜……あんまりかなぁ。
パパが手加げんしてくれてるのは分かるけど、それにしてもまだまだ追いつけそうにないよ」
天ぷらの問いかけにそう答えると、彼はカラカラと笑った。
「はっはっは! お主がそう簡単にカイドウに追いついてしまっては、護衛である我らの面目が立たぬよ!」
「いや、童の成長は早いものだ。我らが御役御免になる日もそう遠くはないかも知れねェぞ?」
「それは楽しみでござるなぁ」
楽しそうにそう話す三人に、私はついつい眉根を寄せる。
なんかいつまでも滅茶苦茶子ども扱いなんだよな……。
いや実際子どもなのだが、前世と合わせると充分大人と言って差し支えない年齢なので……どうしても気恥ずかしいというか……!!
「……早く大人になりたい」
私の漏らしたそんな言葉を聞いて、三人はまた笑った。
微笑ましいものを見る目ヤメテ!!!
「ていうことがあってさ」
「わはははは!! そりゃお前はまだまだガキだからな! ──いでっ!!」
無遠慮にげらげらと笑うおでんの頭にチョップをかました私は悪くないと思う。
「別にいいじゃねェか、ガキの間しかガキ扱いは楽しめねェぞ?」
「いや私には分かるね! このまま行けばあの三人は私が二十八になるまで『デカくなったなぁ……』ってしみじみし続けるし子どもあつかいもぞっ行だよ!」
「あー……。まぁ、否定はしねェ」
そらそうでしょうとも!! だって確実にそうだもん!!!
「だがそりゃ可愛がられてるってことだろ?
……いやァ、ついこの間まで『仲良くなり方が分からない』とか悩んでたガキが成長したもンだ……」
「もー!! おでんさんまでそのほほえましいものを見る目しないで!!!」
おでんさんの態度に怒りはするが、こんな日常が案外嫌いではなくて。
あとたった十八年。
……箱庭の中でだけでも、こうやって笑い合える日々が続けばいいな。
きっと、そんな風に考えていたのが間違いだった。
□■□
「あ、キングさん。ちょうど良かった」
「お嬢。何か用か?」
「この袋海に捨てに行くんだけど、手伝ってくれないかな」
「……デカいのが五つか、これはまた大荷物だな」
「えっと、だめかな……?」
「いや構わねェが、いつも側にいる護衛三人はどうした?」
「え? あぁ。
三人なら多分──」
「──ちょうど今、キングさんが
ハーメルンを最もよく開くのは大体何時頃ですか?(投稿時間の参考にするための質問です)
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夜中(23時〜5時)
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早朝(5時〜7時)
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朝頃(7時〜12時)
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昼頃(12時〜16時)
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夕方(16時〜19時)
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夜(19時〜23時)